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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B32B 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B32B |
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管理番号 | 1048627 |
審判番号 | 訂正2001-39034 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-12-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2001-03-02 |
確定日 | 2001-08-17 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2598117号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第2598117号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.訂正の要旨 本件訂正審判の要旨は、実用新案登録第2598117号の願書に添付した明細書(以下、単に「明細書」という。)を、平成13年4月4日付け手続補正書により補正された平成13年3月2日付け審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであるところ、その具体的な訂正事項1?4は下記のとおりである。 (1)訂正事項1 明細書の実用新案登録請求の範囲の【請求項1】の 「基布の表面側に、ゴム層、難燃剤入り接着層、両面金属蒸着ポリエステルフィルム、難燃材入り接着層、および四フッ化エチレンコポリマーフィルムを一体に積層して接着させたことを特徴とする消防用耐熱布。」 との記載を、 「基布1の表面側に、ゴム層2、裏面側の難燃材入り接着層6、表,裏両面にアルミニウム金属蒸着のポリエステルフィルム3、表面側の難燃材入り接着層8、および四フッ化エチレンコポリマーフィルム7を順次一体に積層して接着させると共に、上記二つの難燃材入り接着層6,8は、いずれもエチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末10を5?20重量%混入したことを特徴とする消防用耐熱布。」 と訂正し、かつ、実用新案登録請求の範囲の請求項2を削除する。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0017】中の 「難燃材入り接着層」 との記載を、 「エチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末を5?20重量%混入した難燃材入り接着層」 と訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0018】中の 「接着層に難燃材を入れてあることで」 との記載を、 「接着層がエチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末を5?20重量%混入した難燃材入りであることで」 と訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【図面の簡単な説明】中の 「明図」 との記載を、 「明図である。」 と訂正する。 2.当審の判断 2の1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1における、ゴム層と両面金属蒸着ポリエステルフィルムの裏面側の金属膜とを接着する「難燃剤入り接着層」、及び、該ポリエステルフィルムの表面側の金属膜と四フッ化エチレンコポリマーフィルムとを接着する「難燃材入り接着層」の両者を、「エチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末10を5?20重量%混入した」ものに規定する点で、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、削除された請求項2に「ゴム層と両面金属蒸着ポリエステルフィルムの裏面側の金属膜とを接着する接着層、および前記ポリエステルフィルムの表面側の金属膜と四フッ化エチレンコポリマーフィルムとを接着する接着層は、いずれも樹脂系の接着剤に水酸化アルミニウムなど添加型の難燃材を5?20重量%混入したことを特徴とする請求項1に記載の消防用耐熱布。」とあったこと、及び、明細書段落【0011】中に「前記裏面側,表面側の両難燃材入り接着層6,8は、……エチレン酢酸ビニル系などの……熱可塑性樹脂……系の接着剤9に添加型の難燃剤10が入れてある。添加型の難燃材10としては、水酸化アルミニウム……などの粉末を用い」との記載があることから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2、3について 訂正事項2、3は、訂正事項1による実用新案登録請求の範囲の減縮に伴い必要となる、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。 (3)訂正事項4について 訂正事項4は、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は、変更するものではない。 2の2.独立登録要件 2の2の1.訂正拒絶理由通知の概要 当審が平成13年4月20日付けで発した訂正拒絶理由通知の概要は、 上記訂正後における実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により構成される考案(以下、該考案を「訂正後の考案」という。)は、その出願前に頒布されたことの明らかな刊行物1(実公昭62-34765号公報)、刊行物2(特開平2-217238号公報)、刊行物3(日本化学会編「化学便覧 応用化学編 II 材料編」丸善株式会社(平成3年7月10日発行)、1163頁左欄5?24行、同頁右欄「表15.89」)、刊行物4(「高分子加工」別冊11・第24巻増刷号 ホットメルト接着剤、高分子刊行会(昭和50年7月25日発行)49?55頁)、刊行物5(実願昭59-77676号(実開昭60-191330号公報)のマイクロフィルム)、刊行物6(特開昭58-4879号公報)、刊行物7(特開昭56-84947号公報)及び刊行物8(特開平3-207780号公報)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないものである、 というにある。 2の2の2.刊行物の記載内容 a.刊行物1 ア.「基層にゴム層を設け、該ゴム層にアルミ蒸着膜を被着したポリエステルフィルムから成る金属反射膜を接着し、この上面に四フッ化エチレンコポリマーフィルムを一体に接着せしめて成る消防用耐熱布。」(実用新案登録請求の範囲)、 イ.「上記ゴム層5とポリエステルフィルム4はアクリル樹脂系の接着剤6を用いて一体に接着する。」(2頁4欄17?18行)、 ウ.「7は上記フィルム4の表面に重ねられた保護層であり、……四フッ化エチレンポリマーフィルムである、該フィルム7は離型性に優れているがアクリル樹脂系の接着剤を用いることで良好な接着効果が得られた。」(2頁4欄19?24行)、 エ.上記考案に係る耐熱布の構造を示す断面図に相当する第3図(3頁中段)。 b.刊行物2 オ.「熱安定性繊維を主体とするニードルパンチングされた不織布層からなる第1層(1)と、水蒸気を透過する多数の微細孔を有する不透過性フィルムで形成された第2層(2)と、これら第1層と第2層とを接合固定するために両層の間に設置された、不燃性を有する不連続な接着剤層(3)で構成された複合布帛。」(特許請求の範囲の請求項1)、 カ.「外面を形成する外側布帛アセンブリと内面を形成するライニングとで構成された防護衣服であって、これらの……アセンブリ(4)とライニング(5)との間にはインサートが緩く挿入され、該インサートは、熱安定性繊維を主体とするニードルパンチングされた不織布層からなる第1層(1)と、水蒸気を透過する多数の微細孔を有する不透過性フィルムで形成された第2層(2)と、これら第1層と第2層とを接合固定するために両層の間に設置された、不燃性を有する不連続な接着剤層(3)で構成され、前記第1層は前記ライニング側に設置されていることを特徴とする防護衣服。」(同請求項7)、 キ.「接合はポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンタイプの熱可塑性ポリマーから成る複数のスポットによって与えられるとよい。ポリマーとして、2成分ポリウレタン、エチレンアクリル酸コポリマ……を用いることができる。」(4頁左下欄13行?同頁右下欄5行)、 ク.「用いられる熱接着性ポリマーがそれ自体不燃性であると好ましい。塩素化したアンチモントリオキサイドが不燃性をポリマーに与える。」(4頁右下欄6?8行)、 ケ.「24時間放置後に複合布帛は消防士用の衣服としての完全な防護を提供するのに必要な性質を有する。」(5頁左上欄10?12行)、 コ.前記オの複合布帛の断面図に相当する第1図(7頁左下欄)及び前記カの防護衣服の断面図に相当する第2図(8頁左上欄)。 c.刊行物3 サ.難燃剤の説明として、「プラスチック材料は燃えやすいものが多いが、安全性の面からとくに建築、電気、自動車、鉄道車両などに関しては、厳しく難燃性……が規制されている。これらの性能を付与するための添加剤が難燃剤……である。……難燃化には……難燃剤の添加などの方法があるが、ここでは難燃剤として添加されるものを挙げる。ハロゲン系難燃剤は、三酸化アンチモンと併用すると相乗効果がみられるため、多くのプラスチックに用いられている。……また、無機系難燃剤は有機系に比べて……多用されて いる。」(1163頁左欄6?24行)、 シ.「無機物」からなる「代表的難燃剤」としては、三酸化アンチモンや水酸化アルミニウムが挙げられること(1163頁「表15.89」)。 d.刊行物4 ス.縫製用ホットメルトのベースポリマーの一つとしてEVAが知られており、接着剤を被着物の間にはさんで加熱溶融圧着する場合の接着剤の形状としては、フィルム状や織物状があること(50頁「1.2」項及び同頁「1.3」項要約)、 セ.縫製用ホットメルト接着剤の接着強さをみるため、EVA(酢ビ20%)のフィルム状物で、タフタナイロン、同ポリエステル、スパンナイロン、同ポリエステル、厚織テトロン/ポリカーボネート、服地テトロン/毛などの被着体を接着し、はく離強さを測定したこと(54?55頁「表5」の「成分」欄の「EVA(酢ビ20%)」欄)。 e.刊行物5 ソ.「無機質繊維のウールマットの少なくとも一方の面に接着剤で表被材を接着した無機質繊維マットにおいて、表被材及び/又は接着剤に難燃剤を混入したことを特徴とする難燃性無機質繊維マット」(実用新案登録請求の範囲)、 タ.「また表被材としては……ポリエステル、……或はそれらにアルミ等を蒸着したもの、例えば、アルミ蒸着ポリエチレン……等が挙げられる。」(5頁2?10行)、 チ.「接着剤としては……表被材と無機質繊維マット……とを接着することができる接着剤であれば良く、例えばホットメルト型の……エチレンビニルアセテート(EVA)……等が挙げられる。」(2頁11?17行)、 ツ.「添加型難燃剤としては……Sb_(2)O_(3)、……Al(OH)_(3)……等が挙げられる。」(7頁7行?8頁10行)。 f.刊行物6 テ.「少なくとも150PHR以上の水酸化アルミニウム粉末を含み且つスポンジ構造を有するエチレン-酢酸ビニル共重合体層を表面層とし、裏面に難燃紙を積層してなる積層シートの表面に深い凹凸絞、特に谷染印刷エンボスを施した壁紙。」(特許請求の範囲第1項)、 ト.「また水酸化アルミニウム粉末を……加えたので、発泡層は不燃もしくは準不燃としての特性を持っている。」(2頁左下欄17?19行)。 g.刊行物7 ナ.「……酢酸ビニルエチレン共重合体を主成分とする樹脂分100重量部に対して、無機物粉末50?500重量部、発泡剤1?50重量部を混合してシート状に成形し、この発泡性シートの片面もしくは両面に、……ポリオレフィンフィルムを積層し、この積層品を加熱して発泡させることを特徴とする無機物高充てん樹脂発泡シートの製造方法。」(特許請求の範囲)、 ニ.「この発明における無機物としては、……水酸化アルミニウムが優れた難燃性を付与するので最も好ましい。」(2頁左下欄7?15行)。 h.刊行物8 ヌ.「(1)……エチレン-酢酸ビニル系共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物に、樹脂組成物100重量部に対して金属水和物50?150重量部を配合してなる……難燃性接着剤。 (2)金属水和物が水酸化アルミニウム……である、請求項(1)記載の難燃性接着剤。」(特許請求の範囲の請求項1?2)、 ネ.「従来、ハロゲンを含まない難燃化保護用熱収縮性チューブが利用される場合に使用されるケーブルなどの被覆材として、ポリエチレン、ポリクロロプレンゴム等が使用されている。このために、これらの被覆材と強固に接着できるとともに、該ケーブルとチューブ間の隙間を充填する接着剤が必要となる。これらの材料と接着するホットメルト型接着剤として、エチレン-酢酸ビニル系共重合体(以下、EVAという)があり、本発明では、このEVA型接着剤の改良に相当する。」(2頁左下欄11?14行)、 ノ.上記接着剤を使用し、被着体であるクロロプレンゴムとの剥離強度試験を行ったこと(3頁左下欄4?13行、「実施例1、2」要約)。 2の2の3.対比・判断 本件訂正後の考案(前者)と刊行物1記載の考案(後者)(以下、刊行物n記載の考案を「考案n」という。)とを対比すると、後者についての前記ア?エから総合して、 両者は、 「基布1の表面側に、ゴム層2、裏面側の接着層6、表,裏両面にアルミニウム金属蒸着のポリエステルフィルム3、表面側の接着層8、および四フッ化エチレンコポリマーフィルム7を順次一体に積層して接着させた消防用耐熱布。」 に係る点で一致し、 前者では、上記二つの接着層6,8として、エチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末10を5?20重量%混入したものを使用する(以下、前者の該必須の構成を「特定接着剤要件」という。)一方、後者では、アクリル樹脂系接着剤が使用されているのみ(前記イ?ウ参照)である点で、相違する。 以下、上記相違点について検討する。 前記のとおり、刊行物1には、接着剤として任意のものが使用できる旨の記載はなく、逆に、後者(=考案1)では、ゴム層2とポリエステルフィルム3上のアルミニウム金属蒸着層との間(以下、「R/Al」と略記する。)、及び、同金属蒸着層と四フッ化エチレンコポリマーフィルム7との間(以下、「Al/4F」と略記する。)の2箇所の接着のいずれにもアクリル樹脂系の接着剤が使用され、特に、Al/4Fの接着には、被着体たる四フッ化エチレンコポリマーフィルム7の離型性の関係で、アクリル樹脂系の接着剤(のみ)が好適であるとされているにすぎない。 一方、例えばゴム・プラスチック用、金属用、木材(=木工)用等、被着体に応じて異なった接着剤が市場に流通している実情からも、一般に、接着剤の選択に際しては被着体との適合性が重要であることは、当業界の技術常識と解される。 そうすると、前者(=訂正後の考案)の進歩性の有無は、後者(=考案1)のアクリル樹脂系接着剤を前記特定の接着剤で置換することが考案2?8から当業者にきわめて容易に想到可能か否か、に帰着する。 そうした観点で考案2?8をみると、まず、考案2の「複合布帛」(前記オ参照)は、「消防士用の衣服」(前記ケ参照)、すなわち、「消防用耐熱布」に係る点で後者と軌を一にするものの、後者とは被着体の点でも使用する接着剤用樹脂の点でも全く相違する(前記オ、キ参照)。 したがって、たとえ刊行物3により、接着剤を不燃化するための無機系添加型難燃材として、三酸化アンチモン(ハロゲンと併用)と水酸化アルミニウムとが並列的に知られており(前記サ?シ参照)、該教示に従い、考案2の「アンチモントリオキサイド」(=三酸化アンチモン)(前記ク参照)を水酸化アルミニウムに置換したとしても、前記被着体並びに接着剤樹脂の相違の点で、前者の前記特定接着剤要件を導き出すことはできない。 残る刊行物4?8のうち、接着剤についての記載がみられるのは刊行物4、5、8のみであり、中でも考案5、8は、EVA、すなわち、エチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムが配合されてなる接着剤の組成(前記チ?ツ、ヌ?ネ参照)の点で、前者(=本件訂正後の考案)で用いる接着剤と共通するものの、考案4、5、8のいずれも、前者とは被着体が相違することから、接着剤についての前記当業界の技術常識に鑑み、前記R/Al及びAl/4Fの接着に前者の前記特定の接着剤が有効であることまでを教示するものとはいえない。 その余の刊行物6,7は、刊行物3にも記載された、水酸化アルミニウムの難燃剤としての用法・効能を示すにとどまり、前者の前記特定接着剤要件を何ら示唆するものではない。 以上のとおりであるから、結局、考案1?8によっては当業者といえども前者の前記必須の構成を導き出すことはできない。 一方、前者は、該必須の構成を具備することにより、訂正明細書記載の顕著な効果(訂正明細書段落【0017】?【0018】参照)を奏するものと認められる。 そうすると、前者、すなわち、訂正後の考案は、考案1?8に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。 また、他に訂正後の考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるとすべき理由を発見しない。 3.むすび したがって、本件訂正審判請求は、実用新案法第39条第1項ただし書第1?3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同法同条第2?3項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 消防用耐熱布 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 基布1の表面側に、ゴム層2、裏面側の難燃材入り接着層6、表,裏両面にアルミニウム金属蒸着のポリエステルフィルム3、表面側の難燃材入り接着層8、および四フッ化エチレンコポリマーフィルム7を順次一体に積層して接着させると共に、上記二つの難燃材入り接着層6,8は、いずれもエチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末10を5?20重量%混入したことを特徴とする消防用耐熱布。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は、主として消防服に用いる耐熱布に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、消防官などが火災現場で用いる消防服などの耐熱布として、実公昭62-34765号公報に示す消防用耐熱布があった。 この消防用耐熱布は、織布の表面側に合成ゴム層、反射機能のある両面アルミニウム蒸着ポリエステルフィルム、保護層である四フッ化エチレンコポリマーフィルムを積層して一体に接着することで、耐火性、耐熱性、熱反射性、断熱性、耐水性、耐薬品性、耐衝撃性が高く、軽量、柔軟で安全性に優れ、耐候性、耐柔性、耐摩耗性がよく、引張り強度、引裂き強度が大きく、維持管理が容易で、風合いもよくさらに汚れにくいものである。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 しかし、前述した従来の消防用耐熱布は、ポリエステルフィルムの両面に形成したアルミニウムなどの蒸着金属膜と、合成ゴム層および四フッ化エチレンコポリマーフィルムとの接着にアクリル系の接着剤を用いているので、消防用耐熱布を高温状態で使用すると、前記接着剤が熱によって劣化したり燃焼したりする恐れがあり、前記金属膜と前記ゴム層、前記コポリマーフィルムとが剥離し、また耐久性が低下するという問題点があった。 【0004】 この考案は、前述した従来の消防用耐熱布の問題点を解決して、高温状態で長時間使用しても、ポリエステルフィルムの表,裏面に形成した反射機能がある金属膜と、ゴム層、保護層である四フツ化エチレンコポリマーフィルムの接着部分の剥離を防止し、また耐久性を向上させた消防用耐熱布を、物性や風合いを低下させることなく提供することを目的としている。 【0005】 【課題を解決するための手段】 この考案の消防用耐熱布は、基布の表面側に、ゴム層、難燃材入り接着層、両面金属蒸着ポリエステルフィルム、難燃材入り接着層、および四フッ化エチレンコポリマーフィルムを一体に積層して接着させたものである。 【0006】 【作用】 この考案の消防用耐熱布は、ゴム層とポリエステルフィルム裏面の金属膜、このポリエステルフィルム表面の金属膜と四フッ化エチレンコポリマーフィルムを、難燃材入り接着層によってそれぞれ接着したので、消防服などに仕立て、高温状態で長時間使用しても、前記両接着層が熱劣化したり、燃焼したりしにくい。 【0007】 また、前述した従来の消防用耐熱布に比べ、この考案による消防用耐熱服は、接着層に難燃材を入れてあることで耐炎度がすぐれ、接着層が燃えた場合に、残炎時間、余燼時間、炭化距離を短くでき、安全性が向上し、さらに難燃材を入れても重量がほとんど変わらず、物性や風合いを低下させることがない。 【0008】 【実施例】 以下、この考案の一実施例につき図を参照して説明する。 図1において、1は綿、ポリエステル、ビニロン、アラミド繊維、ノボロイド混紡などの織布からなる基布である。なお、基布1としては、耐熱性がよく、機械的強度が大きいアラミド繊維の織布が好ましい。基布1の表面には、耐熱性のハイバロンゴムやネオプレシゴムなどの合成ゴム層2を積層接着してある。 前記ゴム層2は、基布1の裏面側から水が浸透して基布1表面側のポリエステルフィルム3の剥離を防止するために、加硫剤の液状のものを基布1に塗布し、基布1との接着部はゴム液を浸透させて、基布1に剥離しないように接着してある。 【0009】 前記ポリエステルフィルム3は、表,裏面にアルミニウムなどの反射用の金属膜4,5を蒸着によって形成することで、反射板を構成している。なお、ポリエステルフィルム3は、風合いをよくするために、厚さを4μ?25μとし、表,裏面に高純度のアルミニウム粒子を真空蒸着して金属膜4,5を形成することが好ましい。 【0010】 前記ゴム層2の表面には、ポリエステルフィルム3裏面の金属膜5が後述する裏面側の難燃材入り接着層6によって接着してあり、またポリエステルフィルム3表面の金属膜4には、保護層を構成する四フッ化エチレンコポリマーフィルム7の裏面が表面側の難燃材入り接着層8によって接着してある。 【0011】 前記裏面側,表面側の両難燃材入り接着層6,8は、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エチレン酢酸ビニル系など熱硬化性、熱可塑性樹脂、またはこれらの共重合体、さらには合成ゴム系の接着剤9に添加型の難燃材10が入れてある。添加型の難燃材10としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、ブロム化合物、クロム化合物、リン化合物などの粉末を用い、前記樹脂系の接着剤9に5?20重量%混入することが好ましい。なお、難燃材として、反応型のエポキシ化合物、ポリカボネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系などのものを用いることができる。 【0012】 また、裏面側の接着層6は、ゴム層2および金属膜5のいずれにも接着性がよい接着剤9を添加型の難燃材10と共に用い、表面側の接着層8は、金属膜5および前記コポリマーフィルム7のいずれにも接着性がよい接着剤9を添加型の難燃材10と共に用いることが好ましい。 【0013】 前述したように、基布1の表面側に、ゴム層2、裏面側の難燃材入り接着層6、表,裏両面にアルミニウムからなる金属膜4,5、表面側の難燃材入り接着層8、四フッ化エチレンコポリマーフィルム7を、順次積層して接着した実施例の消防用耐熱布は、全体の厚さを0.3mm?1.5mm程度とすることが好ましい。 【0014】 以上のように構成した実施例の消防用耐熱布は、前記接着層6,8に添加型の難燃材10を入れても、従来のものと重量がほとんど変わらず、前述した従来の消防用耐熱布と同様に、耐火性、耐熱性、熱反射性、断熱性、耐水性、耐薬品性、耐衝撃性が高く、軽量、柔軟で安全性に優れ、また耐候性、耐寒性、耐柔性、耐摩耗性がよく、引張り強度、引裂き強度が大きく、消防服とした場合に維持管理が容易であると共に風合いがよく、さらに汚れにくい。 【0015】 そして、ゴム層2とポリエステルフィルム3裏面の金属膜5、ポリエステルフィルム3表面の金属膜4と四フッ化エチレンコポリマーフィルム7を、ポリエステル系などの樹脂系の接着剤9に添加型の水酸化アルミニウムなどの難燃材10粉末を入れた裏面側,表面側の接着層6,8によって、それぞれ接着したので、前述した従来のものに比べて高温状態で長時間使用しても、接着層6,8が熱によって劣化したり燃焼したりしにくく、このため、接着した部分の剥離を防止できると共に、耐久性を向上させることができ、また、基布1とゴム層2との接着部分は、四フッ化エチレンコポリマーフィルム7、ポリエステルフィルム3による耐熱性、ポリエステルフィルム3の表,裏面に形成したアルミニウムの蒸着による金属膜4,5による熱反射によって、ほとんど加熱されず、従って、この実施例による消防用耐熱布の全部の接着部分が剥離しにくくなり、前記耐熱布全体の耐久性が向上する。 【0016】 さらに、前記接着層6,8は難燃材入りであるため、これらが燃えた場合に、残炎時間が2秒以内、余燼時間が30秒以内、炭化距離が6cm以内にでき、これらが短いことで安全性が向止する。 【0017】 【考案の効果】 以上説明したように、この考案の消防用耐熱布は、ゴム層とポリエステルフィルム裏面の金属膜、このポリエステルフィルム表面の金属膜と四フッ化エチレンコポリマーフィルムを、エチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末を5?20重量%混入した難燃材入り接着層によってそれぞれ接着したので、消防服などに仕立て、高温状態で長時間使用しても、前記両接着層が熱劣化したり、燃焼したりしにくく、ポリエステルフィルムの表,裏面に形成した金属膜と、ゴム層、四フッ化エチレンコポリマーフイルムとの接着部分の剥離を防止できると共に、耐久性を向上させることができる。 【0018】 また、前述した従来の消防用耐熱布に比べ、この考案による消防用耐熱服は、接着層がエチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末を5?20重量%混入した難燃材入りであることで耐炎度がすぐれ、接着層が燃えた場合に、残炎時間、余燼時間、炭化距離を短くでき、安全性が向上し、さらに、難燃材を入れても重量がほとんど変わらず、物性や風合いを低下させることがない。 【図面の簡単な説明】 【図1】 この考案の一実施例に係る消防用耐熱布の厚さを拡大して示した部分断面説明図である。 【符号の説明】 1 基布 2 ゴム層 3 ポリエステルフィルム 4 表面の金属膜 5 裏面の金属膜 6 裏面側の難燃材入り接着層 7 四フッ化エチレンコポリマーフィルム 8 表面側の難燃材入り接着層 9 接着剤 10 難燃材 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の減縮を目的として、明細書の実用新案登録請求の範囲の【請求項1】の 「基布の表面側に、ゴム層、難燃剤入り接着層、両面金属蒸着ポリエステルフィルム、難燃材入り接着層、および四フッ化エチレンコポリマーフィルムを一体に積層して接着させたことを特徴とする消防用耐熱布。」 との記載を、 「基布1の表面側に、ゴム層2、裏面側の難燃材入り接着層6、表,裏両面にアルミニウム金属蒸着のポリエステルフィルム3、表面側の難燃材入り接着層8、および四フッ化エチレンコポリマーフィルム7を順次一体に積層して接着させると共に、上記二つの難燃材入り接着層6,8は、いずれもエチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末10を5?20重量%混入したことを特徴とする消防用耐熱布。」 と訂正し、かつ、実用新案登録請求の範囲の請求項2を削除する。 (2)訂正事項2 明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の段落【0017】中の 「難燃材入り接着層」 との記載を、 「エチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末を5?20重量%混入した難燃材入り接着層」と訂正する。 (3)訂正事項3 明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の段落【0018】中の 「接着層に難燃材を入れてあることで」 との記載を、 「接着層がエチレン酢酸ビニル系の接着剤に水酸化アルミニウムからなる添加型の難燃材粉末を5・20重量%混入した難燃材入りであることで」 と訂正する。 (4)訂正事項4 誤記の訂正を目的として、明細書の段落【図面の簡単な説明】中の 「明図」 との記載を、 「明図である。」 と訂正する。 |
審理終結日 | 2001-07-19 |
結審通知日 | 2001-07-26 |
審決日 | 2001-08-07 |
出願番号 | 実願平5-68545 |
審決分類 |
U
1
41・
851-
Y
(B32B)
U 1 41・ 853- Y (B32B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鴨野 研一 |
特許庁審判長 |
小林 正巳 |
特許庁審判官 |
石井 克彦 石井 淑久 |
登録日 | 1999-05-28 |
登録番号 | 実用新案登録第2598117号(U2598117) |
考案の名称 | 消防用耐熱布 |
代理人 | 原田 信市 |
代理人 | 原田 信市 |
代理人 | 原田 信市 |