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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1053446
審判番号 不服2000-16089  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-03 
確定日 2002-01-18 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 8256号「吐出口の構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 8月12日出願公開、実開平 6- 58183]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年1月21日の出願であって、平成12年7月26日(発送日は、平成12年8月8日)に拒絶の査定がなされ、平成12年9月3日に審判の請求がなされたものである。

2.本願考案
本願の請求項1及び2に係る考案は、平成10年9月8日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認められる。
そして、その実用新案登録請求の範囲の請求項1には、次のとおり記載されていて、以下、これを「本願考案」という。
「【請求項1】
吐出口(2)に、液体吐出方向には密閉され、逆方向には開口する逆止弁(1)を設けた、残液落下防止用吐出口の構造.」
また、本願考案の課題(目的)は、願書に添付された明細書の記載からみて、次のとおりと認められる。
「従来ポンプ使用後、吐出管を所定の場所へ収納するとき、吐出口から残液が、あとこぼれしないように、ネジ又はレバーにより強制的に開閉する弁を、吐出口に設けていた。
これには、本来ネジ又はレバーにより強制的に開閉する弁は、管路内を高圧力で、しかも大量に流れる液体を遮断するのに用いられるもので、本件のように、小量でしかも圧力のほとんどない液体を止める弁としては高価すぎて、ホースポンプ等の比較的安価な吐出口には採用できないといった欠点があった。
本願考案は、この欠点を解決するものである。」(明細書段落番号(0002)(0003)参照)

3.引用文献記載の考案
原審の拒絶の査定に引用された実願昭48-102382号(実開昭50-49701号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。
イ.「図面に示す通り排出口2に停止弁3をレバー4により、開閉自在な構造の停止弁を備えたサイホン式ポンプ。」(明細書第1頁実用新案登録請求の範囲)
ロ.「図面について説明すれば、第二図に示すように、ポンプの排出口2より、数センチ上部内側へ、排出を停止するための停止弁3を設け、その下部へ停止弁3を開閉するためのU字型の開閉レバー4を上げ下げ自在にして、上げた時停止弁3を押し上げて開き、下げた時は停止弁3が閉じる状態に装置する。」(明細書第2頁第5?12行)
この記載事項及び第二図に示される事項からみて、「ポンプの排出口2に設けられた、液体の排出を停止するための停止弁3は、その下部から開閉レバー4の作用に基づく外力により停止弁3を押し上げた時開き、その外力を取り去った時閉じて液体の排出を停止する機能を有する」と解される。
これらの記載事項によると、引用例1には、次のとおりの考案(以下、「引用考案」という。)が記載されていると認めることができる。
「排出口2に、外力により押し上げた時開き、外力を取り去った時閉じて液体の排出を停止する機能を有する停止弁3を設けたサイホン式ポンプの排出口の構造。」
また、原審の拒絶の査定に引用された実願昭51-45823号(実開昭52-136201号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。
ハ.「筒状本体1に弁2を取付けた残滴落下防止器。」(明細書第1頁実用新案登録請求の範囲)
ニ.「従来、石油器具に石油ポンプで給油する場合,給油完了に伴なう収納時にポンプの管内外面に付着した残留石油分が管末端から落滴するため,早期の収納を防げ,かつ付近を汚す恐れがあった。
本考案はこれらの欠点を除くもの…」(明細書第1頁第7?11行)
ホ.「これを図面に於て説明すると,防止器本体1に弁2を取付け,ポンプ管3の末端方向にスライド式に移動させることにより,管外面に付着した残滴の落下を促進させると共に,末端に達した時バネ6の作用により弁2が閉じることにより,管外内面より落下する残留灯油分のポンプ管末端からの落滴を防止するものである。」(明細書第1頁第11?17行)
この記載事項及び第1?3図に示される事項からみて、「防止器本体1に設けられた、液体の落下を防止するための弁2は、その一方からの外力によりへ弁2を押し下げた時開き、その外力を取り去った時閉じて液体の流出を停止する機能を有する」と解される。
これらの記載事項によると、引用例2には、次のとおりの考案(以下、「周知考案」という。)が記載されていると認めることができる。
「管外内面より落下する残留灯油分のポンプ管末端からの落滴を防止する」ためのものであって、「ポンプ管3の末端部に、その一方からの外力により弁2を押し下げた時開き、その外力を取り去った時閉じて液体の流出を停止する機能を有する弁2を取付けた残滴落下防止器を設けた、石油ポンプ。」

4. 本願考案と引用考案の対比
本願考案と引用考案とを対比すると、引用考案の「排出口2」は、その技術的意義において、本願考案の「吐出口(2)」に相当し、同様に、「外力により押し上げた時開き、外力を取り去った時閉じて液体の排出を停止する機能を有する停止弁3」は「液体吐出方向には密閉され、逆方向には開口する逆止弁(1)」に相当すると認めることができる。
また、本願考案の「残液落下防止用吐出口の構造」と「サイホン式ポンプの排出口の構造」は、本願考案が手動式ポンプ(ホースポンプ)の吐出口の構造を含むものであるから、「ポンプ吐出口の構造」の限度で一致している。
してみると、本願考案と引用考案の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
吐出口に、液体吐出方向には密閉され、逆方向には開口する逆止弁を設けたポンプの吐出口の構造。
<相違点>
本願考案では、「残液落下防止用吐出口の構造」としているのに対して、引用考案では、「サイホン式ポンプの排出口の構造」としている点。

5.相違点の検討及び判断
以下、相違点について検討する。
家庭用石油暖房機の給油のために使用される手動式ポンプ(ホースポンプ)において、給油作業後にポンプに残存又は付着した石油がポンプの吸入口や吐出口からたれ落ちることへの対処は、従来より、当業者のみならず一般人にとって、石油がたれ落ちる恐れのあるポンプの吸入口や吐出口に他の用途の容器や布等を宛ったりして、それ以上石油がたれ落ちないようにする等適宜行われていたことと認められる。
また、上記周知考案からみて、手動式ポンプ(ホースポンプ)において、給油作業後にポンプに残存又は付着した石油がポンプ管の末端からたれ落ちることへの対処として、石油がポンプ管の末端を覆うように逆止弁を取付けた残滴落下防止器を設けることは、従来周知の技術的事項と認められる。
してみると、上記本願考案の課題(目的)は新規なものといえず、考案の家庭用石油暖房機の給油のために使用される手動式ポンプ(ホースポンプ)において、給油作業後にポンプに残存又は付着した石油がポンプの吸入口や吐出口からたれ落ちることへの対処として、石油がたれ落ちる恐れのあるポンプの吸入口や吐出口に他の用途の容器や布等を宛ったりすることに換えて、専用の手段として逆止弁からなる手段を採用することは、従来周知の技術的事項であると認めることができる。
このような状況において、上記従来周知の手動式ポンプ(ホースポンプ)に、これと同じ技術分野の石油ストーブ等の給油に使用されるサイホン式ポンプに係る引用考案の技術思想を適用することを妨げるような特段の事情は、見当たらない。
したがって、相違点に係る本願考案の構成要件は、従来周知の手動式ポンプ(ホースポンプ)に引用考案の技術思想を適用することにより、当業者がきわめて容易に想到できたものというべきである。
なお、審判請求人は、「引用考案の逆止弁が、吐出口より数センチメートル吐出管の内側に設けてあるので、弁と吐出口の間に残液が残る」旨主張している(審判請求書第2頁第18?25行参照)が、確かに、引用考案の実施例では、弁を開くための外力付与手段をポンプと一体的に設けてポンプ単独で弁の開閉を完結しているのに対し、本願考案の実施例では、弁を開くための外力付与手段をポンプと別体に設けてポンプ単独で弁の開閉を完結できないようにしている点で一応の相違はみられるが、引用考案において、引用例の記載事項イからみて、このような弁と吐出口の間の間隔が必須の構成要件でないばかりか、弁の外に凹部がない方がたれ落ちの可能性が少ないことが自明のことにすぎなく、当業者が適宜実施できる設計的事項にすぎないので、上記審判請求人の主張は、採用できない。

6.むすび
したがって、本願考案は、引用考案及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-11-05 
結審通知日 2001-11-13 
審決日 2001-11-28 
出願番号 実願平5-8256 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 水谷 万司千葉 成就  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 亀井 孝志
栗田 雅弘
考案の名称 吐出口の構造  

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