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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E04F
管理番号 1056854
審判番号 審判1997-3325  
総通号数 29 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-02-28 
確定日 2002-03-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第2145904号「配線用フロアパネル」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成9年12月2日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成10年(行ケ)第0001号平成11年9月22日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第2145904号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.経緯

登録第2145904号実用新案は、昭和62年5月30日に出願され、平成5年10月4日に出願公告され、平成8年12月10日に登録されたものであって、平成9年2月28日に未来工業株式会社より無効審判の請求があり、特許庁において平成9年審判第3325号事件として審理され、平成9年12月2日に「本件審判の請求は成り立たない。」との審決がなされたが、これに対する訴えが請求人よりなされ、東京高等裁判所において平成10年(行ケ)第1号事件として審理され、平成11年9月22日に「特許庁が、平成9年審判第3325号事件について、平成9年12月2日にした審決を取り消す。」旨の判決が言い渡され、当該判決は確定した。
その後、被請求人である特許権者は、平成11年10月4日に、特許庁に対して本件実用新案登録に係る明細書を訂正することを求める審判を請求(平成11年審判第39078号)し、平成12年7月18日に「本件審判の請求は、成り立たない」旨の審決がなされ、この審決に対する訴えが東京高等裁判所になされ、平成12年(行ケ)第329号事件として審理され、平成13年7月16日に「原告の請求を棄却する」旨の判決が言い渡され、当該判決は確定したので、本件無効審判事件についてさらに審理する。

2.当事者の主張の概要

(1)請求人は、審判請求書において、「登録第2145904号実用新案の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」ことを請求の趣旨とし、無効理由を概ね次のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を示す。
(ア)明細書の実用新案登録請求の範囲の記載及び考案の詳細な説明に不備があるから、実用新案法第5条第3項または第4項の要件を満たさず、実用新案法第37条第1項第3号の規定により無効とすべきである。
(イ)本件考案は、甲第1号証または甲第2号証記載の考案から、または甲第1号証ないし甲第12号証記載の考案から、当業者がきわめて容易に考案できたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に該当し、実用新案法第37条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
甲第1号証:実願昭58-105615号(実開昭60-11946号公報)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭54-155632号(実開昭56-71839号公報)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開昭62-107161号公報
甲第4号証:実願昭50-116117号(実開昭52-29722号公報)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭60-127931号(実開昭62-38024号公報)のマイクロフィルム
甲第6号証:実願昭61-16503号(実開昭62-131036号公報)のマイクロフィルム
甲第7号証:実願昭61-16504号(実開昭62-131037号公報)のマイクロフィルム
甲第8号証:実願昭59-52432号(実開昭60-164537号公報)のマイクロフィルム
甲第9号証:特開昭61-158558号公報
甲第10号証:特開昭62-59755号公報
甲第11号証:実公昭57-61129号公報
甲第12号証:米国特許明細書第4011703号
(なお、甲第6号証、甲第7号証は本件実用新案登録出願前に頒布された刊行物ではない。)
(2)被請求人は、平成9年7月4日付けの答弁書において、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」ことを答弁の趣旨とし、請求人の無効理由に対して概ね次のように反論する。
(ア)明細書において記載不備はなく、実用新案法第5条第3項または第4項の要件を満たすものである。
(イ)本件考案は、甲第1号証または甲第2号証記載の考案から、または甲第1号証ないし甲第12号証記載の考案から、当業者がきわめて容易に考案できたものではなく、実用新案法第3条第2項の規定に該当しない。

3.本件考案の認定

上記1に記載したように訂正審判請求は「成り立たない」こととなったので、本件考案は、登録時の実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認められる。
「所定の間隔を置いて配置した中空で底面が開放している複数個の配線溝形成用方形ブロックの側面下端部相互を、上記ブロックの厚さより薄い薄肉連結部で連結することにより、隣合うブロックとブロックの間に薄肉連結部を底とする直交配線溝を形成し、その直交配線溝の上面開口をカバー板で覆ってパネルの上面を平らに構成した配線用フロアパネル。」

4.本件考案の進歩性について

(1)公知刊行物に記載された技術的事項
本件考案の出願前に頒布され公知となっている次の刊行物には、以下の事項が記載されていると認められる。
(1-1)刊行物1:特開昭62-107161号公報(請求人提出の甲第3号証)
刊行物1には、配線用フロアパネルに関する発明が記載されており、明細書には、「ボードの上面に深溝通路と浅溝通路とを形成し、上記深溝及び浅溝通路の上部に着脱自在のカバーを取付けたことを特徴とする配線用フロアパネル。」(昭和60年12月2日付手続補正書による補正前の特許請求の範囲1項、1頁左下欄5?8行)が記載され、その発明の詳細な説明には「第1図は本発明配線用フロアパネルの一例を示す斜視図、第2図は第1図パネルのカバーを除去した斜視図、第3図は第2図b-b矢視断面図である。図中1はボードで、アルミダイキャスト、・・・強化プラスチック板等或はそれらの任意組合せ板から成る。2は深溝の通路、3は浅溝の通路で、ボード1の上面に交差させて形成する。その通路2・3の深さ及び幅は、所要配線を収容し得る寸法であれば適宜である。4は深溝通路2の又5は浅溝通路3の上部に取付く横断面コ字形のカバーで、通路2・3に嵌着又はビス止め等により着脱自在とし、材質はプラスチック製・鋼板製等適宜であり、またその形状も任意である。」(2頁右上欄13行?左下欄8行)との記載があるところ、これらの記載に図面第1?第3図を併せ考えると、刊行物1には、アルミニウムによるダイカストあるいは合成樹脂等からなるボード1に、縦横に交差させて深溝通路2及び浅溝通路3を形成し、該深溝通路2及び浅溝通路3の上部に着脱自在のカバー4、5を取り付けて上面を平らにした配線用フロアパネルが記載され、その縦横に交差させた深溝通路2及び浅溝通路3は、その厚さが該縦横の各深溝通路2及び浅溝通路3で囲まれた部分より薄く、かつ、複数の所定の間隔を置いて隣り合う当該囲まれた部分の側面下端部相互を連結しているものといえる。
(1-2)刊行物2:特開昭61-158558号公報(請求人提出の甲第9号証)
刊行物2には、フリーアクセスフロア用パネルに関する発明が記載されており、明細書及び図面の記載から、フロア下にエアコンの送排水の配管や機器のケーブルが配置される二重床板のフリーアクセスフロアにおいて、中空で底面が開放された軽合金ダイカスト製の方形ブロック状のフリーアクセスフロア用パネルが記載されていると認められる。

(2)検討
(2-1)一致点および相違点
本件考案において、「ブロックの厚さ」とは、「ブロックの底面(下面)から配線用フロアパネルの表面を形成するブロックの上面までの比較的厚みのある寸法を意味する」ものであることは、上記判決において認定するところである。
以上のことを前提として本件考案と刊行物1に記載されたものとを比較すると、刊行物1に記載されたものの深溝通路2及び浅溝通路3は本件考案の薄肉連結部を底とする直交配線溝に、カバー4、5は本件考案のカバー板にそれぞれ相当し、また、ボード1のうち縦横の深溝通路2及び浅溝通路3で囲まれた部分は本件考案の方形ブロックに相当する(但し、中実であって、中空で底面が開放してはいない。)ものと認められるから、本件考案と刊行物1に記載されたものとは、
「所定の間隔を置いて配置した複数個の配線溝形成用方形ブロックの側面下端部相互を、上記ブロックの厚さより薄い薄肉連結部で連結することにより、隣合うブロックとブロックの間に薄肉連結部を底とする直交配線溝を形成し、その直交配線溝の上面開口をカバー板で覆ってパネルの上面を平らに構成した配線用フロアパネル。」
において一致し、次の点で相違していると認められる。
相違点:本件考案の方形ブロックが中空で底面が開放しているのに対し、刊行物1に記載された方形ブロックが中実である点。
(2-2)相違点についての判断
刊行物2には、上記4、(1)、(1-2)に記載したように、フロア下にエアコンの送排水の配管や機器のケーブルが配置される二重床板のフリーアクセスフロアにおいて、中空で底面が開放された軽合金ダイカスト製の方形ブロック状のフリーアクセスフロア用パネルが記載されていると認められ、本件考案の相違点に係る構成は刊行物2に記載されているといえる。
そして、刊行物1記載の配線用フロアパネルと刊行物2記載のフリーアクセスフロア用パネルの類型や構造が異なるものであるとしても、軽量化や材料節約のためにパネルを中空構造とすることは広く行われている技術であり、当業者にとって、パネルのいずれの類型や構造についても考慮することであるから、刊行物1及び2に接した当業者であれば、刊行物1記載の方形ブロックの裏面を中空構造とすることは、きわめて容易に想到し得るというべきである。
また、刊行物2記載のパネルが支柱上に載置されるものであるとしても、刊行物2記載のパネルについて、支柱から独立して「中空で底面が開放された軽合金ダイカスト製の方形ブロック状のフリーアクセスフロア用パネル」という技術思想を認定することができ、方形ブロックの裏面を中空化するという技術を刊行物1記載の方形ブロックに適用するに際し、刊行物2記載の考案が支柱上に載置されることが組み合わせの阻害要因とはならない。
したがって、刊行物2に記載された上記相違点に係る構成を刊行物1に記載された方形ブロックに適用して本件考案のように構成することは当業者がきわめて容易に想到できたことと認められる。

(2-3)よって、本件考案は、上記記載の刊行物1、2に記載されたものから当業者がきわめて容易に考案できたものと認められ、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

5.まとめ

以上のように、本件考案は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第1号の規定により無効とすべきものである。
また、審判費用の負担については、実用新案法第41条の規定により準用し、特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1997-11-13 
結審通知日 1997-11-25 
審決日 1997-12-02 
出願番号 実願昭62-83834 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (E04F)
最終処分 成立    
前審関与審査官 山田 忠夫服部 秀男  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 中田 誠
伊波 猛
鈴木 公子
木原 裕
登録日 1996-12-10 
登録番号 実用新案登録第2145904号(U2145904) 
考案の名称 配線用フロアパネル  
代理人 元井 成幸  
代理人 大島 邦彦  
代理人 高橋 隆二  
代理人 菅 直人  
代理人 樋口 武尚  
代理人 萬田 正行  

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