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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03H
管理番号 1046987
審判番号 不服2000-14112  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-06 
確定日 2001-10-17 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 83931号「水晶振動子」拒絶査定に対する審判事件〔平成 6年 6月10日出願公開、実開平 6- 44234、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。   
結論 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録すべきものとする。
理由 本願は、平成4年11月11日の出願であって、その請求項1に係る考案(以下、本件第1考案という。)、請求項2に係る考案(以下、本件第2考案という。)及び請求項3に係る考案(以下、本件第3考案という。)は、平成10年7月30日付け、平成12年5月25日付け、平成12年9月6日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】振動部(1)の幅方向で厚みすべり振動する振動部(1)と支持部(3)とが、それらのあいだに隙間を設けるように、水晶基板(11)から一体に形成される水晶振動子であって、振動部(1)のほぼ中央部側面に、対向する2つの側面電極(7)をそれぞれ平面電極(5)と接続するように設け、振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間は、側面電極(7)形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間が、側面電極(7)非形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間より広くし、側面電極(7)は、振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間が広い部分の振動部(1)側面にのみ形成することを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】側面電極(7)形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間寸法は、水晶基板(11)の厚さの1.1倍から1.3倍とする請求項1記載の水晶振動子。
【請求項3】側面電極(7)非形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間寸法は、水晶基板(11)の厚さのほぼ半分とする請求項1または請求項2記載の水晶振動子。」
これに対し、原査定においては、特開昭52-53690号公報(以下、刊行物1という。)、特開昭54-129994号公報(以下、刊行物2という。)、特開昭55-68718号公報(以下、刊行物3という。)、特開昭58-172008号公報(以下、刊行物4という。)、特開昭59-119911号公報(以下、刊行物5という。)、特公昭60-51282号公報(以下、刊行物6という。)、実公平2-46105号公報(以下、刊行物7という。)、実願昭63-108638号(実開平2-30635号)のマイクロフィルム(以下、刊行物8という。)を引用し、拒絶査定の備考の記述によれば、本件第1考案と上記刊行物1記載の発明とは相違点を有するものの、その相違点については、刊行物7及び刊行物8に記載されているとして、本件第1考案は当業者が極めて容易に考案できたものであるとし、又、本件第2考案及び本件第3考案については、上記刊行物1から当業者が極めて容易に導くことができたものであるとしている。
そこで検討するに、上記刊行物1には、厚みすべり振動する振動部と外周部とが、それらのあいだに隙間を設けるように、水晶板から一体に形成された水晶振動子が記載されているものの、本件第1考案のような、「振動部(1)のほぼ中央部側面に、対向する2つの側面電極(7)をそれぞれ平面電極(5)と接続するように設け」られ、振動部が幅方向で厚み振動するというものではなく、さらには、本件第1考案の特徴である「側面電極(7)形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間が、側面電極(7)非形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間より広くし、側面電極(7)は、振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間が広い部分の振動部(1)側面にのみ形成」されるとする構成を備えるものではない。
また、上記刊行物8には、厚みすべり振動子が記載されているものの、本件第1考案の構成要件である支持部の記載がなく、したがって、厚みすべり振動子が、本件第1考案のように、幅方向で厚み振動するように設けられるのかどうか不明であり、また、本件第1考案の特徴である「側面電極(7)形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間が、側面電極(7)非形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間より広くし、側面電極(7)は、振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間が広い部分の振動部(1)側面にのみ形成」されるとする構成を備えていない。
さらに、上記刊行物7には、エッチングむらによる振動子の左右アンバランスを改善するために、(振動子を連結する)連結部と接続する箇所の脚部の幅を他の箇所の脚部の幅よりも広くする(結果として、振動子と脚部との距離が他の箇所より広くなる)ことが記載されているものの、本件第1考案の特徴である「側面電極(7)形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間が、側面電極(7)非形成領域の振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間より広くし、側面電極(7)は、振動部(1)と支持部(3)とのあいだの隙間が広い部分の振動部(1)側面にのみ形成」するとする構成は見あたらない。
そして、本件第1考案においては、上記特徴を備えることにより、振動部の側面部に蒸着により電極膜を形成するに際し、当該電極膜が薄く形成されることがないとする効果を生ずるものであって、その点に何ら言及しない上記刊行物7、8から、本件第1考案の上記特徴が極めて容易に導き出せるとは考えがたい。
つまるところ、本件第1考案が上記刊行物1、7、8記載の考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたとすることはできない。
さらに、上記刊行物2乃至6についてその記載内容をみても、本件第1考案の上記特徴についての記載は見あたらない。そして、本件第1考案の上記特徴が本件出願前周知であるとする証拠もない。
したがって、結局のところ、本件第1考案が上記刊行物1乃至8記載の考案から当業者が極めて容易に考案することができたとすることはできない。
本件第2考案及び本件第3考案は、本件第1考案を前提としたものであり、本件第1考案が上記刊行物1乃至8記載の考案から極めて容易に考案することができたとすることはできないのであるから、その余を検討するまでもなく、本件第2考案及び本件第3考案は、当業者が極めて容易に考案をすることができたとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
審決日 2001-09-06 
出願番号 実願平4-83931 
審決分類 U 1 8・ 121- WY (H03H)
最終処分 成立    
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 橋本 正弘
吉見 信明
考案の名称 水晶振動子  

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