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審決分類 審判 訂正  訂正する A44C
管理番号 1055163
審判番号 訂正2001-39209  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-04-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2001-11-15 
確定日 2002-01-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2586884号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第2586884号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。
理由 1.請求の要旨
本件審判の訂正の要旨は、実用新案登録第2586884号考案(平成5年8月27日出願、平成10年10月9日設定登録、平成12年6月3日訂正請求確定(平成11年異議第72530号事件における平成11年12月9日付けの訂正請求))の願書に添付した明細書 (以下、「登録明細書」という。)を審判請求書に添付した訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおり、すなわち、下記のとおり訂正することを求めるものである。
(a)訂正事項a
登録明細書の実用新案登録請求の範囲の記載、
「【請求項1】耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として当該押圧部以下のU字形状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすることにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とする耳飾り。」を、
「【請求項1】耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として当該押圧部以下のU字形状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とする耳飾り。」
と訂正する。
(b)訂正事項b
登録明細書の段落【0006】の
「【課題を解決するための手段】この考案の耳飾りは、耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として上記押圧部以下のU字状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすることにより.挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とするものである。」を、
「【課題を解決するための手段】この考案の耳飾りは、耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開□し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として上記押圧部以下のU字状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とするものである。」と訂正する。
(c)訂正事項c
登録明細書の段落【0010】の
「【0010】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けした場合でも」を、
「【0010】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても」と訂正する。
(d)訂正事項d
登録明細書の段落【0023】の
「【0023】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けした場合でも」を、
「【0023】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても」と訂正する。
(e)訂正事項e
登録明細書の段落【0027】の
「【0027】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けした場合でも」を、
「【0027】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても」と訂正する。

2.当審の判断
2ー1 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
この訂正における訂正事項aは、上記訂正の要旨からみて、本件登録明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された「さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすることにより」を「さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けにより」に訂正しようとするものである。
この訂正事項に関連する記載として、登録明細書の段落【0010】、【0023】及び【0027】に、「さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けした場合でも」と記載され、また、その図1には、挟み付け金具において外側に向かって伸びている両先端の一方、及びほぼU字形の領域における部位の2点が、装飾本体に対する支持部となっていることが示されている。
そうすると、この訂正事項aは、登録明細書に記載の事項の範囲内において、装飾本体と挟み付け金具とのロー付け部部位を限定したものといえるから、訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(2)訂正事項b乃至eについて
訂正事項b乃至e訂正は、訂正事項aの実用新案登録請求の範囲の訂正に対応して、登録明細書に記載された事項の範囲内において訂正するもであるから、明瞭でない記載の釈明に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

2ー2 独立登録要件について
(1)訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された考案
訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「訂正明細書の考案」という。)は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として当該押圧部以下のU字形状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とする耳飾り。」

(2)引用刊行物
刊行物1:英国特許出願公開第2217178号明細書(1989年)
刊行物2:実公昭35ー18875号公報
刊行物3:実願昭53ー179557号((実開昭55ー98222号)のマイクロフィルム

(3)引用刊行物に記載の事項
(3ー1)上記刊行物1には、耳飾りに関し、図面とともに、「この発明の目的は、・・・金属を多量に使用せず、快適な装着感をもたらす、簡易な構成の耳飾りの取付具を提供することにある。」(第1頁13?16行和訳)こと、「この発明にかかる耳飾りの取付具は、耳たぶに適するよう調整された、ほぼU字形の弾性部材から成り、そのU字形の両端部分で耳たぶを挟みつけ、U字の少なくとも一方の部分が、広範囲にわたって耳たぶを押圧する形に形成される。」(第1頁17行?第2頁2行和訳)こと、「図1及び図2について更に詳しく説明すると、この取付具は、標準9カラットの金合金できている。これは、最初は軟質の線材として供給され、それから適宜の形状に形成され、そして、平滑化により硬化される。そのため、最終製品は必要に応じた程度の弾力性を持つ。」(第3頁1?5行和訳)こと、「図1に示すように、この取付具は、耳たぶに適するように、ほぼU字形をしており、U字の両上端部で耳たぶを挟みつけている。左上端部1は、更に快適な装着感の為に、内側へ湾曲している。U字の右側部2の上端部のボール3のところで終わっており、その滑らかな表面は、より一層快適な装着感を提供する。」(第3頁8?14行和訳)こと、「図2に示すように、U字の左側部1は、輪に形成されている。こうすると、左側部1から作用する押圧力を耳たぶの広い範囲で受けることができる。左側部1は耳たぶの裏側に接するよう形成され、耳たぶの肉は、その輪の中へ押し込まれる。」(第3頁17?21行和訳)こと、「図3に示す部品は、図1及び図2で述べたものと同様の方法で機能し、対応する部分には、同一の番号を付している。外側部2には、従来型でびょう式の装着部が設けられ、そこに宝飾宝石6が取付けられている。」(第4頁6?11行和訳)ことが記載されている。
また、上記刊行物1の記載及び図3からみて、装飾宝石6の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に耳飾りの取付具部品が取付けられていること、取付具は連続一体の線状であることが窺える。
(3ー2)上記刊行物2には、「本案は可撓性合成樹脂等柔軟で弾力性を有するU字状主体1の側辺2,3の一方2の先端に膨大部4を設けた突子5を一体に突設し,且つ側辺2,3の対向面の上方を互に接近させて挾持間隙6を形成した構造を要旨とするもので、図示の側辺3の上端は之を外方に屈曲して挾持間隙6に挿入し易くしたものである。 尚図中7は耳飾り8はその取付環部である。」(第1頁左欄5?12行)こと、「本案は上記のような構成であるから耳飾りの環部8を膨大部4より突子5に圧入して支持させ挾持間隙6を耳たぶに挾んで置けば弾性によって側辺2,3が耳たぶを両側から押しつけるため離脱することがなく又側辺を開けば簡単に取外すことができるのである。」(第1頁左欄13行?同頁右欄3行)ことが記載されている。
また、上記刊行物2の第1図からみて、U字状主体1の挾持間隙6は、耳たぶを挟み付けるため細い首状に連続して形成されていること、U字状主体1を挾持間隙6以下のU字形状部縦断面がほぼ左右対称に形成されていること、挾持間隙6から連続して伸びるU字状主体1の両先端がそれぞれ外側に向かって伸びていることが窺える。
(3ー3)上記刊行物3には、イヤリングに関し、図面とともに、「また、各ロウ付用溝部7の取付螺管嵌合溝4、装飾ボール嵌合溝5、取付環嵌合溝6には、あらかじめ用意された、リング本体Aを構成する夫々取付螺管A2、装飾ボールA3、取付環A4を順次嵌合する。そして、これらの各部品A1,A2,A3,A4の各接合部に銀ロウを盛った後に、それを真空状態のもとで、電気炉等で加熱して・・・リング本体Aの成形が完了される。」(第5頁2?11行)ことが記載されている。

(4)対比
刊行物1に記載された耳飾りは、刊行物1の記載及び図3からみて、耳たぶ前面に取付けられる装飾宝石6と、装飾宝石6の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた取付具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、取付具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上端部に耳たぶを挟み付けるために輪を形成した左上端部1と右側部2を有し、かつ該部品を縦の中心線を基準として耳たぶを挟み付けるための部分以下のU字形状部縦断面をほぼ左右対称に形成し、取付具の右側部2に装飾宝石6を取付けるための装着部5を設けることにより、取付具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成した耳飾りということができる。
そこで、訂正明細書の考案と刊行物1に記載された考案を対比すると、刊行物1に記載された「装飾宝石6」、「取付具」、「耳たぶを挟み付けるために輪を形成した左上端部1と右側部2」は、それぞれ、訂正明細書の考案の「装飾本体」、「挟み付け金具」、「押圧部」に相当するから、両者は、耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける押圧部を設けてなり、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成した耳飾りの点で一致し、次の点で相違する。
イ.訂正明細書の考案は、耳たぶを挟み付ける押圧部が細い首状に形成されているのに対し、刊行物1に記載された考案は、耳たぶを挟み付けるために輪を形成した左上端部1と右側部2上端とから構成している点。
ロ.訂正明細書の考案は、挟み付け金具を縦の中心線を基準として当該押圧部以下のU字形状部縦断面が左右対称に形成しているのに対し、刊行物1に記載された考案は、挟み付け金具を縦の中心線を基準として当該押圧部以下のU字形状部縦断面がほぼ左右対称に形成している点。
ハ.訂正明細書の考案は、押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けとしているのに対し、刊行物1に記載された考案は、押圧部を構成する挟み付け金具の右側部を装飾本体の取付部としている点。

(5)判断
(5ー1)相違点イについて
刊行物2には、刊行物2の記載からみて、耳飾り止具のU字状主体1の挾持間隙6、すなわち、押圧部を、耳たぶを挟み付けるため細い首状に連続して形成したことが記載されており、刊行物1に記載された考案における押圧部を、刊行物2に記載されたような耳たぶを挟み付けるため細い首状に連続して形成した押圧部の構成として上記相違点イであげた訂正明細書の考案の構成のようにすることは、当業者であればきわめて容易に想到し得ることである。
(5ー2)相違点ロについて
耳飾りにおいて、上端を開口したU字状の挟み付け金具を縦の中心線を基準として耳たぶを挟み付ける押圧部以下のU字形状部縦断面を左右対称に形成することは、従来周知(例えば、実願昭62ー46616号(実開昭63ー1524412号)のマイクロフィルム、実願昭62ー23195号(実開昭63ー131627号)のマイクロフィルム等参照。)、であり、刊行物1に記載された挟み付け金具の押圧部以下のほぼU字形状部縦断面を上記従来周知の形状とすることは、当業者であれば適宜なし得る程度のことであって、この点に格別のものはない。
(5-3)相違点ハについて
刊行物2には、刊行物2の記載からみて、耳飾り止具のU字状主体1の挾持間隙6、すなわち、押圧部から連続して伸びるU字主体1の両先端がそれぞれ外側に向かって伸びているように形成した点が記載され、また、刊行物3には、装飾本体をロー付けにより、耳飾りの挟み付け金具の線状部に取り付けることが記載されている。
しかしながら、刊行物2及び刊行物3のいずれにも、訂正明細書の考案のように、押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けとすることは、何ら記載も示唆もされておらず、上記周知技術を参酌しても、刊行物1に記載された考案に刊行物2及び刊行物3に記載された事項を採用して、上記相違点ハであげた訂正明細書の考案の構成を当業者がきわめて容易に想到し得たとすることができない。
(5-4)そして、訂正明細書の考案は、上記相違点ハであげた構成を採用することにより、訂正明細書に記載された「さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても、押圧部以下の挟み付け金具が左右ほぼ対称に移動するため、装飾本体1は装着者の耳たぶの厚さに関らずほぼ正面を向いた常態を維持するので装飾性を低下させることがない。」(段落【0027】)という格別の効果を奏するものである。
(5-4)したがって、訂正明細書の考案は、刊行物1乃至刊行物3に記載された考案並びに周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案することができたものとすることができないから、訂正明細書の考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案であるとすることはできない。
また、他に、訂正明細書の考案が、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案であるとする理由を発見しない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成5年法附則第4条第2項において読み替えられた平成5年法改正前の実用新案法第39条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するから、上記訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
耳飾り
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として当該押圧部以下のU字形状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とする耳飾り。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この考案は、バネで耳たぶをはさみつけて抜け止めするクリップ式の耳飾りに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の耳飾りとして、バネ等の弾性を利用して耳たぶをはさみつけるクリップ式の耳飾りが知られている。このクリップ式の耳飾りにおいては、▲1▼板バネを回転片に設けて回転片を装飾本体側に付勢するようにしたもの、▲2▼回転片として弾性線材を耳たぶに対して平行にかつU字状に折り曲げたものを使用し、その両端を装飾本体に設けた挟み付け金具の軸受部にはめ込むとともに、上記軸受部に設けた傾斜ガイドによって回転片を装飾本体側に付勢するようにしたもの、さらに▲3▼洗濯挟みのように回転片をレバーで開閉操作できるようにするとともに、回転片を装飾本体側に付勢するために回転片と装飾本体との対向面に磁石を取り付け、その吸引力を利用したもの(実開昭63-144019公報参照)等がある。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】上記数種の耳飾りのうち、▲3▼の洗濯挟みのように回転片をレバーで開閉操作できるようにするとともに、回転片を装飾本体側に付勢するために回転片と装飾本体との対向面に磁石を取り付け、その吸引力を利用したもの(実開昭63-144019公報)は、操作が簡単で便利なものであるが、磁石の挟着力は耳たぶの厚さ等によってきかなくなってしまうという欠点があった。
【0004】また▲1▼と▲2▼の耳飾りは、部品点数が多く組付けが面倒で、また組み付けの際の挟着力の調整に熟練が必要であり、操作を片手でワンタッチで行なうことができないという欠点がある。
【0005】この考案の耳飾りは従来例の上記欠点を解消しようとするもので、組付けが簡単で、かつ組み付けの際の挟着力の調整も容易であり、しかも挟着力を長期間にわたって保つことができる耳飾りを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この考案の耳飾りは、耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として上記押圧部以下のU字状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とするものである。
【0007】
【作用】この考案の耳飾りによれば、組付けが簡単で、従来の耳飾りに比べて耳への装脱着が簡単で、かつ装着の際の挟着力の調整が容易となる。
【0008】しかもこの考案の耳飾りによれば、ソフトな挟着力を長期間にわたって保つことができる。
【0009】また、上記挟み付け金具2の開口の幅を調節することにより、耳飾りが耳たぶを必要以上に挟み付けることを防止し、耳たぶに痛みを感じさせることがない。もちろん、装着時にも押圧部以下の挟み付け金具が左右対称となり、耳たぶからの確実な脱落防止を図ることもできる。
【0010】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても、押圧部以下の挟み付け金具が左右ほぼ対称に移動するため、装飾本体1は装着者の耳たぶの厚さに関らずほぼ正面を向いた常態を維持するので装飾性を低下させるごとがない。
【0011】
【実施例】以下、この考案の耳飾りの実施例を、図面に基いて説明する。
【0012】図1ないし図3において、1は耳飾り前面に取り付けられる装飾本体で、種々の形状を有しており、図ではハート形状に形成されている。この装飾本体1は、金や銀、プラチナ等の貴金属である。
【0013】上記装飾本体1の背面には、装飾本体1とは別に、耳たぶの厚さ方向に直角に挟み付け金具2が取付けられている。この挟み付け金具2は上記装飾本体1となじみのある貴金属素材で作成されており、ロー付け等の手段で取り付けられている。この挟み付け金具2は、上端を開口したほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける押圧部3が連続してかつ一体に設けられている。そしてまたこの押圧部3は細い首状に形成され、かつ滑らかなカーブを有して耳たぶに痛みを感じさせないようになっている。
【0014】なお、一般には、線材等で物品を形成する場合において、素材となる線材が部分的に弾性値が異なると一定の形状のものを量産することができないので、予め内部歪を矯正し材質的に均質化(調質)された素材が使用されている。
【0015】押圧部3に連続した挟み付け金具2の端部は、その一端が装飾本体1へのロー付け部4として開放されている。したがって挟み付け金具2は、U字形状の押圧部3以下の挟み付け金具本体部と押圧部3とロー付け部4とが連続一体に線状に形成されている。
【0016】このように装飾本体1と挟み付け金具2を別個のものとすることにより、挟み付け金具2は多種多様のデザインに対応でき、ほぼデザインに制約を受けることなくデザインの自由度も高くなる。
【0017】上記挟み付け金具2は、押圧部3以下のU字形状部縦断面形状が縦の中心線6を基準として左右対称に形成されており、このように左右対称とすることによって金属弾性の性格から当然に装着時も対称の形状を維持し、耳たぶを挟み付ける弾性力が左右均等となる。また、挟み付け金具2の形状が図1に示す通りであるので、押圧部3で受けた耳たぶからの反力を押圧部3以下のU字形状部全体で受ける構造となり、左右対称に同じように変形することで、1箇所1箇所の変形量が少なくなり、押圧部3はソフトな変形弾性力を受けることとなる。
【0018】さらに、挟み付け金具2は押圧部3で受けた耳たぶからの反力を上記のように分散して受けるので、局部的に変形が大きく応力が集中するようなことがないので、変形破壊が生じにくく長期間にわたる使用でもそのソフトな弾性力を保つことができる。
【0019】なお上記挟み付け金具2がロー付けにより焼き鈍された場合には、貴金属特有の構造に合わせた常法による焼入れ等を行なえばより効果的で、このことは公知技術である。
【0020】上記耳飾りの使用に際しては、予め耳たぶの厚さに合わせて開口部を調節してから耳飾りを耳たぶに挿通すれば、押圧部3が耳たぶを挟み付ける。
【0021】逆に耳たぶから耳飾りを取外す際には、片手で耳飾りを持って耳たぶから抜き取ればよい。
【0022】なお、上記挟み付け金具2の開口の幅を調節することにより、耳飾りが耳たぶを必要以上に挟み付けることを防止し、耳たぶに痛みを感じさせることがない。もちろん、装着時にも押圧部3以下の挟み付け金具は左右対称となり、耳たぶからの確実な脱落防止を図ることもできる。
【0023】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても、押圧部以下の挟み付け金具が左右ほぼ対称に移動するため、装飾本体1は装着者の耳たぶの厚さに関らずほぼ正面を向いた常態を維持するので装飾性を低下させることがない。
【0024】
【考案の効果】この考案の耳飾りによれば、組付けが簡単で、従来の耳飾りに比べて耳への装脱着が簡単で、かつ装着の際の挟着力の調整が容易となる。
【0025】しかもこの考案の耳飾りによれば、ソフトな挟着力を長期間にわたって保つことができる。
【0026】また、上記挟み付け金具2の開口の幅を調節することにより、耳飾りが耳たぶを必要以上に挟み付けることを防止し、耳たぶに痛みを感じさせることがない。もちろん、装着時にも押圧部3以下の挟み付け金具は左右対称となり、耳たぶからの確実な脱落防止を図ることもできる。
【0027】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても、押圧部以下の挟み付け金具が左右ほぼ対称に移動するため、装飾本体1は装着者の耳たぶの厚さに関らずほぼ正面を向いた常態を維持するので装飾性を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案に係る耳飾りの1実施例を示す側面図である。
【図2】背面図である。
【図3】組み付け状態の側面図である。
【符号の説明】
1 装飾本体
2 挟み付け金具
3 押圧部
4 ロー付け部
6 中心線
訂正の要旨 (1)願書の添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載、
「【請求項1】耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として当該押圧部以下のU字形状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすることにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とする耳飾り。」を、
「【請求項1】耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として当該押圧部以下のU字形状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とする耳飾り。」
と訂正する。
(2)同明細書の段落【0006】の
「【課題を解決するための手段】この考案の耳飾りは、耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開口し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として上記押圧部以下のU字状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすることにより.挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とするものである。」を、
「【課題を解決するための手段】この考案の耳飾りは、耳たぶ前面に取付けられる装飾本体と、装飾本体の背面に耳たぶの厚さ方向に直角に取り付けた耳たぶの挟み付け金具とを有する貴金属製耳飾りにおいて、上記挟み付け金具は、上端を開□し上部に向かって内向するほぼU字形を有し、その上部に耳たぶを挟み付ける細い首状に連続して形成された押圧部を設けてなり、かつ上記挟み付け金具を縦の中心線を基準として上記押圧部以下のU字状部縦断面が左右対称に形成し、さらに押圧部から連続して伸びる挟み付け金具の両先端がそれぞれ外側に向かって伸び、その一方を装飾本体のロー付け部とすると共に、挟み付け金具のほぼU字形を有している領域の部位をも、該装飾本体のロー付け部とすることによる2点のロー付けにより、挟み付け金具として必要なそれぞれ異なる機能を有する部位を連続一体に線状に形成したことを特徴とするものである。」と訂正する。
(3)同明細書の段落【0010】の
「【0010】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けした場合でも」を、
「【0010】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても」と訂正する。
(4)同明細書の段落【0023】の
「【0023】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けした場合でも」を、
「【0023】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても」と訂正する。
(5)同明細書の段落【0027】の
「【0027】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けした場合でも」を、
「【0027】さらに、図1に示すように装飾本体1を安定させるために装飾本体1と挟み付け金具2とを2点でロー付けしても」と訂正する。
審決日 2002-01-09 
出願番号 実願平5-51314 
審決分類 U 1 41・ 83- Y (A44C)
最終処分 成立    
前審関与審査官 井上 茂夫  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 岡本 昌直
長浜 義憲
登録日 1998-10-09 
登録番号 実用新案登録第2586884号(U2586884) 
考案の名称 耳飾り  
代理人 赤尾 直人  
代理人 赤尾 直人  

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