• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) G08G
管理番号 1046977
審判番号 審判1999-35147  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-03-31 
確定日 2001-08-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第1862032号実用新案「投てき用マ-キング物品」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第1862032号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第1862032号に係る考案についての出願は、昭和60年10月14日に出願され、平成3年8月7日に設定登録されたところ、平成11年3月31日に無効審判請求がなされ、これに対して平成11年7月8日に訂正請求がされ、この訂正明細書に係る考案(以下、訂正後考案という。)に対し平成11年11月16日に訂正拒絶理由が通知されたものである。
2.訂正の適否について
(1)訂正後考案の要旨は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。
「衝撃により破損し得る密封容器中に塗料を充填してなり、前記密封がアイゾット衝撃強度0.5?3kgf・cm/cm^(2)の材料からなることを特徴とする、投てき用マーキング物品。」
(2)当審の訂正拒絶理由通知で引用した実願昭56-105141(実開昭58-10185号)のマイクロフィルム(以下、引用例1という。)に、「この考案の重要な目的は、逃亡する犯人や、犯人が逃亡用に使用する乗物等の逃亡物に投げつけることにより、その表面に不自然で一般の通行人にも判り易い標識を付するこおとができ、しかも安価でどこの銀行や郵便局にでも手軽に装備でき、更に逃亡中の車等に向けて投げ付けるだけで使用できるので、誰もが簡単に使用できる逃亡を防止する投擲装置を提供するにある。」(3頁2行乃至9行)、「容器Aの中に塗料が充填されている。容器Aは、物に投げ付けられて当たると破損する材質、例えば塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂、又は素焼陶器等でもって、これが手で持つて投げ易いように、庭球ボール大の球状に形成されており、逃亡物に当つたときに確実に割れるように、好ましくは第2図に示すように、表面又は内面にV溝が形成されて一部が薄く形成されている。」(3頁12行乃至4頁4行)、「又、塗料には、夜間もよく見えるように蛍光塗料を使用するのが望ましく、又、ワックス等が塗布された車のボディー表面等にもよく付着するように、油膜の溶解液を混合するのもよい。」(4頁13行乃至16行)と記載されていることが認められ、実用新案登録請求の範囲第1項には「密封された容器内に塗料が充填されたもので、この容器は、これが逃亡物に投げ付けられると当たった衝撃で破損して内部の塗料が逃亡物の表面に付着するように構成された逃亡を防止する投擲装置。」(1頁5行乃至9行)との考案が記載されている。
同じく、当審の訂正拒絶理由で引用した「プラスチック入門」(伊保内賢著 (株)工業調査会発行1970年10月25日)(以下、引用例2という。)に、「衝撃強さ、熱変形温度 アイゾット(Izod)衝撃試験によるプラスチックの値は図41のようになる。ここで0.8ft・lb/in(4.4Kg・cm/cm)以上のプラスチックは床に落としても割れにくい耐衝撃性を有している。」(41頁15行乃至18行)と記載され、図41として各種プラスチックと衝撃強さの関係を示す図が記載されていることがみとめられる。
(3)対比・判断
訂正後考案と引用例1記載の考案とを対比すると、両者は「衝撃により破損し得る密封容器中に塗料を充填してなる投てき用マーキング物品」の点で一致し、訂正後考案が密封容器の材料をアイゾット衝撃強度0.5?3kgf・cm/cm^(2)のものとしているの対し、引用例1はこの点について記載するところがない点で相違する。
そこで、前記相違点について検討するに、訂正後考案が密封容器の材料をアイゾット衝撃強度0.5?3kgf・cm/cm^(2)のものを採用したことにつき訂正明細書には「該容器本体を構成する材料はアイゾット衝撃強度0.5?3kgf・cm/cm^(2)のものであることが好ましい。」(3頁19行乃至4頁1行)と記載するだけで、訂正明細書の記載からはその採用の理由が必ずしも明らかではないが、投てき用マーキング物品の使用目的ないし使用態様から考えると、アイゾット衝撃強度0.5?3kgf・cm/cm^(2)の材料が有する技術的意味はマーキング物品を人間が把持した際の把持力や、投てき装置による投てきの際の衝撃によって容器が割れてしまうことなく、また、マーキング物品が車輌等にぶつかった衝撃によって容易かつ確実に割れるようにするためと解することができる。
また、訂正後考案はアイゾット衝撃強度0.5?3kgf・cm/cm^(2)の材料がどのような材質かについて規定するものではないが、訂正明細書に「これらの図において、2は容器本体であり、該本体はたとえば塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、エチレンー塩化ビニル樹脂共重合体樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂からなる。」(3頁16行乃至19行)と記載されているように、その実施例として塩化ビニル樹脂が示されており、これは前示の引用例1の容器の材質である塩化ビニールと同じものであり、そして、前示の引用例2の示すところによればアイゾット強度が4.4kgf・cm/cm^(2)以上のプラスチックは床に落としても割れにくい耐衝撃性を有すること、すなわち、アイゾット強度が4.4kgf・cm/cm^(2)未満の場合は割れやすいことは明らかであり、このことは塩化ビニル樹脂についてもいえることである。
ところで、前示のとおりマーキング物品は人間が把持した際の把持力や、投てき装置による投てきの際の衝撃によって容器が割れてしまうことなく、また、車輌等にぶつかった衝撃によって容易かつ確実に割れなけれならないのであるから、当業者であればこれらのことを当然の前提としてマーキング物品を製作するものということができ、このことは引用例1の塩化ビニールを材質とする投てき物品においても変わることなく、そうすると、前示引用例2に接した当業者であれば引用例1の塩化ビニールを材質とする容器において塩化ビニールが本来的に有する耐衝撃性を考慮し、マーキング物品の使用目的乃至使用態様に適うようにそのアイゾット衝撃強度を実験的に選択することは容易に着想できるものといえ、そして、訂正後考案が採用したアイゾット強度0.5?3kgf・cm/cm^(2)は当業者の通常の創作能力の範囲というべきで、また、このアイゾット強度を採用したことによって当業者が予測できない格別顕著な作用効果を奏すると認めることもできない。
もっとも、引用例1は容器が逃亡物に当たったときに確実に割れるように表面又は内面にV溝を形成する例を示すものであるが、このことは、その塩化ビニールとしてアイゾット衝撃強度が0.5?3kgf・cm/cm^(2)の材料を選択しても適用可能であって、アイゾット衝撃強度が0.5?3kgf・cm/cm^(2)の材料の選択と矛盾するものとはいえない。
したがって、訂正後考案の前記相違点に係る構成は当業者が容易に想到できたものである。
そして、訂正後考案が奏する「以上の如き本考案によれば、移動している目的物体に塗料によるマークを付することができ、当該物体を比較的容易に見出すことができる。」(訂正明細書8頁20行乃至9頁2行)との作用効果は引用例1及び引用例2から当業者が予測できる範囲のものである。
(4)むすび
以上のとおり、訂正後の考案は、引用例1及び引用例2に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法(平成5年法律第26号)附則4条2項の旧実用新案法40条2項の読み替え規定中5号で準用する旧実用新案法39条3項において規定する独立要件に違反するものであるから、本件訂正は認めることのできないものである。
3.無効理由について
(1)本件考案
実用新案登録第1862032号に係る考案(以下、本件考案という。)の要旨は実用新案登録請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。
「衝撃により破損し得る密封容器中に塗料を充填してなることを特徴とする、投てき用マーキング物品。」
(2)引用例
当審の訂正拒絶理由通知で引用した実願昭56-105141(実開昭58-10185号)のマイクロフィルム(以下、引用例という。)の前示記載によれば引用例には「衝撃により破損し得る密封容器中に塗料を充填してなる投てき用マーキング物品。」との考案が記載されていると認めることができる。
(3)対比・判断
本件考案と引用例考案とを対比するに両者は同一の考案であることは明らかであり、このことは被請求人も認めるところである(第1回口頭審理調書)。
(4)むすび
以上のとおり、本件考案は引用例に記載された考案であるから、本件考案についての実用新案登録は、実用新案法3条1項3号の規定に違反してされたものである。
したがって、本件考案についての実用新案登録は実用新案法37条1項1号に該当し、無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-02-23 
結審通知日 2000-03-21 
審決日 2000-04-24 
出願番号 実願昭60-156815 
審決分類 U 1 112・ 113- ZB (G08G)
最終処分 成立    
前審関与審査官 糟谷 洋治  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 槙原 進
岩本 正義
登録日 1991-08-07 
登録番号 実用新案登録第1862032号(U1862032) 
考案の名称 投てき用マ-キング物品  
代理人 窪田 英一郎  
代理人 駒津 敏洋  
代理人 森 廣三郎  
代理人 小原 二郎  
代理人 吉田 聡  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ