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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03D
管理番号 1048644
審判番号 不服2001-3951  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-15 
確定日 2001-11-01 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 69644号「水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 7月14日出願公開、実開平 7- 38279]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成5年12月27日の出願であって、その請求項1ないし6に係る考案は、平成13年4月16日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される「水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置」にあると認められるところ、その請求項5に係る考案(以下、「本願考案5」という)は次のとおりのものである。

「【請求項5】 上部を浮力部材で構成し、下部に水溶性の芳香洗浄剤を内装するとともに、下部外周に通水性能を持たせ、全体が水洗トイレの貯水タンク内で浮遊し、下部が水中に水没するよう構成した水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置であって、全体が角のない丸まった形状をしており、上部が中空体で構成されるとともに、下部外周をメッシュで外被するよう構成し、且つ、芳香洗浄剤の上面が、上記上部の下面より低位の位置にあるよう構成したことを特徴とする水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭54-26644号(実開昭55-126388号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という)には、

(ア)「本考案は水洗トイレ用水着色剤容器に関し、更に詳しくは水洗トイレ用のタンク内に浮かせて使用する水洗トイレ用水着色剤容器に関する。」(明細書1頁9ないし11行)、

(イ)「本考案の目的物は外壁に通水機構を有する中空の収納器をうきに着脱自在に装着した水洗トイレ用水着色剤容器である。本考案において、通水機構とは穿孔,スリット,パイプ,条溝など、中空の収納器内に水が出入りできる機構であればよい。……中空収納器にいれる水洗トイレ洗浄剤は……香料,消臭剤などをカーボワックスに混入して固めるかスポンジ状多孔物質にしみこませたものなど、公知の水洗トイレ用水着色剤を用いることができる。」(明細書2頁12行ないし3頁11行)、

(ウ)「第9図に示す水洗トイレ用水着色剤容器は中空帽状うき1に、側壁にスリット3を有しうきの外径と等しい外径の筒状収納器2を嵌合,保持させるものである。本容器は収納器2の底部に錘4をいれてタンク内の水の上下による転覆を防止し、収納器2の側壁のスリット3を常に水と接しておくことができる。」(明細書5頁下から4行ないし6頁4行)、

(エ)「本考案の水洗トイレ用水着色剤容器はタンクの水位に関係なくその外壁の通水機構を常に水と接触させているため、本容器内に収納した水洗トイレ用水着色剤は断えず水に触れて着色剤水溶液を生成しているから、連続して水洗トイレを使用する場合でも適度の濃度の着色剤水溶液を供給することが可能である。」(明細書6頁11ないし17行)

と記載されている。

(オ)また、第9図、第10には、筒状収納器2の上端が、中空帽状うき1の下面より低位の位置にある点が記載されていると認められる。

そして、上記記載からみて、刊行物には、「上部を中空帽状うき1で構成し、筒状収納器2に水洗トイレ用水着色剤(水洗トイレ洗浄剤)を内装でき、筒状収納器2の外周にスリット3を有し、全体が水洗トイレのタンク内で浮遊し、筒状収納器2のスリット3が常に水と接するよう構成した水洗トイレ用水着色剤容器であって、筒状収納器2の上端が、中空帽状うき1の下面より低位の位置にあるよう構成した水洗トイレ用水着色剤容器。」の考案が記載されていると認められる。

3.対比・判断
そこで、本願考案5と、刊行物に記載の考案とを比較すると、刊行物に記載の考案の「水洗トイレ用水着色剤(水洗トイレ洗浄剤)」は、水を着色するとともに水に芳香と洗浄力を与えるのものであって、断えず水に触れて着色剤水溶液を生成するから水溶性である。また、刊行物に記載の考案の「スリット3」は、「筒状収納器2」内に水を出入りさせるためのものであるから、「筒状収納器2の外周」は通水性能を持っているといえる。さらに、刊行物に記載の考案の水洗トイレ用水着色剤容器は、筒状収納器2の上端が、中空帽状うき1の下面より低位の位置にあるよう構成されているから、筒状収納器2に水洗トイレ用水着色剤(水洗トイレ洗浄剤)を内装した際には、水洗トイレ用水着色剤(水洗トイレ洗浄剤)の上面は、必然的に、中空帽状うき1の下面より低位の位置になる。
そして、刊行物に記載の考案の「水洗トイレ用水着色剤容器」に「水洗トイレ用水着色剤(水洗トイレ洗浄剤)」を内装したものが、本願考案5の「水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置」に相当し、刊行物に記載の考案の「中空帽状うき1」は、本願考案5の「浮力部材」に相当し、「中空体」で構成され、刊行物に記載の考案の「筒状収納器2」、「水洗トイレ用水着色剤(水洗トイレ洗浄剤)」、「タンク」は、それぞれ本願考案5の「下部」、「芳香洗浄剤」、「貯水タンク」に、それぞれ相当するので、両者は、「上部を浮力部材で構成し、下部に水溶性の芳香洗浄剤を内装するとともに、下部外周に通水性能を持たせ、全体が水洗トイレの貯水タンク内で浮遊するよう構成した水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置であって、上部が中空体で構成されるとともに、芳香洗浄剤の上面が、上記上部の下面より低位の位置にあるよう構成したことを特徴とする水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願考案5では、水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置の下部が水中に水没するのに対し、刊行物に記載の考案では、水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置のどの部分までが水中に水没しているか不明な点

相違点2
本願考案5では、水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置は、全体が角のない丸まった形状をしているのに対し、刊行物に記載の考案では、水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置は、全体が角のない丸まった形状をしていない点

相違点3
本願考案5では、下部外周をメッシュで外被するよう構成しているが、刊行物に記載の考案では、下部外周にスリット3を設ける点

そこで、相違点1について検討すると、刊行物に記載の考案の水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置は、スリット3が常に水と接する程度には下部が水中にあり、芳香洗浄剤を溶出させるという機能の点で何ら本願考案5と変わるところはなく、水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置の下部を水中に水没させることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
次に、相違点2について検討すると、水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置を全体が角のない丸まった形状とすることは、例えば、実願昭58-101305号(実開昭60-8766号)のマイクロフィルムに記載のように周知技術であるから、刊行物に記載の考案に上記周知技術を適用して全体が角のない丸まった形状の水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置とすることは、当業者がきわめて容易になし得ることである。
次に、相違点3について検討すると、本願考案5の「メッシュ」も、刊行物に記載の考案の「スリット」も下部外周に通水性能を持たせる機能を有する点で共通しており、また、例えば、実願昭60-176393号(実開昭62-85582号)のマイクロフィルム、実願平4-4287号(実開平5-64269号)のCD-ROM、実願平1-73006号(実開平3-13378号)のマイクロフィルムに記載のように、水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置において通水性能を持たせるための部材としてメッシュは周知技術であるから、刊行物に記載の考案に上記周知技術を適用して、下部外周をメッシュで外被するよう構成することは、当業者がきわめて容易になし得ることである。
そして、全体として、本願考案5によってもたらされる効果も、刊行物に記載の考案及び上記周知技術から、当業者であれば当然に予測できる程度のものであって、顕著なものとはいえない。
したがって、本願考案5は、刊行物に記載の考案及び上記周知技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願考案5は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-08-28 
結審通知日 2001-09-04 
審決日 2001-09-17 
出願番号 実願平5-69644 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (E03D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 深田 高義河本 明彦  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 公子
考案の名称 水洗トイレ用芳香洗浄剤供給装置  
代理人 角田 嘉宏  

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