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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A01K
管理番号 1051696
審判番号 審判1999-35569  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-10-15 
確定日 2001-12-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第2514760号実用新案「魚釣用針外し」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2514760号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件登録第2514760号実用新案は、平成2年9月14日に出願され、平成8年8月2日にその実用新案権の設定の登録がなされた。
これに対し、コータック株式会社より平成11年10月15日に無効審判が請求され、マミヤ オーピー株式会社より平成12年6月21日に参加の申請がなされるともに上申書が提出され、平成12年12月27日にマミヤ オーピー株式会社の参加を認める決定がなされ、平成13年5月24日に参加人より上申書が提出され、これを被請求人に送付したところ、平成13年7月16日に回答書が提出され、マミヤ オーピー株式会社による上記参加の申請は平成13年10月10に取下げられた。

2.本件考案
本件登録第2514760号実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という)は、登録明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「一端側に挟持部を有し、他端側に把持部を有する一対の杆体を重ね合わせて一方の杆体に対し他方の杆体を回動自在に軸支した一対の挟持部から成る魚釣用針外しにおいて、前記一対の挟持部は杆体の重ね合わせ面と直交する面同志を挟持面とすると共に先端が重ね合わせ面の一側がわに屈曲し、前記一対の挟持部の何れか一方の先端に他方の挟持部に向けて突出する釣糸の係止爪を形成したことを特徴とする魚釣用針外し。」
にある。

3.請求人の主張
請求人は、下記の証拠方法を提示し、本件考案は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、その実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第37条第1項第2号に該当するので、無効とすべきである旨主張している。

甲第1号証:実願昭53-95897号(実開昭55-11894号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭60-92091号(実開昭61-207177号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実公昭63-29426号公報
甲第4号証:「SANSUI」社の商品カタログ「SANSUI CATALOGUE 4」の表紙、158頁、最終頁
甲第5号証:実公昭57-33980号公報
甲第6号証:神澤産業株式会社が販売する商品のパッケージ台紙
甲第7号証:ダイワ精工株式会社が販売する商品のパッケージ台紙
甲第8号証:「SANSUI」社の商品カタログ「SANSUI CATALOGUE 5」の表紙、171頁、最終頁
甲第9号証:「SANSUI」社の商品カタログ「SANSUI CATALOGUE 6」の表紙、229頁、最終頁
甲第10号証:株式会社学習研究社発行「図説ルアーフィッシングの基礎知識」75,100頁
甲第11号証:被請求人代理人作成の平成11年11月19日付け通知書(2)
甲第12号証:請求人代理人作成の平成11年12月7日付け回答書
甲第13号証:甲第12号証で言及している公知先行技術に関する文献の送付書及びその文献の写し

4.被請求人の反論
甲第4号証は、本件考案の出願前の公知文献とは認められず、また、同甲号証ではスプリットリングプライヤーの先端部の詳細な構造が判明せず、少なくとも本件考案における、釣糸の係止爪に関する記載は見当たらず、しかも、甲第1号証及び甲第4号証記載の考案を単に寄せ集めたとしても、用途を特化された甲第4号証のスプリットリングプライヤーを針外しに転用することや、このスプリットリングプライヤーの先端に形成されたスプリットリング開口形成のためのカギ部を、針外しの際に釣糸の係止爪として用いるという技術思想に想到する合理的理由がなく、単に釣り用工具の点で共通するのみであるから、本件考案は甲第1号証ないし甲第5号証に記載された考案に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。

5.当審の判断
5-1.甲号各証記載の事項
甲第1号証には、
「以下本考案の釣用工具の実施例を、釣用ペンチについて添付の図面によって説明する。
後端寄り部を握柄(1)(1)′、前端寄り部を噛合杆(2)(2)′とした一対の杆体(3)(3)′を、その中央部が支点となるように上下に積重して軸(4)により回動可能に枢着している。」(2頁1?6行)と、
「(9)は、一方の噛合杆(2)の他方の噛合杆(2)′と対向する側に形成した切断刃、(10)は一方の噛合杆(2)の切断刃(9)と同じ側に突設した圧潰用の小突起、(11)は他方の噛合杆(2)′に設けて該小突起(10)と係合可能とした圧潰用の凹所、(12)は一方の噛合杆(2)の切断刃(9)と反対の側に形成した貝殻こじ開け用の刃である。
また噛合杆(2)(2)′は中央部より前方を、鈎の抜き取りに便利なように所定角度上向きに曲折している。」(2頁14?3頁4行)と記載されている。
なお、上記記載において、「噛合杆(2)(2)′」及び「握柄(1)(1)′」は、その符号が図面の符号と一致していないので、以後は、図面の記載に合わせ、「噛合杆(1)(1)′」、「握柄(2)(2)′」とする。
上記記載において、釣用ペンチは鈎(針)の抜き取りにも使われるので、魚釣用鈎(針)外しということができる。
そうすると、甲第1号証には、一端側に噛合杆(1)(1)′を有し、他端側に握柄(2)(2)′を有する一対の杆体(3)(3)′を重ね合わせて一方の杆体に対し他方の杆体を回動自在に軸(4)により軸支した一対の噛合杆(1)(1)′から成る魚釣用針外しにおいて、前記一対の噛合杆(1)(1)′は杆体の重ね合わせ面と直交する面同志を挟持面とすると共に先端が重ね合わせ面の一側がわに屈曲した魚釣用針外し(以下、「甲第1号証考案」という)が記載されていると認められる。
甲第2号証には、「従来のハリ外しは、本体(5)の先の切り込みの穴(6)に、外すハリの糸を入れて、ハリにとどくまで、魚の口に差し込んで・・・・ハリ外し本体(1)の先の溝で、外すハリの糸を軽くはさんでハリにとどくまで、魚の口に差し込んで、」(3頁9?17行)と記載されている。
甲第3号証には、「針はずしの先端部の魚の口に差し込む場合において、ハリス12を挟持部4,4′に係合凹部5に嵌め、針はずしをハリス12に沿って移動させることにより、上記係合凹部5に釣針10の胴11を簡単に嵌め込むことができる。」(3欄頁1?5行)と記載されている。
スプリットリングの交換は案外面倒なもの、専用のスプリットリングプライヤーがあればいたって簡単にできます。」と記載されており、また、(マル5)の写真を当業者がみると、同写真には、一端側に挟持部を有し、他端側に把持部を有する一対の杆体を重ね合わせて一方の杆体に対し他方の杆体を回動自在に軸支し、前記挟持部の何れか一方の先端に他方の挟持部に向けて突出する、スプリットリング開口形成のための爪(カギ部)を形成したスプリットリングプライヤーが記載されているといえる。
甲第8号証には、その表紙に「SANSUI CATALOGUE 5」と記載され、最終頁に「本社/東京都渋谷区渋谷3-16-2」、電話番号「03-400-1192」、「90.10」、「定価1,200円(本体価格1,165円)」と記載されている。
甲第9号証には、その表紙に「SANSUI CATALOGUE 6」と記載され、最終頁に「本社/東京都渋谷区渋谷3-16-2」、電話番号「03-3400-1192」、「・このカタログに記載されている価格は、すべて小売価格です。(消費税3%は含まれておりません)」、「9206」、「定価1,700円(本体価格1,650円)」と記載されている。
5-2.対比・判断
本件考案と甲第1号証考案とを対比すると、甲第1号証考案の「噛合杆(1)(1)′」及び「握柄(2)(2)′」が本件考案の「挟持部」及び「把持部」に相当しているから、両者は、
一端側に挟持部を有し、他端側に把持部を有する一対の杆体を重ね合わせて一方の杆体に対し他方の杆体を回動自在に軸支した一対の挟持部から成る魚釣用針外しにおいて、前記一対の挟持部は杆体の重ね合わせ面と直交する面同志を挟持面とすると共に先端が重ね合わせ面の一側がわに屈曲した魚釣用針外しで一致し、
本件考案では、「一対の挟持部の何れか一方の先端に他方の挟持部に向けて突出する釣糸の係止爪を形成し」ているのに対し、甲第1号証考案では、前記構成を備えていない点で構成が相違している。
そこで、上記相違点について検討する。
甲第4号証は、その電話番号「03-400-1192」の局番が3桁であること、「定価950円」と記載されていりのみで消費税に関する記載がないことから、都区部の局番が4桁に変更される(平成3年1月1日)以前であって、消費税導入(昭和63年12月30日)前に発行されたものであると理解でき、また、最終頁に記載された「63.12」は通常は発行する時期を表しているとみることができるので、甲第4号証は株式会社 サンスイによって昭和63年12月に発行されたものであるということができ、さらに、カタログは販売のために顧客に配布したり、顧客に閲覧させるためのものであることを考慮すると、甲第4号証は不特定の者に配布されたものであるということができるから、甲第4号証は、株式会社 サンスイによって昭和63年12月に発行され、頒布された釣具用のカタログであると認められる(ちなみに、甲第8号証及び甲第9号証には消費税に関する記載があり、また、甲第4号証、甲第8号証及び甲第9号証の最終頁に記載された、「63.12」、「90.10」及び「9206」によると、カタログは1988年、1990年、1992年と、2年毎に発行されており、「63.12」、「90.10」及び「9206」を発行時期とみても何ら矛盾はない)。
なお、被請求人は、「63.12」が、例えば昭和63年12月を意味するものであるとしても、昭和63年12月に甲第4号証の作成が企画されたのか、製作発注されたのか、印刷されたのか、もちろん、発行されたのかを含めて、明らかではないと主張するが、仮に、「63.12」が甲第4号証の作成が企画された時期、あるいは、製作発注された時期を表すものとしても、その作成に要する期間等を考慮すると、甲第4号証は、遅くとも本件出願(平成2年9月14日)前に株式会社 サンスイによって頒布された釣具用のカタログであるといえる。
而して、甲第4号証には、一端側に挟持部を有し、他端側に把持部を有する一対の杆体を重ね合わせて一方の杆体に対し他方の杆体を回動自在に軸支し、前記挟持部の何れか一方の先端に他方の挟持部に向けて突出する、スプリットリング開口形成のための爪(カギ部)を形成した、釣用工具としてのスプリットリングプライヤーが記載されており、釣用工具において、釣りに使用する複数の工具の機能を1つの工具に具備させようとすることは、周知の技術思想(甲第1号証記載の釣用ペンチにおいても、釣糸等を切るための切断刃(9)、鉛等を圧潰するための小突起(10)と凹所(11)、貝殻こじ開け用の刃(12)等多数の機能を持たせてある)である。
そうすると、甲第1号証考案の魚釣用針外しに、スプリットリングを交換する機能を持たせようとすることは当業者ならきわめて容易に想到できることであり、しかも、甲第1号証考案の魚釣用針外しと甲第4号証のスプリットリングプライヤーは、共に、一端側に挟持部を有し、他端側に把持部を有する一対の杆体を重ね合わせて一方の杆体に対し他方の杆体を回動自在に軸支した一対の挟持部から成る構成、すなわち、ペンチのような構成をしており、また、甲第1号証考案に甲第4号証記載の考案を適用する阻害要件があるともいえないので、甲第1号証考案において、噛合杆(1)(1)′の先端に、スプリットリング開口形成のための爪(カギ部)を形成することは当業者がきわめて容易にできることであり、さらに、甲第2号証あるいは甲第3号証に記載されているように、魚釣用針外しをハリスに係止させながら釣針まで案内することは周知のことであるから、甲第1号証考案の魚釣用針外しにおいて、噛合杆(1)(1)′の先端に形成した爪(カギ部)をハリスに係止させて釣針まで案内するのに利用すること、すなわち、釣糸の係止爪とすることは当業者なら適宜できることである。
そして、本件考案が奏する効果は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案並びに周知技術から予測できる程度のことであって、格別顕著なものではない。
したがって、本件考案は甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
5-3.むすび
以上のとおりであるから、本件考案は甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第37条第1項第2号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-08-22 
結審通知日 2001-08-27 
審決日 2001-10-26 
出願番号 実願平2-96616 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A01K)
最終処分 成立    
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 二宮 千久
村山 隆
登録日 1996-08-02 
登録番号 実用新案登録第2514760号(U2514760) 
考案の名称 魚釣用針外し  
代理人 峰 隆司  
代理人 水野 浩司  
代理人 熊谷 浩明  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 坪井 淳  
代理人 中村 誠  

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