• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A47J
管理番号 1048647
審判番号 無効2000-35402  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-24 
確定日 2001-11-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第2525397号実用新案「グリル調理用受皿」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2525397号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2525397号は、平成2年7月31日(優先権主張 平成2年6月7日)に出願され、平成8年11月7日に実用新案権の設定登録がなされ、その後、平成12年7月24日に本件無効審判が請求され、平成13年3月9日付けで無効理由通知がなされ、これに対し、被請求人は平成13年5月22日付けで意見書を提出している。

2.本件考案
本件実用新案登録の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「受皿本体とその底部に敷かれたゼオライトを具備するグリル調理用受皿。」

3.請求人の主張
請求人は「登録第2525397号実用新案の明細書の請求項1に係る考案についての登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、
1)本件考案は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された考案若しくはそれらの組み合わせに基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案を受けることができないものであるから、本件考案の実用新案登録は無効とすべきである。
2)本件考案は、産業上利用し得ないものであり、実用新案法第3条第1項柱書きの規定により実用新案を受けることができないものであるから、本件考案の実用新案登録は無効とすべきである。
旨主張し、以下の証拠方法を提出している。
甲第1号証:実公平2-2258号公報
甲第2号証:実願昭62-72137号(実開昭63-182090号)のマイクロフィルム
参考資料1:ゼオライトとその利用編集委員会編「ゼオライトとその利用」1989年5月15日1版6刷、技報堂出版株式会社発行 1?3頁及び139?141頁
参考資料2:東レ株式会社が提供するWEBページ「多孔性セラミックスの新展開」の抜粋
参考資料3:日本ゼオライト株式会社が提供するWEBページ「アルカリイオン水製造セラミックス」の項目

さらに、請求人は、弁駁書において、上記の理由として、
3)本件考案は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案を受けることができないものであるから、本件考案の実用新案登録は無効とすべきである。
旨主張し、新たに以下の証拠方法を提出している。
甲第3号証:特開昭52-60284号公報
参考資料1(ゼオライトとその利用編集委員会編「ゼオライトとその利用」1989年5月15日1版6刷、技報堂出版株式会社発行)の93,94頁

4.無効理由通知の概要、及び引用刊行物
1)無効理由通知の概要
ところで、本件の実用新案登録に対して、当審は平成13年3月9日付けで無効理由通知を請求人及び被請求人に通知したが、その無効理由通知の概要は、
「本件考案は、刊行物1及び刊行物2に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものである。」
というものであり、上記無効理由通知にて引用した刊行物1及び刊行物2は以下に示すものである。

2)引用刊行物
刊行物1:実公平2-2258号公報
刊行物2:特開昭56-155641号公報

3)引用刊行物に記載の事項
上記刊行物1は、「無煙ロースター」について記載したものであるが、特に、
「焙焼炉の炉底上にはセラミツクスなどの耐熱性の気孔を有する粒体・礫体からなる滴下肉汁の吸着材を敷詰めた」(実用新案登録請求の範囲 第1項のうち第1頁第1欄11?13行)こと、
「焙焼炉箱内の底に敷詰める肉汁吸着材としては、内部に多数の気孔を有するセラミツクスなどの耐熱性のある5乃至20mm程度の大きさをもつた粒体・礫体であることが望ましい。」(第2頁第4欄18?21行)こと、
「ロストルから滴下した肉汁や油は炉底上に敷詰められたセラミツクスなどの耐熱性の粒体・礫体からなる吸着材の表面から内部の気孔内に確実に吸着され、炉底上に肉汁や油が貯ることがなく炉内を清潔に維持する。」(第2頁第4欄44行?第3頁第5欄4行)こと、及び、
「焙焼炉5の炉底5a上には、夫々表面から内部にかけて多数の微小気孔を有しているセラミツクスのような耐熱性素材からなる粒状もしくは礫状の吸着材13の層が全面に敷詰められている。」(第3頁第5欄33?36行)ことが記載されており、
また第1図からは、焙焼炉5の炉底5a上に吸着材13が敷詰められている様子が窺える。

上記刊行物2は、「酸素吸収剤」について記載したものではあるが、特に
「不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸を含む油脂を多孔質の担体に担持させてなる酸素吸収剤。」(特許請求の範囲 請求項1)、及び、
「多孔質の担体としては、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、活性炭等油を吸着するものであれば特に制限はなく、油脂の吸着方法も液状油であれば普通に混合するだけでよく、固形脂であつてもその融点以上に加温し混合すれば均一に担持させる事が可能である。」(第2頁右上欄7?12行)ことが記載されている。

5.無効理由通知に対する被請求人の主張の概要
当審が通知した平成13年3月9日付け無効理由通知に対して、被請求人は、平成13年5月22日付けで提出した意見書において、大略、以下のように主張する。
上記刊行物2の「油脂の吸着方法も液状油であれば普通に混合するだけでよく、固形脂であつてもその融点以上に加温し混合すれば均一に担持させる事が可能である。」(第2頁右上欄9?12行)との記載からみて、ゼオライトに油脂を吸着させるには「混合」という物理的な操作が必要であり、刊行物2には、滴り落ちる油をゼオライトで何等の物理的な混合操作なしで吸着することに関し記載も示唆もない。さらに、刊行物2には、ゼオライトが油脂を吸着する時間についても述べられておらず、よって、刊行物2には、ゼオライトが上部から滴り落ちる油を受皿に油が到達するまでに吸着することができることについて開示がない。
したがって、刊行物1に記載された考案において、セラミックスなどの耐熱性の気孔を有する粒体・礫体の代わりに刊行物2に記載されているゼオライトを用いたとしても、グリル調理用受皿を汚すことなく上部から滴り落ちる油を何らの物理的な混合操作をすることなく即座に吸収することができる本件考案を導き出すことが、当業者にとってきわめて容易であるとはいえない。

6.対比.判断
上記4.の3)の項で述べた刊行物1に記載の事項からみて、刊行物1には、
焙焼炉の炉底上にセラミツクスなどの耐熱性の気孔を有する粒体・礫体からなる滴下する肉汁や油を吸着する吸着材を敷詰めたもの。
なる考案が記載されているものと認められる。
そこで、本件考案(前者)と刊行物1に記載の考案(後者)を対比すると、それらの機能からみて、後者における「焙焼炉」と「焙焼炉の炉底」は、各々、前者における「受皿本体」と「その底部」に相当する。また、後者における「焙焼炉」は肉の焙焼即ちグリル調理に用いるものであり、前者における「ゼオライト」も、後者における「吸着材」と同様、調理時に肉や魚から出る油を吸収するものであるから、両者は、
受皿本体とその底部に敷かれた肉や魚から出る油を吸収する固体を具備するグリル調理用受皿。
で一致し、
肉や魚から出る油を吸収する固体が、前者は、ゼオライトであるのに対し、後者は、セラミツクスなどの耐熱性の気孔を有する粒体・礫体である点、
において相違する。

そこで、5.の項で述べた被請求人の主張を考慮しつつ、この相違点について検討する。
確かに、被請求人が指摘するとおり、刊行物2には、「油脂の吸着方法も液状油であれば普通に混合するだけでよく、固形脂であつてもその融点以上に加温し混合すれば均一に担持させる事が可能である。」(第2頁右上欄9?12行)なる記載がある。しかしこの記載は、所定量のゼオライトへ所定量の油脂を吸着させるに際し、ゼオライトと油脂が接触しなければ吸着が始まらないことから、ゼオライトと油脂の接触を効率的に行わせるために、油脂が液状油の場合は普通に混合すればよいこと、及び、油脂が固形の場合は液状にして混合すればよいことを述べただけのものであって、ゼオライトへの油の吸着において如何なる場合も「混合」という物理的操作が必要であることをいうものではないと解される。
そして、確かに、被請求人が主張するとおり、刊行物2には吸着に要する時間についての記載はない。
しかし、ゼオライトがグリル調理に耐える程度の耐熱性を有する多孔性の物質であることは、此処に例を示すまでもなく明らかな事項であり、また、この多孔質の物質であるゼオライトが油脂を吸収する性質を有することも、上記4.の3)の項で述べた刊行物2に記載の事項から窺えるところである。
よって、かかる性質を有するゼオライトを刊行物1に記載された考案におけるセラミツクスなどの耐熱性の気孔を有する粒体・礫体の代わりに用いることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
そして、その場合、グリル調理受皿を汚すことなく上部から滴り落ちる油を吸収することができることは、当業者が当然予測し得た効果にすぎない。

さらに、本件明細書中には本件考案の効果として、他に、ゼオライト粒が臭いを吸着し、調理中の嫌な臭いを取り除くことができること、及びゼオライト粒に遠赤外線効果があるので調理した魚や肉が美味しく焼き上がることが記載されている。
しかし、ゼオライトが脱臭作用を有することは本件の出願前周知の事項であり(必要であれば、実願昭62-72137号(実開昭63-182090号)のマイクロフィルム、特開昭63-97159号公報、特開昭56-166820号公報参照)、またゼオライトが遠赤外線放射作用を有することも本件の出願前周知の事項である(必要であれば、実願昭62-72137号(実開昭63-182090号)のマイクロフィルム、特開平1-178586号公報、特開平2-57581号公報参照)から、上記の本件明細書に記載された効果は当業者が予測し得る範囲のものにすぎない。

よって、本件考案は、刊行物1及び刊行物2に記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件考案についての実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、実用新案法第37条第1項第1号に該当する。
したがって、上記3.の項で述べた請求人の主張を検討するまでもなく、本件考案の実用新案登録は、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-09-03 
結審通知日 2001-09-06 
審決日 2001-09-25 
出願番号 実願平2-81586 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A47J)
最終処分 成立    
前審関与審査官 鵜飼 健  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 大久保 好二
岡田 和加子
登録日 1996-11-07 
登録番号 実用新案登録第2525397号(U2525397) 
考案の名称 グリル調理用受皿  
代理人 戸谷 雅美  
代理人 安形 雄三  
代理人 村下 憲司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ