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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A61G
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61G
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A61G
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61G
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61G
管理番号 1048626
審判番号 訂正2000-39155  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-12-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2000-12-12 
確定日 2001-08-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第1998386号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第1998386号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。
理由 1、訂正請求の要旨
(1)経緯
本件訂正請求に係る考案は、平成2年6月28日に実用新案登録出願がされ、平成5年12月22日に実用新案登録第1998386号として設定登録がされた後、平成10年7月8日に願書に添付した明細書について訂正をすることについて審判を請求し、平成10年12月9日にこの訂正請求を認める旨の審決がされ、確定している。(平成10年審判第39051号審決公報参照。)
しかし、本件実用新案登録に対しては、平成10年11月27日にこれを無効とすべき旨の審判(平成10年審判第35595号)が請求されており、この審判に対し無効とすることはできない旨の審決がされたところ、東京高裁において、上記訂正を願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正である点を理由として含む上記審決の認定判断は誤りであるとして審決取り消しの判決(平成12年(行ケ)第33号、平成12年11月9日言渡)がなされ、これに対して登録実用新案権者は上告したがこれを上告審として受理しない旨の決定(平成13年(行ヒ)第35号、平成13年3月23日決定)がなされた。
この上告審中、登録実用新案権者は、平成12年12月12日に本件訂正請求をなし、さらに特許庁に再び係属中となった平成13年4月25日に本件訂正請求書について手続補正をしたものである。

(2)訂正請求書に係る補正の適否
平成13年4月25日にした本件訂正請求書について手続補正は、請求書の「7、3、(3)」において、
『訂正明細書第2頁第5行?第7行
「・・・該フレームの前下端部(9)Dは、孔(9)Hと該孔に挿入する係合ボルト(18)とによる係止係止手段によって、車椅子(1)本体・・・」
を明瞭でない記載の釈明を目的として、
「・・・該フレームの前下端部(9)Dに取付けられているロック片(9)Gのロック孔(9)Hが車椅子(1)本体に突設されている係合ボルト(18)に係合することによって、該フレーム(9)Aが・・・」
と訂正する。』
とあったものを、
『訂正明細書第2頁第5行?第7行
「該フレームの前下端部(9)Dは、孔(9)Hと該孔に挿入する係合ボルト(18)とによる係止手段によって、」
を明瞭でない記載の釈明を目的として、
「該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dに取付けられているロック片(9)Gのロック孔(9)Hが車椅子(1)本体に突設されている係合ボルト(18)に係合することによって、該フレーム(9)Aが」
と訂正する。』
と補正するものである。

そして、平成10年7月8日付けの訂正請求書に添付した全文訂正明細書には、補正後の訂正請求書に記載したとおり、その訂正明細書第2頁第5行?第7行には、
「該フレームの前下端部(9)Dは、孔(9)Hと該孔に挿入する係合ボルト(18)とによる係止手段によって、」
と記載されており、「係止係止手段によって、」及び「車椅子(1)本体・・・」との記載はない。

したがって、この補正は、審判請求書に記載した訂正個所を明らかにしたものであって、請求書の要旨を変更しない範囲での軽微な瑕疵の補正に該当する。
よって、この訂正請求書についての補正は認容することができるものである。

(3)訂正の趣旨
本件に係る訂正の趣旨は、願書に添付した明細書(但し、上記のとおり平成10年7月8日に訂正請求がされ、それを認容する審決が確定している。この訂正がされた明細書を以下、「実用新案登録明細書」という。)を本件訂正審判請求書(但し、上記のとおり平成13年4月25日に訂正個所についての補正がされている。)に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。

訂正事項I;
実用新案登録請求の範囲の記載について、
「【請求項1】座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成であって、該アームレストは遮板が張設されているコの字形のフレームからなり、該フレームの後下端部が車椅子本体に枢着されており、水平使用状態では前下端部は、孔と該孔に挿入する係合ボルトとによる係止手段によって、車椅子本体にロック可能に支持されていることを特徴とする車椅子。」
を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成であって、該アームレストは遮板が張設されているコの字形のフレームからなり、該フレームの後下端部が車椅子本体に枢着されており、水平使用状態では該フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設されている係合ボルトに係合することによって、該フレームが車椅子本体にロック可能に支持されていることを特徴とする車椅子。」
と訂正する。

訂正事項II;
訂正明細書第1頁第26行?第27行
「前下端部(9)Dは、孔(9)Hと該孔に挿入する係合ボルト(18)とによる係止手段によって、車椅子(1)本体に」
を明りょうでない記載の釈明を目的として、
「該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dに取付けられているロック片(9)Gのロック孔(9)Hが車椅子(1)本体に突設されている係合ボルト(18)に係合することによって、該フレーム(9)Aが、車椅子(1)本体に」
と訂正する。

訂正事項III;
訂正明細書第2頁第5行?第7行
「該フレームの前下端部(9)Dは、孔(9)Hと該孔に挿入する係合ボルト(18)とによる係止手段によって、」
を明りょうでない記載の釈明を目的として、
「該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dに取付けられているロック片(9)Gのロック孔(9)Hが車椅子(1)本体に突設されている係合ボルト(18)に係合することによって、該フレーム(9)Aが」
と訂正する。

(4)訂正の適否
イ、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び実用新案登録請求の範囲の拡張・変更の存否

I,訂正事項Iについて
実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の欄に記載されていた、「孔と該孔に挿入する係合ボルトとによる係止手段」とは、上記の本件に係る平成12年(行ケ)第33号判決で判示されているように、
『固定された孔に対して係合ボルトが移動して挿入する係合形態と、固定された係合ボルトに対して孔が移動して挿入する係合形態の双方が含まれるものというべきである。
また、ボルトは、金属丸棒の一部にねじを切ったものであって、ナット等とともにねじにより物品を係合することが多いことは明らかである。そうすると、上記「孔と該孔に挿入する係合ボルトとによる係止手段」には、ねじによる係合形態も含まれるものと解される。』(判決第18頁第5、1、(1)参照。)
ものであるところ、訂正事項Iに係る、
「該フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設されている係合ボルトに係合することによって、該フレームが」車椅子本体にロック可能に支持されている係合形態には、少なくとも、「固定された孔に対して係合ボルトが移動して挿入する係合形態」は含まれないこととなった。
したがって、この訂正事項Iは実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。

また、新規事項の有無について検討すると、実用新案登録明細書の第3頁第3行?第7行に、
「該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dは第4図に示すように平坦状に潰され、嵌着溝(9)Eが下縁から形成されており、左右一対のボルト(9)Fによってロック孔(9)Hを有し下縁が外側に屈曲されているロック片(9)Gの上縁部が該前下端部(9)Dに枢着されており、」と記載(記載事項i)されており、
同第3頁第8行?第10行に、
「一方車椅子(1)の本体の前側フレーム(4)には係合ボルト(18)が突設されている。」と記載(記載事項ii)されており、
同第3頁第20行?第24行に、
「更にロック片(9)Gのロック孔(9)Hが該係合ボルト(18)に係合しているので、アームレスト(9)は確実に車椅子(1)本体に固定され、車椅子(1)を階段から降ろす場合はアームレスト(9)を手がかりとして車椅子(1)を持ち上げることが出来る。」と記載(記載事項iii)されている。
したがって、訂正事項Iにおいて追加された、「該フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔」は、記載事項iからみて実用新案登録明細書に記載されていた事項の範囲内のものであり、「車椅子本体に突設されている係合ボルト」は、記載事項iiからみて実用新案登録明細書に記載されていた事項の範囲内のものであり、「ロック孔が・・・係合ボルトに係合する」点は、記載事項iiiからみて実用新案登録明細書に記載されていた事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項Iの全体の記載も、上記記載事項i,ii,iiiを総合的にみて、実用新案登録明細書に記載されていた事項の範囲内のものである。

実用新案登録請求の範囲の拡張・変更の存否については、訂正事項Iにより、実用新案登録明細書の第1頁第18行?第20行記載の、「ベッドBに車椅子(1)を横付けした時や左右が狭い空間に車椅子(1)が置かれた時にはアームレスト(9)がベッドBや壁に干渉して開くことが出来ないと云う問題点があった。」という課題や上記記載事項iiiに記載されている、「更にロック片(9)Gのロック孔(9)Hが該係合ボルト(18)に係合しているので、アームレスト(9)は確実に車椅子(1)本体に固定され、車椅子(1)を階段から降ろす場合はアームレスト(9)を手がかりとして車椅子(1)を持ち上げることが出来る。」という効果に変更が生じるものでもないので、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張・変更するものではない。

したがって、本件訂正請求の訂正事項Iは、平成5年法律第26号附則第4条第2項の規定により読み替えられて適用する平成5年改正前の実用新案法第39条第1項但し書き及び同条第1項第1号及び実用新案法第39条第2項の規定に適合する。

II,訂正事項II,IIIについて
訂正事項II,IIIは、訂正事項Iを行ったことにより必要となった考案の詳細な説明の欄の訂正であって、訂正事項に照らして、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであることは明らかである。
また、実質的に上記「訂正事項Iについて」と同じ理由により、実用新案登録明細書に記載されていた事項の範囲内のものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張・変更するものではない。
したがって、本件訂正請求の訂正事項II,IIIは、平成5年法律第26号附則第4条第2項の規定により読み替えられて適用する平成5年改正前の実用新案法第39条第1項但し書き及び同条第1項第3号及び実用新案法第39条第2項の規定に適合する。

ロ、独立登録要件
I,訂正考案
本件訂正請求に係る考案は、訂正請求書に添付した訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成であって、該アームレストは遮板が張設されているコの字形のフレームからなり、該フレームの後下端部が車椅子本体に枢着されており、水平使用状態では該フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設されている係合ボルトに係合することによって、該フレームが車椅子本体にロック可能に支持されていることを特徴とする車椅子。

II,引用刊行物
本件訂正請求に係る実用新案登録第1998386号に対する平成10年11月27日付けの無効審判(平成10年審判第35595号)において、無効審判請求人は下記の刊行物を提出し、本件に係る考案は下記の刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案できたものである旨主張している。
刊行物1;実公昭52-43544号公報(甲第1号証)
刊行物2;実公平3-47617号公報(甲第2号証)
刊行物3;米国特許第4840390号明細書(甲第3号証の1)

III,刊行物記載の考案
[刊行物1]
刊行物1には、その実用新案登録請求の範囲に、
「車椅子を構成するフレームと、該フレームの少なくとも一方の側部に支軸を介して転動可能に枢着され略枠状に形成されたアームレストとを含み、該アームレストは患者の腕部を支えるべき通常の使用状態において支持部材に支持される一方、車椅子に乗り降りする場合等に転動させて移動退避させ得ることを特徴とする移動式アームレスト。」
と記載され、
その第1図、第2図には、アームレストは患者の腕部を支えるべき通常の使用状態において支持部材に支持されるものの車椅子本体にロック可能にはされてはいない車椅子が記載されている。
また、その第1図、第2図の説明として、第2欄第15行?19行には、
「第1図、第2図において符号1は車椅子のフレームで、大車輪2が設けられる脚部材3と、該脚部材3から上方に伸び背凭4を設ける背受部材5と、座席6を両側から支えるサイド部材7とを有している。
と記載されている。

[刊行物2]
刊行物2には、その実用新案登録請求の範囲に、
「略コ字状の形状を有し、両側をシートフレームに嵌合して取り付けるようにした車椅子のアームレストにおいて、該アームレストの一端に、シートフレームに設けられたツメと係合自在なツメ部を有するロックカムを軸着し、さらに該ロックカムと該ロックカムを作動するためのレバーとをロッドにより連結すると共に、該アームレストの他端には、アッパブラケットとロアブラケットとを軸により屈曲自在に係着してなるブラケットの一端を固着し、該ブラケットの他端はシートフレームに回動自在に嵌合してなる車椅子のアームレスト。」
と記載され、
第2頁左欄第38行?同右欄第4行には、
「略コ字状の形成したアームレストパイプ3の前方側の端部にはボックス4が付設されており、このボックス4内にはロックカム5がピン6により回動自在に設けられている。、そして、このロックカム5にはツメ部5aが形成されており、ロックカム5aの回動によりツメ部5aはシートフレーム7に内設しているツメ8と係合または解除ができるようになっている。そして、このロックカム5はスプリング9によってツメ部がツメ8に係合する方向に常時付勢されている。」
と記載され、
第2頁右欄第14?23行には、
「アームレストパイプ3の後方側の端部にはアッパブラケット16とローアブラケット17をピン18により回動自在に係着してなるブラケット19が設けられている。そして、このブラケット19のアッパブラケット16はアームレストに嵌合させ、また、ローアブラケット17はシートフレーム20に回動自在に嵌合させることにより、アームレストパイプ3とシートフレーム20を連結するようにしている。」
と記載され、
第3頁左欄第9行?同右欄第3行には、
「レバーの操作により、乗車している本人でもアームレストの一端のロックを解除してアームレストの取外し、または、上下・左右の回動が容易にできるため、車椅子の側方からの乗り降りができ、かつ机等にも横付けできる。また、アームレストを取外さなくても良いためアームレストの載置場所を設ける必要がない。」
と記載されている。
また、第1図には、シートフレーム7に設けられたツメ8と係合自在なツメ部5aがレバー12により係脱自在にされている点が記載されている。

[刊行物3]
刊行物3には、上記無効審判請求人提示に係る甲第3号証の1の翻訳文である甲第3号証の2によれば、その第6欄第25?31行に、
「図1及び図8と図9に示すアーム支持構造体FはユーザのアームをやすめるU状管体のごときアーム支持部材160を含んでいる。アーム支持構造体の後方端はサイドフレームに対してピボット回転する部分164を有した第1搭載ブラケット162と連結されている。」
と記載され、
第6欄第44?66行に、
「第2搭載ブラケット174はアーム支持構造体160の前方端を解放式に受領する。第2搭載ブラケット174は上方水平サイドフレーム管状部分16と連結されており、シート支持受領クレードルを定義する。第2スプリング戻りツメ176はスプリング力で第2搭載ブラケットの開口部178と係合される。開放ボタン180をプレスすると、スプリング戻り爪は開口部から開放され、アーム支持構造体の前方端を第2ブラケットから取り外される。このように、アーム支持構造体はボタン172と180の両方をプレスしてそれらの両端部を開放することで取り外される。あるいは、前方端のみを第2ブラケットから開放させて、アームレスト構造体を前方にピボット回転させることもできる。好適には後方及び前方端キャップ182、184はそれぞれ異なる形状を提供されており、ユーザにどちらがアームレスト構造体の前方であるか後方であるかを決定させる。1体式プラスチック成型シャツガード186は、U形状アーム支持構造体160の前方及び後方端上で伸縮式に受領される通路186と共に左右に提供される。」
と記載されている。
また、第9図には、アーム支持構造体160に設けられた第2スプリング戻りツメ176と係脱自在な第2搭載ブラケットの開口部178が開放ボタン180により係脱自在とされている点が記載されている。

IV,対比・判断
本件に係る訂正後の請求項1に係る考案と、上記刊行物1に記載された考案とを対比すると、刊行物1に記載された、「車椅子に乗り降りする場合等に転動させて移動退避させ得ること」と第2図の一点差線で示す上方にアームレストを回動させた態様は、訂正後の請求項1に係る考案の「座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成」に相当し、以下同様に、「サイド部材7」は「遮板」に、「転動可能に枢着」は「フレームの後下端部が車椅子本体に枢着」にそれぞれ相当するから、両者は、
「座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成であって、該アームレストは遮板が張設されているコの字形のフレームからなり、該フレームの後下端部が車椅子本体に枢着されている車椅子。」
である点で一致し、訂正後の請求項1に係る考案においては、
「水平使用状態では該フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設されている係合ボルトに係合することによって、該フレームが車椅子本体にロック可能に支持されている」
ものであるのに対し、刊行物1記載の考案においては、フレームと車椅子本体のロック手段は何ら備えていない点で相違する。

そこでこの相違点について検討すると、刊行物2には、シートフレーム7に設けられたツメ8と係合自在なツメ部5aがレバー12により係脱自在にされている点、ツメ部5aを有するロックカム5はスプリング9によってツメ部5aがツメ8に係合する方向に常時付勢されている点が記載されているが、「フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設されている係合ボルトに係合する」点については記載がない 。
そして、本件訂正後の請求項1に係る考案は、この点により、
「ロック片(9)Gのロック孔(9)Hが該係合ボルト(18)に係合しているので、アームレスト(9)は確実に車椅子(1)本体に固定され、車椅子(1)を階段から降ろす場合はアームレスト(9)を手がかりとして車椅子(1)を持ち上げることが出来る。」
という作用効果を奏するのに対し、刊行物2記載の考案は、シートフレーム7とアームレスト2とが一応ロックされるものの、スプリング9によってツメ部5aがツメ8に係合する方向に常時付勢されていることによってロックされるものであるから、アームレスト2に対して上方に強い力が作用したとき、スプリング9の付勢力にうち勝ってツメ部5aとツメ8が離脱する可能性がある。

したがって、訂正後の請求項1に係る考案に係るロック孔(9)Hと係合ボルト(18)との係合と、刊行物2記載の考案に係るツメ部5aとツメ8との係合とは、構造として孔とボルトとの係合とツメのばね力とによる係合という基本的な構成上の相違があって、その結果作用効果にも明らかな相違がある。

また、刊行物3には、アーム支持構造体160に設けられた第2スプリング戻りツメ176と第2搭載ブラケットの開口部178が係脱自在にされている点が記載されているが、「フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設されている係合ボルトに係合する」点については記載がない 。
そして、本件訂正後の請求項1に係る考案は、この点により、
「ロック片(9)Gのロック孔(9)Hが該係合ボルト(18)に係合しているので、アームレスト(9)は確実に車椅子(1)本体に固定され、車椅子(1)を階段から降ろす場合はアームレスト(9)を手がかりとして車椅子(1)を持ち上げることが出来る。」
という作用効果を奏するのに対し、刊行物3記載の考案は、上方水平サイドフレーム管状部分16(車椅子本体部)と連結された第2搭載ブラケット174の開口部178はアーム支持構造体160の前方端を解放式に受領し、その前方端に設けられた第2スプリング戻りツメ176はスプリング力で第2搭載ブラケットと係合されるものである。

そのため、上方水平サイドフレーム管状部分16(車椅子本体部)とアーム支持構造体160の前方端とは一応ロック可能であるものの、第2スプリング戻りツメ176のスプリング力によってロックされるものであるから、アーム支持構造体160に対して上方に強い力が作用したとき、第2スプリング戻りツメ176の付勢力にうち勝って上方水平サイドフレーム管状部分16(車椅子本体部)とアーム支持構造体160の前方端が離脱する可能性がある。

したがって、訂正後の請求項1に係る考案に係るロック孔(9)Hと係合ボルト(18)との係合と、刊行物3記載の考案に係る上方水平サイドフレーム管状部分16(車椅子本体部)とアーム支持構造体160の前方端との係合とは、構造として孔とボルトとの係合と第2スプリング戻りツメ176のスプリング力とによる係合という基本的な構成上の相違があって、その結果作用効果にも明らかな相違がある。

よって、本件の訂正後の請求項1に係る考案は、上記相違点に係る構成を有することにより、上記の「車椅子(1)を階段から降ろす場合はアームレスト(9)を手がかりとして車椅子(1)を持ち上げることが出来る。」という明細書記載の作用効果を奏するものであり、この効果は係合がばね力に依存しないから、特に車椅子利用者が多くの場合自力歩行が出来ないことを考慮すると、車椅子利用者を座らせたままアームレスト(9)を手がかりとして車椅子(1)を持ち上げる際にアームレスト(9)が離脱する可能性が少なく安全上重要な効果である。

そして、この効果は訂正後の請求項1に係る考案が、上記相違点に係る構成を有することによりはじめて奏しうる効果であるから、訂正後の請求項1に係る考案は、刊行物1、2、3記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとは認めることができない。

以上のとおりであるから、訂正後の請求項1に係る考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。

したがって、本件訂正請求は、平成5年改正前の実用新案法第39条第3項の規定に適合する。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、平成5年法律第26号附則第4条第2項の規定により読み替えられて適用する平成5年改正前の実用新案法第39条第1条但し書き及び同条第1項第1、3号及び実用新案法第39条第2、3項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
車椅子
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成であって、該アームレストは遮板が張設されているコの字形のフレームからなり、該フレームの後下端部が車椅子本体に枢着されており、水平使用状態では該フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設されている係合ボルトに係合することによって、該フレームが車椅子本体にロック可能に支持されていることを特徴とする車椅子。
【考案の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本考案は車椅子に関するものである。
【従来の技術】
従来は第5図に示すように車椅子(1)の座部(8)の両側に左右回動可能に一対のアームレスト(9)を取付け、車椅子(1)から人が乗降する場合には該アームレスト(9)を点線に示すように外側に開く。
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来構成にあってはベッドBに車椅子(1)を横付けした時や左右が狭い空間に車椅子(1)が置かれた時にはアームレスト(9)がベッドBや壁に干渉して開くことが出来ないと云う問題点があった。
【課題を解決するための手段】
本考案は上記従来の課題を解決するための手段として、座部(8)の両側にアームレスト(9)を水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成であって、該アームレスト(9)は遮板(9)Jが張設されているコの字形フレーム(9)Aからなり、該フレーム(9)Aの後下端部が車椅子(1)本体に枢着されており、水平使用状態では該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dに取付けられているロック片(9)Gのロック孔(9)Hが車椅子(1)本体に突設されている係合ボルト(18)に係合することによって、該フレーム(9)Aが車椅子(1)本体にロック可能に支持されている車椅子(1)を提供するものである。
【作用・効果】
車椅子(1)のアームレスト(9)はコの字形フレーム(9)Aからなるので、車椅子(1)を使用する人が安定に支持され、転落等の危険がなく、また遮板(9)Jによって使用者の着衣がアームレスト(9)からはみ出して車輪等に巻込まれる危険もない。またアームレスト(9)の水平使用状態では該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dに取付けられているロック片(9)Gのロック孔(9)Hが車椅子(1)本体に突設されている係合ボルト(18)に係合することによって、該フレーム(9)Aがロックされているので、車椅子(1)を階段等から降ろす時は、アームレスト(9)を手で掴んで車椅子(1)を持上げることも出来る。車椅子(1)に乗降する場合にはアームレスト(9)を水平使用状態より後下端部を中心として上方に回動させるので、アームレスト(9)を全体的に座部(8)側面から取はらうことが出来、車椅子(1)の側方にベッドや壁等があっても、これらの物に該アームレスト(9)は干渉しない。したがって車椅子(1)から病人や老人等がベッドに移る時等には極めて便利である。
【実施例】
本考案を第1図?第4図に示す一実施例によって説明すれば、車椅子(1)は左右一対の上側フレーム(2)と、左右一対の下側フレーム(3)と、左右一対の前側フレーム(4)と、左右一対の後側フレーム(5)と、左上側フレーム(2)と右下側フレーム(3)および右上側フレーム(2)と左下側フレーム(3)とを連結する前後一対のX形フレーム(6)と、左右上側フレーム(2)に左右一対の支棒(7)を介して差渡されている座部(8)と、該座部(8)の両側に設置されている一対のアームレスト(9)と、該左右一対の後側フレーム(5)の上部に差渡されている背もたれ部(10)と、該左右一対の後側フレーム(5)の上端部を夫々屈曲して形成された把手部(11)と、該左右一対の上側フレーム(2)の前部を下方に屈曲して形成された足のせ台支持フレーム(12)と、該足のせ台支持フレーム(12)の下端に上下回動可能に取付けられている左右一対の足のせ台(13)と、該左右一対の前側フレーム(4)の下端に左右回動可能に取付けられた軸受(14)に回動可能に支持されている前輪(15)と、該左右一対の後側フレーム(5)の下端に軸(16)を介して回動可能に取付けられている後輪(17)とからなり、該アームレスト(9)はコの字形のフレーム(9)Aと、該フレーム(9)A上辺に取付けられているクッション(9)Bとからなり、該フレーム(9)Aの後下端部は軸(9)Cを介して車椅子(1)の本体の後側フレーム(5)に回動可能に取付けられ、該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dは第4図に示すように平坦状に潰され、嵌着溝(9)Eが下縁から形成されており、左右一対のボルト(9)Fによってロック孔(9)Hを有し下縁が外側に屈曲されているロック片(9)Gの上縁部が該前下端部(9)Dに枢着されており、該ロック片(9)Gは該ボルト(9)Fの外側に嵌着されているスプリング(9)Iによって内側に付勢されており、一方車椅子(1)の本体の前側フレーム(4)には係合ボルト(18)が突設されている。更に該フレーム(9)Aには遮板(9)Jが張設されている。
上記構成において、アームレスト(9)はコの字形フレーム(9)Aからなるので、車椅子(1)の使用者は該フレーム(9)Aの上辺と前辺とによって安定に支持されている。また該アームレスト(9)の遮板(9)Jによって使用者の着衣がアームレスト(9)からはみ出して後輪(17)等に巻込まれることは確実に防止される。該車椅子(1)に人が左右いずれかの側から乗降する場合には、乗降する側のアームレスト(9)を第1図に示す水平使用状態から後下端部の軸(9)Cを中心として上方に回動させ、第2図および第3図点線に示すように全体的に座部(8)側面から撤去状態にする。第1図に示す使用状態では該アームレスト(9)のフレーム(9)Aの前下端部(9)Dの平坦部の嵌着溝(9)Eに前側フレーム(4)の係合ボルト(18)が嵌合し、更にロック片(9)Gのロック孔(9)Hが該係合ボルト(18)に係合しているので、アームレスト(9)は確実に車椅子(1)本体に固定され、車椅子(1)を階段等から降ろす場合はアームレスト(9)を手がかりとして車椅子(1)を持上げることが出来る。
そして、アームレスト(9)を撤去状態にするには該ロック片(9)Gを外側に指で開いてロック孔(9)Hから係合ボルト(18)をはずしてから、該アームレスト(9)をフレーム(9)Aを介して軸(9)Cを中心として上方へ回動させる。このように該アームレスト(9)は上方へ回動させることによって全体的に撤去することが出来るから第3図に示すように車椅子(1)の側方にベッドBや壁等があっても、これらにアームレスト(9)は干渉することがなく、例えば病人や老人等が車椅子(1)からベッドへ移ることが極めて容易に出来る。アームレスト(9)を第2図に示す撤去状態から使用状態に戻す時は、フレーム(9)Aを介して軸(9)Cを中心として該アームレスト(9)を下方へ回動させれば、該アームレスト(9)のフレーム(9)A前下端部(9)Dのロック片(9)Gは下縁部が外側に屈曲されているから、前側フレーム(4)の係合ボルト(18)によって外側へ押しのけられ、該係合ボルト(18)は該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dの嵌着溝(9)Eに嵌着し、それから該ロック片(9)Gはスプリング(9)Iの付勢力によって内側へ戻され、該ロック片(9)Gのロック孔(9)Hに該係合ボルト(18)が係合する。このようにして自動的にアームレスト(9)は使用状態に固定される。
本実施例以外、該アームレスト(9)は使用状態から下方に回動させて撤去状態とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
第1図?第4図は本考案の一実施例を示すものであり、第1図はアームレスト使用状態側面図、第2図はアームレスト撤去状態側面図、第3図は正面図、第4図はアームレストフレーム前下端部付近の分解図、第5図は従来例の平面図である。
図中、(1)…車椅子、(8)…座部、(9)…アームレスト、
(9)J…遮板
訂正の要旨 訂正事項I;
実用新案登録請求の範囲の記載について、
「【請求項1】座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成であって、該アームレストは遮板が張設されているコの字形のフレームからなり、該フレームの後下端部が車椅子本体に枢着されており、水平使用状態では前下端部は、孔と該孔に挿入する係合ボルトとによる係止手段によって、車椅子本体にロック可能に支持されていることを特徴とする車椅子。」
を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】座部の両側にアームレストを水平使用状態より上方へ回動可能に取付けた構成であって、該アームレストは遮板が張設されているコの字形のフレームからなり、該フレームの後下端部が車椅子本体に枢着されており、水平使用状態では該フレームの前下端部に取付けられているロック片のロック孔が車椅子本体に突設されている係合ボルトに係合することによって、該フレームが車椅子本体にロック可能に支持されていることを特徴とする車椅子。」
と訂正する。
訂正事項II;
訂正明細書第1頁第26行?第27行
「前下端部(9)Dは、孔(9)Hと該孔に挿入する係合ボルト(18)とによる係止係止手段によって、車椅子(1)本体に」
を明りょうでない記載の釈明を目的として、
「該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dに取付けられているロック片(9)Gのロック孔(9)Hが車椅子(1)本体に突設されている係合ボルト(18)に係合することによって、該フレーム(9)Aが、車椅子(1)本体に」
と訂正する。
訂正事項III;
訂正明細書第2頁第5行?第7行
「該フレームの前下端部(9)Dは、孔(9)Hと該孔に挿入する係合ボルト(18)とによる係止手段によって、」
を明りょうでない記載の釈明を目的として、
「該フレーム(9)Aの前下端部(9)Dに取付けられているロック片(9)Gのロック孔(9)Hが車椅子(1)本体に突設されている係合ボルト(18)に係合することによって、該フレーム(9)Aが」
と訂正する。
審理終結日 2001-07-04 
結審通知日 2001-07-09 
審決日 2001-07-23 
出願番号 実願平2-68678 
審決分類 U 1 41・ 851- Y (A61G)
U 1 41・ 854- Y (A61G)
U 1 41・ 856- Y (A61G)
U 1 41・ 852- Y (A61G)
U 1 41・ 855- Y (A61G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 新次郎津野 孝  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 松下 聡
岡田 和加子
登録日 1993-12-22 
登録番号 実用新案登録第1998386号(U1998386) 
考案の名称 車椅子  
代理人 宇佐見 忠男  
代理人 早川 康  
代理人 早川 康  
代理人 宇佐見 忠男  
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