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審決分類 審判 全部申し立て   H01L
管理番号 1051724
異議申立番号 異議2000-71658  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-10 
確定日 2001-12-17 
異議申立件数
事件の表示 登録第2600558号「静電チャック」の請求項1、2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2600558号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 【1】手続の経緯
本件実用新案登録第2600558号は、平成3年10月2日に出願され、平成11年8月13日に設定登録されたものであり、その後、請求項1ないし2に係る考案について、加瀬敬子より登録異議の申立てがなされ、平成12年8月14日付けで取消理由の通知がなされ、その指定期間内の平成12年10月19日付けで意見書が提出されたものである。
【2】本件考案
本件登録第2600558号の請求項1,2に係る考案は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、その実用新案登録の範囲の請求項1,2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】導電体の表面にセラミックス溶射による絶縁膜が形成されている静電チャックであって、上記導電体の表面から裏面まで貫通する穴の内側面に絶縁性部材が固着されていることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】導電体のウエハが載置される面の角部が丸みを有することを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。」
【3】登録異議申立ての理由及び取消理由の概要
登録異議申立ての理由の概要は、本件請求項1,2に係る考案は、本件実用新案登録の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-104983号(実開昭64-11542号)のマイクロフィルム(登録異議申立人が提出した甲第1号証)及び実願平1-133836号(実開平3-73432号)のマイクロフィルム(登録異議申立人が提出した甲第2号証)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない、というものであり、登録異議申立人は、甲第1,2号証に加えて、参考資料として特開昭63-2324号公報、実願昭56-174165号(実開昭58-78641号)のマイクロフィルム、特開昭63-56920号公報を提出している。
また、取消理由の概要は、本件請求項1に係る考案は、上記甲第1,2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない、というものである。
【4】当審の判断
1.引用刊行物に記載された事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、「静電チャック」に関する考案が開示されており、その明細書の第1頁の実用新案登録請求の範囲には、
「導電体上に絶縁膜を被覆し、被吸着物と前記導電体との間に直流電圧を印加し、前記絶縁膜上に被吸着物を吸着すべくなした静電チャックにおいて、セラミック溶射にて前記導電体を被覆する絶縁膜を具備することを特徴とする静電チャック。」
と記載され、明細書の第5頁第17行?第6頁第3行には、
「第1図は本考案に係る静電チャック(以下、本案装置という)の概略縦断面図であり、金属円板電極1はその中央部裏面側において、円柱状をなして一端にねじ部3aを有する端子3の他端に接続し、前記電極1の表面には絶縁膜としてセラミック溶射膜2が全面に被覆されている。」
と記載されているものと認める。
また、図面第1図には、セラミック溶射膜2で全面が被覆されている電極1が、記載されているものと認める。
(2)甲第2号証
甲第2号証には、「ウェーハ処理装置に於ける電極構造」に関する考案が開示されており、その明細書の第1頁の実用新案登録請求の範囲には、
「静電チャックを兼ねるプラズマ発生用電極を冷却盤に載置し、該電極と冷却盤との間に冷却水路を形成し、ウェーハを支持可能に配した少なくとも3本以上の支持ピンを下方より前記冷却盤、電極に貫通させ、該支持ピンと電極、冷却盤との間に支持ピンが挿通する絶縁材のチューブボルトを介在させると共に該チューブボルトにより前記電極と冷却盤とを固着したことを特徴とするウェーハ処理装置に於ける電極構造。」
と記載され、明細書の第5頁第13行?第9頁第2行には、
「第1図は、静電チャックを兼ねる下側電極を示しており、……該凹部17に冷却盤18、静電チャックを兼ねる電極19を積重ね、……前記保持体26の4箇所の突端部には昇降ロッド25の軸心と平行に上方に延びホルダ16、冷却盤18、電極19を貫通する支持ピン28が固着してある。該支持ピン28のホルダ貫通孔には絶縁チューブ29が、又支持ピン28の電極貫通孔には絶縁材料のチューブボルト30がそれぞれ設けられ、支持ピン28が電気的に絶縁されている。又、前記チューブボルト30は冷却盤18に螺着される様になっており、電極19はその周縁だけでなく、チューブボルト30により中央の所要の箇所、具体的には支持ピン28が貫通する4箇所でも固定される構造となっている。……この高周波電圧の印加によりプラズマが発生するが、電極19には前記支持ピン28が貫通する小さな孔が4箇所明いているのみであり、電極の欠切部分は無視できる程小さい。………この冷却状態についてもウェーハ11は静電吸着により全面に亘って電極19に接触しており、……」
と記載されているものと認める。
2.対比
(1)請求項1に係る考案について
本件請求項1に係る考案と上記甲第1号証に記載されたものとを対比すると、
両者は、
導電体の表面にセラミックス溶射による絶縁膜が形成されている静電チャック.
である点で一致し、
本件請求項1に係る考案は、「上記導電体の表面から裏面まで貫通する穴の内側面に絶縁性部材が固着されている」のに対して、甲第1号証に記載されたものは、導電体に穴は存在せず、したがって、貫通する穴の内側面に絶縁性部材が固着されているものでもない点.
で相違する。
上記相違点について検討する。
甲第2号証には、静電チャックの電極19において、導電体の表面から裏面まで電極貫通孔を設け、当該電極貫通孔に絶縁材料のチューブボルト30を挿通して、支持ピン28と電極19との間に前記絶縁材料のチューブボルト30を介在させると共に該チューブボルト30により前記電極19と冷却盤18とを固着した構成が記載されているものの、甲第2号証に記載されたものは、電極19の表面に絶縁膜を形成するものではなく、異なる工程で電極貫通孔の内側面と電極表面とに絶縁膜を形成することを開示するものでも示唆するものでもない。 また、甲第2号証に記載されたものは、チューブボルト30により電極と冷却盤とを固着した状態で、電極貫通孔の内側面と支持ピン28との間に絶縁部材が介在するのであって、電極貫通孔の内側面自体に絶縁部材を固着したものでもない。
したがって、甲第2号証に記載された事項に基づいて、「上記導電体の表面から裏面まで貫通する穴の内側面に絶縁性部材が固着されている」点を、当業者が極めて容易に想到し得たものとすることはできない。
また、登録異議申立人が提出した参考資料も、異なる工程で電極貫通孔の内側面と電極表面とに絶縁膜を形成することを開示するものでも示唆するものでもない。
(2)請求項2に係る考案について
本件請求項2に係る考案は、上記請求項1に係る考案を引用し、構成「導電体のウエハが載置される面の角部が丸みを有する」点を更に有するものであるから、上記参考資料に記載された事項を考慮しても、上記甲第1、2号証に記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。
【5】むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、2に係る考案は、上記甲第1,2号証に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものとすることはできず、登録異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-11-27 
出願番号 実願平3-80133 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持    
前審関与審査官 中西 一友  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 井口 嘉和
ぬで島 慎二
登録日 1999-08-13 
登録番号 実用新案登録第2600558号(U2600558) 
権利者 東京エレクトロン株式会社
東京都港区赤坂5丁目3番6号
考案の名称 静電チャック  

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