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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1051690
審判番号 不服2000-15306  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-22 
確定日 2001-12-03 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 62222号「耐震自動安全弁付きガスホース」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 5月12日出願公開、実開平 7- 25376]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本願考案
本願は、平成5年10月15日の出願であって、平成10年3月5日付けの手続補正書で全文補正された明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1には、次のとおり記載されている。
「LPガス容器(プロパンガスボンベ)のガス取出口に接続するハンドリング接手に、安全弁の弁機能を組成した接手の構造である。弁体内に組込まれた摺動弁を鋼線で繋ぎ連結し、その鋼線の一方は、連結ホースの管内を通してホース末端のブッシュに固定した。安全弁の作動は、連結ホースに対して他から設定基準を超える引張り応力が加わると、摺動弁は連結した鋼線で物理的に引かれて摺動、摺動弁の移動に依りガス通路の弁座を閉止する。
LPガス容器が、地震その他不測事態の発生に依り容器本体が転倒した場合、連結ホースの破損及び伸長に起因するLPガスの漏洩及び噴出事故に対し、この弁機能が作用することで火災等の災害発生を未然に防ぐことが出来、安全性が確保される。」
これに対し、当審において、平成13年6月28日付けで、請求項1の考案を以下のとおり認定してよいかどうかを審尋したところ、平成13年7月23日付けの回答書でその認定でよい旨の回答を得たので、本願の請求項1に係る考案は、平成13年6月28日付けの審尋において当審が示した次のとおりのものと認める。
「LPガス容器のガス取出口に接続するハンドリング接手に、安全弁の弁機能を組成した接手の構造であって、弁体内に組込まれた摺動弁を鋼線で繋ぎ連結し、その鋼線の一方は、連結ホースの管内を通してホース末端のブッシュに固定し、連結ホースに対して他から設定基準を超える引張り応力が加わると、摺動弁は連結した鋼線で物理的に引かれて摺動してガス通路の弁座を閉止する耐震自動安全弁付きガスホース。」(以下、「本願考案」という。)

2.引用刊行物とその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である昭和48年2月16日に日本国内において頒布された実願昭46-54547号(実開昭48-13813号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、容器入ガスの安全装置に関して次のように記載されている。
A)「可燃性ガス等を充填した容器の吐出口と壁面等に取付けた引込管を可撓のあるガス管で連結するものに於いて、・・・」(第1頁4?6行)
B)「本考案はプロパンガス等のように容器に入れて使用するガスの安全装置に関するもので、その目的とする処は地震等により容器が転倒しガス管が破断されるような事態が生じた場合、容器転倒時の衝撃を利用して吐出口を閉じ、持ってガス漏による事故を防止せんとするものである。」(第2頁1?7行)
C)「1は元栓2と吐出口3を有するガス入りの容器でこの容器1は室外に配置してある。4は壁面5に取付けたコック6付の引込管で、この引込管4の室内側口端にはコンロ等の火器7が連結してある。8は両端をネジ込み又は差込み自在に設けた連結管で、この連結管8の一方口端にはゴム等のような弾力性のある座板9が取付けてある。10は先端を閉塞して該先端部に鍔部11を形成し、しかも周面に透孔12を穿設した筒状栓体である。13は筒状栓体10に一端を繋着した引出線でこの引出線13はステンレス鋼線、鉄網線等からなるものである。14はガス管、15はガス管14の口端締付具である。
而して前記連結管8は座板9を有する口端に筒状栓体10を密接状態で摺動自在に挿入して該口端を容器1の吐出口3にネジ込むと共に、この連結管8の他方の口端にガス管14を差し込み且つこのガス管14内に引出線13を通し、更にガス管14の他端を引込管4に差し込み、且つ引出線12(「13」の誤りと認める。)の端部を引込管4に繋着したものである。」(第3頁4行?第4頁5行)
D)「本考案は上記の構成を採ったので地震が発生した場合に於いて該震動により容器1が転倒し、ガス管14が分断されるような事態が生じた場合、引出線13に転倒方向の張力が加わって筒状栓体10の先端が連結管8内に没し、且つ透孔12が該連結管8の内壁に密接して閉塞されるものである。
そしてこのように透孔12が閉塞されると、吐出口3と引込管4間の流路が遮断され、容器1内のガスは外部に漏洩されることが防止されるものである。」(第4頁6?16行)

A)の記載によれば、ガス管14は可撓性を有することからガスホースであるものと認められ、また、B)の記載から、容器1はLPガスの容器であるものと認められる。そして、C)の記載から、連結管8は容器の吐出口3とガス管14を連結する連結部材であって、連結管8内には筒状栓体10が摺動自在に組込まれ、該筒状栓体10にはステンレス鋼線等からなる引出線13の一端が繋着され、引出線13の他端はガス管14の管内を通してガス管14の末端に差し込まれた引込管4に固定されているものと認められ、さらに、D)の記載によれば、地震によりガス管14が分断されるような事態が生じた場合、すなわち、設定基準を超える引張り応力が加わったときには、引出線13に転倒方向の張力が加わって筒状栓体10の先端が連結管8内に没し、透孔12が該連結管8の内壁に密接して閉塞されるから、連結管8は筒状栓体10を組み込むことにより耐震自動安全弁の弁体を構成し、ガス管14に対して設定基準を超える引張り応力が加わると、筒状栓体10が摺動弁として機能して摺動し、筒状栓体10の内外を連通するガス通路の透孔12を閉止するものと認める。

したがって、上記引用例には、
「LPガス容器のガス取出口に接続する安全弁の弁機能を組成した連結部材の構造であって、連結管8内に組込まれた筒状栓体10をステンレス鋼線で繋ぎ連結し、そのステンレス鋼線の一方は、ガス管14の管内を通してガス管14の末端に差し込まれた引込管4に固定し、ガス管14に対して他から設定基準を超える引張り応力が加わると、筒状栓体10は連結したステンレス鋼線で物理的に引かれて摺動してガス通路の透孔12を閉止する耐震自動安全弁付きガスホース。」
の考案が記載されているものと認める。

3.本願考案と引用例に記載された考案との対比
本願考案と引用例に記載された考案とを対比すれば、引用例に記載された考案の「連結管8」、「筒状栓体10」、「ステンレス鋼線」、「ガス管14」は、それぞれ本願考案の「弁体」、「摺動弁」、「鋼線」、「連結ホース」に相当し、「透孔12」は筒状栓体10が摺動することによって閉止するものであることから「弁座」として機能するものである。そして、
引用例に記載された考案の連結管8も、本願考案のハンドリング接手も、共にLPガス容器のガス取出口に接続する部材である。
したがって、本願考案は引用例に記載された考案と、
「LPガス容器のガス取出口に接続する安全弁の弁機能を組成した部材の構造であって、弁体内に組込まれた摺動弁を鋼線で繋ぎ連結し、その鋼線の一方は、連結ホースの管内を通してホース末端に固定し、連結ホースに対して他から設定基準を超える引張り応力が加わると、摺動弁は連結した鋼線で物理的に引かれて摺動してガス通路の弁座を閉止する耐震自動安全弁付きガスホース。」
である点で一致し、以下の相違点で相違している。
<相違点>
(a)本願考案の安全弁の弁機能は、LPガス容器のガス取出口に接続するハンドリング接手に組成されているのに対し、引用例に記載された考案の安全弁の弁機能は、LPガス容器のガス取出口に接続される連結部材である連結管8に組成されている点。
(b)本願考案の鋼線は、ホース末端のブッシュに固定されているのに対し、引用例に記載された考案の引出線13は、ガス管14の末端に差し込まれた引込管4に固定されている点。

4.相違点の検討
(1)相違点(a)に関して
耐震自動安全弁の弁機能を、LPガス容器のガス取出口に接続する接手に組成することは周知技術(例えば、特開昭57-124168号公報、実願昭56-98865号(実開昭58-4888号)のマイクロフィルム参照。)である。してみれば、耐震自動安全弁の弁機能を、LPガス容器のガス取出口に接続するハンドリング接手に組成することは、当業者がきわめて容易に行うことができたものである。
(2)相違点(b)に関して
端末にブッシュを有するホースは従来周知(例えば、特開昭61-31795号公報、実願昭58-23349号(実開昭59-128990号)のマイクロフィルム参照。)であり、鋼線をホース末端のどの部分に固定するかは単なる設計事項である。してみれば、鋼線をホース末端のブッシュに固定することは当業者がきわめて容易に行うことができたものである。

そして、本願考案による作用効果は、上記引用例に記載された考案に上記周知技術を適用することにより得られる作用効果を越えるものでもない。

5.むすび
以上、詳述したとおり、この出願の請求項1に係る考案は、上記引用例に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-09-17 
結審通知日 2001-09-25 
審決日 2001-10-10 
出願番号 実願平5-62222 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 川向 和実阿部 利英平瀬 知明  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 ぬで島 慎二
鈴木 久雄
考案の名称 耐震自動安全弁付きガスホース  

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