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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1051697
審判番号 審判1999-20873  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-12-28 
確定日 2001-12-12 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 68429号「LCD付ICカード」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 6月20日出願公開、実開平 7- 33665]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続きの経緯、本願考案
本願は、平成5年11月30日の実用新案登録出願であって、その考案は、平成6年5月20日付けの手続補正書、および、平成11年11月2日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至2に記載された「LCD付きICカード」にあると認められるところ、当該請求項1に記載された考案(以下、「本願考案1」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】プラスチック基板に、LCD、IC、フィルム電池、液晶表示パネル、コンタクト端子、キースイッチのパッド部等が設けられ、該基板に前記LCD、IC、フィルム電池、キースイッチのパッド部等の収納用穴が形成された繊維強化プラスチック表面シートと、前記コンタクト端子の収納用穴が形成された繊維強化プラスチック裏面シートとを表裏に積層して積層体を構成し、該積層体の表面にLCD用窓と操作キー表示部とを備えたオーバーレイフィルムを、また積層体の裏面にコンタクト用窓と磁気記録部とを備えたオーバーレイフィルムを貼合して構成したことを特徴とするLCD付ICカード。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-57296号公報(以下「引用文献」という)には、以下の各記載が認められる。
(イ)「このような電卓付ICカードとしては、例えば第3図および第4図に示すようなものがある。同図において1はフレキシブルなICカードの基板であり、この基板1にはCPU2、ROM3,接点端子4,入力用キー5および表示部品6等の電子部品が埋設されている。基板1はガイドフレーム1に嵌挿され、この上面および下面には補強用シート8,9さらに化粧シート10,11が積層され、これらは接着剤によって相互に接着されている。」(第1頁右欄第15行?第2頁左上欄第4行)、
(ロ)「まず、構成を説明する。第1図および第2図において、21はガイドフレームに基板を嵌挿するものであるという従来の固定観念から脱却して、基板部22とガイドフレーム部23とを一体形成した本体である。本体21はガラス繊維で強化された熱硬化性樹脂でできている。一体形成された本体21の基板部22には、長手方向はガイドフレーム部23の端面Iから、幅方向はその端面IIから、高さ方向はその端面IIIからを基準としてCPU24、ROM25、接点端子26、入力用キー27および表示部品28等の電子部品が予め位置決めされている。基板部22の上面および下面にはそれぞれ補強用シート29,30、さらに化粧用シート31,32が積層され、これらは接着剤によって相互に接着されている。」(第2頁左下欄第8行?右下欄第2行)、
また、第1、2図の記載からみて、接点端子26、入力用キー27および表示部品28等の収納用穴が形成された補強用シート29、および、接点端子用窓、入力用キー表示部および表示部品用窓とを備えた化粧シート31が記載されているといえる。
上記記載及び図面の記載からみて、引用文献には、次の考案(以下、「引用文献考案」という。)が記載されていると認められる。
「ガイドフレーム部23が一体形成された基板22にはCPU24、ROM25、接点端子26、入力用キー27および表示部品28等の電子部品が埋設され、該基板22の上面に接点端子26、入力用キー27および表示部品等の収納用穴が形成された補強用シート29、および接点端子用窓、入力用キー表示部および表示部品用窓とを備えた化粧シート31が積層され、相互に接着され、該基板の下面には補強用シート30、および化粧シート32が積層され、相互に接着されて構成したICカード。」

3.本願考案と引用文献考案との対比
本願考案1と引用文献考案とを比較する。
ここで、本願考案1では、その請求項1の記載から、LCDと液晶表示パネルがICカードに設けられている構成となっているが、考案の詳細な説明の記載「各電子部品(ICチップ21、フィルム電池22および液晶表示パネル23)の搭載接続されたプラスチック基板13」(段落【0007】)および図面の記載からみて、ICカードに搭載される液晶表示パネル23は1つであり、かつ、液晶表示パネル23はLCDと同義に用いられているものと認められるから、「LCD、液晶表示パネル23」は引用文献考案における「表示部品28」に相当するものと認められる。
したがって、引用文献考案の構成要素である、
「基板22」、「CPU24、ROM25」、「接点端子26」、「入力用キー27」、「表示部品28」、「補強用シート29,および補強用シート30」、「化粧シート31,32」は、
本願考案1における、
「プラスチック基板」、「IC」、「コンタクト端子」、「キースイッチ」、「LCD、液晶表示パネル」、「表面シート」および「裏面シート」、「オーバーレイフィルム」にそれぞれ相当するから、
両者は、
「プラスチック基板に、LCD、IC、液晶表示パネル、コンタクト端子、キースイッチ等が設けられ、該基板に前記LCD、キースイッチ等の収納用穴が形成された表面シートと、裏面シートとを表裏に積層し、該積層体の表面にLCD用窓と操作キー表示部とを備えたオーバーレイフィルムを、また積層体の裏面にオーバーレイフィルムを貼合して構成したことを特徴とするLCD付ICカード。」
である点で一致するが、
(イ)本願考案1では、表面シートと裏面シートは繊維強化プラスチックであるにの対して、引用文献考案では補強用シート29,30が何であるか明示されていない点、
(ロ)本願考案1では、プラスチック基板にフィルム電池が設けられ、あわせて、該基板に前記フィルム電池の収納用穴が形成された表面シートを表に積層しているのに対して、引用文献考案ではこのようになっていない点、
(ハ)本願考案1では、キースイッチがパッド部を備えているのに対して、引用文献考案ではこのようになっていない点、
(ニ)本願考案1では、表面シートにICの収納用穴が形成されているのに対して、引用文献考案ではこのようになっていない点、
(ホ)本願考案1では、コンタクト端子の収納用穴を裏面シートと積層体の裏面に貼合せるオーバーレイフィルムに形成しているのに対して、引用文献考案ではコンタクト端子の収納用穴を表面シートと積層体の表面に貼合せるオーバーレイフィルムに形成している点、
(ヘ)本願考案1では、プラスチック基板に、収納用穴が形成されたシートを表裏に積層して積層体を構成しているのに対して、引用文献考案ではガイドフレーム部23が一体形成された基板の上面に収納用穴を設けた表面シートを、該基板の下面に裏面シートをそれぞれ積層しており、積層体を構成していない点、
(ト)本願考案1では、積層体の裏面に貼合せるオーバーレイフィルムに磁気記録部を備えているのに対して、引用文献考案ではこのようになっていない点、
で相違する。

4.当審の判断
上記各相違点について検討する。
(1) 相違点(イ)について
引用文献考案では補強用シート29,30が繊維強化プラスチックシートであるか否か明示されていないが、引用文献には本体21をガラス繊維で強化された熱硬化性樹脂で形成する旨の記載があり、かつ、補強用シートとして繊維強化プラスチックシートを用いることは常套手段にすぎないことから、引用文献考案における補強用シート29,30として繊維強化プラスチックシートを用いて本願考案1の構成とする点は単なる設計的事項にすぎない。
(2)相違点(ロ)について
引用文献考案では電池に関する記載はないが、電卓機能を有する以上電池が必要なことは当然であり、かつ、プラスチック基板にフィルム電池を設けているICカードは従来周知であるから(必要ならば実願平2-33700号(実開平3-124891号)のマイクロフィルム(ペーパーリチウム電池4)、特開昭63-89394号公報(ペーパー状電池70)参照)、引用文献考案においてプラスチック基板にフィルム電池を設けた場合、本願考案1と同じく繊維強化プラスチック表面シートにフィルム電池の収納用穴が形成されることとなり(例えば特開昭63-89394号公報:ペーパー状電池70の上面部を収容する凹部38)、相違点(ロ)は単なる設計上の微差にすぎない。
(3) 相違点(ハ)について
キースイッチがパッド部を備えているICカードは従来周知のものにすぎず(必要ならば実願平2-33700号(実開平3-124891号)のマイクロフィルム参照)、引用文献考案においてキースイッチにパッド部を備えた場合、本願考案1と同じく繊維強化プラスチック表面シートにキースイッチのパッド部の収納用穴が形成されることとなり、相違点(ハ)は単なる設計上の微差にすぎない。
(4)相違点(ニ)について
ICをプラスチック基板の表面に設けるか裏面に設けるかの相違は単なる設計的事項にすぎず、引用文献考案においてICをプラスチック基板の裏面に設ければ、当然のことながら、本願考案1と同じくICの収納用穴を裏面シートと積層体の裏面に貼合せるオーバーレイフィルムに形成することとなり(例えば前述の特開昭63-89394号公報:LSIチップ52の配線基盤50下に突出する下面部を収容する凹部43)、相違点(ニ)は単なる設計上の微差にすぎない。
(5)相違点(ホ)について
コンタクト端子をICカードの表面に設けるか裏面に設けるかの相違は、単なる設計的事項にすぎず、引用文献考案においてコンタクト端子をICカードの裏面に設ければ、当然のことながら、本願考案1と同じくコンタクト端子の収納用穴を裏面シートと積層体の裏面に貼合せるオーバーレイフィルムに形成することとなり、相違点(ホ)は単なる設計上の微差にすぎない。
(6)相違点(ヘ)について
本願考案1では、プラスチック基板に、収納用穴が形成されたシートを表裏に積層して積層体を構成しているのに対して、引用文献考案ではガイドフレーム部23が一体形成された基板の上面に収納用穴を設けた表面シートを、該基板の下面に裏面シートをそれぞれ積層しており、積層体を構成していないが、基板に収納用穴を設けた補強用のシートを表裏に面で接着して積層体を構成するICカードは従来周知であり(必要ならば特開昭63-89394号公報、特開昭60-252992号公報参照)、引用文献考案に、前記従来周知の構成を適用して本願考案1の構成を得る点に技術的困難性はなく、当業者であればきわめて容易に想到し得たことにすぎない。
(7)相違点(ト)について
磁気記録部を備えたICカードは従来周知であり(必要ならば実願平2-33700号(実開平3-124891号)のマイクロフィルム、特開昭63-89394号公報参照)、また、磁気記録部をICカードの表面に設けるか裏面に設けるかの相違は、単なる設計的事項にすぎず、引用文献考案において磁気記録部をICカードの裏面に設ければ、本願考案1と同じく磁気記録部を積層体の裏面に貼合せるオーバーレイフィルムに形成することとなり、相違点(ト)は単なる設計上の微差にすぎない。
そして、本願考案1の上記相違点(イ)?(ト)に係る構成に基づく作用効果は、当業者が引用文献考案及び周知技術から予測できる範囲内のものにすぎない。
よって、本願考案1は、引用文献考案から、当業者がきわめて容易になし得たものと認められる。

5. 結論
以上のとおりであるから、本願考案1は引用文献考案及び周知技術に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-10-09 
結審通知日 2001-10-19 
審決日 2001-10-31 
出願番号 実願平5-68429 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 松川 直樹
白樫 泰子
考案の名称 LCD付ICカード  
代理人 薬師 稔  

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