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審決分類 審判 全部申し立て   E04H
管理番号 1055183
異議申立番号 異議1999-73893  
総通号数 28 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-12 
確定日 2002-02-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第2593712号「照明灯用ポール」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2593712号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2593712号の請求項1に係る考案(以下、「本件請求項1に係る考案」)は、平成5年3月10日に実用新案登録出願されたものであって、平成11年2月12日にその実用新案権の設定登録がされ、その後、平成11年10月12日に松下電工株式会社より、実用新案登録異議の申立てがあり、平成13年2月16日(発送日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月17日に実用新案異議意見書の提出と共に訂正請求がされ、平成13年5月11日(発送日)に審尋され、平成13年7月5日に上記異議申立人から回答書が提出された後、平成13年8月10日(発送日)に訂正拒絶理由通知がなされ、これに対して平成13年10月9日に実用新案異議意見書が提出されたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
実用新案登録権者が求めている訂正の内容は、以下のa?cのとおりである。
a.実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の記載を、
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 下部ポールの上端開口部に溶接一体化されたリング状の蓋体を貫通して接続柱の下端部が下部ポール内に挿入されるとともに該蓋体の孔縁とその外面とが溶接され、接続柱の下端が溶接された支持部が下部ポール内面において溶接により固定されて下部ポール上端から突出されており、この下部ポール上端から突出した接続柱の外側に上部ポールの下端部が嵌挿され、先端部が上部ポールを貫通して接続柱の外面を押圧するボルトにより着脱可能に接合された照明灯用ポール。」と訂正する。
b.実用新案登録明細書の段落【0006】の記載を、
「 【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本考案は上部ポールと下部ポールを着脱可能に接続し、ポール全体を上部ポールと下部ポールとに分割した構造としたものである。すなわち、本考案照明灯用ポールは、下部ポールの上端開口部に溶接一体化されたリング状の蓋体を貫通して接続柱の下端部が下部ポール内に挿入されるとともに該蓋体の孔縁とその外面とが溶接され、接続柱の下端が溶接された支持部が下部ポール内面において溶接により固定されて下部ポール上端から突出されており、この下部ポール上端から突出した接続柱の外側に上部ポールの下端部が嵌挿され、先端部が上部ポールを貫通して接続柱の外面を押圧するボルトにより着脱可能に接合されたものである。」と訂正する。
c.特許明細書の段落【0012】の記載を、
「 【0012】
このボルトによる接合は、一般に図1、図2の如く、上部ポール3の外面に溶接されたナット6に押さえボルト4が螺合され、押さえボルト4の先端部が上部ポール3を貫通して接続柱2の外面を押圧するようになされている。又、回転防止ボルト5が上部ポール3を貫通して接続柱2に螺入されることにより、上部ポール3の回転防止となされている。」と訂正する。

2.独立特許要件について
(1)訂正後の本件請求項1に係る考案
訂正後の本件請求項1に係る考案は、上記II.1.a.の訂正事項のとおりのものである。

(2)訂正拒絶理由の概要
当審が通知した上記訂正拒絶理由は、刊行物1として実願昭46-32066号(実開昭47-27629号)のマイクロフィルム(異議申立人が提出した甲第3号証)、刊行物2として実公昭53-41956号公報(同甲第4号証)を引用し、訂正後の本件請求項1に係る考案は、刊行物1、2記載の考案及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであることを理由とし、上記訂正請求による訂正は、認められないとするものである。

(3)引用刊行物
当審が通知した上記訂正拒絶理由に引用した刊行物1には、
a.「本考案は組立式鋼管ポールに係るものであるが、それは下側脚筒に対し上側柱筒の接続が極めて簡単に行ない得るものを提供するもので、即ち、脚筒1の上端に基筒2の下端側を嵌挿接続一体化すると共に、この基筒2の上端側に下端側が外嵌装後止着可となる柱筒3を用意し、且柱筒3の下端部外周に螺子部4を形成し、且又柱筒3の上端側から外嵌装するカバー5の上端開口縁に螺孔6を形成したもので、この柱筒3の下端一周面にボルト7の嵌挿孔8を開設し、且基筒2の上端部一周面に該ボルト7の螺入孔9を形成したもので、且又脚筒1の上端部内には基筒2の下端に外嵌状となつて振れ止めとなる支承用の環状体10の外周を止着しておくものである。」(1頁12行?2頁6行及び第1、2図)、
b.「本考案の使用は、下端が埋設支持された脚筒1の上端突出基筒2に柱筒3の下端側を外嵌装し、従つて柱筒3の孔8に嵌挿するボルト7を基筒2の螺孔9へ螺入せしめて両者基筒2と柱筒3の接続を計るものである。
しかして柱筒3に前もつて外嵌装されているカバー5を降下させて、そのカバー5の上端螺孔6を柱筒3の螺子部4へ回動螺入せしめ乍らボルト7を覆い、以つて螺子部4に打撃を加えて該螺子部4をつぶしておく事により、前記カバー5の離脱はあり得ない。
このように本考案によれば脚筒1と柱筒3は別体に用意されていてこれが接続される為に、使用する前の製造はもとより格納或は搬送に対して嵩ばらないすぐれた効果を奏するのみならず、柱筒3は寸法の異なるものを用意しておく事により、現場で寸断する事もなく、しかも基筒2に柱筒3の下端を外嵌装して接続する部分は、カバー5で覆われている為美感上支障もなく、且そのカバー5は螺孔6を螺子部4に螺入するのみであり、且又その螺子部4をつぶすとカバー5の取り外しも出来ない。」(2頁7行?3頁9行及び第1、2図)
との記載がある。

同じく刊行物2には、
「本考案は、柱上半体を大径の柱下半体に挿入し相互を接合して構成する照明柱本体に於て、」(1欄24?25行)、
「柱下半体2(4の誤り)は柱上半体1より大径寸法に作成すると共に、その上部に通孔9を設けた椀形頂板10を接合し、この通孔を通じ柱上半体1を挿入した後、挿入部11を接合する。12は柱上半体1挿入部の下端外側に接合した補強支持板であつてその最大径外周は柱下半体の内側面に接する如くほぼ同じ直径(柱下半体内径より若干小寸法)に仕上げる。本考案はこの補強支持板の最大径外周に切溝13(3個以上)を設けると共に、柱下半体管に挿入した個所に於てこの切溝に楔14を打ち込み、補強支持板12を柱下半体4の管内周に沿い挿通出来る程度に嵌合させてこれを摺動させ所定長さを引き出した位置で固定する。
尚この補強支持板と楔を介し柱上下両半体を固定するに当り、柱上下両半体を同一中心線上に配設するよう水平置台上に載置し、次いで補強支持板12の周辺の各切溝13に楔14を打ち込んでその圧入圧が均等になる如く打ち込んだ後、それぞれの楔を補強支持板12に溶着16し、該楔を柱上半体と共に所定位置まで摺動させ、11の個所を溶着して不動の状態にする。」(2欄10?30行)の記載がある。

(4)対比
訂正後の本件請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とを対比すると、刊行物1記載の考案の「脚筒1」、「基筒2」、「支承用の環状体10」、「柱筒3」は、訂正後の本件請求項1に係る考案の「下部ポール」、「接続柱」、「支持部」、「上部ポール」に相当し、また、本件の出願前、鋼管ポールの組立一体化、止着は、溶接により行うことは、普通のことであるから、刊行物1記載の考案の「鋼管ポールの脚筒1の上端開口部と基筒2の外面との接続一体化及び支承用の環状体10と脚筒1内面との止着」は、共に溶接によってなされることは、自明の事項にすぎず、訂正後の本件請求項1に係る考案の「下部ポールの上端開口部と接続柱の外面とが溶接一体化され、支持部が下部ポール内面において溶接により固定」された構成とは実質上差異がないといえるから、両者は、
「下部ポールの上端開口部を貫通して接続柱の下端部が下部ポール内に挿入されるとともに該上端開口部とその外面とが溶接一体化され、接続柱の下端が支持される支持部が下部ポール内面において溶接により固定されて下部ポール上端から突出されており、この下部ポール上端から突出した接続柱の外側に上部ポールの下端部が嵌挿され、ボルトにより接合されたポール。」である点で一致しているが、
1)下部ポールの上端開口部と接続柱外面との溶接一体化が、訂正後の本件請求項1に係る考案は、下部ポールの上端開口部に溶接一体化されたリング状の蓋体の孔縁とその外面とが溶接されてなされているのに対し、刊行物1記載の考案は、そのような蓋体を具備するものではない点、
2)接続柱の下端と支持部の支持が、訂正後の本件請求項1に係る考案は、溶接によりなされているのに対し、刊行物1には、溶接によるとは記載されていない点、
3)ポールが、訂正後の本件請求項1に係る考案は、照明灯用であるのに対し、刊行物1には、そのような用途は記載されていない点、
4)上部ポールと下部ポールとをボルトにより接合するのに、訂正後の本件請求項1に係る考案は、先端部が上部ポールを貫通して接続柱の外面を押圧するボルトを用い、着脱自在に接合するのに対し、刊行物1にはそのような構成は記載されていない点及び
5)刊行物1記載の考案は、下端部外周に螺子部を形成した上部ポールの上端側から上端開口縁に螺孔を形成したカバーを外嵌装しているのに対して、訂正後の本件請求項1に係る考案は、かゝる構造を具備していない点、
で相違している。

(5)判断
相違点1)について検討すると、刊行物2記載の「柱下半体4」、「柱上半体1」、「椀形頂板10」、「溶着」、「照明柱」は、訂正後の本件請求項1に係る考案の「下部ポール」、「上部ポール」、「リング状の蓋体」、「溶接」、「照明灯用ポール」に相当しており、刊行物2には、「下部ポールの上端開口部とその下端部が挿入された上部ポールの外面との接続一体化が、下部ポールの上端開口部に溶接一体化されたリング状の蓋体の孔縁と上部ポールの外面とが溶接されることでなされた照明灯用ポール。」という考案が記載されていると認められるから、相違点1)における訂正後の本件請求項1に係る考案の構成は、刊行物1記載の考案の下部ポールの上端開口部と接続柱外面との接続一体化手段として、上記刊行物2記載の考案を適用することにより、当業者がきわめて容易になし得ることにすぎない。

相違点2)について検討すると、刊行物2記載の「接合」、「補強支持板12」は、訂正後の本件請求項1に係る考案の「溶接」、「支持部」に相当するから、刊行物2には、「接続する柱に相当する上部ポールの下端と支持部の支持が、溶接によりなされること」が記載されていると認められるから、相違点2)における訂正後の本件請求項1に係る考案の構成は、刊行物1記載の考案の接続柱の下端と支持部の支持を刊行物2記載の事項に基いて溶接でなすことにより、当業者がきわめて容易になし得ることにすぎない。

相違点3)について検討すると、大径の下部ポールと小径の上部ポールとを接続して形成した照明灯用ポールは、本件の出願前、上記刊行物2、実公昭47-19898号公報(甲第1号証)、日本照明器具工業会編集,「日本照明器具工業会規格 照明用段付直管ポール(鋼製)」,第1版,昭和40年2月10日発行(甲第5号証)等に示すように周知技術にすぎないから、刊行物1記載の考案を照明灯用ポールとすることは、当業者であれば普通に想到できる用途にすぎない。

相違点4)について検討すると、ボルトによる上下ポールの接続手段として、先端部が一方のポールを貫通して他方のポールの外面を押圧するボルトを用い着脱自在に接合することは、本件の出願前、例えば、特開平3-119603号公報の従来の技術(第7図)、実願平1-73403号(実開平3-14261号)のマイクロフィルム(回答書参照)等に記載されているように、周知技術であり、相違点4)における訂正後の本件請求項1に係る考案の事項は、当業者がきわめて容易に変更できる設計的事項にすぎない。

相違点5)について検討すると、刊行物1記載の考案の上部ポールの下端部をカバーで覆うことは、上記II.2.(3)の刊行物1の記載事項bとして摘示したように、「基筒2に柱筒3の下端を外嵌装して接続する部分は、カバー5で覆われている為美感上支障もなく」という効果を奏するもので、そのカバーの取り付けは、「螺孔6を螺子部4に螺入するのみであり、且又その螺子部4をつぶすとカバー5の取り外しも出来ない。」とも記載されており、刊行物1記載の考案の使用において、カバーを取り外し不可能に取り付けることが必須の事柄であるとは、認められず、刊行物1記載の考案のカバーと上部ポールの螺合構造及びその効果からみて、カバーは取り外し可能にするか取り外し不可能にするかは、当業者が適宜選択できる使用態様にすぎず、したがって、相違点5)における刊行物1記載の考案のカバーと上部ポールの螺合構造により、刊行物1記載の考案の適用が阻害されるものとは認められず、また、相違点5)における刊行物1記載の考案の構造は、訂正後の本件請求項1に係る考案と一致する上記の下部ポールと上部ポールとの接続柱を介した接続構造及びボルトによる着脱可能に接合される事項に関連するものではないといえるから、訂正後の本件請求項1に係る考案のように、相違点5)における刊行物1記載の考案の構成を削除することは、当業者であればきわめて容易になし得ることである。

そして、訂正後の本件請求項1に係る考案の効果も、刊行物1、2記載の考案及び上記周知技術から予測できる程度のものであって、格別なものは認められない。
したがって、訂正後の本件請求項1に係る考案は、刊行物1、2記載の考案及び上記周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
よって、訂正後における実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により構成される発明は、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。

(6)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

III.実用新案登録異議申立てについて
1.本件請求項1に係る考案
本件請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 下部ポールの上端開口部に溶接一体化されたリング状の蓋体を貫通して接続柱の下端部が下部ポール内に挿入されるとともに該蓋体の孔縁とその外面とが溶接され、接続柱の下端が溶接された支持部が下部ポール内面において溶接により固定されて下部ポール上端から突出されており、この下部ポール上端から突出した接続柱の外側に上部ポールの下端部が嵌挿され、ボルトにより着脱可能に接合された照明灯用ポール。」

2.引用刊行物
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(実願昭46-32066号(実開昭47-27629号)のマイクロフィルム)及び刊行物2(実公昭53-41956号公報)は、上記訂正拒絶理由として引用した刊行物1及び刊行物2と同じであり、各刊行物には、上記II.2.(3)に記載のとおりの考案が記載されていると認める。

3.対比・判断
本件請求項1に係る考案を限定した訂正後の請求項1に係る考案が上記II.2.(4)に記載のとおり、刊行物1、2記載の考案及び上記周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである以上、本件請求項1に係る考案も同様に、刊行物1、2記載の考案及び上記周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により、実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件請求項1に係る考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-12-12 
出願番号 実願平5-10089 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (E04H)
最終処分 取消    
前審関与審査官 山田 忠夫小林 俊久  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 藤枝 洋
鈴木 憲子
登録日 1999-02-12 
登録番号 実用新案登録第2593712号(U2593712) 
権利者 積水樹脂株式会社
大阪府大阪市北区西天満2丁目4番4号
考案の名称 照明灯用ポール  
代理人 井澤 眞樹子  
代理人 安藤 淳二  

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