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審決分類 審判 全部申し立て   A47J
管理番号 1047006
異議申立番号 異議1999-74064  
総通号数 23 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-26 
確定日 2001-08-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2594552号「簡易調理器」の請求項1ないし3に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2594552号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2594552号の請求項1乃至3に係る考案についての出願は、平成4年10月14日に実用新案登録出願され、平成11年2月26日にその考案について実用新案の設定登録がなされたもので、その後、日清食品株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年4月25日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
実用新案登録権者が求めている訂正の内容は次のとおりである。
訂正事項a:
実用新案登録請求の範囲の【請求項1】を、
「上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納し、この外容器は底部に耐火・断熱材を設け、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されて上記鍋体を加熱調理するようにし、この調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に取り出し自在に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するようにしたことを特徴とする簡易調理器。」
と訂正する。
訂正事項b:
願書に添付した明細書(以下、「登録明細書」という。)の段落【0007】を、
「【課題を解決するための手段】 本考案は、上記目的を達成するため、上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納し、この外容器は底部に耐火・断熱材を設け、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されて上記鍋体を加熱調理するようにし、この調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に取り出し自在に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するという手段を用いた。」
と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aによれば、「上記調理容器は蓋体を備えた鍋体から構成されており、」の記載を、「上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、」と訂正する訂正事項を含むものである。そして、この訂正事項は、調理容器の性質を限定するものであって実用新案登録請求の範囲の減縮に該当する。
また、登録明細書の段落【0010】には「また3は、上記容器本体1に取り出し自在に収納される調理容器であって、蓋体4を備えた鍋体であり、通常アルミ板を深絞りしてなり、その上部開口を上記蓋体4で開閉自在にするとともに、下端周縁には下述する発熱装置を装着可能とした連結部5を延成したものである。」と記載され、ここに記載の「アルミ板」が、熱伝導率の高い材料であることは従来周知の事項であるから、上記訂正事項は、特許明細書に記載された事項の範囲内のもであって新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。
訂正事項bは、実用新案登録請求の範囲を訂正することに伴う訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、または変更するものでもない。

(3)独立登録要件
(ア)訂正明細書の請求項1乃至3に係る考案
平成12年4月25日付けで提出された訂正明細書の請求項1乃至3に係る考案は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納し、この外容器は底部に耐火・断熱材を設け、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されて上記鍋体を加熱調理するようにし、この調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に取り出し自在に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するようにしたことを特徴とする簡易調理器。
【請求項2】 発熱装置が鍋体下面に着脱自在である請求項1記載の簡易調理器。
【請求項3】 鍋体上に補助皿を載置可能とした請求項1または2記載の簡易調理器。」

(イ)引用刊行物記載の考案
訂正明細書の請求項1乃至3に係る考案に対し、当審が取消理由通知において引用した実願平2-34188号(実開平3-123430号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、
a)「本考案は、蓋体を有する断熱容器とその内部に収納される内部容器とを具備してなる電気加熱式断熱調理器具に関する。」(明細書第2頁2行?4行)こと、
b)「また、第5図に、本出願人が実願平1-42088号として既に出願した断熱調理器具の上部開口部分の拡大図を示し、第6図と第7図に前記出願の断熱調理器具の全体構造を示す。
この断熱調理器具10は、断熱容器11の内部に金属製の内鍋13を出入自在に挿入するとともに、断熱材14を設けた2重構造の蓋体15を断熱容器11の開口部に着脱自在に装着してなる構造になっている。なお、前記断熱容器11は外容器11aと内容器11bを真空層16を介して接合一体化してなるものである。更に、内鍋13の両側には、内鍋13の側壁の一部を延長させて把手部17,17が形成され、この把手部17,17が断熱容器11の外部まで延出され、この把手部17,17を支持することで内鍋13を断熱容器11から出し入れできるようになっている。」(同第4頁5行?20行)こと、
c)「ここで、第5図ないし第7図に示す構造の断熱調理容器10に加熱手段を付加した構造の電気加熱式断熱調理器具を第8図に示す。
第8図に示す構造の調理器具においては、断熱容器11の内底部に電気ヒータ12を設けてなる構成」(同第6頁1行?6行)であること、が記載され、図面第5図ないし第7図には断熱調理器具の構成が、第8図には該断熱調理器具に加熱手段を付加した電気加熱式断熱調理器具の構成が、それぞれ記載されている。
同じく引用した実願平1-74838号(実開平3-13930号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、
a)「本考案は、被加熱物を収納する容器内底部に、着火剤と主剤からなる自己燃焼性発熱剤、点火機構、及び断熱材が収納された円筒形状金属容器を設置した加熱機能付き容器に於て、該円筒状金属容器の径が発熱剤収納部分と断熱材収納部分で異なり、断熱材を収納する部分においては被加熱物収納容器に近接した径であり、発熱剤収納部分においては該径よりも小さいことを特徴とする加熱機能付き容器である。」(明細書第3頁4行?12行)こと、
b)「ここで自己燃焼性発熱剤の主材としては、酸化剤と可燃剤からなる混合物であり、酸化剤としては、酸化第二鉄、酸化第二銅、四三酸化鉛等の金属酸化物、また、可燃剤としては前記酸化物を形成している金属よりも酸化熱が大きいチタン、鉄等の金属、またはケイ素等の半金属が用いられ、該酸化剤の内の一種以上と、該可燃剤のうちの単体あるいはこれらの合金の一種以上とを混合したものからなる。この自己燃焼性発熱剤は可燃剤が酸化剤から酸素を奪って酸化する際に大きな酸化熱を発生する。」(同第3頁16行?第4頁6行)こと、
c)「第1図は加熱機能付き容器の一例として即席麺の容器に適用したものである。被加熱物収納容器である外容器1の底部には錫メッキ鋼板製の発熱剤収納容器2が設けられており、該容器2内上部にはケイ素-鉄合金と酸化第二鉄とを主成分とする主材、ホウ素と酸化第二鉄の着火剤からなる自己燃焼性発熱剤3、発火石の火花によって発熱剤3を着火させる点火機構4、および断熱材5が、押し蓋7、底蓋8によって設置されている。」(同第6頁7行?15行)こと、
d)「なお、断熱材としては、断熱効果に優れ、また臭い、ガス吸着性能も有するゼオライトを用いた。」(同第6頁18行?19行)こと、が記載され、図面第1図には加熱機能付き容器の縦断面図が記載されている。
同じく引用した実願平1-45920号(実開平2-138626号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、
a)「1 断面凹形の食器本体、該本体内に底面より浮かせて本体開口部に載置する構造となした断面凹形の中容器および前記中容器の蓋とからなり、前記本体底部空間に熱源を出し入れ自在に収納する構造となしたことを特徴とする加熱機能付き陶器製食器。
3 本体内部の底面および側面に発泡スチロール等の断熱材を備えたことを特徴とする請求項1、2記載の加熱機能付き陶器製食器。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1及び3)であって、
b)「第1図はこの考案に係る加熱機能付き陶器製食器の一例を示す一部破断正面図、第2図は同上食器の分解斜視図であり、(1)は断面凹形の本体、(2)は中容器、(3)は中容器の蓋、(4)は発熱剤、(5)は発泡スチロール等の断熱材である。……(略)……
中容器(2)は、上記本体(1)の開口部とほぼ同じ形状を有するとともに本体開口部に載置できるように当該開口部を本体開口部より若干大きい径として係合部(2-1)を有している。
中容器(2)の蓋(3)は、中容器開口部の外側に当該蓋が凹凸嵌合される大きさを有している。」(明細書第6頁10行?第7頁4行)こと、
c)「(3)食器を構成する部材はすべて陶器製であるため、保温効果がよいだけでなく、人体に対する悪影響も全くなく、また通常の陶器製食器と同様に繰返し使用することができる。
(4)本体と熱源との間に介在させる断熱材により、熱損失を軽減できるとともに、該断熱材の輻射熱により食器内温度が高められるので発熱剤の使用量を少なくでき経済的である。
(7)発熱剤等の熱源を出入れ自在に収納する構造となっているので、取扱いに便利である。」(同第8頁?第10頁の「考案の効果」の項)こと、が記載され、図面第1図には加熱機能付き陶器製食器の一部破断正面図が、第2図には同食器の分解斜視図が、それぞれ記載されている。
同じく引用した特開平1-226576号公報(以下、「刊行物4」という。)には、
「筒状本体の下部に発熱源を有する食品収納容器において、発熱源の上方に食品を収容する容器10を、さらにその上方に皿状の容器11を配すること」が記載されている。

(ウ)対比、判断
(a)訂正明細書の請求項1に係る考案について
訂正明細書の請求項1に係る考案と刊行物1記載のものとを対比すると、刊行物1記載の「蓋体15」、「断熱容器11」、「内鍋13」は、その機能に照らし訂正明細書の請求項1に係る考案の「上蓋」、「断熱性の外容器」、「調理容器」にそれぞれ相当する。また刊行物1の第5図、第7図、第8図等の記載からみて「内鍋13」には蓋体を備えているものと認められ、刊行物1記載の「内鍋13」は、金属製であって、熱伝導率が高い材料で形成されているものと認められる。しかも刊行物1記載の「電気ヒータ12」は、発熱装置そのものである。したがって、上記両者は、
「上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置を収納し、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は上記鍋体を加熱調理するようにした調理器」の点で一致し、下記相違点(1)及び(2)で相違している。
相違点(1)
訂正明細書の請求項1に係る考案では、外容器は底部に耐火、断熱材を設け、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成され、調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火、断熱材上に取り出し自在に載置されるのに対し、刊行物1記載のものでは、外容器の底部に耐火、断熱材を有さず、発熱装置が電気ヒータであって、該電気ヒータが取り出し自在に載置されたものとは認められない点。
相違点(2)
訂正明細書の請求項1に係る考案は、簡易調理器であるのに対し、刊行物1記載のものは、通常の加熱調理器であって、調理容器に予め調整された食材を入れておくことで、特に野外などにおける調理が簡単に行える簡易調理器とは認められない点。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点(1)について
刊行物2記載の「ゼオライトを用いた断熱材5」は耐火性を有するものと認められ、訂正明細書の請求項1に係る考案の「耐火・断熱材」に相当する。また刊行物2記載の「自己燃焼性発熱剤3」は、訂正明細書の請求項1に係る考案の「自己燃焼型の発熱体」に、刊行物2記載の「外容器1」は、その中に収納した被調理物を加熱調理するものであって、訂正明細書の請求項1に係る考案の「調理容器」に相当する。しかも刊行物2記載の調理器は「簡易調理器」と認められる。したがって、刊行物2には、「底部に耐火・断熱材を設け、発熱装置は、自己燃焼型の発熱体により構成して調理容器内の被調理物を加熱調理するようにし、この調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成した簡易調理器」が記載され、また刊行物3には、「本体1内部の底部および側面に配した断熱材5上の空間(加熱空間)に熱源を収納し、この熱源により中容器2を加熱、保温する加熱機能付き陶器製食器において、該食器を構成する各部材を分離組立自在とし、繰返し使用すること」が記載されている。
しかしながら、訂正明細書の請求項1に係る考案は、燃焼時に酸素の供給を必要としない自己燃焼型の発熱体の特性を活かして、これを密閉された断熱性の外容器内で燃焼させるようにしたもので、外容器内にその燃焼熱を収容(チャージ)して効率良く加熱調理を行うものであるのに対し、刊行物1記載のものでは、発熱装置が電気ヒータであるとともに、「初めは、蓋体24を取り外した状態で電気ヒータ19に通電して加熱を行い、その後電気ヒータ19への通電を止めて(蓋体24を施蓋して)保温を開始する」(明細書第12頁18行?第14頁3行)ことが記載されており、刊行物1記載の調理器は、上記した訂正明細書の請求項1に係る考案のように加熱調理を行うものとは認められない。そして、刊行物2には、上記した簡易調理器が記載されているが、刊行物2記載の簡易調理器は、上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器を備えておらず、また調理容器及び発熱体(自己燃焼型の発熱体)のそれぞれが耐火・断熱材上に取り出し自在に載置されるものでもない。また刊行物3記載のものは、熱源として水との反応により発熱する生石灰等の発熱剤を用いており、発熱装置が、訂正明細書の請求項1に係る考案のように自己燃焼型の発熱体により構成されたものではなく、しかも任意の時間加熱、保温するものであって、加熱調理とまではいい得ないものであるとともに、刊行物3記載のものにおいても、上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器を備えておらず、また当然に調理容器及び発熱体(自己燃焼型の発熱体)のそれぞれが耐火・断熱材上に取り出し自在に載置されるものでもない。
してみると、刊行物2及び3の記載を参酌しても、相違点(1)における訂正明細書の請求項1に係る考案の構成を採用することが、当業者がきわめて容易になし得たものであるとすることができない。
そして、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記構成を具備したことにより、明細書記載の格別の作用、効果を奏するものと認められる。
したがって、刊行物2に簡易調理器が記載され、相違点(2)における訂正明細書の請求項1に係る考案の構成とすることが、当業者がきわめて容易になし得るとしても、訂正明細書の請求項1に係る考案が、刊行物1乃至3記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。

(b)訂正明細書の請求項2に係る考案について
訂正明細書の請求項2は、請求項1を引用した請求項であって、訂正明細書の請求項2に係る考案は、訂正明細書の請求項1の構成を具備するから、訂正明細書の請求項2に係る考案と刊行物1記載のものとを対比すると、上記相違点(1)及び(2)で相違するとともに、下記相違点(3)でも相違している。
相違点(3)
訂正明細書の請求項2に係る考案では、発熱装置が鍋体下面に着脱自在であるのに対し、刊行物1記載のものではそのような構成となっていない点。
そこで、上記相違点について検討するに、分離組立自在とする手段として着脱自在に設けることが従来周知であり、この周知技術を採用することが当業者がきわめて容易になし得ることであるとしても、訂正明細書の請求項2に係る考案は、訂正明細書の請求項1に係る考案の構成を具備するものであり、上記「(a)訂正明細書の請求項1に係る考案について」で詳記したのと同じ理由で、訂正明細書の請求項2に係る考案が、刊行物1乃至3記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。

(c)訂正明細書の請求項3に係る考案について
訂正明細書の請求項3は、請求項1を引用した請求項であって、訂正明細書の請求項3に係る考案は、訂正明細書の請求項1の構成を具備するから、訂正明細書の請求項3に係る考案と刊行物1記載のものとを対比すると、上記相違点(1)及び(2)で相違するとともに、下記相違点(4)でも相違している。
相違点(4)
本件請求項3に係る考案では、鍋体上に補助皿を載置可能としたのに対し、刊行物1記載のものでは、そのような構成を有しない点。
そこで、上記相違点について検討するに、刊行物4には、「下部に発熱源を有する食品収納容器において、発熱源の上方に食品を収容する容器10を、その上方に皿状の容器11を配すること」が記載されている。そして本件請求項3に係る考案において、補助皿の具体的構成とか補助皿の用途、意義等についての限定はないものであり、刊行物4記載の事項を参酌して、刊行物1記載のものにおいて、鍋体上に補助皿を載置可能とすること、すなわち、相違点(4)における訂正明細書の請求項3に係る考案の構成とすること、は当業者がきわめて容易になし得ることであるとしても、訂正明細書の請求項3に係る考案は、相違点(1)における訂正明細書の請求項1に係る考案の構成を具備するものであり、上記「(a)訂正明細書の請求項1に係る考案について」で詳記したのと同じ理由で、本件請求項3に係る考案が、刊行物1乃至4記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.実用新案登録異議申立てについて
(ア)本件考案
本件実用新案登録第2594552号の請求項1乃至3に係る考案(以下、「本件考案1」乃至「本件考案3」という。)は、平成12年4月25日付けの訂正明細書の請求項1乃至3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納し、この外容器は底部に耐火・断熱材を設け、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されて上記鍋体を加熱調理するようにし、この調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に取り出し自在に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するようにしたことを特徴とする簡易調理器。
【請求項2】 発熱装置が鍋体下面に着脱自在である請求項1記載の簡易調理器。
【請求項3】 鍋体上に補助皿を載置可能とした請求項1または2記載の簡易調理器。」

(イ)申立て理由の概要
実用新案登録異議申立人 日清食品株式会社は、本件考案1乃至3は、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、旧実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、特許法第113条の規定により取り消されるべきものである、と主張し、証拠方法として下記甲第1号証乃至甲第6号証を提出している。
甲第1号証:実願平1-45920号(実開平2-138626号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭61-133475号(実開昭63-39339号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭48-86070号(実開昭50-32262号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願平1-74838号(実開平3-13930号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭63-108529号(実開平2-29622号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開平1-226576号公報

(ウ)甲各号証記載の考案
甲第1号証は、刊行物3に、甲第4号証は、刊行物2に、甲第6号証は、刊行物4に、それぞれ対応し、上記「2.(3)(イ)引用刊行物記載の考案」の項に記載した考案が記載されている。
また、甲第2号証には、
「ケースと、このケース内の上下に収納したあたためて飲む酒、コーヒー、お茶やあたためて食べる食品等の充填容器及び前記容器を加熱する加熱装置とから成り、前記加熱装置は、水との化学反応によって発熱する発熱部材を収納した外器体と、この外器体内に組み込むと共に、底の開口を封緘部材で封緘した水の収納内器体と、封緘部材から連なって外器体に導くと共に、ケース外に把持端を突出させた前記開口の開放用操作部材とで構成した容器の加熱装置。」(実用新案登録請求の範囲)であって、ケース11は、耐熱性の例えば合成樹脂や内面にアルミ箔を有する厚紙製のものを用い、加熱装置13は、水との化学反応によって発熱する例えば生石灰の発熱部材16で構成すること、が記載されている。
甲第3号証には、
「金属その他の耐熱材よりなる食品収納用内器と、これに外側より間隙を介して包被する耐熱材よりなる外器を装着して二重容器を構成し、外器側面に適宜数の切欠孔を開口しうるよう所望する切欠孔の形状に切欠用溝を付して切欠部を構成するとともに内器と外器により構成される間隙の底部に燃料を介在せしめたことを特徴とする携帯食品容器。」(実用新案登録請求の範囲)であって、「本考案は飲食に際して飲食品を所望の場所で煮沸し直ちに飲食しうる携帯食品容器に係る。」(明細書第1頁15行?17行)こと、「上記間隙(3)の底部に容易に開口しうるよう包装された固型アルコールその他の燃料(8)を介在せしめ」(同第3頁5行?7行)ること、「本考案は以上の構成を有することから、食品を飲食するときは切欠部(7)を切欠して切欠孔(5)を開口し、必要に応じて適宜内器(1)内に水を注入し燃料(8)にマッチ等で点火することによって食品を煮沸すればよい。その際燃焼に必要な空気の流入と排煙は切欠孔(5)よりなされる」(同第3頁14行?20行)こと、が図面とともに記載されている。
甲第5号証には、
「発熱剤と、該発熱剤に接して設けられる該発熱剤よりも着火の容易な着火剤と、該着火剤に近接した位置に設けられ発火石の火花により前記着火剤に点火する点火具、とから構成される発熱体を、該点火具が容器外部から操作可能となるように容器内底部に配置してなり、且つ該点火具が、……歯車部と、……発火部とから構成されることを特徴とする加熱装置付容器。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)であって、「第1?2図に於いて、(3)は底部内側に収納室(4)を設置した上方開口部を有する容器」(明細書第5頁11行?12行)であること、「収納室(4)には発熱剤(1)、着火剤(2)および点火具(5)より構成される発熱体が収納されており、着火剤(2)は発熱剤(1)に固設され、また点火具(5)は着火剤(2)に点火し得るよう該着火剤に近接して設けられている。ここで発熱剤とは、酸化剤と可燃剤からなる混合物であり、酸化剤としては、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛などの金属酸化物、また、可燃剤としては、前記酸化剤を形成している金属よりも酸化熱が大きいチタン、鉄などの金属またはケイ素などの半金属が用いられ、該酸化剤のうち一種以上と、該加熱剤のうち単体あるいはこれらの合金の一種以上とを、混合したものからなる。該発熱剤は該加熱剤が該酸化物から酸素を奪って酸化する際に大きな酸化熱を発生する。」(同第5頁17行?第6頁11行)こと、が図面とともに記載されている。

(エ)対比、判断
(a)本件考案1について
本件考案1と甲第1号証記載のものとを対比すると、下記の点で相違している。
相違点(1)
本件考案1では、上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納するのに対し、甲第1号証記載のものでは、上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納したものとは認められず、本件考案1の上記構成を具備しない点。
相違点(2)
本件考案1では、発熱装置は自己燃焼型の発熱体で構成されているのに対し、甲第1号証記載のものでは、発熱装置に相当する熱源は、水との反応により発熱する生石灰等の発熱剤で構成されている点。
相違点(3)
本件考案1では、外容器は底部に耐火・断熱材を設け、調理容器及び発熱体のそれぞれは、耐火・断熱材上に取り出し自在に載置されているのに対し、甲第1号証記載のものでは、本体(食器本体)の底部に発泡スチロール等の断熱剤を設け、中容器及び発熱剤のそれぞれは、断熱剤上に取り出し自在に載置されている点。

そこで、上記相違点について検討すると、本件考案1は、燃焼時に酸素の供給を必要としない自己燃焼型の発熱体の特性を活かして、これを密閉された断熱性の外容器内で燃焼させるようにしたもので、外容器内にその燃焼熱を収容(チャージ)して効率良く加熱調理を行うものである。これに対し、甲第1号証記載のものは、中容器内に料理したものを収容し、中容器の下に収納された水との反応により発熱する生石灰等の発熱剤より発生した熱で内容物が加熱、保温されるものであって、本件考案1における加熱調理する調理器とは加熱の内容が相違するとともに、甲第1号証には、上記対比したとおり、本件考案1の構成の殆どについて記載されていないものである。
この相違点をさらに検討するに、甲第2号証には、「外容器に相当するケース内に、あたためて飲む酒、コーヒー、お茶やあたためて食べる食品等の充填容器及び該容器を加熱する加熱装置を上下に収納した容器の加熱装置」が記載されているが、この加熱装置は、甲第1号証記載のものと同様、水との化学反応によって発熱する発熱部材であって、甲第2号証記載のものは、あくまでもあたためて飲んだり、あたためて食ったりする食品の加熱装置であって、本件考案1における加熱調理とは相違するものである。また甲第3号証には、簡易調理器が記載されているが、燃料は固形アルコールその他の燃料であって、自己燃焼型の発熱体ではなく、外容器に相当する外器(2)に切欠孔(5)を開口し、該切欠孔(5)により必要な空気の流入と排煙を図るものであって、本件考案1とは簡易調理器の点で一致する以外本件考案1の構成について殆ど記載されていない。さらに甲第4号証及び甲第5号証には、簡易調理器に関するものであり、かつ発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されたものではあるが、上記本件考案1の課題を有さず、また上記相違点(1)及び(3)における本件考案1の構成を具備しないものである。また甲第6号証には、「下部に発熱源を有する食品収納容器において、発熱源の上方に食品を収容する容器10を、さらにその上方に皿状の容器11を配すること」が記載されているが、甲第6号証記載のものは、調理された食品の加熱ないし保温であって、簡易調理器ではなく、しかも上記相違点(1)乃至(3)おける本件考案1の構成を具備しない。
したがって、甲第1号証乃至甲第6号証には、本件考案1の構成が部分的に記載あるいは示唆されているだけであって、上記相違点(1)及び相違点(3)における本件考案1の構成を具備せず、本件考案1が、甲第1号証乃至甲第6号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることができない。

(b)本件考案2について
分離組立自在とする手段として着脱自在に設けることが従来周知であるとしても、本件考案2は、本件考案1の構成を具備するものであり、上記「(a)本件考案1について」で詳記したのと同じ理由により、本件考案2が、甲第1号証乃至甲第6号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。

(c)本件考案3について
甲第6号証には、「下部に発熱源を有する食品収納容器において、発熱源の上方に食品を収容する容器10を、その上方に皿状の容器11を配すること」が記載されている。そして本件考案3において、補助皿の具体的構成とか補助皿の用途、意義等について限定はないものであり、甲第6号証記載の技術事項を参酌して「鍋体上に補助皿を載置可能とすること」がきわめて容易であるとしても、本件考案3は、本件考案1の構成を具備するものであり、上記「(a)本件考案1について」で詳記したのと同じ理由により、本件考案3が、甲第1号証乃至甲第6号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。

(オ)むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものとは認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
簡易調理器
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納し、この外容器は底部に耐火・断熱材を設け、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されて上記鍋体を加熱調理するようにし、この調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に取り出し自在に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との問で発熱体の加熱空間を形成するようにしたことを特徴とする簡易調理器。
【請求項2】
発熱装置が鍋体下面に着脱自在である請求項1記載の簡易調理器。
【請求項3】
鍋体上に補助皿を載置可能とした請求項1または2記載の簡易調理器。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、断熱性の外容器と下部に発熱装置を備えた調理容器とから構成され、その調理容器に調製された食材を入れておくことで、特に野外などにおける調理が簡単に行えるようにした簡易調理器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、穀類や麺類又は飲料などを収容した容器に発熱体を内蔵して、上記内容物を随時煮沸乃至は加温するようにした加熱型の缶容器が広く知られている。
【0003】
そして上記発熱体としては、例えば鉄粉、アルミ粉又はフェロシリコン粉等に金属酸化物と過酸化物を配合することにより、酸素の供給を必要とせずに燃焼する固形の自己燃焼型の発熱体が知られてる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記従来の加熱型の缶容器は、主に保存食用として調整された食材を煮沸乃至加熱するものであったから、自づと食材の種類が限定され、日常の食糧用としては適さなかった。
【0005】
又、その缶容器は、発熱体を収納する燃焼室と食材の収容室とが一体構造であって発熱体が交換不能であったから、該缶容器全体が使い捨てを余儀無くされ、これ亦日常の使用には利用者の経済的負担が多いという課題もあった。
【0006】
本考案は、上記従来の自己燃焼型の発熱体を使用した簡易調理器において、特に加熱効率を高めることを目的としたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本考案は、上記目的を達成するため、上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納し、この外容器は底部に耐火・断熱材を設け、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されて上記鍋体を加熱調理するようにし、この調理容器および発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に取り出し自在に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するという手段を用いた。
【0008】
【作用】
上記の構成を有する本案簡易調理器は、燃焼時に酸素の供給を必要としない自己燃焼型の発熱体の特性を活かして、これを密閉された断熱性の外容器内で燃焼させるようにしたものであるから、熱効率が良好で断熱効果を活用して加熱調理が行えるという作用を奏するものである。特に、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するという手段により、発熱体は当該加熱空間に収容され、発熱体の加熱効率を高めることができる。さらに調理容器は外容器の断熱性によって、温度低下が抑制されて、発熱体の燃焼後であっても調理容器を長時間保温し、この保温を利用して加熱調理することができる。
【0009】
【実施例】
以下、発熱装置が鍋体下面に着脱できる構造の実施例について更に詳述すると、図において1は魔法瓶の原理を利用した円筒または角筒状の外容器本体、2は外容器本体1の上部開口を気密に閉止する上蓋であって、外容器本体1の開口部全面が開放できるようにするのが好ましい。
【0010】
また3は、上記外容器本体1に取り出し自在に収納される調理容器であって、蓋体4を備えた鍋体であり、通常アルミ板を深絞りしてなり、その上部開口を上記蓋体4で開閉自在にするとともに、下端周縁には下述する発熱装置を装着可能とした連結部5を延成したものである。
【0011】
更に6は点火手段がマッチ式の着火具からなる発熱装置であって自己燃焼型の発熱体により構成され、図2に見られるように上記連結部5に嵌挿可能な有底筒体6a内に固形の耐火・断熱体6bを装填して、上記鍋体3を該耐火・断熱材6b上に載置し、該耐火・断熱体6bと上記鍋体3との間に形成される加熱空間10内に自己燃焼型の発熱体6cを取り出し自在に収容したものである。また、着火具は点火薬6dが前記有底筒体6aの底面から僅かに露出するようにした着火剤6eを、耐火・断熱体6bに設けられた透孔6fを介して発熱体6cの下面に臨ましめたものである。なお、本実施例では発熱体6cの加熱空間10を形成するに当たり、鍋体3を上げ底として、この部分に発熱体6cを閉鎖的に収容することとしたが、当該加熱空間10の形成はこれに限らない。ここで必要なことは、調理容器3及び発熱体6cのそれぞれを耐火・断熱材6b上に取り出し自在に載置した状態で、調理容器3の底部と耐火・断熱材6bとの間に発熱体の加熱空間を形式することである。
【0012】
尚、図中7は食材、8は必要に応じて鍋体上に載置される補助皿、また9は氷袋または化学カイロなどの冷・温材を示す。
【0013】
以上述べた実施例における上記鍋体3の底面は、発熱体の突出量に見合って中高状に形成したものを示したが、この部分は平面構成であってもよい。又、上記発熱装置6の耐火・断熱体6bとしては、例えば珪素を主材とし、これを焼成して海綿状とした特殊なセラミックスを使用し、更に自己燃焼型の発熱体6cにはフェロシリコン粉末を酸化第二鉄粉と、これよりも低次の酸化鉄粉を混合したものの一定量を圧縮成形して固形化したものを使用した。更に又、上記着火具の点火薬6dとしてはマッチ頭薬を利用し、その着火剤6eには上記点火薬の熱によって容易に着火して燃焼する、例えば微粉状の金属と金属酸化物から合成された組成物を使用したものである。而して本案の上記発熱装置6は、煮炊目的に応じた分量の発熱体と、これに着火させる着火具が備わっていれば、特に上記各部材の組成・構造を限定するものではないし、また着火具における点火手段も上記マッチ式のものに限らず、ライター式や電池式のもに置換することも亦、自由である。
【0014】
次に、先ず食材7として清浄した所望の野菜や肉類などを適当な大きさにきざみ、適量の水または出し汁とともに鍋体3内に収容するのであるが、この場合、野菜と肉類又は液汁などを区分したい時には、ラップフィルムや小容器などに分包した後、該鍋体3を外容器本体1内に格納して施蓋密閉する。尚、上記実施例の構造において鍋体3の下端に発熱装置6を装着する時期は、食材7を鍋体3に収容する前でも後でも或いは煮炊前(点火直前)のいづれであっても差し支えはない。
【0015】
但し、上記鍋体3を外容器本体1内に格納・密閉するに当たり、外気や室温が高い季節では水を凍結させた氷袋、また寒冷地などにおいては鉄粉系の所謂化学カイロ等の冷・温材9を鍋体の上蓋4上に直接、または上記補助皿8を介して収納することで内容物の温度調整を行い、その腐敗や凍結を防止するのである。
【0016】
このように下拵えをした本案簡易調理器を煮炊する場合は、外容器1から鍋体3を取り出し、上記冷・温材9及びラップフィルム等を全て除去した後、発熱装置6が正しく装着されていることを確認した上で、その点火薬6dを擦り紙を用いて点火するか、或いは別のマッチやガスライター等の発火具を使用してもよく、いづれにしても点火薬の火炎が着火剤6eを伝って瞬時に発熱体6cを燃焼させ、10?30分で煮炊が完了するのである。
【0017】
また図面には示していないが、本考案の他の実施態様としては上述した調理容器の鍋体3と発熱装置6とが一体構造となったものがあるが、この場合には中高状にした鍋体3の底面を該鍋体の一方の側面まで延長し、この部分を扉などで閉止可能とすることによって、上記発熱装置6の発熱体6cを随時鍋体の外側から交換し得るようにするものであり、また着火具は発熱装置6の底孔を介して耐火・断熱体6bに貫設されている透孔6f内に装填し得るようにして、調理容器の反復利用を可能にするものである。
【0018】
このような構成上の特徴を有する本案簡易調理器は、予め調整された任意の食材を調理容器に入れ、これを外容器に格納してピクニックや遠出の際に携帯して中食用とし、或いは肢体の不自由な老人などのいる家庭で、主婦の外出中の食事用として供食前に点火するだけで煮炊できるという簡便さが得られ、又使用済みの発熱装置はその都度交換するか、もしくは発熱体と着火具だけを取り替えるという簡単な操作で、日常の繰り返し使用ができる利便さも得られる。
【0019】
この他、本案簡易調理器に使用される発熱体は、一定容量の鍋体に対してその分量(重量)を炊飯用、惣菜煮炊用または単なる加熱用など、数種類に規格して市販するようにすれば、利用者の経済性だけでなく、発熱体の標準燃焼時間を参考にして調理完了時を確かめ得るという利益も期待できるのである。
【0020】
【考案の効果】
本考案に係る簡易調理器は、燃焼時に酸素の供給を必要としない自己燃焼型の発熱体の特性を活かして、これを密閉された断熱性の外容器内で燃焼させるようにしたものであるから、熱効率が良好で断熱効果を活用して加熱調理が行えるという作用を奏するものである。特に、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するという手段により、発熱体は当該加熱空間に収容され、発熱体の加熱効率を高めることができる。さらに調理容器は外容器の断熱性によって、温度低下が抑制されて、発熱体の燃焼後であっても調理容器を長時間保温し、この保温を利用して加熱調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本案簡易調理器の一実施例を示す中心部縦断面図。
【図2】
発熱装置のみを取り出して示す中心部縦断面図。
【符号の説明】
1 外容器本体
2 上蓋
3 鍋体
4 蓋体
5 連結部
6 発熱装置
7 食材
8 補助皿
9 冷・温材
訂正の要旨 本件訂正の要旨は、実用新案登録第2594552号の明細書を本件訂正請求書に添付の訂正明細書のとおりに訂正するもので、その訂正の内容は、下記訂正事項(a)及び(b)のとおりである。
訂正事項(a)
実用新案登録請求の範囲の【請求項1】を、
「上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納し、この外容器は底部に耐火・断熱材を設け、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されて上記鍋体を加熱調理するようにし、この調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に取り出し自在に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するようにしたことを特徴とする簡易調理器。」
と訂正する。
訂正事項(b)
願書に添付した明細書の段落【0007】を、
「【課題を解決するための手段】本考案は、上記目的を達成するため、上蓋によって開閉自在な断熱性の外容器に調理容器と発熱装置とを収納し、この外容器は底部に耐火・断熱材を設け、上記調理容器は蓋体を備えた熱伝導率の高い鍋体から構成されており、上記発熱装置は自己燃焼型の発熱体により構成されて上記鍋体を加熱調理するようにし、この調理容器及び発熱体のそれぞれは、上記耐火・断熱材上に取り出し自在に載置され、調理容器の底部と耐火・断熱材との間で発熱体の加熱空間を形成するという手段を用いた。」
と訂正する。
異議決定日 2001-07-17 
出願番号 実願平4-78114 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (A47J)
最終処分 維持    
前審関与審査官 深草 亜子  
特許庁審判長 滝本 静雄
特許庁審判官 井上 茂夫
岡本 昌直
登録日 1999-02-26 
登録番号 実用新案登録第2594552号(U2594552) 
権利者 岩谷産業株式会社
大阪府大阪市中央区本町3丁目4番8号 タイガー魔法瓶株式会社
大阪府大阪市城東区蒲生2丁目1番9号 同和鉄粉工業株式会社
岡山県岡山市築港栄町7番地
考案の名称 簡易調理器  
代理人 濱田 俊明  
代理人 濱田 俊明  
代理人 濱田 俊明  
代理人 濱田 俊明  

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