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審決分類 |
審判 全部申し立て A01C |
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管理番号 | 1050179 |
異議申立番号 | 異議1999-74751 |
総通号数 | 25 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2002-01-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-14 |
確定日 | 2001-11-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第2596515号「作業用走行車における昇降シリンダの連結構造」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第2596515号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件登録第2596515号実用新案の請求項1に係る考案は、平成4年5月6日に実用新案登録出願され、平成11年4月9日にその実用新案権の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について、異議申立人、中森巧より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由を通知したところ、平成12年10月3日に訂正請求がなされ、さらに、訂正拒絶理由を通知したところ、意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否について 2-1.訂正明細書の考案 訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正明細書の考案」という)は、訂正明細書の実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、 「機体後部に、昇降リンク機構を介して作業部を連結すると共に、該作業部を、機体と昇降リンク機構との間に介設される油圧シリンダ(25)の伸縮作動に基づいて昇降せしめてなる作業用走行車において、前記油圧シリンダを油圧シリンダのロッド(25a)の伸長方向が前方上方を向くよう前傾姿勢に配置すると共に、ロツド先端部を、昇降リンク機構の左右アツパリンク(21)に回動自在に連結支持するにあたり、油圧シリンダのロツド先端部には、左右に支軸挿入口(26b)が開設されたボス部を設ける一方、左右アツパリンクには、該左右アツパリンクの上面より上方に位置して支軸挿通孔(30a)が形成されたシリンダブラケツトを設け、左右対応する側の支軸挿入口および支軸挿通孔に支軸(31a)を着脱自在に挿入してボス部を回動支持するように構成したことを特徴とする作業用走行車における昇降シリンダの連結構造。」 により特定されるものである。 2-2.引用刊行物記載の考案 訂正拒絶理由で引用した、実公平3-28728号公報(以下、「引用刊行物1」という)、実公昭62-39986号公報(以下、「引用刊行物2」という)及び特開昭57-43602号公報(以下、「引用刊行物3」という)には、次の事項が記載されている。 引用刊行物1 「機体A後端に左右一対のトップリンク5A,5B及び左右一対のロアーリンク6からなる昇降リンク7を介して油圧シリンダ8によって昇降駆動可能に対地作業装置の一つである苗植付装置9を連結して水田作業機の一つである乗用型田植機を構成してある。」(3欄15?20行) 「第1図及び第2図に示すように、トップリンク5A,5Bの基端を上下回動可能に枢支した機体フレーム側縦フレーム18,18に対して油圧シリンダ8の基端を上下揺動可能に枢支するとともに、油圧シリンダ8の他端側をトップリンク5A,5B間に上下揺動可能に枢支されたブラケツト19に対してピストンロッド20を貫通させて、このピストンロッド20を軸心方向で摺動可能にかつ抜止め固定してある。前記ピストンロッド20にフランジ21を固着するとともに、このフランジ21と前記ブラケツト19との間にコイルバネ22を介装して、苗植付装置9の接地状態での微小振動を吸収緩和する緩衝機構に構成してある。」(4欄5?18行) 上記記載及び図面の記載によると、引用刊行物1には、機体A後部に、昇降リンク7を介して苗植付装置9を連結すると共に、該苗植付装置9を、機体Aと昇降リンク7との間に介設される油圧シリンダ8の伸縮作動に基づいて昇降せしめてなる作業用走行車において、前記油圧シリンダ8を油圧シリンダ8のピストンロッド20の伸長方向が後方上方を向くよう後傾姿勢に配置すると共に、ピストンロッド先端部を、昇降リンク7の左右のトップリンク5A,5Bに回動自在に連結支持するにあたり、油圧シリンダ8のピストンロッド先端部には、左右に支軸挿入口が開設されたブラケット19を設ける一方、左右のトップリンク5A,5Bには支軸挿通孔を形成し、左右対応する側の支軸挿入口および支軸挿通孔に支軸を着脱自在に挿入してブラケット19を回動支持するように構成した作業用走行車における昇降シリンダの連結構造(以下、「引用刊行物1の考案」という)が記載されていると認められる。 引用刊行物2 「36は変速機5の後方下面に設けた後部支柱で、左右に軸着した上部リンク37,37と下部リンク38,38による上下一対のリンクの先端に軸着したプレート39とによって平行四辺形リンクを構成し、該プレート39に作業機を装着するヒッチ金具40を設けてある。又、前記後部支柱36の下端と上リンク37,37の先端との間に油圧シリンダ41,41を設けてあり、この油圧シリンダ41,41には前記油圧ポンプ32と油圧ホース42で接続されている。」(3欄44行?4欄9行) 第3図には、上部リンク37,37に、該左右の上部リンク37,37の上面より上方に位置して支軸挿通孔が形成されたシリンダブラケツトを設けて、油圧シリンダ41,41のロツド先端部を、昇降リンク機構の左右の上部リンク37,37に回動自在に連結支持する構成が記載されている。 引用刊行物3 「上部連結リンク(14)とミッションケース(M)との間に縦向きの伸縮シリンダによる昇降駆動体(16)の一対を設けることで、作業機(6)を第1図で示す如く昇降自在としている。」(2頁右上欄14?18行) 2-3.対比・判断 訂正明細書の考案と引用刊行物1の考案とを比較すると、引用刊行物1の考案の「昇降リンク7」、「苗植付装置9」、「トップリンク5A,5B」及び「ブラケット19」が、訂正明細書の考案の「昇降リンク機構」、「作業部」、「アツパリンク(21)」及び「ボス部」にそれぞれ相当しているので、両者は、 機体後部に、昇降リンク機構を介して作業部を連結すると共に、該作業部を、機体と昇降リンク機構との間に介設される油圧シリンダの伸縮作動に基づいて昇降せしめてなる作業用走行車において、前記油圧シリンダのロツド先端部を、昇降リンク機構の左右アツパリンクに回動自在に連結支持するにあたり、油圧シリンダのロツド先端部には、左右に支軸挿入口が開設されたボス部を設ける一方、左右アツパリンク側には支軸挿通孔を形成し、左右対応する側の支軸挿入口および支軸挿通孔に支軸を着脱自在に挿入してボス部を回動支持するように構成した作業用走行車における昇降シリンダの連結構造で一致し、 (A)訂正明細書の考案が、「油圧シリンダを油圧シリンダのロッド(25a)の伸長方向が前方上方を向くよう前傾姿勢に配置」しているのに対し、引用刊行物1の考案は、油圧シリンダ8のピストンロッド20の伸長方向が後方上方を向くよう後傾姿勢に配置されている点 (B)訂正明細書の考案が、「左右アツパリンクには、該左右アツパリンクの上面より上方に位置して支軸挿通孔(30a)が形成されたシリンダブラケツトを設け」ているのに対し、引用刊行物1の考案は、左右のトップリンク5A,5Bに支軸挿通孔を形成しており、トップリンク5A,5Bの上面より上方に位置するシリンダブラケツトを設けていない点 で構成が相違する。 まず、上記相違点(A)について検討すると、引用刊行物3には、横方向に配置された上部連結リンク(14)を縦方向に配置された昇降駆動体(16)によって昇降させることが記載されている、すなわち、油圧シリンダのロッドの伸長力がトップリンクである上部連結リンク(14)を効率的に上昇させる方向に油圧シリンダを配置することが開示されているといえるから、引用刊行物1の考案において、油圧シリンダ8のピストンロッドの伸長力がトップリンク5A,5Bを効率的に上昇させるよう、油圧シリンダ8のピストンロッド20の伸長方向が前方上方を向くよう前傾姿勢に配置することは、当業者ならきわめて容易にできることである。 次に、上記相違点(B)について検討すると、引用刊行物2には、左右の上部リンク37,37に、該上部リンク37,37の上面より上方に位置して支軸挿通孔が形成されたシリンダブラケツトを設けて、油圧シリンダ41,41のロツド先端部を、昇降リンク機構の左右の上部リンク37,37に回動自在に連結支持する構成が記載されているから、引用刊行物1の考案において、油圧シリンダ8のピストンロッド先端部と左右のトップリンク5A,5Bとの連結支持構成に、引用刊行物2記載の構成を適用して本件考案のように構成することは、当業者ならきわめて容易にできることである。 そして、訂正明細書の考案が奏する効果は、上記引用刊行物1ないし3に記載された考案から予測できる程度のものであって格別顕著なものではない。 したがって、訂正明細書の考案は、上記引用刊行物1ないし3に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものではない。 2-4.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 3.特許異議の申立てについて 3-1.本件考案 本件の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、 「機体後部に、昇降リンク機構を介して作業部を連結すると共に、該作業部を、機体と昇降リンク機構との間に介設される油圧シリンダ(25)の伸縮作動に基づいて昇降せしめてなる作業用走行車において、前記油圧シリンダのロツド先端部を、昇降リンク機構の左右アツパリンク(21)に回動自在に連結支持するにあたり、油圧シリンダのロツド先端部には、左右に支軸挿入口(26b)が開設されたボス部を設ける一方、左右アツパリンクには、該左右アツパリンクの上面より上方に位置して支軸挿通孔(30a)が形成されたシリンダブラケツトを設け、左右対応する側の支軸挿入口および支軸挿通孔に支軸(31a)を着脱自在に挿入してボス部を回動支持するように構成したことを特徴とする作業用走行車における昇降シリンダの連結構造。」 である。 3-2.引用刊行物記載の考案 取消理由で引用した、実公平3-28728号公報(以下、「引用刊行物1」という)及び実公昭62-39986号公報(以下、「引用刊行物2」という)は、「2-2.引用刊行物記載の考案」における引用刊行物1及び引用刊行物2に記載したとおりの考案が記載されている。 3-3.対比・判断 本件考案と引用刊行物1の考案とを対比すると、両者は、 機体後部に、昇降リンク機構を介して作業部を連結すると共に、該作業部を、機体と昇降リンク機構との間に介設される油圧シリンダの伸縮作動に基づいて昇降せしめてなる作業用走行車において、前記油圧シリンダのロツド先端部を、昇降リンク機構の左右アツパリンクに回動自在に連結支持するにあたり、油圧シリンダのロツド先端部には、左右に支軸挿入口が開設されたボス部を設ける一方、左右アツパリンク側には支軸挿通孔を形成し、左右対応する側の支軸挿入口および支軸挿通孔に支軸を着脱自在に挿入してボス部を回動支持するように構成した作業用走行車における昇降シリンダの連結構造で一致し、 上記「2-3.対比・判断」におけるB.の相違点で構成が相違する。 しかしながら、この相違点は上記「2-3.対比・判断」に記載した理由により当業者がきわめて容易に想到することができたものである。 したがって、本件考案は上記引用刊行物1及び2に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるら、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 3-4.むすび 以上のとおりであるから、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-09-12 |
出願番号 | 実願平4-37067 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZB
(A01C)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 山田 昭次、小林 英司 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
鈴木 寛治 平瀬 博通 |
登録日 | 1999-04-09 |
登録番号 | 実用新案登録第2596515号(U2596515) |
権利者 |
三菱農機株式会社 島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 |
考案の名称 | 作業用走行車における昇降シリンダの連結構造 |
代理人 | 北村 修一郎 |