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審決分類 審判 全部申し立て   F16B
管理番号 1047004
異議申立番号 異議1999-72896  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-26 
確定日 2001-08-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2589426号「接合構造」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2589426号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2589426号(以下、「本件実用新案登録」という。)の請求項1に係る考案についての出願は、平成4年3月9日に実用新案登録出願され、平成10年11月20日にその実用新案権の設定登録がなされ、平成11年7月26日に実用新案登録異議申立人・伊藤美智子(以下、「申立人」という。)より実用新案登録異議申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成12年6月30日に訂正請求がなされたものである。


II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
本件実用新案登録に係る願書に添付された明細書(以下、「登録明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載について、
「【請求項1】被嵌入部材1の被嵌入部位11に嵌入部材2の嵌入部位6が嵌入し、被嵌入部材1と嵌入部材2の突き合せ部は少なくとも表面において間隙7を介して分離している接合構造において、被嵌入部材1の木口面が表面側端部eを残して切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1、嵌入部材2の表面に塗膜pが施されている、ことを特徴とする接合構造。」とあるのを、
「【請求項1】被嵌入部材1の被嵌入部位11に嵌入部材2の嵌入部位6が嵌入し、被嵌入部材1と嵌入部材2の突き合わせ部は少なくとも表面において間隙7を介して分離している接合構造において、被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1の表面から少なくとも表面側端部eの木口面にかけて、および嵌入部材2の表面から嵌入部位6の空間8に臨む表面にかけて塗膜pが施されている、ことを特徴とする接合構造。」と訂正する。
なお、アンダーラインは、対比の便のため、当審で付したものである。
(2)訂正事項b
登録明細書の段落【0010】の記載を、
「被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、」と訂正する。
(3)訂正事項c
登録明細書の段落【0011】の記載を、
「空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1の表面から少なくとも表面側端部eの木口面にかけて、および嵌入部材2の表面から嵌入部位6の空間8に臨む表面にかけて塗膜pが施されている、ことを特徴とする。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aにおける、訂正前の「被嵌入部材1の木口面が表面側端部eを残して切り欠かれ、」との記載を、訂正後に「被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、」とすることは、木口面の位置、形状及び切り欠きの大きさを限定するものであって、このような技術的事項は、本件実用新案登録に係る願書に添付された図面(以下、「登録図面」という。)に記載されていた事項と変わるところがない。
同様に、訂正前の「被嵌入部材1、嵌入部材2の表面に塗膜pが施されている、」との記載を、訂正後に「被嵌入部材1の表面から少なくとも表面側端部eの木口面にかけて、および嵌入部材2の表面から嵌入部位6の空間8に臨む表面にかけて塗膜pが施されている、」とすることは、塗膜pが施されている箇所を限定するものであって、このような技術的事項は、登録図面及び登録明細書の段落【0020】の「少なくとも図3に示す斜線bの部分」に記載されていた事項と変わるところがない。
してみると、訂正事項aは、全体として実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、いわゆる新規事項の追加に該当せず、さらに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項b,cについて
訂正事項b,cは、訂正事項aと整合を図るために該訂正事項aと同様に訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項aと同様に、いわゆる新規事項の追加に該当せず、さらに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合する。

3.独立実用新案登録要件の判断
(1)訂正明細書に記載された発明
訂正明細書に記載された請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)は、その明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記1.(1)訂正事項a参照)。
(2)引用例
申立人が証拠として提示し、当審において通知した取消しの理由に引用した刊行物は次のとおりである。
イ.甲第1号証:実願昭53-14032号(実開昭54-120145号)のマイクロフィルム)(以下、「引用例1」という。)
ロ.甲第2号証:特開昭59-130991号公報(以下、「引用例2」という。)
ハ.甲第3号証:特開昭55-111543号公報(以下、「引用例3」という。)
(3)引用例に記載された考案
イ.引用例1
引用例1には、その明細書及び図面の記載からみて、次のような考案(以下、「引用考案1」という。)が記載されていると認めることができる。
「鏡板の伸縮作用に基因する扉本体の反り、ねじれ、割れなどを防ぐために、鏡板を枠体に遊嵌状態に嵌め込むと共に、鏡板と枠体とを結合するダボも接着固定することなく挿入して、枠体内において鏡板の動きを規制することなく自由に変化できる状態に鏡板を取付けた木製扉。」(特に、明細書第2頁第7?15行参照)
ロ.引用例2
引用例2には、その明細書及び図面の記載からみて、次のような考案(以下、「引用考案2」という。)が記載されていると認めることができる。
「鏡面に単板で積層接着した鏡板基材L,V,L(単板積層材)を化粧加工して鏡板材とし、同時に、框組みに嵌め込んで、さらに、塗装を施したL,V,L(単板積層材)ドアー。」(特に、明細書第3頁左上欄第3?6行参照)
ハ.引用例3
引用例3には、その明細書及び図面の記載からみて、次のような考案(以下、「引用考案3」という。)が記載されていると認めることができる。
「板材17,18の収縮・膨張による継ぎ目の目地部のひび割れの発生を防ぐため、板材17と板材18を合いじゃくり状に接合し、板材17と板材18のつき合わせ部20は表面において間隙を介して分離している接合構造において、合いじゃくりの上側凸部19の下側を斜めに切欠いてそぎ継ぎ状としその凸部19で板材17及び18のつき合せ部20を隠蔽するようにし、結果として、板材17の木口面が表面側端部を残して切り欠かれ、板材18のつき合せ部位と板材17の表面側端部とに囲まれた空間が形成され、空間は間隙を連通して内蔵空隙を形成したものであって、さらに、仕上げ塗装することにより、ひび割れの発生しない目地なし接合を実現できるという効果を有する。」(特に、明細書第2頁左下欄第4?12行、同頁右下欄第6?8行参照)
(4)訂正考案と引用考案との対比
イ.訂正考案と引用考案1との対比
訂正考案と引用考案1とを対比すると、両者は、「被嵌入部材の被嵌入部位に嵌入部材の嵌入部位が嵌入し、被嵌入部材と嵌入部材の突き合わせ部は少なくとも表面において間隙を介して分離している接合構造において、被嵌入部材の被嵌入部位の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部があって、嵌入部位と表面側端部とに囲まれた隙間が形成され、隙間は間隙と連通して内蔵空隙を形成している接合構造。」の点で一致するが、次の点で相違する。
a.訂正考案では、「被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、」となっているのに対し、引用考案1では、「鏡板を枠体に遊嵌状態に嵌め込むと共に、鏡板と枠体とを結合するダボも接着固定することなく挿入して、枠体内において鏡板の動きを規制することなく自由に変化できる状態に鏡板を取付けた」となっていて、少なくとも「被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ」るような構成を具備していない点。
b.訂正考案では、「嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1の表面から少なくとも表面側端部eの木口面にかけて、および嵌入部材2の表面から嵌入部位6の空間8に臨む表面にかけて塗膜pが施されている」となっているのに対し、引用考案1では、少なくとも「空間」に塗膜が施されていない点。以下、相違点bという。
これらの相違点について検討すると、引用考案1の「鏡板を枠体に遊嵌状態に嵌め込む」のは、「鏡板の伸縮作用に基因する扉本体の反り、ねじれ、割れなどを防ぐため」であるから、「鏡板」と「枠体」の間に「隙間」があっても、「鏡板の伸縮作用に基因する扉本体の反り、ねじれ、割れなどを防ぐため」に必要な程度の隙間であるから、このような引用考案1に引用考案2の「塗装」についての技術思想を適用しても直ちに、その隙間を埋めることなく鏡板の嵌入部の表面にまで塗膜が施される訳ではない。
相違点bに係る訂正考案の構成要件が容易に想到できるというには、少なくとも「隠蔽された箇所で塗膜切れが生じるようにする」との課題があることを要するが、引用考案1及び2にそのような課題がないばかりか、そのような課題が従来周知であるとするに足りる証拠も見当たらない。
してみると、訂正考案は、引用考案1及び2に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものとすることができない。
ロ.訂正考案と引用考案3との対比
訂正考案と引用考案3との対比すると、両者は、「第1部材と第2部材の突き合せ部は少なくとも表面において間隙を介して分離している接合構造において、第2部材の板厚の薄い部分と第1部材の加工部とに囲まれた空間が形成され、空間は間隙と連通して内蔵空隙を形成し、かつ内蔵空隙を埋めることなく、第1部材の表面から少なくとも第1部材の加工部の木口面にかけて、および第2部材の表面から第2部材の板厚の薄い部分の空間に臨む表面にかけて塗膜が施されている接合構造。」の点で一致するが、次の点で相違する。
c.訂正考案では、「被嵌入部材1の被嵌入部位11に嵌入部材2の嵌入部位6が嵌入し、被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、」となっているのに対し、引用考案3では、「板材17と板材18を合いじゃくり状に接合し、合いじゃくりの上側凸部19の下側を斜めに切欠いてそぎ継ぎ状としその凸部19で板材17及び18のつき合わせ部20を隠蔽するようにし、結果として、板材17の木口面が表面側端部を残して切り欠かれ、板材18のつき合わせ部位と板材17の表面側端部とに囲まれた空間が形成され、」となっている点。以下、相違点cという。
この相違点について以下検討する。
引用考案3は、「板材17,18の収縮・膨張による継ぎ目の目地部のひび割れの発生を防ぐこと」及び「板材17と板材18とを突き合わして接合すること」を前提とするものであるから、引用考案3に嵌合の技術思想を適用して、板材17と板材18を嵌合により接続すれば、継ぎ目の目地部が嵌合箇所の雌側である板材17の加工部で隠蔽されるので、もはや隠蔽のための切り欠きが必要でなくなる。
また、引用考案3は、「さらに仕上げ塗装をすることにより、ひび割れの発生しない目地なし接合を実現できるという効果を有する。」ものであるから、接合部に塗装をすれば、ひび割れが発生しないものと解することができ、訂正考案のように塗膜の割れを前提とするものではない。
そうだとすると、引用考案3において、相違点cに係る訂正考案の構成要件のように変えると共に、塗膜の割れを想定して、その「空間」部を塗装し、その割れを隠蔽するような表面側端部の形状にする動機となるものが存在しないといわざるを得ない。
してみると、訂正考案は、引用考案3に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものとすることができない。
(6)むすび
以上のとおりであるから、訂正考案は、引用考案1ないし3に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものとすることができなく、実用新案法第3条第2項の規定を根拠として、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案とすることができないから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合する。

4.訂正の適否についての判断のむすび
以上、上記2.及び3.で説示のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


III.実用新案登録異議申立てについての判断
1.申立ての理由の概要
本件実用新案登録の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、本件考案に係る出願の日前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案(「引用考案1」及び「引用考案2」」)、又は、刊行物3に記載された考案(「引用考案3」)に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであって、旧実用新案法第3条第2項(平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第113条第1項第2号)に該当するから、本件考案の実用新案登録を取り消すべきである。

2.判断
本件考案は、前記「II.訂正の適否についての判断」で説示したように、願書に添付した明細書が訂正明細書のとおりに訂正することが認められるものであるから、訂正考案と同じである。
そして、訂正考案は、前記「II.3.独立実用新案登録要件」で説示したように、引用考案1及び引用考案2に基づいて、又は、引用考案3に基づいて当業者がきわめて容易に考案したものとすることができないものである。
してみると、本件考案は、訂正考案と同じ理由により、引用考案1及び引用考案2に基づいて、又は、引用考案3に基づいて当業者がきわめて容易に考案したものとすることができないというほかない。

3.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に同実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
接合構造
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】被嵌入部材1の被嵌入部位11に嵌入部材2の嵌入部位6が嵌入し、被嵌入部材1と嵌入部材2の突き合わせ部は少なくとも表面において間隙7を介して分離している接合構造において、被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1の表面から少なくとも表面側端部eの木口面にかけて、および嵌入部材2の表面から嵌入部位6の空間8に臨む表面にかけて塗膜pが施されている、ことを特徴とする接合構造。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】組み立て後塗装が行われ製造される、扉、造作材、函もの、枠体、天板や、建築用パネル、そのほか様々な家具、建具、建材といったものにおいて、それが複数枚の構成部材よりなり、この構成部材の少なくとも一か所は、部材同志が実嵌合、あいじゃくり、ほぞ嵌合、その他種々の嵌合様式によって組み合わされている場合の該組み合わせ部分における接合構造に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】従来より複数枚の部材を何らかの手段で嵌合し組み立て、その後、表面に塗装を施してこれを完成させるといった家具や、建具、建材等はよく知られているところである。
【0003】しかしながら、こうした従来の家具や建具、建材等を構成する部材同志が嵌合される接合部分はその両端部が突き合わされてなるため、両部材間にわたり面一なレベルをもった表面形状は得ることができるが、該接合部分上に塗装が施されたときその塗膜は両部材間にわたり連続して形成されてしまうことになる。
【0004】このため、経時的な両部材の収縮により該塗膜には亀裂が生じてしまい、外観上見苦しく、著しく商品価値を低下させてしまうといった事態を招いていた。
【0005】こうした問題点を解決するために、特開昭59-72384号においては、「、框、帯、束などの枠構成部材を相互に突き合わせて枠組みし、この枠の内側にパネルを嵌合してなる木製ドアを製造するにあたり前記枠構成部材の突き合せ鏡面板の全てに細溝を形成し該細溝を含むドア本体全面を塗装する」という提案がなされている。
【0006】しかしながら、この提案は、単に表面上に、接合される両部材間にわたる連続した塗膜の形成が表れないようにし、部材の収縮に伴う塗膜の割れの発生を両部材間に形成した細溝の奥部において起こし、外観としては露見しずらいように構成しているにすぎず、間近に接したとき、また光の加減や、表面塗装と部材の自色との色差が大きいときなどには、該細溝のなかに塗膜切れを容易に認めることができるものであり、前記問題点に対する完全な解決策となっていなかった。
【0007】また、こうした細溝を設ける構成においては、塗装後に該細溝において塗料の溜りが生じ、細溝部自体が外観を低下させることにもなっていた。
【0008】
【考案が解決しようとする課題】家具、建物、建材の構成部材の突き合せ部において塗膜の割れが発生した場合、この割れを目立たなくすること。
【0009】
【技術的手段】被嵌入部材1の被嵌入部位11に嵌入部材2の嵌入部位6が嵌入し、被嵌入部材1と嵌入部材2の突き合せ部は少なくとも表面において間隙7を介して分離している接合構造において、
【0010】被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、
【0011】空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1の表面から少なくとも表面側端部eの木口面にかけて、および嵌入部材2の表面から嵌入部位6の空間8に臨む表面にかけて塗膜pが施されている、ことを特徴とする。
【0012】
【作用】塗膜pが内蔵空隙9を埋めることなく施されているので、塗膜pに割れが発生しても、その割れば内蔵空隙9内に隠されるので目立たない。したがって、接合構造の意匠性を乱すことがない。
【0013】
【実施例】以下に実施例に基き図面に従って説明する。図1は左右縦框1,1a、上下横框2,2a、帯3、上下束4,4aによってなる枠組および、該枠組体の内側に鏡板5がはめられてなる木製のドアを示しているものであり、各部材の接合部は本考案にかかる接合構造によっている。
【0014】図2は図1におけるドアの縦框1と横框2の接合構造を示すa-a矢視部相互部分を斜視図で示す。縦框1は雌実を有してなり、横框2の有している雄実6がそこにはめこまれるかたちで嵌合されている。つまりここでは被嵌入部材は縦框1であり、嵌入部材は横框2、さらに嵌入部位は横框2の有している雄実6、被嵌入部位は雌実11ということになる。
【0015】図2より分かるように、縦框1、横框2の突き合せ部は表面において分離している。これは、予め縦框と横框の少なくともどちらか一方を、組み立て時双方が突き合わないようにカットしておいても、また組み立て後にルーター等で形成してもよいが、結果として双方のあいだには分離部分としての間隙7が確保される。
【0016】このように被嵌入部材である縦框1、嵌入部材である横框2間の接合部は表面において分離されているので、組み立て後に塗装が施されたときにも表面において両者の間に連続した塗膜4が形成されることがなく、部材の収縮運動によっても塗膜pの割れが表面において発生することはない。
【0017】さらに、縦框1には上記間隙7に連続する空間8が突き合せ部方向にわたり縦框1の有する雄実6表面に接するように設けられる。
【0018】この空間8は、部材の組み立て前に予め形成しておくことが望ましいが、前記間隙7とともに組み立て後に削設してもかまわない。
【0019】こうして、縦框1と横框2との間には表面から連通する内蔵空隙9が形成される。組み立てられたドアの表面には、該内蔵空隙9を埋めることなく内蔵空隙9を含む表面全体に塗料が塗布される。
【0020】塗布される塗料は内蔵空隙9内において内側すべてに塗布されていてもよいが、少なくとも図3に示す斜線bの部分について塗布されていればよい。
【0021】内蔵空隙9内にこのように塗料が塗布されていることにより部材の収縮運動による塗膜の割れば10の部分において現れることとなる。したがって、図4に示されるように部材の収縮運動によって塗膜が割れたとしてもその様子は被嵌入側部材である縦框1の表面側端部eによって覆い隠され、外部より露見されることはない。
【0022】また、空間8の存在は塗布される塗料の逃場としても機能するので、組み立て後の塗装において不可避的に生じていた従来にみられるような溝部における塗料溜まりも起こらない。
【0023】このため、看取される分離部分としての間隙7はスマートな外観を呈すことができ、表面意匠を引き立てる上で重要なポイントとなる。
【0024】以上、縦框1と横框2のあいだにおける接合構造を例にとって説明したが、この接合構造が縦框1,1aと横框2a、帯3のあいだにおいて、また束4,4aと帯3、横框2,2aとのあいだ、さらには、これらによって構成される枠組材と鏡板とのあいだにおいてなされることはいうまでもない。
【0025】また、図5a,bに示すように枠材12に対して表面部分における突き付け部を有さない形状の鏡板5が嵌込まれるような場合においても、塗料が塗布されたときにおいては全く同様な作用効果が得られる。
【0026】図5a,bにおいて、内蔵空間9は空間8と間隙7とから形成される。10は塗膜pの割れの起こる部分を示している。
【0027】以上、実施例を木製のドアについて説明したが本考案に係る接合構造は、被嵌入部材1と嵌入側部材2により嵌合組み立てられる接合部分を有し組み立て後塗装を施して仕上げられるものであれば、嵌合様式、接合位置、家具、建具、建材を問わず広範にわたり用いられるものである。
【0028】たとえば図6aに示すように相じゃくり接合構造の場合、図6bのように2つの雌雄実の接合構造の場合、図6cのように、側板14と天板13の接合部にも用いられる。1,2はそれぞれ被嵌入部材、嵌入部材を示す。
【0029】
【考案の効果】a.部材間の接合部は表面において分離されているので、組み立て後に塗装が施されたときにも表面において両者の間に連続した塗膜pが形成されることがなく、部材の収縮運動によっても塗膜pの割れが表面において発生することはない。
【0030】b.被嵌入側部材1に形成された空間8内にこのように塗料が塗布されていることにより部材の収縮運動による塗膜pの割れば被嵌入側部材1の表面側端部eに覆い隠された部分において現れることとなるので、部材の収縮運動によって塗膜pが割れたとしてもその様子は、外部より露見されることはない。
【0031】c.被嵌入側部材1に形成された空間8の存在は塗布される塗料の逃場としても機能するので、組み立て後の塗装において不可避的に生じていた従来にみられたような溝部における塗料溜まりも起こらないので表面意匠を低下させることがないばかりか、看取される分離部分としての間隙7にスマートな意匠性を与え、優れた表面意匠を作り出す重要な要素となる。
【0032】したがって、組み立て後に塗装がなされるものであっても、部材間の接合部における塗膜割れなどは全く外観されない美しい仕上がりを維持することができる接合部分を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案を用いるドアの正面図、
【図2】図1のa-a矢視部の相当部分を斜視図で示す。
【図3】図2の要部拡大図、
【図4】図2において塗膜pの割れの発生する部分10を示す。
【図5】a鏡板5を枠材12に嵌入した場合の断面図、
【図5】b図5aにおいて塗膜pに割れの発生した場合を示す。
【図6】a本考案を相決り接合構造に用いた場合の断面図、
【図6】b同じく2つの雌雄実を用いた場合を示す。
【図6】c側板と天板の接合部を示す。
【符号の説明】1,1a:左右縦框(被嵌入部材)、2,2a:左右縦框(嵌入部材)、3:帯、4,4a:上下束、5:鏡板、6:雄実(嵌入部位)、7:間隙、8:空間、9:空隙、10:部分、11:雌実(被嵌入部位)、12:枠材、13:天板、14:側板、e:表面側端部、p:塗膜。
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項a
本件実用新案登録に係る願書に添付された明細書(以下、「登録明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載について、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】被嵌入部材1の被嵌入部位11に嵌入部材2の嵌入部位6が嵌入し、被嵌入部材1と嵌入部材2の突き合せ部は少なくとも表面において間隙7を介して分離している接合構造において、被嵌入部材1の木口面が表面側端部eを残して切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1、嵌入部材2の表面に塗膜pが施されている、ことを特徴とする接合構造。」とあるのを、
「【請求項1】被嵌入部材1の被嵌入部位11に嵌入部材2の嵌入部位6が嵌入し、被嵌入部材1と嵌入部材2の突き合わせ部は少なくとも表面において間隙7を介して分離している接合構造において、被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1の表面から少なくとも表面側端部eの木口面にかけて、および嵌入部材2の表面から嵌入部位6の空間8に臨む表面にかけて塗膜pが施されている、ことを特徴とする接合構造。」と訂正する。
なお、アンダーラインは、対比の便のため、当審で付したものである。
(2)訂正事項b
登録明細書の段落【0010】の記載を、明りょうな記載の釈明を目的として、
「被嵌入部材1の被嵌入部位11の周囲の木口面が断面方形状の表面側端部eを残して被嵌入部位11よりも浅く切り欠かれ、嵌入部位6と表面側端部eとに囲まれた空間8が形成され、」と訂正する。
(3)訂正事項c
登録明細書の段落【0011】の記載を、明りょうな記載の釈明を目的として、
「空間8は間隙7と連通して内蔵空隙9を形成し、かつ内蔵空隙9を埋めることなく、被嵌入部材1の表面から少なくとも表面側端部eの木口面にかけて、および嵌入部材2の表面から嵌入部位6の空間8に臨む表面にかけて塗膜pが施されている、ことを特徴とする。」と訂正する。
異議決定日 2001-07-17 
出願番号 実願平4-25133 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (F16B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 亀丸 広司  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 氏原 康宏
栗田 雅弘
登録日 1998-11-20 
登録番号 実用新案登録第2589426号(U2589426) 
権利者 株式会社ノダ
東京都台東区浅草橋5丁目13番6号
考案の名称 接合構造  
代理人 ▲桑▼原 史生  
代理人 ▲桑▼原 史生  
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