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審決分類 審判 全部申し立て   F15B
審判 全部申し立て   F15B
管理番号 1051716
異議申立番号 異議2001-71800  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-06-18 
確定日 2001-11-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2606641号「流体圧シリンダ」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2606641号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2606641号の請求項1に係る考案についての出願は、平成5年3月12日に実用新案登録出願されたもので、平成12年10月6日にその実用新案権の設定の登録がなされ、その後、エスエムシー株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年9月19日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
実用新案登録第2606641号に係る明細書又は図面(以下、「登録明細書」という。)における実用新案登録請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】 シリンダ本体(1)と、該シリンダ本体(1)に形成された突部(1c)に跨って配置されたテーブル(18)と、該テーブル(18)と前記突部(1c)との間に転動自在に介装された循環ボールベアリング(19,20)と、前記シリンダ本体(1)の内部に配置したピストン(5、6)と、該ピストン(5、6)の動きを前記テーブル(18)に伝達するとともに、一端部が前記テーブル(18)と螺合接続されたロッド(7)と、該ロッド(7)が配置されるとともに、一端が前記テーブル(18)に臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体(1)の設置面(1a)に臨んで開口し、且つ前記ロッド(7)を着脱するための長孔(4)と、を備えたことを特徴とする流体圧シリンダ。 」から、
「【請求項1】 シリンダ本体(1)と、該シリンダ本体(1)に形成された突部(1c)に跨って配置されたテーブル(18)と、該テーブル(18)と前記突部(1c)との間に転動自在に介装された循環ボールベアリング(19,20)と、前記シリンダ本体(1)の内部に配置したピストン(5、6)と、該ピストン(5、6)の動きを前記テーブル(18)に伝達するとともに、一端部が前記テーブル(18)と螺合接続されたロッド(7)と、該ロッド(7)が配置されるとともに、一端が前記テーブル(18)に臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体(1)の設置面(1a)に臨んで開口し、且つ前記ロッド(7)を着脱するための長孔(4)と、を備え、前記シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)には前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けたことを特徴とする流体圧シリンダ。 」に訂正する。
(2)訂正事項b
登録明細書の段落【0004】の記載の次に、新たな段落【0005】として、「【0005】さらに、生産設備がクリーンルームに設置される場合、この生産設備の一構成要素として用いられる流体圧シリンダも、発埃や流体漏れがあった場合にこれらを速やかに回収できるものであることが望ましい。」を追加訂正する。
(3)訂正事項c
登録明細書の段落【0005】の記載の次に、新たな段落【0007】として、「【0007】さらに、従来の流体圧シリンダは発埃や流体漏れを速やかに回収し得る構造とはなっておらず、この点について改良が要求されている。」を追加訂正する。
(4)訂正事項d
登録明細書の段落【0006】の整理による新たな段落【0008】を「【0006】【課題を解決するための手段】本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる課題を解消するため、シリンダ本体と、該シリンダ本体に形成された突部に跨って配置されたテーブルと、該テーブルと前記突部との間に転動自在に介装された循環ボールベアリングと、前記シリンダ本体の内部に配置したピストンと、該ピストンの動きを前記テーブルに伝達するとともに、一端部が前記テーブルと螺合接続されたロッドと、該ロッドが配置されるとともに、一端が前記テーブルに臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体の設置面に臨んで開口し、且つ前記ロッドを着脱するための長孔と、を備えたことを特徴とするものである。 」から「【0008】【課題を解決するための手段】本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる課題を解消するため、シリンダ本体と、該シリンダ本体に形成された突部に跨って配置されたテーブルと、該テーブルと前記突部との間に転動自在に介装された循環ボールベアリングと、前記シリンダ本体の内部に配置したピストンと、該ピストンの動きを前記テーブルに伝達するとともに、一端部が前記テーブルと螺合接続されたロッドと、該ロッドが配置されるとともに、一端が前記テーブルに臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体の設置面に臨んで開口し、且つ前記ロッドを着脱するための長孔と、を備え、前記シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)には前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けたことを特徴とするものである。」と訂正する。
(5)訂正事項e
登録明細書の段落【0008】の記載の次に、新たな段落【0011】として、「【0011】さらに、上記構成を有する本考案の流体圧シリンダは、真空吸引ポートを真空引き装置に接続してこの真空引き装置を作動させ、これにより真空吸引ポートから真空引き装置へ当該流体圧シリンダの作動により発生した粉埃や当該流体圧シリンダから漏れた作動流体を回収する。」を追加訂正する。
(6)訂正事項f
登録明細書の段落 【0019】「なお、長孔4の下方側開口部を回収流路24に接続することなく(真空吸引ポート4’と接続することなく)配管ブロック23に設置して、当該流体圧シリンダを用いることも可能である。」を削除する。
(7)訂正事項g
登録明細書の段落【0025】の記載の次に、新たな段落【0028】として、「【0028】さらに、シリンダ本体に長孔を設け、シリンダ本体の内部に配置したピストンとシリンダ本体の外部に配置したテーブルを長孔内に配置したロッドを介して接続し、長孔をシリンダ本体の設置面側に開口して真空吸引ポートとしたために、当該流体圧シリンダの作動により発生した粉埃や当該流体圧シリンダから漏れた作動流体を回収し、これらがクリーンルームを汚損するのを防止することができる。」と追加訂正する。
(8)訂正事項h
新たな段落の追加、段落の削除があつたので、段落番号の整理を行い、登録明細書の段落【0001】?【0025】を、新たな段落【0001】?【0028】と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項aに係る訂正については、「シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)には前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けた 」と記載されるように、シリンダの有する形態を記載に基いて特定するものであるから 、実用新案登録の請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当するものである。そして、この訂正は、登録明細書の段落【0018】「図5には、当該流体圧シリンダが配管ブロック23に設置され、配管ブロック23とともにその断面図が記載されている。この図5に示すように、配管ブロック23に予め回収流路24を設けておき、この回収流路24に図示しない真空引き装置に接続する。そして、長孔4の下面の開口をこの回収流路24に連通して、当該流体圧シリンダを配管ブロック23に設置する。この時、長孔4の下方側開口部を真空吸引ポート4’とすることができる。」の記載及び図5、図8に基くものである。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2)上記訂正事項b?hに係る訂正については、上記訂正事項aのように訂正したことに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と考案の詳細な説明の欄の記載との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。
また、これらの訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

II.実用新案登録異議の申立てについての判断

1.実用新案登録異議の申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人・エスエムシー株式会社は、本件考案に係る出願の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証:「油空圧技術」(’92 7 375 Vol.31.No7)、発行所,日本工業出版株式会社、発行人,小林作太郎、平成4年7月1日発行、(30頁?35頁参照)を提示し、本件考案は、甲第1号証に記載されたものであるから実用新案法第3条第1項第3号の規定に該当し、また、甲第1号証に記載されたものと差異があつたとしても甲第1号証の記載内容に基いて、当業者がきわめて容易になし得た程度のものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。

2.本件考案
前述のとおり、本件訂正が認められることにより、本件請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、上記訂正事項aに示すように、下記に示すとおりのものである。
【請求項1】 シリンダ本体(1)と、該シリンダ本体(1)に形成された突部(1c)に跨って配置されたテーブル(18)と、該テーブル(18)と前記突部(1c)との間に転動自在に介装された循環ボールベアリング(19,20)と、前記シリンダ本体(1)の内部に配置したピストン(5、6)と、該ピストン(5、6)の動きを前記テーブル(18)に伝達するとともに、一端部が前記テーブル(18)と螺合接続されたロッド(7)と、該ロッド(7)が配置されるとともに、一端が前記テーブル(18)に臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体(1)の設置面(1a)に臨んで開口し、且つ前記ロッド(7)を着脱するための長孔(4)と、を備え、前記シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)には前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けたことを特徴とする流体圧シリンダ。

3.引用刊行物に記載された考案
当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物は下記に示すとおりのものである。
刊行物1(甲第1号証):「油空圧技術」(’92 7 375 Vol.31.No7)、発行所,日本工業出版株式会社、発行人,小林作太郎、平成4年7月1日発行、(30頁?35頁参照)

上記刊行物1には、「PP、配管ブロックタイプは底面のOリングでシールして配管ブロックが導かれたエアをシリンダ内部に入力する。継手、チューブ等のでっぱりがなく、ボディー幅のスペースさえあれば、取り付け、作動ができるため、設備の省スペース化が計れる。」と記載されている。(33頁右欄下から4行?34頁右欄1行)及び第9図参照
そして、上記記載事項及び32頁に記載された第1図(ピコテーブルの内部構造)及び第2図(テーブル内部構造)の図面及び図面に付された名称を参照すると、
上記刊行物1には以下の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されているものと認める。
「ボディー(3)と、該ボディー(3)に形成された突部に跨って配置されたテーブル(1)と、該テーブル(1)と前記突部との間に転動自在に介装された循環式リニアボールベアリング(10)と、前記ボディー(3)の内部に配置したピストン(6,7)と、該ピストン(6,7)の動きを前記テーブル(1)に伝達するとともに、一端部が前記テーブル(1)と螺合接続されたロッド(2)と、該ロッド(2)が配置されるとともに、一端がテーブル(1)に臨んで開口し、他端が前記ボディー(3)の設置面に臨んで開口し、且つ前記ロッド(2)を着脱するための長孔と、を備え、前記シリンダ本体を設置する配管ブロックを設けたエアシリンダ。」

4.対比・判断
本件考案と引用考案を対比すると、引用考案の「ボディー(3)」は本件考案の「シリンダ本体(1)」に相当し、以下同様に、「テーブル(1)」は「テーブル(18)」に、「循環式リニアボールベアリング(10)」は「循環ボールベアリング(19,20)」に、「ピストン(6,7)」は「ピストン(5、6)」に、「ロッド(2)」は「ロッド(7)」に、「エアシリンダ」は「流体圧シリンダ」に、それぞれ相当するから、両者の一致点及び相違点は下記のとおりである。
[一致点]
シリンダ本体(1)と、該シリンダ本体(1)に形成された突部(1c)に跨って配置されたテーブル(18)と、該テーブル(18)と前記突部(1c)との間に転動自在に介装された循環ボールベアリング(19,20)と、前記シリンダ本体(1)の内部に配置したピストン(5、6)と、該ピストン(5、6)の動きを前記テーブル(18)に伝達するとともに、一端部が前記テーブル(18)と螺合接続されたロッド(7)と、該ロッド(7)が配置されるとともに、一端が前記テーブル(18)に臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体(1)の設置面(1a)に臨んで開口し、且つ前記ロッド(7)を着脱するための長孔(4)と、を備え、前記シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)設けた流体圧シリンダ。
[相違点]
本件考案では、シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)は前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けられたのに対し、引用考案では、シリンダ本体を設置する配管ブロックは、その構成を具備しない点。
そこで、相違点について検討する。
本件考案においては、長孔4の下面の開口の下方側開口部を真空吸引ポート4’とし、配管ブロック23に予め回収流路24を設けておき、この回収流路24に図示しない真空引き装置に接続する。そして、長孔4の下面の開口をこの回収流路24に連通する構成を採用したことにより、この状態で真空引き装置を作動させることによって、当該流体圧シリンダの作動により発生した粉埃や当該流体圧シリンダから洩れた作動流体を回収し、これらがクリーンルームを汚損するのを防止する等の明細書記載の顕著な作用効果を奏するものであり、これを示唆するところのない引用考案に基いて、本件考案が、当業者にとってきわめて容易になすことができたものとは認めることができない。
したがつて、上記相違点が格別のものであるので、本件考案は、刊行物1に記載された考案と同一といえないばかりでなく、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることもできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、
実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によつては、本件考案に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よつて、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
流体圧シリンダ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 シリンダ本体(1)と、
該シリンダ本体(1)に形成された突部(1c)に跨って配置されたテーブル(18)と、
該テーブル(18)と前記突部(1c)との間に転動自在に介装された循環ボールベアリング(19,20)と、
前記シリンダ本体(1)の内部に配置したピストン(5、6)と、
該ピストン(5、6)の動きを前記テーブル(18)に伝達するとともに、一端部が前記テーブル(18)と螺合接続されたロッド(7)と、
該ロッド(7)が配置されるとともに、一端が前記テーブル(18)に臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体(1)の設置面(1a)に臨んで開口し、且つ前記ロッド(7)を着脱するための長孔(4)と、
を備え、前記シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)には前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けたことを特徴とする流体圧シリンダ。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、流体圧シリンダの改良に関するものである。本考案の流体圧シリンダは、各種の生産設備にその一構成要素として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
例えば、出願人は実開平4-101806号公報に記載のアクチュエータを提案している。そして、このアクチュエータは、シリンダ本体1と、このシリンダ本体1に往復動自在に内挿されたピストン2と、シリンダ本体1の突部に跨って配置され、ピストン2に接続されて従動するテーブル3と、このテーブル3とシリンダ本体1との間に直線状で単列の軌道溝を設けて、その溝内に介装したクロスローラ6と、を備え、シリンダ本体1に圧力を供給してテーブル3を往復動させるものである。
【0003】
そして、ピストン2とテーブル3はロッド8を介して接続され、ロッド8はシリンダ本体1の突部に形成した長孔9を貫通し、この長孔9に沿って往復動する。このテーブル3とロッド8との接続は、ロッド8の端部をテーブル3に形成された孔に圧入する構造を採用している。
【0004】
そして、上記アクチュエータの組立に際しては、テーブル3とロッド8の一端部とを結合させ、その後、その結合体のロッド8の他端部を長孔9の開口部を通してピストン2に装着し、それと同時にテーブル3がシリンダ本体1の天部に跨って配置される。次に、テーブル3およびシリンダ本体1の突部に形成された軌道溝(V溝)4,5の端面開口部からクロスローラ6を挿入し、最後にテーブル3の端面に端部材を装着して、クロスローラ6の抜けを防止している。
【0005】
さらに、生産設備がクリーンルームに設置される場合、この生産設備の一構成要素として用いられる流体圧シリンダも、発埃や流体漏れがあった場合にこれらを速やかに回収できるものであることが望ましい。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
シリンダ本体1と、このシリンダ本体1に往復動自在に内挿されたピストン2と、シリンダ本体1の突部に跨って配置され、ピストン2に接続されて従動するテーブル3と、を備えた従来のこのアクチュエータにおいて、テーブル3とシリンダ本体1の突部との間には、循環ボールベアリングは採用されていない。
なぜなら、循環ボールベアリングを採用すると、本構造では、テーブル3とシリンダ本体1の突部との組付け後に、テーブル3とシリンダ本体1の突部との間に設けられる無限軌道式の軌道溝にベアリング用のボールを挿入することになるが、組立には、その構造上より多くの工程を必要とし、容易ではなかった。
【0007】
さらに、従来の流体圧シリンダは発埃や流体漏れを速やかに回収し得る構造とはなっておらず、この点について改良が要求されている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる課題を解消するため、シリンダ本体と、該シリンダ本体に形成された突部に跨って配置されたテーブルと、該テーブルと前記突部との間に転動自在に介装された循環ボールベアリングと、前記シリンダ本体の内部に配置したピストンと、該ピストンの動きを前記テーブルに伝達するとともに、一端部が前記テーブルと螺合接続されたロッドと、該ロッドが配置されるとともに、一端が前記テーブルに臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体の設置面に臨んで開口し、且つ前記ロッドを着脱するための長孔と、を備え、前記シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)には前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
【作用】
シリンダ本体と、該シリンダ本体に往復動自在に内挿されたピストンと、シリンダ本体の突部に跨って配置され、ピストンに接続されて従動するテーブルと、を備えた流体圧シリンダに循環ボールベアリングを採用することが可能となり、作動精度の高い流体圧シリンダを得ることができた。
【0010】
すなわち、循環ボールベアリング採用した流体シリンダの場合、その構造上、シリンダ本体とテーブルとの組付けは、予めボールを軌道溝内に配置した状態で、軸方向から相対移動させて行うことによって可能となる。その組付け後、ロッドをシリンダ本体の設置面側から挿入し、ロッド一端部のねじ部をテーブルのねじ部とを螺合して、本構成の流体圧シリンダ全体を組付けをすることが可能となる。
【0011】
さらに、上記構成を有する本考案の流体圧シリンダは、真空吸引ポートを真空引き装置に接続してこの真空引き装置を作動させ、これにより真空吸引ポートから真空引き装置へ当該流体圧シリンダの作動により発生した粉埃や当該流体圧シリンダから漏れた作動流体を回収する。
【0012】
【実施例】
つぎに本考案の実施例を図面にしたがって説明する。
【0013】
図1乃至図4に示すように、箱形のシリンダ本体1の内部に一対のシリンダ室2,3が水平にかつ直列に並べて設けられ、このシリンダ室2,3の間には、シリンダ本体1の設置面(下面)1aおよび反設置面(上面)1bに開口し、開口の長手方向をシリンダ室2,3が並べられた方向と同一の方向に向けた長孔4が設けられている。
【0014】
この長孔4の上面の開口は、テーブルのシリンダ本体1側の面に臨んで開口したものであり、この長孔4の上記下面の開口は、図5に示すように、設置ブロックである配管ブロックのシリンダ本体1側の面に臨んで開口したものである。そして、この長孔4はシリンダ室2,3に直交して連通している。
【0015】
一対のピストン5,6は、シリンダ室2,3に往復動自在に挿入され、このピストン5,6の間に中心線を垂直な方向に向けたロッド7が、ピストン5,6に対して非接着のまま挟持されている。そして、このロッド7のテーブル側端部には雄ねじが形成され、テーブル18の略中央部とロッド7の雄ねじ部が螺合されている。また、ロッド7の反テーブル側端部の端面には、ドライバー等を差し込んでロッド7を回動することのできる径方向の溝が形成されている。
【0016】
ここで、符号8は長エンドカバー、9は短エンドカバー、10と11はCリング、12と13はパッキン、14と15は圧力室である。
【0017】
シリンダ本体1の側壁には、圧力室14,15に連通する一対の圧力供給ポート16,17が設けられている。また、シリンダ本体1の上方には、ロッド7の上端に接続されてこのロッド7に従動するテーブル18が配置されている。テーブル18の下面には、その全長(図3の左右方向)に亙ってシリンダ本体1に突設した突部1cと嵌合する凹部18aが設けられており、凹部18aの側壁には、当該テーブル18に組込まれた無限軌道式の循環ボールベアリング19,20の係合列が露出しており、突部1cの側壁には、循環ボールベアリング19,20の係合列を転動自在に係合する軌道溝21,22が設けられている。
【0018】
さらに、循環ボールベアリング19,20と軌道溝21,22は、図4の方向からみて左右に一対ずつ設けられている。
【0019】
上記構成を有する流体圧シリンダは、テーブル18に図示しない工作機械等を載置してこの工作機械等を直線的に往復動させる。すなわち、図3において左側の一方の圧力室14に空気圧等の流体圧を供給して右側の他方の圧力室15から流体圧を排出すると、ピストン5,6、ロッド7およびテーブル18の四部品が同時に右方向へ移動し、他方の圧力室15に流体圧を供給して一方の圧力室14から流体圧を排出すると四部品が同時に左方向へ移動する。
【0020】
この移動については、循環ボールベアリング19,20のボールが軌道溝21,22を転動することによって円滑に案内され、両方向ともロッド7が長孔4の内壁に当接することによって停止せしめられる。
【0021】
図5には、当該流体圧シリンダが配管ブロック23に設置され、配管ブロック23とともにその断面図が記載されている。この図5に示すように、配管ブロック23に予め回収流路24を設けておき、この回収流路24に図示しない真空引き装置に接続する。そして、長孔4の下面の開口をこの回収流路24に連通して、当該流体圧シリンダを配管ブロック23に設置する。この時、長孔4の下方側開口部を真空吸引ポート4’とすることができる。
【0022】
この状態で真空引き装置を作動させることによって、当該流体圧シリンダの作動により発生した粉埃や当該流体圧シリンダから洩れた作動流体を回収し、これらがクリーンルームを汚損するのを防止する。尚、粉埃は主にベアリング19,20やピストン5,6の摺動によって発生するものである。
【0023】
シリンダ本体1の側面に設けられた一対の圧力ポート16,17は、図示しない継手に接続され、この継手を介して図示しない圧力供給源に接続されるが、シリンダ本体1の底面に一組の圧力供給ポート25,26を設けておき、この二組の圧力供給ポート16,17、25,26を選択的に使用するようにすると便利である。
【0024】
この二組目の圧力供給ポート25,26は、図6乃至図8に示すように、シリンダ本体1を設置する配管ブロック23の供給流路27,28に接続され、この供給流路27,28を介して図示しない圧力供給源に接続される。使用しない方の圧力供給ポート16,17、25,26にはボール式またネジ式のブランク栓29,30を詰めておく。符号31と32はシール用のパッキンである。
【0025】
【考案の効果】
本考案は、以下の効果を奏する。
【0026】
本考案は、循環ボールベアリングを採用するにより、作動精度の高い流体圧シリンダを得ることができた。
特に、ロッドが配置されるとともに、一端がテーブルに臨んで開口し、他端がシリンダ本体の設置面に臨んで開口し、且つロッドを着脱するための長孔と、を備えたことにより、テーブルとシリンダ本体の突部との間に転動自在な介装された循環ボールベアリングを採用することが可能となった。
【0027】
すなわち、循環ボールベアリング採用した流体シリンダの場合、その構造上、シリンダ本体とテーブルとの組付けは、予めボールを軌道溝内に配置した状態で、軸方向から相対移動させて行うことによって可能となる。その組付け後、ロッドをシリンダ本体の設置面側から挿入し、ロッド一端部のねじ部をテーブルのねじ部とを螺合して、本構成の流体圧シリンダ全体を組付けをすることが可能となる。
【0028】
さらに、シリンダ本体に長孔を設け、シリンダ本体の内部に配置したピストンとシリンダ本体の外部に配置したテーブルを長孔内に配置したロッドを介して接続し、長孔をシリンダ本体の設置面側に開口して真空吸引ポートとしたために、当該流体圧シリンダの作動により発生した粉埃や当該流体圧シリンダから漏れた作動流体を回収し、これらがクリーンルームを汚損するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の実施例に係る流体圧シリンダの平面図
【図2】
同流体圧シリンダの正面図
【図3】
図1におけるX-X線断面図
【図4】
図2におけるY-Y線断面図
【図5】
同流体圧シリンダと配管ブロックの断面図
【図6】
同流体圧シリンダの他の使用例を示す断面図
【図7】
同流体圧シリンダの底面図
【図8】
同流体圧シリンダと配管ブロックの断面図
【符号の説明】
1 シリンダ本体
1a 設置面
1b 反設置面
1c 突部
2,3 シリンダ室
4 長孔
4’ 真空吸引ポート
5,6 ピストン
7 ロッド
8 長エンドカバー
9 短エンドカバー
10,11 Cリング
12,13,31,32 パッキン
14,15 圧力室
16,17,25,26 圧力供給ポート
18 テーブル
18a 凹部
19,20 循環ボールベアリング
21,22 軌道溝
23 配管ブロック
24 回収流路
27,28 供給流路
29,30 ブランク栓
訂正の要旨 (1)訂正事項a
実用新案登録第2606641号に係る明細書又は図面(以下、「登録明細書」という。)における実用新案登録請求の範囲の請求項1を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「【請求項1】 シリンダ本体(1)と、該シリンダ本体(1)に形成された突部(1c)に跨って配置されたテーブル(18)と、該テーブル(18)と前記突部(1c)との間に転動自在に介装された循環ボールベアリング(19,20)と、前記シリンダ本体(1)の内部に配置したピストン(5、6)と、該ピストン(5、6)の動きを前記テーブル(18)に伝達するとともに、一端部が前記テーブル(18)と螺合接続されたロッド(7)と、該ロッド(7)が配置されるとともに、一端が前記テーブル(18)に臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体(1)の設置面(1a)に臨んで開口し、且つ前記ロッド(7)を着脱するための長孔(4)と、を備えたことを特徴とする流体圧シリンダ。」から、
「【請求項1】 シリンダ本体(1)と、該シリンダ本体(1)に形成された突部(1c)に跨って配置されたテーブル(18)と、該テーブル(18)と前記突部(1c)との間に転動自在に介装された循環ボールベアリング(19,20)と、前記シリンダ本体(1)の内部に配置したピストン(5、6)と、該ピストン(5、6)の動きを前記テーブル(18)に伝達するとともに、一端部が前記テーブル(18)と螺合接続されたロッド(7)と、該ロッド(7)が配置されるとともに、一端が前記テーブル(18)に臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体(1)の設置面(1a)に臨んで開口し、且つ前記ロッド(7)を着脱するための長孔(4)と、を備え、前記シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)には前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けたことを特徴とする流体圧シリンダ。」に訂正する。
(2)訂正事項b
明りょうでない記載の釈明を目的として、登録明細書の段落【0004】の記載の次に、新たな段落【0005】として、「【0005】さらに、生産設備がクリーンルームに設置される場合、この生産設備の一構成要素として用いられる流体圧シリンダも、発埃や流体漏れがあった場合にこれらを速やかに回収できるものであることが望ましい。」を追加訂正する。
(3)訂正事項c
明りょうでない記載の釈明を目的として、登録明細書の段落【0005】の記載の次に、新たな段落【0007】として、「【0007】さらに、従来の流体圧シリンダは発埃や流体漏れを速やかに回収し得る構造とはなっておらず、この点について改良が要求されている。」を追加訂正する。
(4)訂正事項d
明りょうでない記載の釈明を目的として、登録明細書の段落【0006】の整理による新たな段落【0008】を「【0006】【課題を解決するための手段】本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる課題を解消するため、シリンダ本体と、該シリンダ本体に形成された突部に跨って配置されたテーブルと、該テーブルと前記突部との間に転動自在に介装された循環ボールベアリングと、前記シリンダ本体の内部に配置したピストンと、該ピストンの動きを前記テーブルに伝達するとともに、一端部が前記テーブルと螺合接続されたロッドと、該ロッドが配置されるとともに、一端が前記テーブルに臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体の設置面に臨んで開口し、且つ前記ロッドを着脱するための長孔と、を備えたことを特徴とするものである。 」から「【0008】【課題を解決するための手段】本考案は以上の点に鑑み、上記従来技術にみられる課題を解消するため、シリンダ本体と、該シリンダ本体に形成された突部に跨って配置されたテーブルと、該テーブルと前記突部との間に転動自在に介装された循環ボールベアリングと、前記シリンダ本体の内部に配置したピストンと、該ピストンの動きを前記テーブルに伝達するとともに、一端部が前記テーブルと螺合接続されたロッドと、該ロッドが配置されるとともに、一端が前記テーブルに臨んで開口し、他端が前記シリンダ本体の設置面に臨んで開口し、且つ前記ロッドを着脱するための長孔と、を備え、前記シリンダ本体(1)を設置する配管ブロック(23)には前記長孔(4)に臨んで開口するとともに真空引き装置に接続する流路(24)を設けたことを特徴とするものである。」と訂正する。
(5)訂正事項e
明りょうでない記載の釈明を目的として、登録明細書の段落【0008】の記載の次に、新たな段落【0011】として、「【0011】さらに、上記構成を有する本考案の流体圧シリンダは、真空吸引ポートを真空引き装置に接続してこの真空引き装置を作動させ、これにより真空吸引ポートから真空引き装置へ当該流体圧シリンダの作動により発生した粉埃や当該流体圧シリンダから漏れた作動流体を回収する。」を追加訂正する。
(6)訂正事項f
明りょうでない記載の釈明を目的として、登録明細書の段落【0019】「なお、長孔4の下方側開口部を回収流路24に接続することなく(真空吸引ポート4’と接続することなく)配管ブロック23に設置して、当該流体圧シリンダを用いることも可能である。」を削除する。
(7)訂正事項g
明りょうでない記載の釈明を目的として、登録明細書の段落【0025】の記載の次に、新たな段落【0028】として、「【0028】さらに、シリンダ本体に長孔を設け、シリンダ本体の内部に配置したピストンとシリンダ本体の外部に配置したテーブルを長孔内に配置したロッドを介して接続し、長孔をシリンダ本体の設置面側に開口して真空吸引ポートとしたために、当該流体圧シリンダの作動により発生した粉埃や当該流体圧シリンダから漏れた作動流体を回収し、これらがクリーンルームを汚損するのを防止することができる。」と追加訂正する。
(8)訂正事項h
新たな段落の追加、段落の削除があつたので、明りょうでない記載の釈明を目的として、段落番号の整理を行い、登録明細書の段落【0001】?【0025】を、新たな段落【0001】?【0028】と訂正する。
異議決定日 2001-10-19 
出願番号 実願平5-16549 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (F15B)
U 1 651・ 113- YA (F15B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 田々井 正吾佐藤 健人  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 町田 隆志
秋月 均
登録日 2000-10-06 
登録番号 実用新案登録第2606641号(U2606641) 
権利者 エヌオーケー株式会社
東京都港区芝大門1丁目12番15号
考案の名称 流体圧シリンダ  
代理人 高塚 一郎  
代理人 高塚 一郎  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 千葉 剛宏  

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