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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない F24D
管理番号 1058322
審判番号 無効2001-35375  
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-08-28 
確定日 2002-04-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第2150528号実用新案「湯沸設備制御装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2150528号に係る出願は、平成元年1月11日に出願されたものであって、平成8年1月31日にその考案について出願公告され、実用新案登録異議申立がなされ、平成10年3月2日付けで登録異議の決定及び拒絶査定がなされ、拒絶査定不服審判が請求された後、平成11年4月2日に設定登録されたものである。その後、平成13年28日にその請求項1及び2に係る考案に対し、本件請求人より無効審判の請求がされ、さらに平成13年10月29日に本件請求人より上申書が提出され、続く平成13年11月14日に本件被請求人より審判事件答弁書が、平成13年12月28日に本件請求人より弁駁書がそれぞれ提出され、平成14年2月19日、特許庁審判廷において本件に係る口頭審理が行われた。

2.本件考案
本件実用新案登録第2150528号の請求項1及び2に係る考案は、本件の願書に添付した明細書および図面からみて、願書に添付した明細書に記載された下記のとおりのものである。
「請求項1
サーミスタ等の各種センサの検知状況と燃焼シークエンスとを監視し、この監視下で異常発生態様に対応した各種の異常検出をなし得る異常検出手段と、
前記燃焼シークエンスを実行するとともに前記異常検出手段にて異常検出がなされたとき前記燃焼シークエンスのシークエンス状態を停止する方向へ遷移させる制御を行なうシークエンスコントロール手段と、
前記異常検出手段にて異常検出がなされたとき異常報知をエラーコード表示等で行なう異常報知手段と、
所定の異常解除操作に応答して前記異常検出手段及び前記異常報知手段を初期化するための制御を行なう異常解除手段と、を具備する湯沸設備制御装置において、
前記異常検出手段にて異常検出がなされる毎に異常検出内容を順次記憶するとともに貯えている異常検出内容を前記異常解除手段の初期化動作後に前記異常報知手段へ出力することができる異常記憶手段が付設されてなることを特徴とする湯沸設備制御装置。

請求項2
前記異常報知手段は、前記異常解除手段が動作前には表示手段にて異常報知を示す表示を点滅し、前記異常解除手段の動作後はその表示を点灯する表示制御を行なう表示制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の湯沸設備制御装置。」

3.請求人の主張
(1)請求人の主張する無効理由
これに対して、請求人は、請求項1に係る考案は、甲第1号証、甲第3号証及び甲第4号証に記載されている考案に基づいて、当業者がきわめて容易に想到し得たものである旨主張している。また、仮に、請求項1における「異常解除手段の初期化動作後に前記異常報知手段へ出力する」についての解釈を、本件の拒絶査定不服審判時の審決の解釈に準じないとすれば、請求項1に係る考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載されている考案に基づいて当業者がきわめて容易に想到し得たものである旨主張している。
さらに、請求項2に係る考案は、請求項1に係る登録実用新案の実施態様であり、異常解除手段による異常解除前の段階での異常表示が点滅表示であり、異常解除後の段階での異常表示が点灯表示であることを特徴事項とするものであるが、この特徴事項は、表示手段一般における常套手段であり、また、異常表示におけるものとして甲第4号証に記載されていることであるから、上記特徴事項は、甲第4号証に記載されている技術的事項に基づいて、本件の出願前に当業者が適宜採用し得た事項である旨主張している。

(2)請求人の提出した証拠方法
甲第1号証:実願昭61-94857号(実開昭63-2034号)のマイクロフィルム
甲第2号証:特開昭62-37621号公報
甲第3号証:特開昭59-202352号公報
甲第4号証:特開昭60-198699号公報
その他、審判請求書において、特開昭59-112391号公報及び特開昭61-130702号公報を挙げ、上申書において、添付資料として、実願昭58-28201号(実開昭59-134892号)のマイクロフィルム及び特開昭61-153759号公報を提出し、弁駁書において、添付資料として「日本ガス協会誌1984年7月号」及び「デジタルICの基礎知識」(白土義男著)を提出している。

4.証拠方法に記載の事項
(1)甲第1号証
上記甲第1号証には、下記の記載がある。
「本考案は、トラブル発生原因が発見し易いように構成された給湯器等の異常監視装置に関する。」(第1頁第11?13行)
「従来、マイクロコンピュータ等を使用する給湯器等の制御回路には、その制御回路の各部分の動作、負荷の状態、検出器の状態等が正常であるか否かを監視する異常監視装置を有するものがある。このような従来の異常監視装置には通常、第2図に示すように、トラブル発生箇所ないしはトラブル発生原因等を記憶する記憶回路(M)が設けられる。しかし、運転スイッチ(4)をオフにしたり、電源コンセント(1)を電源から抜くことによってその記憶回路(M)への駆動電力の供給が停止され、記億が消去されるように構成されているので、再現性の無いトラブルが発生した後に異常な動作を防止するために運転スイッチをオフにしたり、電源コンセントを抜いてしまうと、多大な時間と費用をかけてトラブルの発生原因を追求しなければならない。」(第1頁第15行?第2頁第11行)
「以下、本考案を図例に基づき具体的に説明する。
図においては、(1)は電源コンセント、(2)はトランス、(3)は定電圧回路、(4)は運転スイッチ、(5)は中央処理装置(CPU)(6)は湯温等の検出信号並びにリモコンからの指令信号が入力されるインターフェイス、(7)は駆動回路、(8)は給湯器のガス弁等の負荷、(9)は第1異常記憶回路、(10)は第2異常記憶回路、(11)は第1表示部、(12)は第2表示部、(13)は外部リセット端子、(14)は内部リセット端子、(15)はバックアップ電源である。
尚、表示部にトラブル発生回教を表示する回数表示回路(図示せず)が内蔵される。
上記の構成において、バックアップ電源(15)及び定電圧回路(3)が直接に第2異常記憶回路(10)に接続されているので、運転スイッチ(4)がオフに切替えられても第2異常記憶回路(10)にはバックアップ電源(15)及び定電圧回路(3)が駆動電源として接続されており、第2異常記憶回路(10)に記憶されたトラブル発生箇所ないし発生原因の記憶は消去されない。又、電源コンセント(1)が電源から抜き取られても、第2異常記憶回路(10)にはバックアップ電源(15)が駆動電源として接続されており、第2異常記憶回路(10)に記憶されたトラブル発生箇所ないし発生原因の記憶は消去されない。その結果、市場で発生する種々の再現性の無いトラブル箇所の記憶を第2異常記憶回路(10)から随時読みだしてトラブル発生箇所を容易に知ることができ、迅速な、かつ、正確な修理サービス業務を遂行できる。」(第3頁第6行?第4頁第18行)
さらに、第1図から、異常記憶回路1(ローマ数字)9と表示部1(ローマ数字)11が、異常記憶回路2(ローマ数字)10と表示部2(ローマ数字)12が、矢印で結ばれており、異常記憶回路から表示部に信号を送ることが可能であることが窺える。

(2)甲第2号証
また、上記甲第2号証には、下記の記載がある。
「本発明は給湯機、調理器等の燃焼機の制御を行なう燃焼制御装置に関する。」(第1頁左下欄第11?12行)
「何らかの原因により燃焼が停止した後、そのまま点火操作を行い正常燃焼に入るか再び燃焼を停止した場合運転を停止しスイッチ手段を操作する事で表示手段に故障部分を表示する。又上記スイッチ手段を押し直す事で複数回故障が生じていれば順次遡って表示する。」(第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第2行)
「又同時に入力ポートP5からの入力に応じて過去の故障発生毎に記憶された故障データを各出力ポートP2,P3,P7,P10,P11より出力し、発光素子(35)(36)(37)(38)(43)(44)を点灯する。」(第2頁右下欄第12?15行)
「又上記メンテナンススイッチ(47)は一度オフし再度オンする事で前回表示の前に発生した故障を順々に表示するもので、例えば7回分記憶する様に構成すれば、8回目には元に戻って全ての発光素子を点灯して初期状態を報知し、更にオンすれば又最新の故障データを表示し、以下これを繰り返す。」(第3頁左上欄第2?7行)

(3)甲第3号証
また、上記甲第3号証には、下記の記載がある。
「給湯機の各種状態を検出するサーミスタ等のセンサーと、これらセンサーの信号を主制御手段に伝える検出回路と、この検出信号によって加熱手段の制御を行なう制御手段とを備え、前記センサーが給湯機の異常状態を検出したり、あるいはセンサーや、回路自身に故障が発生した際に、前記主制御手段によって駆動される表示器に、異常状態または故障の内容を、数字、記号などによって分類表示する構成とした給湯機の制御回路。」(特許請求の範囲)
「燃焼装置13が運転を開始したにもかかわらず、一定時間経過しても炎検出の信号がマイクロコンピュータ23に入力されない時は、ディジタル表示器33は、湯温表示に優先して”E1”(エラー1)を表示し、同時に燃焼装置13の動作も停止する。これは油切れ状態を表わす表示である。」(第4頁左上欄第6?12行)

(4)甲第4号証
また、上記甲第4号証には、下記の記載がある。
「本発明は多数の個別警報のうち類似している個別警報を集約して表示させると共に、各個別警報もそれぞれ表示させる警報表示装置に関し、特に個別警報の表示手段の改良に関する。」(第1頁左下欄第19行?同右下欄第2行)
「操作員は表示部35のフリッカ表示を確認したならば、操作パネルNに投げたフリッカリセットスイッチ41を押す。そうすると、アンド回路22が成立してフリップフロップ回路31はリセットされR側の出力が「1」となる。このときまだ個別警報A1が現存すると、アンド回超25が成立するので、上記個別警報A1を表わす表示部35は連続点灯表示に切換わる。
ここで、この表示部35の連続点灯表示はリセットスイッチ42を押さない限り連続点灯し続ける。そして連続点灯表示させておく必要がないと判断された場合にはリセットスイッチ42を押すことにより連続点灯表示を消灯させることができる。」(第2頁右下欄第16行?第3頁左上欄第9行)

5.請求項1に係る考案について
上記4.(1)に示した甲第1号証の記載及び図面からみて、甲第1号証には、下記の考案が記載されていると認められる。
「検出器の状態等が正常であるか否かを監視する異常監視装置と、
トラブル発生箇所ないしはトラブル発生原因等を記憶する第1異常記憶回路と、
第1異常記憶回路に接続された第1表示部と、
を具備する給湯器等の制御回路において、
異常監視装置にて異常検出がなされた内容を記憶するとともに、貯えている異常検出内容を運転スイッチの操作により第1異常記憶回路の記憶が消去されでも、随時第2異常記憶回路から出力することができる手段と、
第2異常記憶回路に接続された第2表示部と、
が付設されてなることを特徴とする給湯器等の制御回路。」

請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)と、甲第1号証に記載された考案を対比すると、甲第1号証に記載された考案の「異常監視装置」は、検出器の状態等が正常であるか否かを監視し、異常記憶回路にトラブル発生箇所ないしはトラブル発生原因等を伝達するものであるから、本件考案のサーミスタ等の各種センサの検知状況を監視し、この監視下で異常発生態様に対応した各種の異常検出をなし得る「異常検出手段」に相当する。また、甲第1号証の「第2異常記憶回路」、「給湯器等の制御回路」は、それぞれ本件考案の「異常記憶手段」、「湯沸設備制御装置」に相当するから、本件考案と甲第1号証に記載された考案は、
「サーミスタ等の各種センサの検知状況を監視し、この監視下で異常発生態様に対応した各種の異常検出をなし得る異常検出手段、
を具備する湯沸設備制御装置において、
前記異常検出手段にて検出された異常検出内容を記憶するとともに貯えている異常検出内容を出力することができる異常記憶手段が付設されてなることを特徴とする湯沸設備制御装置。」で一致し、下記の相違点で相違する。

相違点1:本件考案が、燃焼シーケンスを監視する異常検出手段を有し、燃焼シークエンスを実行するとともに異常検出手段にて異常検出がなされたとき燃焼シークエンスのシークエンス状態を停止する方向へ遷移させる制御を行なうシークエンスコントロール手段を有するのに対し、甲第1号証には、そうであるか明確に記載されていない点。

相違点2:本件考案が、「異常検出手段にて異常検出がなされたとき異常報知をエラーコード表示等で行なう異常報知手段」を有するのに対し、甲第1号証には、第1異常記憶回路に接続された第1表示部が示されているのみで、第1表示部が、異常検出がなされたとき異常報知をエラーコード表示等で行なうかどうか明確に記載されていない点。

相違点3:本件考案が、「所定の異常解除操作に応答して異常検出手段及び異常報知手段を初期化するための制御を行なう異常解除手段」を有するのに対し、甲第1号証の制御回路が、運転スイッチの操作により第1異常記憶回路の記憶が消去されるものである点。

相違点4:本件考案は、異常検出手段により異常検出がなされる毎に異常検出内容を順次記憶するとともに貯えている異常検出内容を異常解除手段の初期化動作後に前記異常報知手段に出力できる異常記憶手段が付設されているのに対し、甲第1号証の制御回路は、異常監視装置にて異常検出がなされた内容を記憶するとともに、貯えている異常検出内容を運転スイッチの操作により第1異常記憶回路の記憶が消去されでも、随時第2異常記憶回路から出力することができる手段である点。

そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
上記4.(3)で示したように、甲第3号証には、「燃焼装置13が運転を開始したにもかかわらず、一定時間経過しても炎検出の信号がマイクロコンピュータ23に入力されない時は、ディジタル表示器33は、湯温表示に優先して”E1”(エラー1)を表示し、同時に燃焼装置13の動作も停止する。」(第4頁左上欄第6?12行)と記載され、甲第3号証のマイクロコンピュータは、燃焼制御の手順を監視するとともに、不具合があった場合には、制御動作を停止する手段を有している。
甲第1号証と甲第3号証は、ともに給湯機の安全装置に係る技術分野で共通しているから、甲第1号証の異常監視装置を、燃焼シーケンスも監視するとともに、異常検出された際に、制御動作を停止するように構成することは、当業者がきわめて容易に想到し得たものである。

(2)相違点2について
上記4.(3)で示したように、甲第3号証には、「センサーが給湯機の異常状態を検出したり、あるいはセンサーや、回路自身に故障が発生した際に、前記主制御手段によって駆動される表示器に、異常状態または故障の内容を、数字、記号などによって分類表示する」(特許請求の範囲)と記載されている。
甲第1号証と甲第3号証は、ともに給湯機の安全装置に係る技術分野で共通しているから、甲第1号証の第1表示部において、異常検出がなされたときに、エラーコード等の表示を行うように構成することは、当業者がきわめて容易に想到し得たものである。

(3)相違点3について
湯沸器の技術分野において、水流スイッチを閉じる等の操作を行うことにより、異常検出手段及び異常報知手段を初期化することは、平成14年2月19日に行われた口頭審理において、請求人及び被請求人双方が認めたように周知の技術であるから、甲第1号証の制御回路を、水流スイッチ等の操作により、異常検出手段及び異常報知手段を初期化するように構成することは、当業者がきわめて容易に想到し得たものである。

(4)相違点4について
a)上記4.(2)で示した甲第2号証には、「同時に入力ポートP5からの入力に応じて過去の故障発生毎に記憶された故障データを各出力ポートP2,P3,P7,P10,P11より出力し、発光素子(35)(36)(37)(38)(43)(44)を点灯する。」(第2頁右下欄第12?15行)、「又上記メンテナンススイッチ(47)は一度オフし再度オンする事で前回表示の前に発生した故障を順々に表示するもので、例えば7回分記憶する様に構成すれば、8回目には元に戻って全ての発光素子を点灯して初期状態を報知し、更にオンすれば又最新の故障データを表示し、以下これを繰り返す。」(第3頁左上欄第2?7行)と記載されており、給湯機等の燃焼機において、メンテナンス性の向上のために、故障検出がなされる毎に、そのデータを順次記憶させる手段を設けることが示されている。

b)また、本件考案の「異常報知手段」は、異常検出がなされたときに異常報知を行うとともに、貯えている異常検出内容を表示する手段であるが、複数の表示機能を、単一の表示部で行うようにすることは、特開昭61-130702号公報に示すように、周知の技術である。

c)次に、本件考案の構成の「貯えている異常検出内容を異常解除手段の初期化動作後に異常報知手段へ出力することができる」の解釈について、請求人、被請求人間で争いがあるので、検討する。
本件明細書には、「これを詳述すると、異常記憶手段7は、異常検出手段3にて異常検出がなされる毎に、異常発生信号S2のタイミングでエラーコード信号S4の内容を順次記憶するとともに、貯えているエラーコード信号S4の内容を示す記憶エラーコード信号S6を異常解除手段6の初期化動作後に表示制御手段4へ送出することができるようになされている。
つまり、異常解除手段6の初期化動作によって、この異常解除手段6から異常記憶手段7へ異常解除信号S5が送出され、これにより異常記憶手段7から表示制御手段4へ記憶エラーコード信号S6が送出されることになる。」(願書に最初に添付した明細書第8頁第14行?第9頁第6行(実用新案出願公告公報第2頁右欄第49行?第3頁左欄第9行))と記載されている。
また、本件考案に係る出願は、異議申立の結果、平成10年3月2日付けで拒絶査定がされ、それに対して、平成10年5月20日付けで審判請求がなされ、被請求人は平成10年6月22日付けの審判請求理由補充書において、
「「表示灯4-1?4-n」は、引用例公報の第3頁左下欄第17?第20行に記載のとおり、読み出しボタン12とコントローラ11によって読み出すことにより、異常を表示するものであって、本願考案のように、異常を検出したときに自動的に表示されるとともに、初期化する異常解除手段により継続して表示される「異常報知手段」ではない。
引用例1の「リセット接点5」が押されると、リセットされるのは「記憶回路2-1?2-n」であって、この「記憶回路2-1?2-n」が本願考案のどこの部分に相当するのか根拠が示されていないうえ、審査官殿の主張のように引用例1の「表示灯4-1?4-n」が「異常報知手段」に相当するとすれば、この「リセット接点5」によって「記憶回路2-1?2-n」が初期化された後に、どのように「表示灯4-1?4-n」に異常状態が表示されるのであろうか、理解できない。引用例1には「表示灯4-1?4-n」は、読み出し指令ボタン12とコントローラ11によってはじめて補助メモリ10に蓄えられた記憶を表示する旨の記載があるだけで、これを相当するというのは困難であると思料する。」(第4頁第27行?第5頁第11行)と主張している。
これは、異議決定の際に引用された特開昭63-94397号公報に記載された考案が、リセット接点5とは別の手段である読み出し指令ボタン12とコントローラ11により表示灯4-nから故障内容を表示させるものであることから、被請求人が、その相違点を明確にするために、本件考案は初期化動作を行う異常解除手段によって異常記憶手段から異常報知手段に出力するということを主張したものである。
これらの主張からみて、本件考案の「貯えている異常検出内容を異常解除手段の初期化動作後に異常報知手段へ出力することができる異常記憶手段」との構成は、異常解除手段の動作によって、初期化動作を行い、さらにその異常解除手段の動作によって異常記憶手段から異常検出内容を異常報知手段へ出力するものであると解すことができる。

d)そうすると、上記c)で検討したように、本件考案の異常解除手段は、異常検出手段と異常報知手段を初期化するとともに、貯えている異常内容を異常報知手段に出力させるものである。
一方、請求人は、「制御装置の異常警報装置について、異常発生によって表示された異常表示をリセット操作後も引き続き表示することは、甲第4号証に記載されていることであり、」(審判請求書第15頁第1?3行)と主張しているが、甲第4号証には、フリッカリセットスイッチにより、表示を点滅から点灯に変更できる旨の記載があるのみで、本件考案の異常解除手段のように、異常検出手段と異常報知手段を初期化するとともに、貯えている異常内容を異常報知手段に出力させるものは記載されていない。
そして、異常記憶手段が、貯えている異常検出内容を異常解除手段の初期化動作後に異常報知手段へ出力することができるようにすることが、甲第4号証の記載から、当業者がきわめて容易に想到し得たものとすることはできない。
さらに、甲第2号証及び甲第3号証にも、異常記憶手段が、貯えている異常検出内容を異常解除手段の初期化動作後に異常報知手段へ出力することができるという構成については、記載されておらず、また甲第2号証及び甲第3号証の記載から、当業者がきわめて容易に想到し得たものとすることはできない。

(4)よって、本件考案は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることはできない。

6.請求項2に係る考案について
請求項2に係る考案は、請求項1の各構成を備えるものであり、上記5.で検討したように、少なくとも、異常記憶手段が、「貯えている異常検出内容を異常解除手段の初期化動作後に異常報知手段へ出力することができる」という構成については、甲第1号証乃至甲第4号証のいずれにも記載されておらず、またこれらの刊行物からきわめて容易に想到することができるとも認められない。
したがって、請求項2に係る考案は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認めることはできない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、請求項1及び請求項2に係る実用新案登録を無効とすることができない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2002-03-08 
出願番号 実願平1-1179 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (F24D)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 村本 佳史田澤 英昭  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 井上 茂夫
滝本 静雄
登録日 1999-04-02 
登録番号 実用新案登録第2150528号(U2150528) 
考案の名称 湯沸設備制御装置  
代理人 三好 秀和  
代理人 園田 敏雄  

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