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審決分類 |
審判 全部申し立て B60J |
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管理番号 | 1050177 |
異議申立番号 | 異議2000-72382 |
総通号数 | 25 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2002-01-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-08 |
確定日 | 2001-10-12 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2602767号「車両用ドアのウエザーストリップ」の請求項1、2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2602767号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本件実用新案登録第2602767号は、平成4年9月19日(優先権主張番号:実願平3-108591号、優先日:平成3年12月4日、優先権主張国:日本)に出願され、平成11年11月19日に設定登録され、その後、請求項1及び2に係る考案について、石井睦子、坂井晃よりそれぞれ登録異議の申立てがあり、平成12年11月22日付けで取消理由の通知がなされ、その指定期間内の平成13年2月6日付けで実用新案登録異議意見書及び明細書についての訂正請求書が提出されたものである。 【2】訂正の要旨 上記訂正請求は、願書に添付した明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるが、その要旨は、次の訂正事項a?eのとおりのものと認める。 1.訂正事項a 本件実用新案登録第2602767号の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の 「車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」を、 「車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」 と訂正する。 2.訂正事項b 本件実用新案登録第2602767号の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2の 「車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記支持片と前記リップ片の各基端部寄りには薄肉状の弾性変形部がそれぞれ形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片の基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」を、 「車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の-側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、 前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」 と訂正する。 3.訂正事項c 本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の欄の段落[0006]の記載 「[課題を解決するための手段] 前記目的を達成するために、請求項1の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする。」 を、 「[課題を解決するための手段] 前記目的を達成するために、請求項1の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の-側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする。」 と訂正する。 4.訂正事項d 本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の欄の段落[0007]の記載 「また、請求項2の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記支持片と前記リップ片の各基端部寄りには薄肉状の弾性変形部がそれぞれ形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片の基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出されていることを特徴とする。」を、 「また、請求項2の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の-側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、 前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されていることを特徴とする。」 と訂正する。 5.訂正事項e 本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の欄の段落[0004]の記載 「[考案が解決しようとする課題] ところで、図5と図6に示す従来のものにおいて、下リップ体20′全体にわたって略均一な肉厚をもって中空の閉じ断面に形成されるとともに、下リップ体20′はドアガラス4′のガラス面に押圧されながら偏平状に弾性変形される。このため、ガラス面に対する下リップ体20′の接触面積は非常に大きくなることから下リップ体20′の表面に滑り性を良くするための植毛25′が施されているにもかかわらず、ドアガラス4′の開閉(昇降)時において、ガラス面に対する下リップ体20′の摩擦力が大きくなり、雨天や洗車直後において異言(コスレ音)を発生するという問題点があった。」を、 「[考案が解決しようとする課題] ところで、図5と図6に示す従来のものにおいて、下リップ体20′全体にわたって略均一な肉厚をもって中空の閉じ断面に形成されるとともに、下リップ体20′はドアガラス4′のガラス面に押圧されながら偏平状に弾性変形される。このため、ガラス面に対する下リップ体20′の接触面積は非常に大きくなることから下リップ体20′の表面に滑り性を良くするための植毛25′が施されているにもかかわらず、ドアガラス4′の開閉(昇降)時において、ガラス面に対する下リップ体20′の摩擦力が大きくなり、雨天や洗車直後において異音(コスレ音)を発生するという問題点があった。」 と訂正する。 【3】訂正の適否 1.訂正事項aについて (1)訂正事項aは、本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、」を、より下位概念である「前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、」と減縮しようとするものである。 (2)当該減縮した構成は、本件実用新案登録明細書における「考案の詳細な説明」の欄の段落[0013]の「下リップ体20は、リップ片21と支持片27とを備えて中空の閉じ断面に形成されている。…リップ片21の基端部寄りには薄肉状の弾性変形部22が形成され、その弾性変形部22からリップ胴部23にかけてしだいに肉厚が増大されている。さらにリップ片21のリップ胴部23の先端には、ドアガラス4のガラス面に接するシール頭部24がリップ胴部23と連続する上向き傾斜状をなして延長されている。」の記載、段落[0015]の「支持片27は、一端が前記リップ片21の上側傾斜面の先端寄り部分のリップ胴部23とシール頭部24との境界部に結合され、他端が上リップ体15とリップ片21との略中間高さ位置において基体12の一側面のエラストマ層13に結合された状態で上方に向けて湾曲状に突出されている。…」の記載、段落[0017]の「特に、下リップ体20は、そのリップ片21が支持片27を弾性変形させながら同リップ片21基端部の弾性変形部22を屈曲点として弾性変形される。さらに、前記支持片27は上向き湾曲状をなすとともに、その両端から頂部28に向けて肉厚がしだいに減少され、頂部28が最小肉厚とされる一方、リップ片21の胴部23は厚肉に形成されているため、下リップ体20は、一定の方向性をもって弾性変形される。」の記載、段落[0018]の「このようにして、下リップ体20の変形方向に方向性をもたせ、そのリップ片21及び支持片27の弾性変形に基づく弾発力をシール頭部24に作用させ、そのシール頭部24をドアガラス4のガラス面に圧接させることで、シール性の向上を図るとともに、ドアガラス4のガタ付きを確実に防止することができる。」の記載、図面の図1及び図2の範囲内のものと認められる。 (3)したがって、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものと認められる。また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 2.訂正事項bについて (1)訂正事項bは、本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載された「前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、前記支持片と前記リップ片の各基端部寄りには薄肉状の弾性変形部がそれぞれ形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、さらに、前記リップ片の基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出されている」を、より下位概念である「前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されている」と減縮しようとするものである。 (2)当該減縮した構成は、本件実用新案登録明細書における「考案の詳細な説明」の欄の段落[0019]の「…中空の閉じ断面に形成される下リップ体20のリップ片21と支持片27とのうち、リップ片21は、基体12の一側面のエラストマ層13の下部から薄肉状の弾性変形部22を介して上向きに延出され、そのリップ片21のリップ胴部23は厚肉に形成されている。さらにリップ胴部23は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲状に形成されている。」の記載、段落[0020]の「リップ胴部23の先端には、該リップ胴部23と連続してシール頭部24が上方に延出されている。このシール頭部24は、図2に示すように、その上下方向中央部がドアガラス4のドアガラス面に接するように湾曲され、その先端部は半円状に丸められている。…」の記載、段落[0021]の「支持片27は、断面略への字状をなし、その一端が前記リップ片21の上側面の先端寄り部分のリップ胴部23とシール頭部24との境界部に結合され、他端が上リップ体15とリップ片21との間でかつリップ片21寄りに位置する部分において基体12の一側面のエラストマ層13に結合されている。さらに、支持片27の基端部(基体12のエラストマ層13に結合される側)には薄肉状の弾性変形部29が形成されている。…」の記載、段落[0023]の「特に、下リップ体20は、そのリップ片21が支持片27をその弾性変形部29を屈曲点として弾性変形させながら同リップ片21基端部の弾性変形部22を屈曲点として弾性変形されるため、下リップ体20は一定の方向性をもって弾性変形される。」の記載、段落[0024]の「…下リップ体20の変形方向に方向性をもたせ、そのリップ片21及び支持片27の弾性変形に基づく弾発力をシール頭部24に作用させ、そのシール頭部24をドアガラス4のガラス面に圧接させることで、シール性の向上を図るとともに、ドアガラスのガタ付きを確実に防止することができる。」の記載、段落[0025]の「さらに、リップ片21のリップ胴部23は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲状をなし、そのリップ胴部23の先端から延長されたシール頭部24が、その上下方向中央部の凹面部がドアガラス4のガラス面に接するように湾曲されていることから、図4に示すようにドアガラス面に対するリップ片21の接し角度θが小さい状態においてシール頭部24の中央部がドアガラス面に圧接する。」の記載、段落[0026]の「このため、ガラス面に対する下リップ体20の摩擦力をより一層軽減することができ、雨天や洗車直後のドアガラス4の昇降時、特にドアガラス4の下降時においても異音(コスレ音)発生をより一層防止することができる。」の記載、並びに図面の図3及び図4の範囲内のものと認められる。 (3)したがって、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものと認められる。また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 3.訂正事項c?eについて 訂正事項cは、上記訂正事項aに伴って明細書の「考案の詳細な説明」の欄の段落[0006]の記載を訂正後の請求項1に記載した事項と対応させたものであり、明りょうでない記載の釈明に相当する。 訂正事項dは、上記訂正事項bに伴って明細書の「考案の詳細な説明」の欄の段落[0007]の記載を訂正後の請求項2に記載した事項と対応させたものであり、明りょうでない記載の釈明に相当する。 訂正事項eは、本件明細書の「考案の詳細な説明」の欄の段落[0004]の記載のうち「異言(コスレ音)」を「異音(コスレ音)」と訂正するものであり、誤記を訂正するものである。 訂正事項c?eは、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 4.訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、上記訂正請求による訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【4】本件実用新案登録に係る考案 上記「【3】訂正の適否」に説示のとおり、上記明細書についての訂正が認められるから、本件実用新案登録の請求項1,2に係る考案は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の-側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の-側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の-側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。 【請求項2】車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の-側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の-側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の-側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、 前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」 【5】取消理由の概要 上記平成12年11月22日付けで通知した取消理由の概要は、本件実用新案登録の請求項1、2に係る考案は、本件出願前に頒布された刊行物である実公昭55-16738号公報(以下「刊行物1」という。)及び発明協会公開技報84-003171(以下「刊行物2」という。)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件請求項1、2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定により拒絶されるべき出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである、というものである。 【6】実用新案権者の主張 実用新案権者は、登録異議意見書において、本件の請求項1及び2に係る考案の進歩性について、概略、以下のように主張する。 1.請求項1に係る考案は、次の格別の構成及び作用効果を有するものである。 (1)「前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、」の構成要件、 (2)「しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されている」の構成要件、 (3)「リップ片が支持片を弾性変形させながら同リップ片の基端部の弾性変形部を屈曲点として弾性変形される際、支持片は湾曲状態を保ちながら上方に向けて弾性変形する。言い換えると、支持片は、ほぼくの字状に折れ曲りかつその折れたたみ状態(底付き状態)に由来する弾発力の低下が防止されつつ、湾曲状態を保ちながら上方に向けて弾性変形する。このため、下リップ体の変形方向に方向性をもたせ、そのリップ片及び支持片の弾性変形に基づく弾発力をリップ片先端のシール頭部に作用させることで、そのシール頭部をドアガラス面に圧接させることができる。これによって、ドアガラスのガタ付き防止やシール性の向上を図ることができるとともに、ガラス面に対する下リップ体の摩擦力を軽減させてドアガラスの昇降時の異音発生を防止することができる。」等の作用効果、 (4)「リップ胴部とシール頭部との境界部は、下リップ体の可能な限り先端に近い位置で十分な圧接力を与えることができる位置であり、また、ドアガラスに対するシール頭部の圧接時の弾性変形にて、ドアガラス下降時のガラス面とシール頭部との摩擦による引き摺りを防止する接し角度を得やすい位置である。そして、このリップ胴部とシール頭部との境界部に、支持片の先端が結合されることで、支持片の弾発力をシール頭部に効果的に作用させてシール性をより一層向上させることができるとともに、ガラス昇降時の異音発生を防止することができる。」等の作用効果 2.請求項2に係る考案は、次の格別の構成及び作用効果を備えるものである。 (1)「さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、」の構成要件、 (2)「前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、」の構成要件、 (3)「前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されている」の構成要件、 (4)「リップ片が支持片を弾性変形させながら同リップ片の基端部の弾性変形部を屈曲点として弾性変形される際、支持片はその基端部の薄肉状の弾性変形部において弾性変形する。言い換えると、支持片は、ほぼくの字状に折れ曲りかつその折れたたみ状態(底付き状態)に由来する弾発力の低下が防止されつつ、その基端部の薄肉状の弾性変形部において弾性変形する。このため、下リップ体の変形方向に方向性をもたせ、そのリップ片及び支持片の弾性変形に基づく弾発力をリップ片先端のシール頭部に作用させることで、そのシール頭部をドアガラス面に圧接させることができる。これによって、ドアガラスのガタ付き防止やシール性の向上を図ることができるとともに、ガラス面に対する下りツプ体の摩擦力を軽減させてドアガラスの昇降時の異音発生を防止することができる。」等の作用効果、 (5)「シール頭部は、リップ胴部よりもさらに湾曲しているため、シール頭部のドアガラス面に対する接触面積や接し角度を可及的に小さくすることが可能となる。この結果、ドアガラス面に対する下リップ体の摩擦力をより一層軽減することができ、雨天又は洗車直後のドアガラスの昇降時、特にドアガラスの下降においても異音発生を防止することができる。」等の作用効果 【7】当審の認定・判断 1.引用例に記載された事項 上記取消理由において引用された刊行物1,2には、それぞれ、以下の事項が記載されているものと認める。 (1)刊行物1 刊行物1には、 イ)「本考案は自動車等の車両のドア等に設けられる上下昇降式窓ガラスの水切り装置に関する。」(第1欄第36?37行)、 ロ)「上下に昇降する窓ガラスと外板との間に弾性材料製の水切り材が設けられるものにおいて、該水切り材が前記外板に固定される取付部、先端を前記窓ガラス外表面に接して水切り作用する薄肉板状のシールリップ、および前記窓ガラスと前記外板との間隙に対応して弾性変形し前記シールリップ先端を前記窓ガラス外表面に常に一定の圧力で接触させる作用部材を備え、該作用部材が前記窓ガラス外表面と接する腹部の上端に設けられた伸縮部と同上端より下方の腹部に設けられた首部を介して前記取付部に一体的に結合し、前記腹部と前記伸縮部との接続端部が上記首部を中心として回動変位して前記シールリップを動作するように構成することを特徴とする上下昇降式窓ガラスの水切り装置。」(第1欄第20?34行)、 ハ)「第2図のように本考案による水切り材3′はドア外板等に固定される取付部4′の上部に、第1図の従来のものと同じような薄肉板状のシールリップ5′が設けられ、その下方の取付部4′のほぼ全域に作用部材8が設けられている。この作用部材8は実線のようにノ字形の腹部9の両端がそれぞれくびれた首部10を介して取付部4′の下部に結合されると共に、薄肉の伸縮部11を介して取付部4′の上部に結合されて成る。」(第2欄第20?28行)、 ニ)「作用部材8の腹部9が窓ガラス外表面7に緊密に接しているため、水漏れ防止の効果もある。」(第4欄第1?2行) 等の記載があり、 また、図面第2図には、 ホ)前記ノ字形の腹部9は、中央部が厚肉状に形成され、前記くびれた首部10から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成される点、 ヘ)前記ノ字形の腹部9は、ノ字形の腹部9の先端側で、上下方向中央部が窓ガラス面に接するように湾曲されている点(第2図の一点鎖線参照)、 が示されているものと認められる。 したがって、これらの記載及び図面等を参照すると、刊行物1には、 “車両用ドアの外板上縁部に組付けられる取付部4′と、該取付部4′の-側面から窓ガラス1に向けて上向き傾斜状に延出されたシールリップ5′と、該シールリップ5′の下方に位置して前記取付部4′の一側面に突出された作用部材8とを一体に備え、 前記作用部材8は、前記取付部4′の-側面から上向き傾斜状に延出されたノ字形の腹部9と、薄肉の伸縮部11とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記ノ字形の腹部9は、その基端部寄りに薄肉状のくびれた首部10が形成されるとともに、前記ノ字形の腹部9の胴部は厚肉状に形成され、前記ノ字形の腹部9の基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、その胴部の先端には、窓ガラス外表面7に接するシール部が胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記薄肉の伸縮部11は、その基端が前記シールリップ5′と前記ノ字形の腹部9との中間位置において前記取付部4′の-側面に結合され、先端が前記ノ字形の腹部9の上側面の先端に結合され、 しかも、前記伸縮部11は、その中央部が下方に向けて突出する湾曲状に形成されている車両用ドアの水切り装置.” が記載されているものと認める。 (2)刊行物2 上記刊行物2には、自動車のドアアウタウエザストリップ(以下W/S)に関し、 ト)「シール圧の向上を図り、ドア廻りの風切音低減とドアガラスのワイピング機能を向上させる」、 チ)「第1図はドアアウタW/Sの断面を示し、アウタW/S3′のリップ4′から外側に向けてたわみ部7を出し、これをたわませることによりシール圧の増加を図った」 等の記載があり、また、第1図を参照すると、 リ)リップ4′はその基端部寄りに弾性変形部が形成され、 ヌ)前記リップ4′の先端は、ドアガラス5面に接するシール頭部として、リップ中央部と連続して上向き傾斜状に延長され、 ル)たわみ部7は、その先端が、前記リップ4′のドアガラス5面に接する部分より下方位置において前記リップ4′に結合され、中央部が上方に向けて突出する形状に形成されているものと認められる。 したがって、刊行物2には、 “自動車のドアパネル上縁部に組付けられる基体と、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ4′と、先端が前記リップ4′の上側面の先端寄りに結合され基端が前記リップ4′の前記基体への結合位置より上方位置において前記基体に結合されたたわみ部7とを一体に備えて、中空の閉じ断面に形成され、前記リップ4′は、その基端部寄りに弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ4′の先端には、ドアガラス5面に接するシール頭部がリップ中央部と連続して上向き傾斜状に延長され、しかも、前記たわみ部7は、先端がドアガラス5面に接する前記シール頭部の下方に結合され、中央部が上方に向けて突出する形状に形成されている自動車用ドアアウタウエザストリップ(W/S)” が記載されているものと認める。 2.対比・判断 2-1.請求項1に係る考案について (1)本件請求項1に係る考案と上記刊行物1に記載されたものとを対比すると、後者の“外板2”、“取付部4′”、“窓ガラス1”、“シールリップ5′”、“作用部材8” 、“ノ字形の腹部9” 、“くびれた首部10”、“伸縮部11” 、“水切り装置”が、それぞれ前者の「ドアパネル」、「基体」、「ドアガラス」、「上リップ体」、「下リップ体」、「リップ片」、「弾性変形部」、「支持片」、「ウエザーストリップ」に対応し、 両者は、 車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の-側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の-側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との間の位置において前記基体の-側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端側に結合されている車両用ドアのウエザーストリップ. である点で一致し、次の相違点1?3で相違する。 〈相違点1〉 本件請求項1に係る考案は、ドアガラス面に接するシール部が「シール頭部」とされ、支持片の先端とリップ片との結合位置が、リップ片の先端寄りのリップ胴部とシール頭部との境界部であるのに対して、刊行物1に記載されたものは、ドアガラス面に接するシール部が「シール頭部」と記載されたものではなく、支持片先端とリップ片との結合位置がリップ片の先端位置である点 〈相違点2〉 支持片の基端と基体との結合位置が、本件請求項1に係る考案は、上リップ体とリップ片との略中間位置であるのに対して、刊行物1に記載されたものでは、上リップ体に寄った位置である点 〈相違点3〉 本件請求項1に係る考案は、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されているのに対して、刊行物1に記載されたものは、支持片(伸縮部11)は、その中央部が下方に向けて突出する湾曲状に形成されている点 (2)そこで、先ず上記相違点1について検討する。 刊行物2に記載された自動車のドアウエザーストリップも、たわみ部7はリップ4′に対して支持片として機能し、ドアガラス面に弾接されるリップ4′の頭部がシール部とされており、たわみ部7の先端が、前記リップ4′がドアガラス5面に接する頭部の下方位置において前記リップ4′に結合されており、このものにおいても、たわみ部7は、リップ4′のたわみ部7先端との結合位置より先端部分のある程度の弾性変形を許容しながら、前記リップ4′とドアガラス5との接触面に圧接力を加えていることは明らかであるから、刊行物1に記載されたものにおいて、ドアガラス面に弾接されるリップ片のシール部を「シール頭部」とし、支持片の先端とリップ片との結合位置をリップ片の先端寄りのリップ胴部とシール頭部との境界部とすることは、刊行物2に記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に想到し得たこととするのが相当である。 (3)次に、上記相違点2について検討する。 支持片の基端の結合位置は、リップ片に有効な支持力を与えることができるように、先端とリップ片との結合位置に対応させて適宜選択し得る程度のものにすぎないから、支持片の基端と基体との結合位置を、上リップ体とリップ片との略中間位置とした点は、当業者が適宜なし得る設計事項というべきものである。 (4)次に上記相違点3について検討する。 刊行物2に記載された自動車のドアウエザーストリップにおけるたわみ部7も、中央部が上方に向けて突出する形状に形成されており、中央部分が殊更肉薄に形成されているものとも認められないから、たわみ部7が、ほぼくの字状に折れ曲りかつその折れたたみ状態(底付き状態)となって弾発力の低下が生じるものとも認められず、また、たわみ部又は支持部を湾曲状に形成することは本件実用新案登録の出願前に周知の事項とも認められる(実開平3-104457号公報、特開昭52-153060号公報、特開昭50-47317号公報等参照)から、支持片を、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成することが困難とはいえない。 (5)以上のとおり、上記相違点1?3における請求項1に係る考案の構成は、当業者がきわめて容易に想到し得るものである。また、本件請求項1に係る考案による作用効果は、上記刊行物1,2に記載されたもの及び周知の事項から予測し得る程度のものと認められる。 よって、本件請求項1に係る考案は、上記刊行物1,2にそれぞれ記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 2-2.請求項2に係る考案について (1)本件請求項2に係る考案と上記刊行物1に記載されたものとを対比すると、後者の“外板2”、“取付部4′”、“窓ガラス1”、“シールリップ5′”、“作用部材8” 、“ノ字形の腹部9” 、“くびれた首部10”、“伸縮部11” 、“水切り装置”が、それぞれ前者の「ドアパネル」、「基体」、「ドアガラス」、「上リップ体」、「下リップ体」、「リップ片」、「弾性変形部」、「支持片」、「ウエザーストリップ」に対応し、 両者は、 車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の-側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の-側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、シール部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との間の位置において前記基体の-側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端側に結合されている車両用ドアのウエザーストリップ. である点で一致し、次の相違点4?6で相違する。 〈相違点4〉 本件請求項2に係る考案は、前記シール部を「上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部」として構成し、支持片とリップ片との結合位置をリップ片の先端寄りの位置としているのに対して、刊行物1に記載されたものは、前記シール部が「シール頭部」と記載されたものではなく、支持片とリップ片との結合位置が支持片の先端位置である点 〈相違点5〉 支持片の基端と基体との結合位置が、本件請求項2に係る考案は、上リップ体とリップ片との略中間位置であるのに対して、刊行物1に記載されたものでは、上リップ体に寄った位置である点 〈相違点6〉 本件請求項2に係る考案は、「前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されている」のに対して、刊行物1に記載されたものは、支持片(伸縮部11)の基端部が薄肉状に形成されているものではない点 (2)そこで、先ず上記相違点4について検討する。 シール部を「上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部」として構成することは、周知の事項であり(実開昭56-111010号公報、実開昭61-193821号公報)、また、支持片とリップ片との結合位置をリップ片の先端寄りの位置とする点は前記刊行物2に記載されたものも備える構成であるから、相違点4における請求項2に係る考案の構成は、前記周知の事項に従って前記刊行物2に記載された構成を刊行物1に記載されたものに適用することにより得られるものであり、当業者がきわめて容易に想到し得るものとするのが相当である。 (3)次に上記相違点5について検討する。 支持片の基端の結合位置は、リップ片に有効な支持力を与えることができるように、先端とリップ片との結合位置に対応させて適宜選択し得る程度のものにすぎないから、支持片の基端と基体との結合位置を、上リップ体とリップ片との略中間位置とした点は、当業者が適宜なし得る設計事項というべきものである。 (4)上記相違点6について検討する。 上記刊行物1に記載されたものも、第2図を参照すると、伸縮部11は基端部側で変形しているから、支持片の基端部に薄肉状の弾性変形部を形成することは、刊行物1に記載されたものからきわめて容易に想到し得ることである。 (5)以上のとおり、上記相違点4?6における請求項2に係る考案の構成は、当業者がきわめて容易に想到し得るものである。また、本件請求項2に係る考案による作用効果は、上記刊行物1,2に記載されたもの及び周知の事項から予測し得る程度のものと認められる。 よって、本件請求項2に係る考案は、上記刊行物1,2にそれぞれ記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 【8】むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1,2に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 車両用ドアのウエザーストリップ (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記支持片は、その基盤が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。 【請求項2】 車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、 前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は車両用ドアのウエザーストリップに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 一般に、車両用ウエザーストリップは、ドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面から延出された上下の両リップ体とを一体に備えている。これら両リップ体は、ドアガラス面に圧接されて弾性変形され、その弾性変形に基づく弾発力によってドアガラスとドアパネル上縁との間のシール性やドアガラスのガタ付き(横振れ)防止が図られている。 したがって、上下の両リップ体の弾性変形に基づく弾発力が大きいほどシール性やドアガラスのガタ付き防止に効果がある。 【0003】 従来、図5と図6に示すように、ウエザーストリップ11´において、外側から視認することができない下リップ体20´を中空の閉じ断面に形成して、下リップ体20´の弾発力を大きくし、シール性やドアガラスのガタ付き防止の向上を図ろうとしたものがある。 【0004】 【考案が解決しようとする課題】 ところで、図5と図6に示す従来のものにおいて、下リップ体20´全体にわたって略均一な肉厚をもって中空の閉じ断面に形成されるとともに、下リップ体20´はドアガラス4´のガラス面に押圧されながら偏平状に弾性変形される。このため、ガラス面に対する下リップ体20´の接触面積は非常に大きくなることから下リップ体20´の表面に滑り性を良くするための植毛25´が施されているにもかかわらず、ドアガラス4´の開閉(昇降)時において、ガラス面に対する下リップ体20´の摩擦力が大きくなり、雨天や洗車直後において異音(コスレ音)を発生するという問題点があった。 【0005】 この考案は、前記した従来の問題点に鑑み、ドアガラスのガタ付き防止やシール性の向上を図ることを目的とする。さらに、ドアガラス昇降時の際の異音発生を防止することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 前記目的を達成するために、請求項1の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする。 【0007】 また、請求項2の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、 前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されていることを特徴とする。 【0008】 【作用】 前記したように構成される請求項1の車両用ドアのウエザーストリップにおいて、ドアパネルの上縁にウエザーストリップが組付けられた状態において、下リップ体は、そのリップ片が支持片を弾性変形させながら同リップ片の基端部の弾性変形部を屈曲点として弾性変形される。前記支持片は上向き湾曲状をなす一方、リップ片のリップ胴部は肉厚に形成されているため、下リップ体は一定の方向性をもって弾性変形される。 このようにして、下リップ体の変形方向に方向性をもたせ、そのリップ片及び支持片の弾性変形に基づく弾発力をリップ片先端のシール頭部に作用させることで、そのシール頭部をドアガラス面に圧接させる。 【0009】 また、請求項2の車両用ドアのウエザストリップにおいて、ドアパネルの上縁にウエザーストリップが組付けられた状態において、下リップ体は、そのリップ片が支持片の基端部の弾性変形部を屈曲点として弾性変形させながら同リップ片の基端部の弾性変形部を屈曲点として弾性変形されるため、下リップ体は一定の方向性をもって弾性変形される。 さらに、リップ片のリップ胴はその基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲状をなし、そのリップ胴先端から延長されたシール頭部が、その上下方向中央部がドアガラスに接するように湾曲されていることから、ドアガラス面に対するリップ片の接し角度が小さい状態においてシール頭部の中央部をドアガラス面に圧接させる。 【0010】 【実施例】 (実施例1) 以下、この考案の実施例1を図1と図2にしたがって説明する。 図1において、車両用ドアのドアパネル1の上縁フランジ2に取付クリップ3によって組付けられるウエザーストリップ11は、基体12と上下の両リップ体15,25とを一体に備えている。 【0011】 基体12は、金属板が断面略逆U字状に折曲されて形成され、その溝内には、取付クリップ3が嵌込まれる。基体12の一側面に設けられた合成樹脂・ゴム等のエラストマ層13には、上下の両リップ体15,20が押出成形によってエラストマ層13と一体に形成されている。 【0012】 上リップ体15は、基体12の一側面のエラストマ層13の上部からドアガラス4に向けて上向き傾斜状に延出されている。さらに上リップ体15の基部には薄肉状の弾性変形部16が形成され、同上リップ体15の下側傾斜面の中央部から先端部にわたって塗布された接着層には静電気によってナイロン繊維・ポリエステル繊維等よりなる植毛17が施されている。 【0013】 下リップ体20は、リップ片21と支持片27とを備えて中空の閉じ断面に形成されている。リップ片21は、上リップ体15と略平行して基体12の一側面のエラストマ層13の下部から上向き傾斜状に延出されている。 リップ片21の基端部寄りには薄肉状の弾性変形部22が形成され、その弾性変形部22からリップ胴部23にかけてしだいに肉厚が増大されている。さらにリップ片21のリップ胴部23の先端には、ドアガラス4のガラス面に接するシール頭部24がリップ胴部23と連続する上向き傾斜状をなして延長されている。 【0014】 また、リップ片21の下側傾斜面において、その弾性変形部22の一部からリップ胴部23及びシール頭部24にわたって塗布された接着層には静電気によってナイロン繊維・ポリエステル繊維等よりなる植毛25が施されている。 【0015】 支持片27は、一端が前記リップ片21の上側傾斜面の先端寄り部分のリップ胴部23とシール頭部24との境界部に結合され、他端が上リップ体15とリップ片21との略中間高さ位置において基体12の一側面のエラストマ層13に結合された状態で上方に向けて湾曲状に突出されている。さらに、支持片27は、その両端から中央部の頂部28に向けて肉厚がしだいに減少され、頂部28が最小肉厚とされている。 【0016】 この実施例1は上述したように構成される。したがって、ドアパネル1の上縁フランジ2に取付クリップ3によってウエザーストリップ11が組付けられた状態において、上下の両リップ体15,20は、その各弾性変形部16,22を屈曲点として弾性変形される。 【0017】 特に、下リップ体20は、そのリップ片21が支持片27を弾性変形させながら同リップ片21基端部の弾性変形部22を屈曲点として弾性変形される。さらに、前記支持片27は上向き湾曲状をなすとともに、その両端から頂部28に向けて肉厚がしだいに減少され、頂部28が最小肉厚とされる一方、リップ片21の胴部23は厚肉に形成されているため、下リップ体20は、一定の方向性をもって弾性変形される。 【0018】 このようにして、下リップ体20の変形方向に方向性をもたせ、そのリップ片21及び支持片27の弾性変形に基づく弾発力をシール頭部24に作用させ、そのシール頭部24をドアガラス4のガラス面に圧接させることで、シール性の向上を図るとともに、ドアガラス4のガタ付きを確実に防止することができる。 【0019】 (実施例2) 次に、この考案の実施例2を図3と図4にしたがって説明すると、この実施例2においては、特に、下リップ体20の構造を変更したものである。 すなわち、中空の閉じ断面に形成される下リップ体20のリップ片21と支持片27とのうち、リップ片21は、基体12の一側面のエラストマ層13の下部から薄肉状の弾性変形部22を介して上向きに延出され、そのリップ片21のリップ胴部23は厚肉に形成されている。さらにリップ胴部23は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲状に形成されている。 【0020】 リップ胴部23の先端には、該リップ胴部23と連続してシール頭部24が上方に延出されている。このシール頭部24は、図2に示すように、その上下方向中央部がドアガラス4のドアガラス面に接するように湾曲され、その先端部は半円状に丸められている。 また、ウインドガラス4のガラス面に対向するリップ片21のリップ胴部23及びシール頭部24には実施例1と同様にしてナイロン繊維・ポリエステル繊維等よりなる植毛25が施されている。 【0021】 支持片27は、断面略への字状をなし、その一端が前記リップ片21の上側面の先端寄り部分のリップ胴部23とシール頭部24との境界部に結合され、他端が上リップ体15とリップ片21との間でかつリップ片21寄りに位置する部分において基体12の一側面のエラストマ層13に結合されている。さらに、支持片27の基端部(基体12のエラストマ層13に結合される側)には薄肉状の弾性変形部29が形成されている。 なお、その他の部分及び部材は実施例1と略同様のため、同一部分及び部材に対し同一付号を付記してその説明は省略する。 【0022】 この実施例2は上述したように構成される。したがって、ドアパネル1の上縁フランジ2に取付クリップ3によってウエザーストリップ11が組付けられた状態において、上下の両リップ体15,20は、その各弾性変形部を16,22屈曲点として弾性変形される。 【0023】 特に、下リップ体20は、そのリップ片21が支持片27をその弾性変形部29を屈曲点として弾性変形させながら同リップ片21基端部の弾性変形部22を屈曲点として弾性変形されるため、下リップ体20は一定の方向性をもって弾性変形される。 【0024】 このようにして、下リップ体20の変形方向に方向性をもたせ、そのリップ片21及び支持片27の弾性変形に基づく弾発力をシール頭部24に作用させ、そのシール頭部24をドアガラス4のガラス面に圧接させることで、シール性の向上を図るとともに、ドアガラスのガタ付きを確実に防止することができる。 【0025】 さらに、リップ片21のリップ胴部23は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲状をなし、そのリップ胴部23の先端から延長されたシール頭部24が、その上下方向中央部の凹面部がドアガラス4のガラス面に接するように湾曲されていることから、図4に示すようにドアガラス面に対するリップ片21の接し角度θが小さい状態においてシール頭部24の中央部がドアガラス面に圧接する。 【0026】 このため、ガラス面に対する下リップ体20の摩擦力をより一層軽減することができ、雨天や洗車直後のドアガラス4の昇降時、特にドアガラス4の下降時においても異音(コスレ音)発生をより一層防止することができる。 【0027】 【考案の効果】 以上述べたように、請求項1の考案によれば、下リップ体を、リップ片と支持片とにより中空の閉じ断面に形成しかつその変形に方向性をもたせて安定した弾発力を得ることで、ドアガラスのガタ付き防止やシール性の向上を図ることができる。 また、請求項2の考案によれば、ドアガラス面に対するリップ片の接し角度を小さくし、かつシール頭部の中央部をドアガラス面に圧接させることで、ガラス面に対する下リップ体の摩擦力をより一層軽減することができ、雨天や洗車直後のドアガラスの昇降時、特にドアガラスの下降時においても異音(コスレ音)発生をより一層防止することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 この考案の実施例1のウエザーストリップを示す断面図である。 【図2】 同じくウエザーストリップの上下の両リップ体が弾性変形された状態を示す断面図である。 【図3】 この考案の実施例2のウエザーストリップを示す断面図である。 【図4】 同じくウエザーストリップの上下の両リップ体が弾性変形された状態を示す断面図である。 【図5】 従来のウエザーストリップを示す断面図である。 【図6】 同じくウエザーストリップの上下の両リップ体が弾性変形された状態を示す断面図である。 【符号の説明】 1 ドアパネル 11 ウエザーストリップ 12 基体 15 上リップ体 20 下リップ体 21 リップ片 22 弾性変形部 23 リップ胴部 24 シール頭部 27 支持片 |
訂正の要旨 |
1.訂正事項a 実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、本件実用新案登録第2602767号の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1の 「車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」を、 「車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」 と訂正する。 2.訂正事項b 実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、本件実用新案登録第2602767号の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2の 「車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記支持片と前記リップ片の各基端部寄りには薄肉状の弾性変形部がそれぞれ形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片の基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」を、 「車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の-側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、 前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されていることを特徴とする車両用ドアのウエザーストリップ。」 と訂正する。 3.訂正事項c 明りょうでない記載の釈明を目的として、本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の欄の段落[0006]の記載 「[課題を解決するための手段] 前記目的を達成するために、請求項1の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする。」 を、 「[課題を解決するための手段] 前記目的を達成するために、請求項1の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向きに延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、そのリップ胴部の先端には、ドアガラス面に接するシール頭部がリップ胴部と連続して上向き傾斜状に延長され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りにおいて、前記リップ胴部と前記シール頭部との境界部に結合され、 しかも、前記支持片は、その中央部が上方に向けて突出する湾曲状に形成されていることを特徴とする。」 と訂正する。 4.訂正事項d 明りょうでない記載の釈明を目的として、本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の欄の段落[0007]の記載 「また、請求項2の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、一端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され他端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合された支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記支持片と前記リップ片の各基端部寄りには薄肉状の弾性変形部がそれぞれ形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片の基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出されていることを特徴とする。」を、 「また、請求項2の考案に係る車両用ドアのウエザーストリップは、車両用ドアのドアパネル上縁部に組付けられる基体と、該基体の一側面からドアガラスに向けて上向き傾斜状に延出された上リップ体と、該上リップ体の下方に位置して前記基体の一側面に突出された下リップ体とを一体に備え、 前記下リップ体は、前記基体の一側面から上向き傾斜状に延出されたリップ片と、支持片とを備えて中空の閉じ断面に形成され、 前記リップ片は、その基端部寄りに薄肉状の弾性変形部が形成されるとともに、前記リップ片のリップ胴部は厚肉状に形成され、 さらに、前記リップ片は、その基端側から先端側に向けてしだいに傾斜角度が増大された湾曲に形成され、そのリップ胴部の先端には、上下方向中央部がドアガラス面に接するように前記リップ胴部よりもさらに湾曲されたシール頭部が前記リップ胴部と連続して上向き傾斜状に延出され、 前記支持片は、その基端が前記上リップ体と前記リップ片との略中間位置において前記基体の一側面に結合され、先端が前記リップ片の上側面の先端寄りに結合され、 前記支持片の基端部には薄肉状の弾性変形部が形成されていることを特徴とする。」 と訂正する。 5.訂正事項e 誤記の訂正を目的として、本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の欄の段落[0004]の記載 「[考案が解決しようとする課題] ところで、図5と図6に示す従来のものにおいて、下リップ体20´全体にわたって略均一な肉厚をもって中空の閉じ断面に形成されるとともに、下リップ体20´はドアガラス4´のガラス面に押圧されながら偏平状に弾性変形される。このため、ガラス面に対する下リップ体20´の接触面積は非常に大きくなることから下リップ体20´の表面に滑り性を良くするための植毛25´が施されているにもかかわらず、ドアガラス4´の開閉(昇降)時において、ガラス面に対する下リップ体20´の摩擦力が大きくなり、雨天や洗車直後において異言(コスレ音)を発生するという問題点があった。」を、 「[考案が解決しようとする課題] ところで、図5と図6に示す従来のものにおいて、下リップ体20´全体にわたって略均一な肉厚をもって中空の閉じ断面に形成されるとともに、下リップ体20´はドアガラス4´のガラス面に押圧されながら偏平状に弾性変形される。このため、ガラス面に対する下リップ体20´の接触面積は非常に大きくなることから下リップ体20´の表面に滑り性を良くするための植毛25´が施されているにもかかわらず、ドアガラス4´の開閉(昇降)時において、ガラス面に対する下リップ体20´の摩擦力が大きくなり、雨天や洗車直後において異音(コスレ音)を発生するという問題点があった。」 と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-08-27 |
出願番号 | 実願平4-71555 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZA
(B60J)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 粟津 憲一 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 ぬで島 慎二 |
登録日 | 1999-11-19 |
登録番号 | 実用新案登録第2602767号(U2602767) |
権利者 |
トヨタ自動車株式会社 愛知県豊田市トヨタ町1番地 東海興業株式会社 愛知県大府市長根町4丁目1番地 |
考案の名称 | 車両用ドアのウエザーストリップ |
代理人 | 池田 敏行 |
代理人 | 池田 敏行 |
代理人 | 池田 敏行 |
代理人 | 岡田 英彦 |
代理人 | 岡田 英彦 |
代理人 | 岡田 英彦 |