• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判    F16B
審判    F16B
管理番号 1053441
審判番号 無効2001-40013  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-05-12 
確定日 2002-01-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第3046509号実用新案「テーブルにおける折りたたみ脚の連結金具」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第3046509号の考案(以下、「本件登録考案」という。)についての出願は、平成9年7月1日に実用新案登録出願(実願平9-6134号)に係り、平成9年12月17日にその設定の登録がされた。
これに対し、平成13年5月12日に、請求人:川口工器 株式会社より実用新案登録の無効審判の請求がされ、被請求人:山本敏雄から平成13年7月21日付け答弁書及び平成13年8月31日付け手続補正書(補正対象:答弁書)が提出された。
その後、平成13年11月27日には口頭審理(以下、「本件口頭審理」という。)が行われ、この際、被請求人からは同日付けで再度手続補正書(補正対象:答弁書)が提出されたものである。

2.請求人の主張
(請求人の主張する無効理由概要)
請求人は、平成13年5月12日付け審判請求書において、証拠として以下に示す甲第2号証ないし甲第3号証を提示し(甲第1号証は、「本件実用新案登録の登録実用新案公報」である。)、以下3点の無効理由を有するものであると主張している。
これら3点については、本件口頭審理において、両当事者間で確認された事項である。
(1)本件実用新案登録第3046509号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、甲第2号証に記載のものと同一の考案である。
(2)本件実用新案登録第3046509号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、甲第2号証に記載のものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
(3)本件実用新案登録第3046509号の実用新案登録請求の範囲の請求項2に係る考案は、甲第2号証及び甲第3号証に記載のものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
(審判請求書第2頁第11行?第17行及び第3頁第18行?第14頁第11行参照。)

(請求人が提示した証拠方法)
甲第2号証:実公昭44-23784号公報
甲第3号証:実願昭46-70890号(実開昭48-27901号)
のマイクロフィルム

3.被請求人の主張
(被請求人の主張する答弁概要)
被請求人は、平成13年8月31日付け手続補正書(補正対象:答弁書)において、本件実用新案登録第3046509号の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び請求項2に係る考案は、甲第2号証及び甲第3号証に記載のものと同一の考案ではなく、また、これら甲号証に記載のものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない、と主張している。
なお、被請求人は、平成13年8月31日付け手続補正書(補正対象:答弁書)において、請求人適格について疑義を主張していたが、本件口頭審理においてその主張を取下げ(本件口頭審理調書の被請求人の第2項参照。)、同日付け手続補正書を提出している。

4.請求人が提示した証拠の記載内容
(甲第2号証: 実公昭44-23784号公報)
考案の名称:「卓脚」

・実用新案登録請求の範囲
「本文に示す如く、取付板に任意な方向に傾斜した面を有する凸起座を設けこれを枠板を定着し、該枠板の両側板の外側に同様の両側板を有する支持金具を重合状に嵌挿し、その上方に芯杆を、その支持金具が回動自在となるよう枢着し、その直下において該枠板の両側板の下方周縁に掛止溝を設けかつそれと重合する位置の支持金具の両側板下方に縦長孔を穿設し、該縦長孔にその内部を上下動する芯杆を緩嵌し、その両端に押ボタンを設け、両芯杆間に弾機を架設し、支持金具には木製卓脚を定着して成る卓脚。」

・第1欄第1欄第17行?第35行
「本考案は機構簡単でかつ脚体の先端の位置を常に一定に開かしめて使用に便ならしめることを目的とするもので、それは、卓の四隅部に取付ける略四角形の取付板1に任意な方向例えば卓の対角線方向でない外方に傾斜した面を有する凸起座2を設け該凸起座2にコ状の筒形枠板3を定着し、その両側板4,4’の外側において同様の両側板5,5’を有する支持金具6を重合状に嵌挿し、その上辺位置に芯杆7を該支持金具6が該枠板3の両側板4,4’の外側において回動し得るよう横架枢着し、その個所の直下位置において該枠板3の両側板4,4’の下方周縁に掛止溝8,8’を設け、かつ該掛止溝8,8’と重合する位置の支持金具6の両側板5,5’の下方に縦長孔9,9’を穿設し、それにその内部を上下動する芯杆10を横架緩挿し、その両端に押ボタン11,11’を取着け、両芯杆7及び10に弾機12を架設し、支持金具6には木製脚体13の頭部を定着して構成するものである。」

・第1頁第1欄第36行?第2欄第25行
「本考案は上記の如く構成したので、筒状枠板3を卓の周辺に対しどのような角度に於て定着したとしても、脚体13を開いたときその先端の位置は常に一定となり、脚体13は適度な角度において卓の周辺より斜めに折畳むことが可能となり、卓中央部の妨害にならず、支持金具6は該枠板3の両側板4,4’の外部において上方の芯杆7を中心として回動し、脚体13を直立させておくには支持金具6の両側板5,5’の縦長孔9,9’に緩挿された芯杆10は上方の芯杆7との間に設けられた弾機12に引かれて該縦長孔9,9’の上方周縁に圧着されるので該芯杆10の両端部は縦長孔9,9’と重合する位置の該枠板3の掛止溝8,8’に嵌合されるので、脚体13は堅固にその直立を維持するし、それを折畳むには芯杆10の押ボタン11,11’を持ってこれを下方に引けば芯杆10は弾機12によって縦長孔9,9’を下方に摺動して掛止溝8,8’より外れるので脚体13を横に倒せば支持金具6は芯杆7を中心としてその該枠板3の外側を摺動回転して脚体13はスムースに折畳むことができ、脚体13を再び直立するのにはそれを把持して回動させるだけで芯杆10の両端部は該枠板3の両側板4,4’の下方周縁を摺動してその掛止溝8,8’に達し、弾機12によって自動的に敏速に嵌合掛着せられ縦長孔9,9’の上縁に定置するから、きわめて機構簡単で折畳作用を確実容易ならしめて取扱い易く、且つ廉価に生産し得る等の効果がある。」

これらの記載と図面の記載を参酌するに、当該甲第2号証には、
卓に取付板1を取付け、この取付板1に設けた凸起座2にコ状の筒形枠板3を定着し、
両側板4,4’に掛止溝8を形成した前記コ状の筒形枠板3と、
木製脚体13の頭部を定着し前記両側板4,4’の外側において同様の両側板5,5’に縦長孔9,9を形成した支持金具6とを、
前記両側板4,4’及び5,5’が当接するように位置させて対象位置に設けた芯杆7を中心にして回動できるように枢着し、
しかも縦長孔9,9’及び掛止溝8を貫通させ前記コ状の筒形枠板3の両側板5,5’外に延出し端部に押ボタン11,11’を設けた芯杆10を弾機12によって常態において卓の凸起座2方向に引っ張るようにして構成された卓における折りたたみ脚の連結金具、
が記載されている。

(甲第3号証: 実願昭46-70890号(実開昭48-27901号)
のマイクロフィルム)
考案の名称:「座卓の折畳脚」

・実用新案登録請求の範囲
「図面に示すようにU状に屈曲して上部を両側方及後方へ展開して取付板1を形成した枠金2の両側板の中央稍上方に軸孔3を穿設し、その軸孔3を円心とする枠金2の前方に弧状縁4を形成すると共に、軸孔3の垂直下と軸孔3の稍水平位置の弧状縁4の夫々嵌入凹部5,6を設け、別に枠金2内に嵌入する大きさのU状に屈曲し、その両側板中央上部に上下方向に長孔7を穿設した作動金8を上記枠金2内に嵌合して、軸孔3及長孔7を通した基軸9で枠金2と作動金8とを枢結し、凹部5に該当する部分の作動金8に軸10を挿通して、基軸9と螺旋バネ11を懸着し、作動金8の下方に脚体12を取付けてなる座卓の折畳脚の構造。」

・第3頁第2行?第8行
「本案は上記の構造であるから枠金2を固定して脚体12部分を握って下方へ引張ると、基軸9は作動金8に穿設した長孔7内を通っているので、螺旋バネ11を伸長して作動金8は下降し、作動金8の横通した軸10は凹部5より脱出する。脚体12を引張りつつ前方へ倒せば、軸10の両端は弧状縁4に副うて移動し凹部6に嵌入するものである。」

・第4頁第10行?第20行
「以上のように本案は単に脚体12を引張ることによって、、軸10を嵌入凹部5又は6より離脱させ且弧状縁4に副わせ移動し、脚体12を起立させ或は倒伏して座卓板の裏側に副わせることができたもので、その操作が極めて簡単で円滑に行われ、而も軸10は常に螺旋バネ11で基軸9方向に牽引されているので、軸10が嵌入凹部5、6より自然に離脱するようなことは絶対になく、且起立させた場合も動揺するようなことがない等の実用的効果を有するものである。」

これらの記載及び図面の記載を参酌するに、当該甲第3号証には、
座卓板の四隅部裏面に取付けられる折畳脚において、座卓板側に取り付けられた枠金2に設けられた基軸9に対して、脚体12側に取り付けられた作動金8が長孔7により摺動可能とされており、作動金8は螺旋バネ11で枠金2側へ引張るようにされており、脚体12を、座卓として使用する位置へ移動させ起立させた際の位置を保持させるための嵌入凹部5と、折り畳んで座卓板に副わせた際の位置を保持するための嵌入凹部6とを設けた構成が記載されている。

5.当審の判断
5-1 本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1
及び請求項2に係る考案の認定
請求人は、本件口頭審理において、本件実用新案登録明細書の記載が、その考案の属する技術分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載されていないものとはいえないまでも、構成要件による特定される技術内容は、以下のように解釈するべきである、と主張している。
(1)本件実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし請求項2に係る「一方の側板に」の解釈は、「一方の側板のみに」の意味ではない。(本件口頭審理調書の請求人の第3項参照。)
(2)本件実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし請求項2に係る「浮遊状に係止し」の解釈は、「固定されてはいない、動けるように係止されている。」であり、この表現においてはいろいろな形態が想定され得る。(本件口頭審理調書の請求人の第4項参照。)

そこで、これらの主張について以下検討する。

(1)の主張に関して検討する。

本件実用新案登録明細書において、前記主張で指摘される「一方の側板に」に係る記載は、天板金具4の両側板42,42に設けられた切欠溝43,44と、脚金具5の側板52に施された長溝53をいずれに設けるかを説明するものとして用いられている。(本件実用新案登録明細書段落番号【0010】?【0014】)
そして、段落番号【0011】においては、図3及び図4を援用する
「上記した天板金具4と脚金具5およびロック杆7との関係を詳細に説明するため図3の矢印方向を平面図として示す図4により説明すれば次のとおりである。
また、43,44は天板金具の一方の側板42の周面に形成した切欠溝、53は脚金具5の一方の側板52の適所に形成した長溝である。」
の記載が認められる。
確かに、本件実用新案登録明細書中では、天板金具4の両側板42、42についても、脚金具5の両側板52、52についても、2枚存在する側板を区別した附番はされておらず、その意味においてそれぞれの金具の側板は同等の構成であると認識される。
しかしながら、本件実用新案登録明細書中の記載において、「切欠溝43,44」は「天板金具4の両側板42、42の一方の側板42に」設けられるものとして、又、「長溝53」は「脚金具5の両側板52、52の一方の側板52に」設けられるものとして統一した記載がされている。

さらに、本件実用新案登録請求の範囲に係る考案が前提とした従来技術に関する段落番号【0002】?【0005】の記載には、ロック装置の操作される軸杆72は、図8から明確なように、天板金具4の両側板42、42の内の一方の側板42(図8の右側のもの)側のみから突出するものとして記載されている。
よって、本件実用新案登録明細書を検討する限りにおいて、「切欠溝43,44」は「天板金具4の両側板42、42の一方の側板42に」設けられるものであり、又、「長溝53」は「脚金具5の両側板52、52の一方の側板52に」設けられるものであって、いずれの両側板においても両方の側板に設けられたものであることを窺わせるところはない。

また、本件口頭審理において、被請求人は、前記「一方の側板に」は、「一方の側板のみに」の意味であると明言している。(本件口頭審理調書の被請求人の第5項参照。)

してみるに、請求人の(1)の主張は、「両側板の一方の側板に」の文言のみを解釈することに限定した場合には容認し得るとしても、本件実用新案登録明細書の記載に関しては妥当なものとはいえず、採用することはできない。

次ぎに、(2)の指摘に関して検討する。

本件実用新案登録明細書において、指摘される「浮遊状に係止し」に係る記載は、天板金具4の両側板42,42に設けられた切欠溝43,44と、脚金具5の側板52に施された長溝53にロック軸72を嵌着させたロック装置のロック軸72の係止構成を説明するものとして用いられている。(本件実用新案登録明細書段落番号【0012】?【0015】)
そして、これらの記載の内、「浮遊状に係止」の構成の意味が、最も明らかにされているのは、段落番号【0012】においてである。
当該段落には、図4を援用して、
「特にI-I断面図が明らかなように、ロック軸72の端部72’を浮動状に係止しているロック杆7が前記したロック軸72を脚金具の一方の側板52に形成した長溝53および天板金具の一方の側板42を貫通するように取付けられており、しかも前記ロック杆7は一端を固定部55に他端をロック軸にそれぞれの端部を固定して張設されているばね73によって天板方向に引き上げられるように取付けられている。またこのロック杆7に押部71が自由端に形成されている。」(ここでは、「浮動状」と記載されるも、本件実用新案登録明細書のその他の記載個所を参酌するに、「浮遊状」の誤記であると解するのが妥当である。)
と記載されている。

そこで、当該段落の記載を検討するに、「ロック杆7」は「ロック軸72の端部72’」を「浮動状に係止している」と説明され、この「端部72’」を有する「ロック杆7」が「ロック軸7」を「脚金具の一方の側板52に形成した長溝53および天板金具の一方の側板42を貫通するように取付けられており」と説明されている。
したがって、確かに厳密に特定されているとまではいえないものの、「一方の端部72’」と、前記「脚金具の一方の側板52」及び「天板金具の一方の側板42」を貫通する「ロック軸7」とを対比した扱いを行っていることが把握できる。
そして、当該段落では、それに加えて、「ロック杆7には押部71が自由端に形成されている。」の記載もあり、「ロック杆7」の一つの端部「一方の端部72’」と「自由端」とが存在することとなる。
してみれば、前記に指摘したところの、本件口頭審理に係る被請求人の、前記「一方の側板に」は、「一方の側板のみに」の意味である、との明言を加味すれば、当該段落の「前記ロック杆7は一端を固定部55に他端をロック軸にそれぞれの端部を固定して張設されているばね73によって天板方向に引き上げられるように取付けられている。」の記載から明らかなように「ばね73」の引上げ力により、「ロック杆7」の「一方の端部72’」は「固定されてはいないが、動けるように係止されている」ものであるが、他方の「押部71」は、「ロック軸7」の「自由端」にあって、押し操作されるように構成されているものとして把握することが妥当である。

したがって、本件口頭審理における請求人の「「浮遊状に係止し」の解釈は、・・・この表現においてはいろいろな形態が想定され得る。」(本件口頭審理調書の請求人の第4項参照。)なる主張は、前記「両側板の一方の側板に」のみの記載では、「両側板の一方の側板のみに」の意味ではないと指摘する趣旨と同様に、本件実用新案登録明細書での説明が厳密に構成詳細を特定するものではない、とする意味においては妥当なものであるとしても、本件実用新案登録考案が、両側板側の両方に切欠溝及び長溝を備えた構成を含み得るものであるとする主張は、採用できない。

以上のとおりであるから、本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び請求項2に係る考案は、記載されるとおりの以下のものと認める。
「【請求項1】
a.天板に背板を固着し両側から直角方向に折曲してなる両側板の一方の側板に切欠溝を形成した天板金具と、
b.脚に背板を固定し両側から直角方向に折曲してなる両側板の一方の側板に長溝を形成した脚金具とを、
c.前記した両側板が当接するように位置させて対象位置に設けた軸を中心にして回動できるように結合し、
d.しかも脚金具の両側板の一方に端部を浮遊状に係止し、他端部を前記した長溝および切欠溝を貫通させ天板金具の一方の側板外に延出したロック軸を、ばねによって常態において天板の背板方向に引っぱるようして構成したことを特徴とするテーブルにおける折りたたみ脚の連結金具。
【請求項2】
e.天板に背板を固着し両側から直角方向に折曲してなる両側板の一方の側板に切欠溝とこの切欠溝と異なる他の切欠溝を形成した天板金具と、
f.脚に背板を固定し両側から直角方向に折曲してなる両側板の一方の側板に長溝を形成した脚金具とを、
g.前記した両側板が当接するように位置させて対象位置に設けた軸を中心にして回動できるように結合し、
h.しかも脚金具の両側板の一方に端部を浮遊状に係止し、他端部を前記した長溝および切欠溝を貫通させ天板金具の一方の側板外に延出したロック軸を、ばねによって常態において天板の背板方向に引っぱるようして構成したことを特徴とするテーブルにおける折りたたみ脚の連結金具。」
なお、上記分説及び分説記号と添字記載は、請求人が付したものをそのまま用いて記載する。
また、以下において、本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び請求項2に係る考案を、順次、「本件登録考案1」及び「本件登録考案2」という。

5-2 請求人の主張する本件登録考案1の実用新案法第3条第1項違反
について
請求人は、本件審判請求書において、前記甲第2号証が、「本件登録考案1」の構成要件a?dのすべてを備えるものであるから、前記甲第2号証に記載される考案は、「本件登録考案1」と同一であると主張している。(本件審判請求書第3頁第21行?第7頁第21行)

そこで、この主張を検討する。

本件構成要件c,g及び「テーブルにおける折りたたみ脚の連結金具」が、甲第2号証に記載のものと一致することは、本件口頭審理において両当事者間で確認された事項である。
しかしながら、その他の構成要件a,b,d,e,f及びhについて、請求人及び被請求人の両者は争っている。

ここで、本件登録考案1及び2における構成要件a,b,e,及びfにおける「両側板の一方の側板に」は、「両側板の一方の側板のみに」として解釈することが、本件実用新案登録明細書の記載に照らして妥当であることは、前記5-1で検討したとおりである。

してみれば、前記の甲第2号証の記載に照らせば、甲第2号証記載の考案が、本件登録考案1及び2における構成要件a,b,e,及びfを備えるものでないことは明らかであるから、請求人の主張は、採用することはできない。

5-3 請求人の主張する本件登録考案1の実用新案法第3条第2項違反
について
請求人は、本件審判請求書においては趣旨が明確とはいえないものの、「本件請求項1に係る考案は、甲第2号証に記載のものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。」(本件口頭審理調書の請求人の第1(2)項参照。)と主張しているので、この点を検討する。

本件登録考案1と、甲第2号証記載のものとを対比すると、
甲第2号証記載のものにおける「卓」は、本件登録考案1の「天板」に、以下同様に、
「コ状の筒形枠板3」は、「天板金具」に、
「両側板4,4’」は、天板金具の「両側板」に、
「掛止溝8」は、「切欠溝」に、
「木製脚体13」は、「脚」に、
「支持金具6」は、「脚金具」に、
「両側板5,5’」は、脚金具の「両側板」に、
「縦長溝9」は、「長溝」に、
「前記両側板4,4’及び5,5’が当接するように位置させて対象位置に設けた芯杆7」は、「前記した両側板が当接するように位置させて対象位置に設けた軸」に、
「芯杆7を中心にして回動できるように枢着」は、「軸を中心にして回動できるように結合」に、
「縦長孔9,9’及び掛止溝8を貫通させ前記コ状の筒形枠板3の両側板5,5’外に延出し設けた芯杆10」は、「前記した長溝および切欠溝を貫通させ天板金具の側板外に延出したロック軸」に、
「芯杆10を弾機12によって常態において卓の方向に引っ張るようにして構成」は、「ロック軸を、ばねによって常態において天板の方向に引っぱるようして構成」に、
それぞれ相当している。

したがって、本件登録考案1と、甲第2号証記載のものは、
a’.天板に固着し両側から直角方向に折曲してなる両側板の側板に切欠溝を形成した天板金具と、
b’.脚に固定し両側から直角方向に折曲してなる両側板の側板に長溝を形成した脚金具とを、
c.前記した両側板が当接するように位置させて対象位置に設けた軸を中心にして回動できるように結合し、
d’.しかも脚金具の両側板に係止し、前記した長溝および切欠溝を貫通させ天板金具の側板外に延出したロック軸を、ばねによって常態において天板の方向に引っぱるようして構成したテーブルにおける折りたたみ脚の連結金具、
である点で共通している。

一方、本件登録考案1と、甲第2号証記載のものは、以下の点で相違している。

相違点(1):本件登録考案1では、天板金具に関して「天板に背板を固着し」、及び脚金具に関して「脚に背板を固定し」なる特定がされているのに対して、
甲第2号証記載のものでは、本件登録考案1の「天板金具」に相当する「コ状の筒形枠板3」及び本件登録考案1の「脚金具」に相当する「支持金具6」のいずれについても、本願登録考案1のように「背板」を有するものとは記載されていない点。

相違点(2):本件登録考案1では、天板金具に関して「両側板の一方の側板に切欠溝を形成」、及び脚金具の構成に関して「両側板の一方の側板に長溝を形成」なる特定がされているのに対して、
甲第2号証記載のものでは、本件登録考案1の「切欠溝」に相当する「掛止溝8」が「両側板4,4’」に形成されており、又、本件登録考案1の「長溝」に相当する「縦長孔9,9」が「両側板5,5’」に形成されている点。

相違点(3):本件登録考案1では、ロック軸に関して「脚金具の両側板の一方に端部を浮遊状に係止し」及び「他端部を前記した長溝および切欠溝を貫通させ天板金具の一方の側板外に延出した」なる特定がされているのに対して、
甲第2号証記載のものでは、脚金具の両側板に係止し、前記した長溝および切欠溝を貫通させ天板金具の側板外に延出したロック軸を、ばねによって常態において天板の方向に引っぱるようして構成されるものの、本件登録考案1のように、ロック軸の両端の係止構造が異なるものでない点。

相違点(1)に関し、本件登録考案1が、「天板金具」及び「脚金具」に「背板」を備え、それらの「背板」により「天板」或いは「脚」に固着されるように構成された点は、甲第2号証記載のものにおいて、本件登録考案1の「天板金具」に相当する「コ状の筒形枠板3」を、同じく本件登録考案1の「天板」に相当する「卓」に直接定着する、或いは本件登録考案1の「脚金具」に相当する「支持金具6」を、同じく本件登録考案1の「脚」に相当する「木製脚体13」に直接定着するように構成するものに相当する。
しかしながら、このように2部材を固着或いは定着するに際して、甲第2号証記載のもののように「取付板1」を介在させた取付構成とするか、或いは本件登録考案1のように直接2部材を固着或いは定着するかは、設計事項に属する技術的事項であって、必要に応じて適宜採用される程度の事項であって、それにより得られる作用効果は、当業者であればきわめて容易に想到し得る程度のものである。

次ぎに相違点(2)及び(3)は、結局は、本件登録考案1においては、「ロック軸」が「一方の端部」を「浮遊状に係止し」、「他方の端部」を「脚金具」の「一方の側板」に形成された「長溝」を介して「天板金具」の「一方の側板」に形成された「切欠溝」に係合するように構成されているのに対して、甲第2号証記載のものにおいては、本件登録考案1の「ロック軸」に相当する「芯杆10」が、その両端部において「浮遊状に係止し」の構成を備えるものとしても、前記本件登録考案1の「切欠溝」及び「長溝」が、「脚金具」及び「天板金具」の各側板の両方に設けられていることに基づく相違となる。

そして、この相違により、本件登録考案1は、本件登録実用新案明細書における段落【0014】「またロック軸72は特にII-II線断面図で明らかなように常態において、ばね73によって天板金具方向に引き上げられるように(上方)付勢されているがロック杆の押部71を反付勢方向(下方)押下げることで切欠溝43から離脱し、長溝内を自由に上下方向に移動できるものである。」と記載されるように、「ロック杆」の「浮遊状に係止」された「一方の端部」を中心とした揺動運動を与えるものとなっており、同段落【0017】【考案の効果】「この考案は天板金具および脚金具のそれぞれ当接する一方の側板に形成したそれぞれの切欠溝および長溝にロック軸を嵌着させ、この嵌着状態を天板金具より延出したロック軸を押部を押下げるだけで天板に対して脚を折りたたむことができる」なる格別な作用効果を得られるものである。
当該作用効果は、換言すれば、甲第2号証記載のものにおいては、「コ状の筒形枠板3」に設けられた「掛止溝8」と「支持金具」に設けられた「縦長孔9」の両方に係合している「芯杆10」の両端を引かないと、「木製脚体」を回転できないのに対して、本件登録考案1においては、「ロック杆」の一方側のみに存在する「押部」を押すことで、脚の回転が可能となるのである。
そして、甲第2号証記載のものにおいて、「芯杆10」の両端部に備えるロック機構の片方のみに設けることを示唆する記載はなく、また、請求人が提出している甲第3号証におけるテーブルにおける折りたたみ脚の連結金具構成においても、前記に摘示したように、本件登録考案1の「脚」に相当する「脚体12」部分を、本件登録考案1の「天板金具」に相当する「枠金2」に対して引張ることで、ロックを解除するものであって、本件登録考案1のように「切欠溝」と「長溝」とを一組のみ設けることで、簡易なロック解除と操作と正確なロックとを兼ね備えたものとすることが、当業者であればきわめて容易に想到し得ることを裏付けるものとはいえない。

したがって、このように、本件登録考案1は、簡易なロック解除操作と正確なロックとを兼ね備えた格別な作用効果を奏するものであって、甲第2号証記載のものからきわめて容易に当業者が想到し得たものとはいえない。

5-4 請求人の主張する本件登録考案2の実用新案法第3条第2項違反
について
請求人は、本件審判請求書において、「本件請求項2に係る考案は、甲第2号証に記載のものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。」と主張している。(本件審判請求書第7頁第27行?第14頁第1行)

そこで、この主張を検討する。

前記5-2で指摘したように、請求人及び被請求人の両者は、「本件構成要件c,g及び「テーブルにおける折りたたみ脚の連結金具」は、甲第2号証に記載のものと一致する。」として、この点については争っていない。
そして、本件登録考案2は、前記本件登録考案1と対比した場合、両者が備える「天板金具」に関して、本件登録考案1の構成要件aでは「一方の側板に切欠溝を形成した」と特定されるのに対して、本件登録考案2の構成要件eでは「一方の側板に切欠溝とこの切欠溝と異なる他の切欠溝を形成した」と特定している点においてのみ相違しており、その他の構成要件は全て一致するものである。
してみれば、本件登録考案2は、前記の本件登録考案1と甲第2号証記載のものの対比におけると同じ一致点を、相違点(1)?(3)に加えて、以下の点において相違するものである。

相違点(4)本件登録考案2では、天板金具に関して「一方の側板に切欠溝とこの切欠溝と異なる他の切欠溝を形成した」との特定を有するのに対して、甲第2号証記載のものでは、このような特定を有しない点。

そこで、前記相違点(4)について検討する。

確かに、甲第2号証記載のものにおいては、本件登録考案2の「天板金具」に相当する「枠板3」に「掛止溝8」が一つ設けられるのみであって、この「掛止溝8」と異なる他の「掛止溝」を設けることは記載されていない。
しかし、請求人が提出した甲第3号証においては、前記に摘示したように、折畳脚を、座卓として使用する位置へ移動させ起立させた際の位置を保持させるための嵌入凹部5と、折り畳んで座卓板に副わせた際の位置を保持するための嵌入凹部6とを設けた構成が示されており、甲第2号証記載のものにおいて、卓として使用する位置へ木製脚体を起立させた位置を保持させるための「掛止溝8」に加えて、折り畳んで卓に副わせた位置を保持するための「掛止溝」を設ける程度のことは、当業者であれば適宜採用し得た程度の事項であるといわざるを得ない。

しかしながら、既に検討したように、本件登録考案2は、本件登録考案1と同一のaないしdの構成要件を備えるものであるからして、前記5-3で指摘したように、甲第2号証記載のもの及び甲第3号証に記載の事項から、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。

5-5 まとめ
以上のとおりであるから、本件登録考案1は、甲第2号証記載のものと同一のものではないので、実用新案法第3条第1項第3号に規定されるものに該当しておらず、また、本件登録考案1及び2は、甲第2号証記載のもの及び甲第3号証記載のものに基づいてきわめて容易に考案をすることができたものでもないので、実用新案法第3条第2項に違反するものでもない。

6.むすび
したがって、請求人が主張する理由及び提示した証拠方法によっては、本件実用新案登録を無効とすることはできない。
また、他に本件実用新案登録を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2001-12-05 
出願番号 実願平9-6134 
審決分類 U 1 111・ 113- Y (F16B)
U 1 111・ 121- Y (F16B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 船越 巧子
長屋 陽二郎
登録日 1997-12-17 
登録番号 実用新案登録第3046509号(U3046509) 
考案の名称 テーブルにおける折りたたみ脚の連結金具  
代理人 大塚 貞次  
代理人 吉井 雅栄  
代理人 吉井 剛  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ