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審決分類 審判 全部申し立て   B65D
管理番号 1051720
異議申立番号 異議2001-70314  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-24 
確定日 2001-11-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第2605541号「防湿包装袋」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2605541号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.本件発明
登録第2605541号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「クラフト紙よりなる内外層袋間に、防湿性と離解性を有する材料よりなる防湿面をクラフト紙の表面に形成した中間層袋を介在せしめてなる防湿包装袋。」

2.引用刊行物記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物は次のとおりである。
刊行物1:昭和9年実用新案出願公告第13649号公報(申立人の提出した甲第1号証)
刊行物2:「オールペーパーガイド-紙の商品事典、上巻、文化・産業篇」(株)紙業タイムス社、昭和58年12月1日発行、第131頁、「ターポリン紙Tarpaulin paper」の項( 申立人の提出した甲第2号証)
刊行物3:特開昭50-36711号公報(申立人の提出した甲第3号証)
刊行物4:特公昭55-22597号公報(申立人の提出した甲第4号証)

刊行物1には、防湿紙袋について図面と共に次のように記載されている。 (ア)(第155頁「実用新案の性質、作用及効果の要領」の項)
「本考案は、内袋と外袋とより成り、内袋の最内層は「クラフト」紙、第二層は「アスファルト」塗紙其他の防湿紙を用い、・・・外袋は単層又は数層の「クラフト」紙の胴筒より成り、・・・防湿紙袋の構造に係り、図面に於て、(1)は最内層の「クラフト」紙、(2)は防湿紙層、(3)は外袋層、・・・。
此袋に内容物を充填したる後は第三図に示す如く内袋の上端に防湿「テープ」(e)を貼着して之れを巻き込み、然る後外袋(3)の縁に補紙(f)を加え(E)(F)の線に於て縫合し包装を完了す。」(原文のカタカナ表記を現代かなづかい表記に改めるとともに句読点も追加記載した。)

刊行物2には、ターポリン紙について次のように記載されている。
(ア)(「ターポリン紙 Tarpaulin paper」の項)
「ターポリン紙は各種の紙にアスファルトを熔融塗布したもので、2枚合わせの一般製品と特殊製品に分類される。さらに普通ターポリン紙:坪量30?75g/m^(2)の2層のクラフト紙の間にアスファルト40?80g/m^(2)の塗布層を設けたもの。
・・・
浸透ターポリン紙:単紙にアスファルトを含浸塗布したもの。
片面ターポリン紙:1層の紙の片面に塗布したもの。
・・・
ターポリン紙は、(1)安価、(2)防湿性が大、・・・などすぐれた特徴をもち、最も古くからある防水・耐水包装材として、クラフト包装紙、・・・などの外装・・・内装材・・・などに用いられ、・・・。」(〇内の数字を()内の数字に修正)

刊行物3には、「防湿包装用紙」に関連して、つぎのように記載されている。
(イ)(特許請求の範囲)
「クラフト紙表面上に下記組成の水性エルジョンを常法により塗布することを特徴とする防湿包装用紙の製造法。
(1) 融点40?60℃の固型パラフィンワックス30?50重量%と軟化点50?100℃のマレイン化石油樹脂50?70重量%とを主体とし、これにロジン及び炭素数8?18の飽和又は不飽和高級アルコールを配合した4成分混合物を均一に溶融し、
(2) 前記均一溶融物を有機アミン又はアンモニア水溶液で乳化処理し、
(3) 前記乳化処理したものを苛性アルカリで鹸化し、
(4) 所望の固形分濃度になる様水で希釈した水性工マルジョン。」
(ロ)(第1頁右欄5行?第2頁右上欄4行)
「本発明は水蒸気に対して高い不透過性を備えた包装用防湿紙、・・・の製造方法に関するものである。
・・・
ターポリン紙は2枚のクラフト紙をアスファルト粘着物質で含浸接着して作られるもので、防湿性が優れているだけでなく、紙の強度もすぐれ、且つ安価であるため、長年に亘って使用されてきた。
しかるに最近パルプ原料としての故紙の回収利用が脚光を浴びるとともに、一方では長年に亘り使用後焼却等により廃棄されて来たターポリン紙の廃棄公害が問題となっている。
・・・アスファルト含浸紙の場合は一般に故紙処理が困難で、完全にセルロースパルプとアスファルト分に分けることがむずかしい。・・・。
本発明者等は上述の点に鑑み、故紙としての回収再生が容易であるとともに、公害のないターポリン代替用の防湿包装用紙の開発を目標として、種々研究を重ねた結果、本発明に到達したものである。」
(ハ)(第4頁右下欄の第2表及び第5頁左上欄1行?6行)
クラフト紙に水性工マルジョンを塗布して製造されている種々の防湿包装用紙が記載されており、「透湿度」及び「離解度」について表示されている。

刊行物4には、防湿、防水性紙の製造方法に関連して次のように記載されている。
(イ)(特許請求の範囲)
「合成ゴム系ラテックス固形分100重量部に対してワックス系工マルジョン固形分5?200重量部を配合してなる水性工マルジョンを、常法により原紙表面上に塗布し、加温下で乾燥することを特徴とする防湿、防水性紙の製造方法。」
(ロ)(第1頁1欄33行?34行)
「また、本発明の方法は、故紙として回収可能な防湿、防水性紙の製造方法を提供するにある。」
(ハ)(第2頁3欄30行?末行)
「故紙回収の点を考慮に入れなければ、従来から防湿性、防水性の紙は存在する。しかるに、最近の省資源および公害対策の点から、故紙回収不能な樹脂成分を含んだ加工紙や焼却処理に対して有害ガスを発生するが如き加工紙は今後商品として事実上使用不可能の情況下にあるので、これらに対応するべく無公害で故紙回収可能であり、しかも高性能の加工紙の出現は各方面から強く要求されていたものである。
・・・
即ち、本発明の基本は、原紙に対し合成ゴム系ラテックスとワックス系エマルジョンを混合した塗工液を塗布するものである。」
(ニ)(第3頁6欄20行以降の実施例1?実施例5)
各実施例には、原紙として未晒片艶クラフト紙面に前記の塗工液を塗布した防湿、防水性紙の製造例が記載され、それらの防湿、防水性紙が透湿度が低く、耐水性に優れ、かつ離解性があり、故紙として再生可能なものであることが示されている。

3.対比・判断
そこで、本件考案と刊行物1に記載された考案(以下、「引用考案」という。)とを対比するに、アスファルトを塗布した紙を一般的にターポリン紙といい、防湿性があり、代表的なものとして、クラフト紙の表面にアスファルトを塗布したものをあげることができる(刊行物2及び3参照)ので、刊行物1に記載されている「アスファルト塗紙」はターポリン紙のことを意味し、防湿性を有する材料である、アスファルトをクラフト紙の表面に塗布したものを意味するものと認められる。また、アスファルト含浸紙の場合には古紙処理が困難でセルロースパルプとアスファルト分を分けることが難しく、結果的にセルロースパルプが単繊維に十分離解しないものである(刊行物3及び4参照)。
それ故に、両者は、
「クラフト紙よりなる内外層袋間に、防湿性を有する材料よりなる防湿面をクラフト紙の表面に形成した中間層袋を介在せしめてなる防湿性包装袋」
である点において一致し、次の点において相違するものと認められる。
(a)中間層袋のクラフト紙表面に形成される防湿面が、本件考案においては離解性を有する材料よりなるものであるのに対して、刊行物1に記載された考案においては、離解性の低いアスファルトよりなる点。
次に、この点について検討するに、アスファルト塗紙は、紙としての再生が不可能なものであること、及び、そのような再生不可能なアスファルト塗紙の使用による資源、環境問題等への悪影響に配慮した代替品として、再生利用可能な離解性のある防湿性紙があり、このアスファルト塗紙の代替品となる防湿性紙としては、クラフト紙表面に防湿性及び離解性を有する塗工層を設けた防湿紙が提案されていることは、本件の出願前に周知の事項である(刊行物3及び4参照)。
とすると、刊行物1に記載された発明は、防湿性包装袋の防湿性中間層袋を構成する「アスファルト塗紙」が再生可能紙でないために、全体が再生可能紙で形成されている防湿性包装袋でなく、資源再利用問題、公害問題等の現代的な課題を有する考案であることは明らかである。
したがって、資源再利用問題、公害問題等の現代的な課題の解決のために、刊行物1に記載された発明における防湿性包装袋を全体が再生可能紙で形成されている防湿性包装袋とすべく、その防湿性中間層袋を構成する「アスファルト塗紙」を上記周知のアスファルト塗紙の代替品となる防湿性紙に置き換えることは、当業者がきわめて容易に想到し得る程度のことと認められる。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、刊行物1?4に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、本件の請求項1に係る実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-10-09 
出願番号 実願平5-74916 
審決分類 U 1 651・ 121- Z (B65D)
最終処分 取消    
前審関与審査官 溝渕 良一  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 祖山 忠彦
杉原 進
登録日 2000-05-19 
登録番号 実用新案登録第2605541号(U2605541) 
権利者 大昭和紙工産業株式会社
静岡県富士市依田橋61番地の1
考案の名称 防湿包装袋  
代理人 金谷 宥  

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