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審決分類 審判    A45C
管理番号 1053437
審判番号 無効2001-40011  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-05-09 
確定日 2002-01-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3069620号実用新案「ストラップ」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3069620号の請求項1、2、4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 実用新案登録第3069620号の請求項3に係る考案についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その4分の1を請求人の負担とし、4分の3を被請求人の負担とする。
理由 (1)手続きの経緯
本件実用新案登録第3069620号に係る出願は、平成11年12月13日に実用新案登録出願され、平成12年3月29日に実用新案権の設定の登録がされ、その後、平成13年5月9日に実用新案登録無効審判請求人・有限会社上園磨冬コネクションより本件の実用新案登録請求の範囲第1項ないし第4項に係る実用新案登録について実用新案登録無効審判が請求され、これに対して、平成13年6月27日及び平成13年7月11日に二度に亘って答弁書が提出されたものである。
しかしながら、これらの答弁書はいずれも実用新案登録無効審判請求人の主張に対する答弁としては全く根拠のないものであったので、当審において平成13年8月28日付けで適切な答弁を促すための審尋を行ったところ、平成13年9月17日に答弁書が提出されたものである。
そこで、平成13年10月23日に口頭審理を行い、被請求人にさらに答弁の機会を与えるべきものと認められたところ、平成13年10月31日に第4回目の答弁書が提出されたものである。

(2)本件登録実用新案
本件登録実用新案(以下、単に「考案」という。)は、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
【請求項1】キャラクター本体内に雌形連結部材が形成されていることを特徴とするストラップ。
【請求項2】キャラクター本体内に形成された雌形連結部材に対して雄形連結部材が着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1のストラップ。
【請求項3】雄形連結部材の紐留め部に対して細紐及び太紐の留め構造が複数の留め構造を有することを特徴とする請求項1のストラップ。
【請求項4】キャラクター本体を雌形連結部材として一体的に成形したことを特徴とする請求項1のストラップ。

(3)実用新案登録無効の請求の理由の概要
審判請求人の主張する無効の請求の理由は、本件の請求項1ないし4に係る考案は、本件実用新案登録出願の日前の他の実用新案登録出願であって本件実用新案登録出願後に実用新案掲載公報の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「甲第1号証」という。)に記載された考案と同一であり、本件登録実用新案の考案者と上記他の実用新案登録出願に係る考案の考案者とは同一の者ではなく、本件実用新案登録出願時においてその出願人と上記他の実用新案登録出願に係る出願人とは同一の者ではないから、実用新案法第3条の2の規定に違反して実用新案登録がされたものであり、当該登録は同法第37条第1項第2号の規定により無効とされるべきものであるというものである。
そして、上記口頭審理においては、審判請求書に記載した無効理由のほかにさらに、『甲第1号証の第6、7図及び【0030】の記載からみて、第6、7図に示される「紐通し穴18」は端部に結び目を形成した細紐を止めるものである。よって、「紐通し穴18」は本件請求項3に係わる考案における「細紐の留め構造」に相当する』旨主張した。(第1回口頭審理調書の「請求人3」の欄参照。)
なお、請求人は、無効審判請求書において主張した、甲第1号証の図4b,図4cには、細ひも、太ひもの複数の留め構造を有する点が記載されている旨の主張は、口頭審理において何ら行わず、上記の新たな主張からみて事実上撤回したものと認められる。

(4)被請求人の答弁の概要
審判被請求人は、審判請求人の上記主張に対し、上記経緯に示したように都合4回にわたり答弁書を提出しているが、上記口頭審理において、平成13年6月27日及び平成13年7月11日付けの答弁書は撤回した。
そして、審判請求人の本件請求項1、2、4に係る考案についての主張についてはなんら反論しなかった(第1回口頭審理調書の「被請求人2」の欄参照。)が、本件請求項3に係る考案については平成13年9月17日及び平成13年10月23日付けの答弁書のとおり、複数の留め構造を有する点が甲第1号証には記載されていない旨反論している。

(5)対比・判断
イ)甲第1号証の記載
甲第1号証の12頁1行ないし15頁13行の【考案の実施の形態】には、以下のとおりの事項が記載され、また、図1ないし図11には以下の記載事項に即したストラップ等が図示されている。

「【0027】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施形態を図面によって具体的に説明する。
図1は本考案に係る携帯機器用ストラップとそのアクセサリの一例を示す図、図2はストラップの使用状態を示す図、図3はアクセサリとその本体内に設けられたジョイントの雌スナップの断面図、図4及び図5はアクセサリの斜視図及び断面図、図6及び図7はジョイントの雄スナップの側面図及び断面図、図8は本考案に係る携帯機器用ストラップの他の例を示す図である。
【0028】図1乃至図2に示す携帯機器用ストラップ1Aは、手あるいは首などに引っ掛ける吊紐2と、その吊紐2を携帯電話やPHS等の携帯機器3に取り付けるための吊元紐4との間に、ジョイント5で連結する一又は二以上のアクセサリ6A,6Bが着脱自在に装着されるようになっている。
【0029】ジョイント5は、弾性を有するスプリングフック8の左右一対のスプリング部9,9の端10に夫々その端10を閉じるためのプッシュ部となる突片11,11が形成されたプラスチック製の雄スナップ7と、当該雄スナップ7のスプリングフック8を嵌入する円形の穴13の入口にスプリングフック8の各スプリング部9の端10を係止させる環状の鍔部14が形成されたプラスチック製の雌スナップ12とで構成されている。
【0030】なお、雄スナップ7は、先端が円筒型に成形されたスプリングフック8の後端に、幅広な帯状の吊紐2をも取り付けられる方形リング部15が形成されると共に、図6及び図7の如く、スプリングフック8の先端から後端にかけて、その雄スナップ7をアクセサリ6Aの本体16に取り付けるリリヤン紐17を通して止める紐通し穴18が形成されている。
【0031】また、雌スナップ12は、図3及び図5の如く、雄スナップ7のスプリングフック8を嵌入する円形の穴13が形成された円筒体20の先端部に、その先端部内側に突出してスプリングフック8のスプリング部9の端10を係止させる環状の鍔部14が形成されている。なお、円筒体20の後端部には、リリヤン紐17を通すと同時にそのリリヤン紐17の結び目21を係止する紐通し穴22が形成されている。
【0032】鍔部14は、円筒体20の先端部の内側のみならず、その外側にも突出せられて、円筒体20をアクセサリ6A及び6Bの本体16内に穿設された円形の穴19内に嵌め込む際に、その穴19の入口に円筒体20の先端部を係止させる位置決めストッパとして機能するようになっている。
【0033】なお、雌スナップ12は、図3及び図5の如くアクセサリ6A及び6Bの本体16内に穿設した円形の穴19内に嵌め込む円筒体20で成るものに限らず、アクセサリ6A及び6Bの本体16をプラスチックで成形する際に、その本体16内に形成した穴19と、その穴19の入口に形成した鍔部14と同型の鍔部とで成るものでもよい。
【0034】アクセサリ6Aは、キャラクタ人形等で成る本体16内に設けられた雌スナップ12と、当該雌スナップ12の穴13の入口と反対位置に取り付けられた雄スナップ7とを有している。即ち、本体16の片端側に、雄スナップ7がリリヤン紐17で取り付けられ、本体16の他端側の内部に、雌スナップ12が、穴13の入口を本体16の外部に向けた状態で設けられている。
【0035】アクセサリ6Bは、その本体16内に設けられた雌スナップ12と、当該雌スナップ12の穴13の入口と反対位置に取り付けられた吊元紐4とを有している。即ち、本体16の片端側に、携帯機器3に結び付ける吊元紐4が取り付けられ、本体16の他端側の内部に、雌スナップ12が、穴13の入口を本体16の外部に向けた状態で設けられている。
【0036】なお、アクセサリ6Bは、ノベルティ・グッズとしても最適なもので、プラスチックによって本体16の全体形状が直方体あるいは立方体等の六面体に成形され、その六面体の一又は二以上の面に、広告・宣伝用の文字や絵柄が直接印刷されるか、もしくはその文字や絵柄が印刷された粘着シール23が貼付されている。
【0037】しかして、ストラップ1Aは、携帯機器3に結び付ける吊元紐4が取り付けられたアクセサリ6Bと吊紐2との間に、アクセサリ6Aを着脱自在に装着することができる。
【0038】そして、そのアクセサリ6Aを着脱自在に装着させるジョイント5は、雄スナップ7が、雌スナップ12の穴13の入口に形成された鍔部14に係止させるスプリングフック8のスプリング部9,9の端10に、その端10を閉じるためのプッシュ部となる突片11が形成された構造になっているので、雌スナップ12がアクセサリ6A及び6Bの本体16内に埋め込むように設けられていても、雄スナップ7の突片11を指先で押圧することにより、アクセサリ6A及び6Bの内部に埋め込まれた雌スナップ12との係合状態を容易に解除して、アクセサリ6Bを同型他種のものと簡単に付け替えることができる。
【0039】また、雌スナップ12が、アクセサリ6A、6Bの本体16内に設けられているので、それら雌スナップ12に係合させた雄スナップ7も、各々アクセサリ6A、6Bの本体16内に収容されることとなり、ジョイント5,5の外部に露呈する部分は、スプリングフック8のスプリング部9の端10を閉じるため突片11のみしかないので、ジョイント5,5が、ストラップの外観を損ねたり、あるいは間延びした印象を与えたり、アクセサリ6A、6Bの存在感や印象度を弱められたりすることがない。
【0040】更に、アクセサリ6A、6Bの本体16内に設けられた雌スナップ12と係合した雄スナップ7は、スプリングフック8のスプリング部9の端10を閉じさせるための突片11が、各アクセサリ6A、6Bの本体16と至近距離に位置して、それら各アクセサリ6A、6Bの本体16が突片11に誤って手を触れることを防止する働きをするので、雄スナップ7と雌スナップ12の係合状態が不意に解除されてストラップ1Aが吊紐2と吊元紐4とに分離分断されるおそれも少ない。
【0041】また、アクセサリ6Aは、その本体16の両端に雄スナップ7と雌スナップ12が取り付けられているので、これと同型のものを複数個直列に連結することができる。また、アクセサリ6A、6Bは、その本体16内に雄スナップ7と係合する雌スナップ12が設けられているため、ジョイント5の存在が全く目立たず、ジョイント5で連結されたアクセサリ6A、6B間の間隔も非常に狭いので、ストラップ1Aの全体の外観も間延びした印象を与えるものとはならない。
【0042】更に、ジョイント5は、雄スナップ7のスプリングフック8を嵌入する雌スナップ12の穴13が円形に形成されているので、その穴13内に嵌入したスプリングフック8が回転して、吊元紐4やリリヤン紐17に過剰な捩れを生ずることが防止されると同時に、雄スナップ7と雌スナップ12とを係合させる際に、角度調節等の位置合わせが全く不要であり、両者を瞬時に係合させることができる。
【0043】次に、図8に示す携帯機器用ストラップ1Bは、カバンや袋物、あるいはズボンのベルト通しなどに引っ掛ける吊金具24と、その吊金具24を携帯用ゲーム機等の携帯機器25に取り付けるための吊元紐26との間に、上記と同様のジョイント5で連結する一又は二以上のアクセサリ6A、6Cが着脱自在に装着される構成になっている。
【0044】アクセサリ6Cの本体16は、図4及び図5に示すアクセサリ6Bの本体16と同型のもので、その本体16の片端側に、吊金具24が取り付けられ、本体16の他端側の内部に、上記と同様の雌スナップ12が、穴13の入口を本体16の外部に向けた状態で設けられている。」

ロ)請求項1に係る考案について
本件の請求項1に係る考案は、上記のとおり、「キャラクター本体内に雌形連結部材が形成されていることを特徴とするストラップ。」である。
そして、甲第1号証記載のストラップに係る「アクセサリ」は請求項1に係る考案の「キャラクター」に相当し、「雌スナップ」は「雌形連結部材」に相当するから、甲第1号証には、「キャラクター本体内に雌形連結部材が形成されているストラップ。」が記載されている。
したがって、本件の請求項1に係る考案は、甲第1号証記載の考案と同一であるから、実用新案法第3条の2の規定に違反して実用新案登録がされたものである。

ハ)請求項2に係る考案について
本件の請求項2に係る考案は、上記のとおり、「キャラクター本体内に形成された雌形連結部材に対して雄形連結部材が着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1のストラップ。」である。
そして、甲第1号証記載のストラップに係る「アクセサリ」は請求項1に係る考案の「キャラクター」に相当し、「雌スナップ」は「雌形連結部材」に、「雄スナップ」は「雄形連結部材」に相当し、雌スナップと雄スナップは着脱自在であるから、甲第1号証には、「キャラクター本体内に形成された雌形連結部材に対して雄形連結部材が着脱自在に構成されているキャラクター本体内に雌形連結部材が形成されているストラップ。」が記載されている。
したがって、本件の請求項2に係る考案は、甲第1号証記載の考案と同一であるから、実用新案法第3条の2の規定に違反して実用新案登録がされたものである。

ニ)請求項3に係る考案について
本件の請求項3に係る考案は、上記のとおり、「雄形連結部材の紐留め部に対して細紐及び太紐の留め構造が複数の留め構造を有することを特徴とする請求項1のストラップ。」である。
そして、甲第1号証記載のストラップに係る「アクセサリ」は請求項1に係る考案の「キャラクター」に相当し、「雌スナップ」は「雌形連結部材」に相当するから、甲第1号証には、「キャラクター本体内に雌形連結部材が形成されているストラップ(請求項1のストラップ)。」が記載されている。
しかしながら、「雄形連結部材の紐留め部に対して細紐及び太紐の留め構造が複数の留め構造を有する」点については明示の記載はない。
そこで、審判請求人の、『甲第1号証の第6、7図及び【0030】の記載からみて、第6、7図に示される「紐通し穴18」は端部に結び目を形成した細紐を止めるものである。よって、「紐通し穴18」は本件請求項3に係わる考案における「細紐の留め構造」に相当する』旨の主張について検討する。

確かに、甲第1号証記載に係る雄スナップ7にはリリヤン紐17を通しうる紐通し穴18が形成されている旨記載されている。
そして、図面の記載や通常のストラップの使用の形態からみて、雄スナップ7に通したリリヤン紐17は何らかの手段で固定するものとみることができる。
さらに、結び目や接着剤や圧着具等の固定手段でリリヤン紐17を固定することは容易に想到できるものと認められる。
しかしながら、実用新案法第3条の2の規定に違反して実用新案登録がされたというには、それでは足らず、同一の考案が甲第1号証に現実に記載されていることを要するものである。
しかし、甲第1号証には、「雄形連結部材の紐留め部に対して細紐及び太紐の留め構造が複数の留め構造を有する」点については記載はなく、一つの留め構造であると認められる「方形リング部15」の他にはリリヤン紐17を通し固定することが可能であると認められる紐通し穴18が記載されているにすぎない。
そして、リリヤン紐17を固定することが可能である紐通し穴18は、たとえ使用者が容易に、しかも慣用手段を以て紐を固定することができても、単なる穴にすぎないものであり留め構造ということはできない。
よって、本件の請求項3に係る考案は、甲第1号証記載の考案と同一であるものということはできない。

ホ)請求項4に係る考案について
本件の請求項4に係る考案は、上記のとおり、「キャラクター本体を雌形連結部材として一体的に成形したことを特徴とする請求項1のストラップ。」である。
そして、甲第1号証記載のストラップに係る「アクセサリ」は請求項1に係る考案の「キャラクター」に相当し、「雌スナップ」は「雌形連結部材」に相当し、甲第1号証の【0033】欄には、「なお、雌スナップ12は、図3及び図5の如くアクセサリ6A及び6Bの本体16内に穿設した円形の穴19内に嵌め込む円筒体20で成るものに限らず、アクセサリ6A及び6Bの本体16をプラスチックで成形する際に、その本体16内に形成した穴19と、その穴19の入口に形成した鍔部14と同型の鍔部とで成るものでもよい。」と記載されているから、「キャラクター本体を雌形連結部材として一体的に成形したこと」についても甲第1号証に記載されている。
したがって、本件の請求項4に係る考案は、甲第1号証記載の考案と同一であるから、実用新案法第3条の2の規定に違反して実用新案登録がされたものである。

(6)むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1、2、4に係る考案は実用新案法第3条の2の規定に違反して実用新案登録がされたものであり、請求項1、2、4に係る実用新案登録は同法第37条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである
また、本件の請求項3に係る考案については、審判請求人の主張する理由によっては、その実用新案登録を無効とすることはできず、また、他に無効とすべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審理終結日 2001-11-12 
結審通知日 2001-11-15 
審決日 2001-11-28 
出願番号 実願平11-10134 
審決分類 U 1 111・ 161- ZC (A45C)
最終処分 一部成立    
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 和泉 等
岡田 和加子
登録日 2000-03-29 
登録番号 実用新案登録第3069620号(U3069620) 
考案の名称 ストラップ  
代理人 川尻 明  
代理人 澤野 勝文  

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