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審決分類 審判    A44B
管理番号 1056850
審判番号 無効2001-40024  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-09-28 
確定日 2002-03-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第3059677号実用新案「密封用袋の開口部に設けられたファスナーの係合用スライダー」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3059677号の請求項に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯

本件実用新案登録第3059677号の請求項1?3に係る考案は、平成10年11月26日に実用新案登録出願され、平成11年3月31日に設定登録されたものである。
これに対し、出光プラスチック株式会社より無効審判が請求され、請求書の副本が被請求人に送達されたが、指定された期間内に答弁書が提出されなかったものである。


2.本件考案

本件登録実用新案の請求項1?3に係る考案(以下「本件考案1」?「本件考案3」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】 密封用袋の開口部の辺縁の両側内面に対設したプラスチック製の雌雄の帯条ファスナーを係合するためのスライダーであって、この係合用スライダーは、基部から一体に対向連設した二枚の挾着用の対向条片を備え、該対向条片のうちの少なくとも一方の条片の内面に、上記密封用袋の帯条ファスナーを密封用袋の外側から嵌入して帯条ファスナーを加圧係合するための少なくとも1条の嵌入溝を設けると共に、上記対向条片の連設基部から両条片間に舌片状のストッパーを突設して、その突出先端が上記嵌入溝の、上記連設基部側における手前に位置するように短めに設け、且つ係合用スライダー自体の弾性により、上記対向条片を圧着させて構成したことを特徴とする密封用袋の開口部に設けられたファスナーの係合用スライダー。
【請求項2】 二枚の各対向条片の内面に、1条の帯条ファスナーを加圧係合するための1条の嵌入溝が対設されている請求項1に記載の密封用袋の開口部に設けられたファスナーの係合用スライダー。
【請求項3】 二枚の各対向条片の内面に、2条の帯条ファスナーを加圧係合するための2条の嵌入溝が対向並設されている請求項1に記載の密封用袋の開口部に設けられたファスナーの係合用スライダー。」


3.請求人の主張

請求人は、下記の甲第1号証?甲第3号証を提示し、本件考案1?3は、甲第1号証?甲第3号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件請求項1?3に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第37条第1項第2号の規定により無効とされるべきである旨主張する。



甲第1号証:実用新案登録第3046704号公報
甲第2号証:実公平7- 46169号公報
甲第3号証:特開平7-301213号公報


4.甲第1号証?甲第3号証

甲第1号証?甲第3号証には、次の事項が記載されている。

・甲第1号証
「開ロ部を備えた可圧縮物の圧縮密封袋と該開ロ部の密閉具とから成り、該圧縮密封袋は、・・・・、開ロ部の辺縁の両側内面に対設した雌雄の帯条ファスナーを所要の間隔を保たせて少なくとも2条並設して構成されており、また、上記開ロ部の密閉具は、連結基部から二枚の挾着用の条片を狭い間隔を保って対向突設し、該条片の少なくとも一方の条片の先端側の内面に、上記圧縮密封袋本体に並設した雌雄の帯条ファスナーを外側から抱持するための、両側を開放した少なくとも2条の嵌合溝を並設すると共に、上記二枚の条片の連結基部から両条片間の間隔内に舌片状のストッパーを突設し、且つ該ストッパーから外れた位置において、二枚の条片の連結基部の近傍内面に両条片を加圧係着させるための凹凸状の係合部を対設して構成されており、この密閉具を圧縮密封袋本体の開ロ部の辺縁に摺動可能に挾着して構成したことを特徴とする開ロ部の密閉具を備えた可圧縮物の圧縮密封袋。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項3】)
「本考案は、・・・・、開ロ部辺縁に対設した雌雄の帯条ファスナーを所定の間隔を保って少なくとも2条並設した、逆止弁付きの可圧縮物の圧縮密封袋において、該雌雄の帯条ファスナーを容易且つ確実に係着できる利点を備えた開ロ部の密閉具を備えた可圧縮物の圧縮密封袋を提供することを目的とする。」(【考案の詳細な説明】の段落【0005】)
「帯条ファスナー2、2は、それぞれ適度の柔軟性と弾性を有するプラスチック製の・・・・雄ファスナー部材2aと、該雄ファスナー部材2aと同一材質のプラスチック製の・・・・雌ファスナー部材2bとから構成されており、」(段落【0012】)
「この密閉具5は、上記連結基部12の中間部から両条片13、13間の間隔L内に突設した舌片状の細巾のストッパー15を備えており、その長さは先端が上記2条の嵌合溝14、14から可成り離れた手前に位置するように短かめに形成されている。」(段落【0016】)
「この密閉具5の二枚の挾着用の条片13、13の内面には、上記ストッパー15の両側に位置して、連結基部12の近傍に両条片13、13を加圧した際に、該両条片13、13を係着させるための凹凸構造から成る係合凹部16と係合凸部17が夫々対設してあり、この係合凹部16及び係合凸部17は、図6及び図7に示すように、開ロ部が穴よりも小さい蟻溝状の係合凹部16及び拡大頭部を備えた茸状の係合凸部17で構成するものである。」(段落【0017】)
「密閉具5を矢印で示すように圧縮密封袋本体1の他方の片隅まで摺動させると、開ロ部6の両側内面に対向並設した2条の帯条ファスナー2、2の各雄ファスナー部材2aと各雌ファスナー部材2bは、・・・・円滑確実に係着され、」(段落【0019】)
「圧縮密封袋本体1の開□部6の口縁に一旦挾着された密閉具5は、その二枚の条片13、13に設けた係合凹部16と係合凸部17が不抜の状態で係合されている関係から、開ロ部6から簡単には離脱しないものである。」(段落【0020】)

・甲第2号証
「長尺の板部材をU字状に屈曲して先端部の押圧部どうしを弾発的に当接させるとともに、両先端を互いに離れる方向とした形状とし、前記押圧部の互いに対向する内面に窪み部を形成し、両窪み部で形成される開口部の大きさを、雄部と雌部とからなるファスナーを内部に位置し得るとともに、係合状態の雄部と雌部との厚みよりも小さくしたことを特徴とするファスナー締付け具。」(第1欄2行?9行)
「この考案の目的は横方向にずらす動作を一回行うだけで確実に閉塞することのできるファスナー締付け具を提供することである。」(第2頁左欄13行?15行)
「この考案は、弾発的に当接している一対の押圧部の互いに対向する内面に窪み部を形成し、・・・・雄部と雌部とからなるファスナーを内部に位置し得る・・・・構成を有している。そして、前記押圧部は、長尺の板部材をU字状に屈曲して先端部どうしを押圧状態で当接させ、この先端部で形成してある。」(第3欄17行?25行)
「この考案は前記の手段を採用したことにより、ファスナー締付け具の先端部にファスナーを位置して横方向に移動するだけの操作で、ファスナーの雄部と雌部とが係合し、ファスナーを閉塞することができることとなる。」(第3欄27行?30行)
「ファスナー締付け具1は、長尺の板部材をU字状に形成するとともに、押圧部である先端部2、2の内面どうしを互いに弾発押圧状態で接触させ・・・・形成してある。この場合、前記長尺の板部材を樹脂等の成形品で成形して形成しても良い。」(第3欄35行?40行)
「また、弾発的に当接する部位に開口を設けるとともに、先端を互い
に離れる方向としただけの非常に簡単な構成なので製造が容易、
かつ安価であるという作用効果を奏している。」(第5欄17行?第6欄3行)

・甲第3号証
「二枚の細長い板を小間隔を空けて対向させ、それら板の一方の端部を一体成形するか、または小片を介して接着し、前記二枚の板の自由端近くの内面に、相対向して、長手方向側縁に直角に、かつ、一方の側縁から他方の側縁まで溝を設けたことを特徴とする、凸条と、溝を有する凸条とよりなるファスナーを有する袋の、ファスナーの操作具。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
「相対向する溝は11、11aの一対でもよいが、更に袋の凸条3、5の断面形状の大きさの異なるものに対応できるように、断面形状が溝11、11aよりも大きい一対の溝12、12aを設けるのが好ましく、」(【発明の詳細な説明】の段落【0012】)
「板7、8及び小片9の代わりに合成樹脂で一体成形してもよい。合成樹脂としては、塩ビまたはポリプロピレンを用いるのが好ましい。」(段落【0014】)
「この発明に係る操作具は、袋の凸条と溝のある凸条によるファスナーを容易、確実、かつ、迅速に密封でき、構造簡単で安価である。」(段落【0026】)


5.対比・判断

・本件考案1について
上記記載から、甲第1号証の「密閉具」は、本件考案1の「スライダー」に該当するから、甲第1号証には、
「密封用袋の開ロ部の辺縁の両側内面に対設したプラスチック製の雌雄の帯条ファスナーを係合するためのスライダーであって、この係合用スライダーは、基部から一体に対向連接した二枚の挾着用の対向条片を備え、該対向条片のうちの少なくとも一方の条片の内面に、上記密封用袋の帯条ファスナーを密封用袋の外側から嵌入して帯条ファスナーを加圧係合するための少なくとも1条の嵌入溝を設けると共に、上記対向条片の連設基部から両条片間に舌片状のストッパーを突設して、その突出先端が上記嵌入溝の、上記連設基部側における手前に位置するように短めに設け」た密封用袋の開口部に設けられたファスナーの係合用スライダーが記載されている。
そこで、本件考案1と甲第1号証記載の考案を対比すると、対向条片同士の圧着が、本件考案1においては、係合用スライダー自体の弾性による圧着であるのに対して、甲第1号証記載の考案においては、対向条片の連結基部の近傍内面に設けた凹凸状の係合部を用いた加圧係着である点で、両者は相違する。
しかしながら、甲第2号証には、係合部のような複雑な構造を用いずに、押圧部である先端部の内面どうしを互いに弾発押圧状態で接触させることが記載されている。
また、甲第1号証記載の考案と、甲第2号証記載の考案とは、ともに、対向する条片の先端側の内面に設けた嵌合溝で帯状ファスナーを密封袋の外側から抱持してファスナーの係合を行うスライダーである点において共通しており、甲第1号証記載の考案において、対向条片の係合をその内面に設けた凹凸状の係合具によって行う手段に代えて、甲第2号証に記載のように、先端部どうしを弾発的に当接させる構造を採用することにより、甲第2号証に記載の効果が期待できることは、当業者が直ちに理解するところである。
したがって、甲第1号証記載の考案において、甲第2号証記載の考案のように、押圧部をスライダー自体の弾性力を用いて弾発的に当接させる構造を適用することは、当業者がきわめて容易になし得たものといえる。

・本件考案2について
本件考案2は、本件考案1の技術事項を引用するとともに、さらに、二枚の各対向条片の内面に、1条の帯条ファスナーを加圧係合するための1条の嵌入溝が対設されることについて限定したものであるが、甲第3号証には、1条の嵌入溝を設けることと2条の嵌入溝を設けることとが並記されており、二枚の各対向条片の内面に設ける嵌入溝を1条とするか2条とするかは、当業者が随意に決定しえた事項といえる。
したがって、スライダー取付け作業の容易性等を考慮して、二枚の各対向条片の内面に1条の嵌入溝を対設することは、当業者がきわめて容易に想到することのできたものである。

・本件考案3について
本件考案3は、本件考案1の技術事項を引用するとともに、さらに、二枚の各対向条片の内面に、2条の帯条ファスナーを加圧係合するための2条の嵌入溝が対向並設されることを限定したものであるが、甲第1号証には、上記の構成も記載されている。
したがって、密封状態の安定・確実等を考慮して、二枚の各対向条片の内面に2条の嵌入溝を対向並設することは、当業者がきわめて容易に想到することのできたものである。

6.むすび

以上のとおり、本件考案1?3は、甲第1号証?甲第3号証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案1?3についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第37条第1項第2号の規定に該当する。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-01-24 
結審通知日 2002-01-29 
審決日 2002-02-12 
出願番号 実願平10-9331 
審決分類 U 1 111・ 121- Z (A44B)
最終処分 成立    
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 渡邊 真
鈴木 美知子
登録日 1999-03-31 
登録番号 実用新案登録第3059677号(U3059677) 
考案の名称 密封用袋の開口部に設けられたファスナーの係合用スライダー  
代理人 大谷 保  
代理人 東平 正道  

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