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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F17C |
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管理番号 | 1048656 |
審判番号 | 審判1999-20865 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2001-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-12-28 |
確定日 | 2001-11-02 |
事件の表示 | 平成 4年実用新案登録願第 76911号「LPG船のLPGタンク構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 5月13日出願公開、実開平 6- 35798]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願は、平成4年10月9日の出願であって、その請求項1ないし請求項4に係る考案は、平成6年7月12日付け、平成8年12月27日付け、平成10年12月22日付け、および平成12年1月20日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載されたとおりの「LPG船のLPGタンク構造」にあるものと認められるところ、請求項1に記載された考案(以下「本願考案」という)は、次のとおりである。 「左舷側と右舷側とにわたって連続する複数の船倉の各々の内部にタンク自体でLPGの内圧に耐える独立形式のLPGタンクであって左舷側と右舷側とにわたるLPGタンクを備えたLPG船において、 前記独立形式の各LPGタンクの内部に、そのLPGタンクの内部を左舷側タンク室と右舷側タンク室とに仕切る仕切壁構造を設け、 前記仕切壁構造は、センターラインを挟んで左右対向状に所定間隔をあけて配設された平板状の1対の液密の仕切壁と、これら両仕切壁に設けられた複数の防撓材と、前記両仕切壁の内部に設けられた防熱構造とを備え、 前記独立形式の各LPGタンクの左舷側タンク室と右舷側タンク室に異種のLPGを積載可能に構成したことを特徴とするLPG船のLPGタンク構造。」 2.引用例 一方、当審において平成13年4月12日付けで通知した拒絶の理由に引用した、実願昭61-166644号(実開昭63-72298号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という)には、つぎの2-1a,bの事項が図面とともに記載されている。 2-1a. (明細書1ページ19行?2ページ16行、第5図参照)「近年液化ガス(LPG,LNG等)の荷液を搬送するタンカーとして、船体内に自立角形タンクを搭載したものが知られている。 この自立角形タンクは、実質的に荷液を貯留する内槽の表面を保冷層にて覆い、外殻となる船体の船倉に収容されるもので、その構造は第5図に示されるように構成されている。 図示されるように、表面が保冷層aで覆われた角形の内層bを重力方向の中心線隔壁dで2室に仕切り、この2室を中心線隔壁dと直交する制水隔壁eでさらに4室に仕切って、それぞれの室を独立した貯留室fとしている。 内槽bの強度を向上させるために、内槽b内の上下部分には、その内槽bの幅方向に間隔をおき内槽bの長手方向に沿って一体にトランスバースgが固着されており、また内槽bの内周面には上下方向に間隔をおき、その内周面に沿って一体に固着されるガーダhが設けられている。」 2-1b. (明細書5ページ2行?15行、第2,5図参照)「内側船体2は船長方向に間隔をおいて配設された隔壁(図示せず)によっ仕切られ、この仕切られた空間が船倉10として区画される。この船倉10は後述する内槽の外殻即ち、外槽となる。 さて、この考案の実施例におけるタンク構造は次のように構成される。 第2図にも示されるように、上記船倉10内には、この船倉10内空間に合せて相似に形成された角形の内槽11が収容されている。内槽11は、この内槽11の重力方向の中心軸を通る中心線隔壁12と、その中心線隔壁12に対して直交する制水隔壁13とにより4部室に分割されており、これら各部屋は液化ガス(LPG、LNG等)等の荷液を貯留する貯留室20となる。」なお、「よっ仕切られ」は、「よって仕切られ」の誤記と認める。 上記2-1aより、引用例1には、表面が保冷層aで覆われた角形の内層bを重力方向の中心線隔壁dで2室に仕切り、この2室を中心線隔壁dと直交する制水隔壁eでさらに4室に仕切って、それぞれの室を独立した貯留室fとした、液化ガス(LPG,LNG等)を搬送するタンカーのための、自立角形タンクが記載されており、このタンクの内層bには、補強のためトランスバースgやガーダhが設けられているものが記載されていると認められる。 また、上記2-1bより、このタンカーは、複数の船倉を持つのであるから、このタンカーには、複数の角形タンクが収容されているものであり(かかる構造自体は周知である。例えば実公昭48-12719号公報参照)、さらに、この自立角形タンクは、左舷側と右舷側に連続する船倉10の内部に備えられているものと認められる。 また、同じく引用した、特公昭48-18168号公報(以下「引用例2」という)には、つぎの2-2の事項が記載されている。 2-2. (1ページ2欄3?7行)「本発明の輸送船は沸点の異なる2種類の低温液化ガスを混載して輸送するのに適している。低温液化プロパンを海外から大量輸送する輸送船は通常同時に低温液化ブタンをも輸送して来るのでこのような輸送船は特に望ましい。」 3.対比 そこで、本願考案(以下「前者」という)と、上記引用例1に記載されたもの(以下「後者」という)とを対比すると、後者の「船倉10」、「角形の内槽b」、「中心線隔壁d」は、それぞれ前者の「船倉」、「独立形式のLPGタンク」、「仕切壁構造」に相当する。 そこで、両者は、 「左舷側と右舷側とにわたって連続する複数の船倉の各々の内部にタンク自体でLPGの内圧に耐える独立形式のLPGタンクであって左舷側と右舷側とにわたるLPGタンクを備えたLPG船において、前記独立形式の各LPGタンクの内部に、そのLPGタンクの内部を左舷側タンク室と右舷側タンク室とに仕切る仕切壁構造を設け」た点で一致し、 前者は「仕切壁構造は、センターラインを挟んで左右対向状に所定間隔をあけて配設された平板状の1対の液密の仕切壁と、これら両仕切壁に設けられた複数の防撓材と、前記仕切壁の内部に設けられた防熱構造とを備え、前記独立形式の各LPGタンクの左舷側タンク室と右舷側タンク室に異種のLPGを積載可能に構成した」ものであるのに対し、後者は、その構成に欠ける点で相違する。 4.判断 上記相違点について検討する。 そもそも、異種のLGPを一隻のタンカーに混載して輸送すること自体は、引用例2の上記2-2の記載に示すように従来周知である。 そして、プロパンとブタンのような沸点の異なる2種類の液化ガスを混載する場合は、両者を断熱した隔壁で分離する必要があることは当然であり(例えば引用例2では、保冷材13で断熱されたタンク外板12’がプロパンとブタンとを分離している)、通常であれば、それぞれ相互に断熱されている別個の自立角形タンクに、これらを分離して収容すれば足りるものであるが、より細かな積み分けをする場合には、自立角形タンク内部に独立した貯留室を構成するために、当初からタンク内部を液密に仕切っている平板状の中心線隔壁を利用して、これを断熱した隔壁となし、各独立した貯留室に沸点の異なる2種類の液化ガスを積み分けるようにすれば良いことは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。 そして、中心線隔壁を断熱隔壁とするにあたり、これを内部に防熱構造を備えた1対の断熱性の液密の仕切壁により構成することは、かかる構造が断熱隔壁として周知のものであり(例えば、引用例2の、船体外板3,熱絶縁層7,金属板8からなる構造参照)、また、仕切壁に複数の防撓材を設けることも、例えば引用例の上記2-1aの記載や、引用例2(水平補強材4,縦補強材5,横補強材6参照)に示すように周知であるので、このようにすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。 5.むすび したがって、本願の請求項1に係る考案は、引用例1および引用例2に記載されたものに基づいて、当業者がきわめて容易に想到し得たものであると認められるので、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。 以上のとおりであるから、本願出願は、他の請求項に係る考案について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-08-16 |
結審通知日 | 2001-08-28 |
審決日 | 2001-09-14 |
出願番号 | 実願平4-76911 |
審決分類 |
U
1
8・
121-
WZ
(F17C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 勝司、池田 貴俊、倉田 和博 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
鈴木 美知子 山崎 豊 |
考案の名称 | LPG船のLPGタンク構造 |
代理人 | 岡村 俊雄 |