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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1048654
審判番号 不服2000-6590  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-08 
確定日 2001-11-09 
事件の表示 平成5年実用新案登録願第36743号「カーオーディオの取付構造」拒絶査定に対する審判事件[平成7年1月20日出願公開、実開平7-4190]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成5年6月14日に出願されたものである。
そして、平成10年11月6日付け、及び、平成12年5月11日付けで、それぞれ手続補正書が提出されたが、上記平成12年5月11日付けの手続補正書による補正は却下され、当該補正の却下の決定は確定したので、本願の請求項1に係る考案は、上記平成10年11月6日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 前面にエスカッションパネルを備えるオーディオ本体を、車体の開口部に取付けるようにしたカーオーディオの取付構造において、オーディオ本体の両側に、前記開口部に係合するばね性を有する係合部材を設け、前記オーディオ本体を前記開口部に前記係合部材で固定し、前記オーディオ本体と前記係合部材との間にエスカッションパネルの、楔状部材を差し込むことにより前記係合部材を固定したことを特徴とするカーオーディオの取付構造。 」(以下、「本願考案」という。)

2.引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された実願平2-113467号(実開平4-70546号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物」という。)には、図面第1図ないし第3図と共に、「車載用機器の取付装置」に関する考案として、次の事項が記載されている。
(1)産業上の利用分野として、「本考案は、カーステレオ、カーラジオなどの車載用機器の取付装置に係り、特に車のダツシユボードなどの設置母材に取付けるのに好適な車載用機器の取付装置に関する。」(明細書第1頁第16行?第19行)
(2)考案が解決しようとする課題として、「本考案はこのような従来技術における実情に鑑みてなされたもので、その目的は、容易に車載用機器の本体およびノーズを車の設置母材に固定することのできる車載用機器の取付装置を提供することにある。」(明細書第3頁第14行?第18行)
(3)実施例として、「 第2図に示すカーラジオなどの車載用機器10は、本体11と、この本体11の表面側に取付けられ、各種操作部を具備するノーズ12と、ノーズ12の前部周囲に設けられるノーズ枠13とからなっている。上記の本体11は、第3図(a)、(b)に示すように、車の設置母材、例えばインナーケース14に挿入されている。
そして、このような車載用機器10に設けられる取付装置は、第3図(a)、(b)に示すように、インナーケース14の一方の側に上部取付穴15、下部取付穴16を形成するとともに、第1図に示すように、ノーズ枠13にカム17、18を設け、本体11にカム17、18の移動によって取付穴15、16にそれぞれ係止される係止部材、例えば板ばね19、20を備えている。」(明細書第5頁第15行?第6頁第9行)
(4)同じく実施例として、「上述した板ばね19は、ねじ27によって本体11の上面に締着される基部19aと、上部に向かって突出するわん曲部19bと、カム17と当接する当接部19cとから一体に形成されている。」(明細書第7頁第19行?第8頁第2行)
(5)同じく実施例として、「この実施例にあっては、車載用機器の本体11およびノーズ12を車のインナーケース14に取付ける際、まず本体11にノーズ12を組み込むとともに、・・・(中略)・・・第2図に示すように、インナーケース14に本体11を挿入する。このとき、ノーズ12がインナーケース14端部に当接するとともに、ノーズ枠13はスプリング24などによって第3図(a)の左方向へ押圧され、カム17は板ばね19から離隔されている。したがって板ばね19のわん曲部19bは、インナーケース14の取付穴15に係合しない状態で保持されており、他の板ばね20なども同様である。その結果、本体11はインナーケース14の内面に沿って移動可能である。
次いで、ノーズ枠13をスプリング24等に抗して本体11側へ押し込むと、第3図(b)に示すように、・・・(中略)・・・カム17のカム面17aが板ばね19の当接部19cに当接して、この当接部19cは第3図(b)の右側上方へ次第に押し上げられて、わん曲部19bがインナーケース14の取付穴15に係止される。同様に板ばね20は取付穴16に係止され、他の板ばねもそれぞれ同様である。このため、本体11はインナーケース14に固定された状態に保持される。」(明細書第8頁第4行?第9頁第11行)

3.対比
本願考案と引用刊行物に記載された考案とを対比すると、両者の対応関係は次のとおりである。
引用刊行物の上記摘記事項(1)のとおり、車載用機器としてカーステレオ、カーラジオなどが例示されており、引用刊行物に記載の「車載用機器」は、本願考案の「カーオーディオ」に相当し、また、引用刊行物の上記摘記事項(3)の「ノーズ枠13」、「本体11」は、それぞれ、本願考案の「エスカッションパネル」、「オーディオ本体」に相当する。
また、引用刊行物の上記摘記事項(1)のとおり、引用刊行物に記載の「車載用機器の取付装置」は、特に車のダツシユボードなどの設置母材に取付けるのに好適なものであり、当該設置母材の実施例として記載されたインナーケース14の開口部に上記本体11を取付けるようにしたものである。
更に、引用刊行物の上記摘記事項(3)及び(4)のとおり、引用刊行物に記載の、本体11に備えられた「係止部材、例えば板ばね19,20」は、インナーケース14に形成された上部取付穴15、下部取付穴16に係止されるものであり、その設置位置の相違を除けば、本願考案の、オーディオ本体に設けられ、開口部に係合するばね性を有する「係合部材」に相当する。
そして、物品の形状、構造又は組合せに係る考案としての本願考案のカーオーディオの取付構造と、引用刊行物の上記摘記事項(5)及び図面第3図(b)に記載の「車載用機器の取付装置」による取付構造とを対比すると、引用刊行物に記載の取付構造においては、明らかに、本体11をインナーケース14の取付穴15,16に係止部材(板ばね19,20)で固定するものであり、また、本体11と係止部材(板ばね19,20)との間にノーズ枠13に設けられたカム17,18を差し込むことにより係止部材(板ばね19,20)を固定するものであり、当該引用刊行物に記載の取付構造は、本願考案の「前記オーディオ本体を前記開口部に前記係合部材で固定し、前記オーディオ本体と前記係合部材との間にエスカッションパネルの、楔状部材を差し込むことにより前記係合部材を固定した」という取付構造に、実質的に相当するものである。

よって、本願考案と引用刊行物に記載された考案とは、「前面にエスカッションパネルを備えるオーディオ本体を、車体の開口部に取付けるようにしたカーオーディオの取付構造において、オーディオ本体に、前記開口部に係合するばね性を有する係合部材を設け、前記オーディオ本体を前記開口部に前記係合部材で固定し、前記オーディオ本体と前記係合部材との間にエスカッションパネルの、楔状部材を差し込むことにより前記係合部材を固定したカーオーディオの取付構造」である点で一致し、次の点で相違している。

《相違点》
係合部材の設置位置に関して、本願考案では、オーディオ本体の「両側」に係合部材を設けたのに対して、引用刊行物に記載された考案では、本体11の「上面、下面であって両側近傍」に係止部材(板ばね19、20)を備えた点。

4.当審の判断
上記相違点について検討すると、オーディオ本体への係合部材の設置位置は、当業者であれば必要に応じて適宜選択する設計上の事項といえるものであり、また、上記相違点における係合部材の設置位置の相違によって、オーディオ本体を開口部に固定するという機能に格別の差異が生ずるともいえず、オーディオ本体の「両側」に係合部材を設けるようにすることは、当業者であれば、きわめて容易に想到できた程度の設計上の事項である。

また、本願考案が奏する作用効果も、引用刊行物に記載された考案から予測される程度以上のものでもない。

5.むすび
したがって、本願考案は、引用刊行物に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-08-30 
結審通知日 2001-09-04 
審決日 2001-09-17 
出願番号 実願平5-36743 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 岡田 孝博川本 真裕  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 久雄
藤井 昇
考案の名称 カーオーディオの取付構造  
代理人 青木 輝夫  

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