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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B
管理番号 1061353
審判番号 不服2000-15742  
総通号数 32 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-10-04 
確定日 2002-07-03 
事件の表示 平成 5年実用新案登録願第 21187号「フリーサイズ紙おむつ」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年10月25日出願公開、実開平 6- 75453]について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 <1>本願考案
本願は、平成5年3月31日の出願(実願平5-21187号)であって、当審において拒絶理由が通知され、それに対して平成13年12月21日付け手続補正書により補正されたものであり、その請求項1および2に係る考案は、補正された実用新案登録請求の範囲の請求項1および2に記載された次のとおりのものである(図面中の番号は省略)。
「【請求項1】図1に示すように、ほぼ砂時計型おむつであり大人用と子供用とを兼ねた1種類のウエストサイズを有する紙おむつであって、吸収体と、これを挟む透水性シート及び不透水性シートからなり、該紙おむつの本体の巾が320mmでありかつその長手方向の一方端部の両側の不透水性シート面にそれぞれ長さ150mmの横方向の延長部材を設けて最大約900mmのウエストサイズにも適応でき、該延長部材の先端に外側にはファスニングテープを固着すると共に、内側にはリリーステープを貼着し、かつ上記のファスニングテープによりリリーステープを先端側からU字状に挟んでファスニングテープがリリーステープに対しては着脱自在なウエスト用ファスナーを構成したことを特徴とするフリーサイズ紙おむつ。
【請求項2】 延長部材が弾性体又は非弾性体である請求項1記載のフリ
ーサイズ紙おむつ。」


<2>当審が通知した引用例
引用例1:特開平4-259457号公報
引用例2:実願昭56-172966号(実開昭58-78903号)のマイクロフィルム
上記引用例1?2には、図面を引用して次のとおり記載されている。
<引用例1>特開平4-259457号公報
a:
「【請求項1】 液透過性の表面シートと液不透過性の裏面シートとその間に吸収体を有し、股下部領域に、又は股下部領域と腰部領域に伸縮性弾性体を有し腰廻りに締結部を有する使い捨ておむつにおいて、おむつの背側領域の両側縁部から外側方向に伸びた腰ベルトを有し、該腰ベルトは表面シートと同じ側は不織布からなり、裏面シートと同じ側はフィルム状シートからなり、該フィルム状シートの外側は軽度の剥離処理が施され、該両側へ伸びた腰ベルトの片方の腰ベルトの、おむつと反対側の端縁部に、もう一方の腰ベルトの軽度の剥離処理が施されたフィルム状シートに接着できるような結合手段を有し、かつ、背側部と反対側の腹部先端部に、該腰ベルトのフィルム状シートに接着できるような結合手段を有することを特徴とする使いすておむつ。」
b:
「【0006】結合手段としてはリリーステープとファスニングテープの組み合わせのもの、又は腰ベルトのフィルム状シートの先端部に粘着剤を塗布し該粘着剤塗布部分よりおむつ側部分で粘着剤を内側にして折曲げ、該粘着剤が接する腰ベルト部分に剥離処理を施した結合手段等各種のものが使用できる。・・・・・
【0007】おむつの背側領域の両側縁部から外側方向に伸びた腰ベルトは・・・・・。ベルトの長さは、両方のベルトの長さとおむつの幅方向の長さの合計が着用者の腰廻り寸法以上になる長さにする必要がある。」
c:
「【0009】つぎに、図面に基いて本発明を詳しく説明する。
図1は本発明の使い捨ておむつの表面シート側からみた平面図を示し、図2は図1のXーX′線における断面拡大図、図3は図1のYーY′線における断面拡大図を示す。図1における符号1は表面シート、2は吸収体、4は股部伸縮性弾性体、5,5′は腰ベルト、6は腰ベルト結合テープ、7は腹部端部結合テープを示し、図2においても符号1は表面シート、2は吸収体、3は裏面シート、6は腰ベルト結合テープ、8は結合テープ基材、9は結合テープ粘着剤、10は剥離テープ基材、11は剥離テープ用粘着剤、12は腰ベルトの不織布素材部分、13は腰ベルトのフィルム素材部分を示し、図3において図2について説明したのと同じ符号は図2と同じ意味を有し、7は腹部端部結合テープを示す。
【0010】本発明の1実施例である図1、図2及び図3に基いて本発明の使いすておむつの装着方法を述べる。まず着用者を仰向けに寝かし、表面シートを上にし、背側部を頭の方向に向け、着用者の臀部の下におむつを差し込む。次に結合テープの設けられていない方の腰ベルト5′を着用者の腹へ巻き付け、次に反対側の腰ベルト5を腹へ巻き付け、該腰ベルトを最初に巻き付けた腰ベルト5′のフィルム素材上に、腰ベルト5の先端に取り付けた結合テープの6の部分を剥離テープ10より剥がしてしっかりと接着する。
次におむつの腹側部を、装着者の股間を通し腹側へ巻き付ける。そして、おむつの該腹側部を腰ベルトのフィルム基材部上に、おむつの腹側部に設置した結合テープ7,7・・・を剥離テープ10より剥がして接着する。
【0011】【発明の効果】本発明のおむつを使用することにより、おむつの交換、特に大人用のような大きいおむつの交換が、1人でかつ歪まず簡単に行うことが出来る。」
d:
図1は使いすておむつの平面図で、長さ方向中央部が細く、両端(前後部)は太く形成されている。
おむつの腰部の両側に取り付けられた腰ベルト5、5’が左右に延びて、一方の腰ベルト5の先端に腰ベルト結合テープ6が設けられているが、この部分の断面図が図2である;
図2において、おむつは吸収体2を挟んで内側の表面シート1と外側の裏面シート3からなり、腰ベルトは内側の不織布基材部分12と外側のフィルム素材部分13の二層からなり、上記表面シート1;裏面シート3の間から延びているが、その先端に外側には結合テープ基材8を結合テープ用接着剤9を介して接着すると共に、内側には剥離テープ基材10を剥離テープ基材用粘着剤11を介して接着し、さらに、上記結合テープ基材8;結合テープ粘着剤9は先端からU字状に内側へ折り返されて、上記剥離テープ基材10上に接着されていることが、分かる。
<引用例2>実願昭56-172966号(実開昭58-78903号)のマイクロフィルム
e:
「2.実用新案登録請求の範囲
(1)透水性トップシートと不透水性バックシートとこれらの間に介在させた吸収体とからなる長方形状の使い捨ておむつにおいて、前記おむつの一方の腰当部の幅方向両端部から同方向外側へ適宜長さと幅を有する締付帯片が延出するように前記バックシート面に該帯片を取付けてなることを特徴とする使い捨ておむつ。
(2)締付帯片の先端部には該帯片を取付けたおむつの一方の腰当部と相対向する他方の腰当部のバックシート面に対して接着・剥離可能な圧感性テープ片を取付けてあることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の使い捨ておむつ。
(3)おむつの幅が8?18cmである実用新案登録請求の範囲第1項記載の使い捨ておむつ。
(4)締付帯片の幅を6?8cm、おむつの幅方向外側へ延出する長さを6?10cmに形成してある実用新案登録請求の範囲第1項記載の使い捨ておむつ。」
f:
「帯片8は、第1図に示すように一本の長いものを用いても、また第2図に示すように短い二本のものを用いてもよい。その素材は、不織布、合成樹脂などいずれでも、また伸縮弾性を有するものでも有しないものでもよい。その幅は6?8cm、おむつ1の幅方向外側へ延出するその長さは6?10cmであることが好ましい。」(第4頁第13?20行)
g:
「帯片8の先端部には、感圧性テープ片9を取付けてある。テープ片9は、たとえば・・・一面にのみ粘着剤を有するものの一端を第4図に示すように帯片8の下面に接着し、他端を帯片8の上面に接着した剥離テープ片10の上面に仮着してもよい。」(第5頁第1?8行)
h:
「前述のように構成された本考案にかかるおむつ1は、着用するに際しては、第6図に示すように帯片8で着用者の腰囲りを適宜締付けるとともに、該帯片の先端部の感圧性テープ片9を、該帯片8を取付けた一方の腰当部5と対向する他方の腰当部5と対向する他方の腰当部6のバックシート3面に接着するものである。」(第5頁第17行?第6頁第3行)
i:第6図は着用状態のおむつの状態であるが、帯片8を取り付けた腰当部5の巾と、該腰当部の巾方向外側へ延出する左右の帯片の長さと、該帯片先端が接着される対向する腰当部6の巾で一回りの胴回りを形成していることが分かる。
この図では、帯片先端の感圧テープ片は、対向する腰当部6の左右の端に接着されてあり、腰当部の巾方向外側へ延出する左右の帯片の長さが最長になっていることが分かる。


<3>対比・判断
<3-1>本願の請求項1に係る考案について
<おむつの形状について>
本願請求項1にかかる考案において、おむつの形状を「図1に示すように、ほぼ砂時計型おむつ」としているが、図1に示すような紙おむつやその吸収体の形状が長手方向中央部を細くして股ぐり部がある形状のものを「砂時計型」と称していることは、例えば特開昭57-193501号公報や引用例2(従来技術の項参照)にみられるように本出願前の当該技術分野において一義的に認識できる用語として用いられている(平成13年12月21日付け意見書 第1頁第25行?第2頁第2行)(必要であれば特開平4-2345号公報;特開平2-11141号公報;特開昭60-140706号公報 参照)。
一方、引用例1記載の考案において図1の平面図のおむつも長手方向中央部を細くした形状(記載d)であり、股ぐり部が形成されているということができるから、本願請求項1に係る考案の「図1に示すように、ほぼ砂時計型おむつ」に相当するということができる。

また、本願請求項1に係る考案においては、両側に横方向の延長部材を設けて「最大約900mmのウエストサイズにも適応でき」るが、引用例1記載の考案においても、おむつ本体の両側に腰ベルト5が設けられているから、両者は、延長部材や腰ベルトにより、おむつ<本体の巾以上の大きさの>ウエストサイズにも適応できる、ということができる。
そこで、本願の請求項1に係る考案と引用例1記載の考案とを対比すると、引用例1記載の考案の「(液透過性の)表面シート」「(液不透過性の)裏面シート」「使いすておむつ」「腰ベルト」は、本願の請求項1に係る考案の「透水性シート」「不透水性シート」「紙おむつ」「延長部材」に相当し、また、引用例1記載の考案の「結合テープ基材」「剥離テープ基材」は、本願の請求項1に係る考案の「ファスニングテープ」「リリーステープ」に相当するから、両者は、
「図1に示すように、ほぼ砂時計型おむつであり、1種類のウエストサイズを有する紙おむつであって、吸収体と、これを挟む透水性シート及び不透水性シートからなり、該紙おむつの本体の長手方向の一方端部の両側の不透水性シート面にそれぞれ横方向の延長部材を設けて<本体の巾以上の大きさの>ウエストサイズにも適応でき、 延長部材の先端に外側にはファスニングテープを固着すると共に、内側にはリリーステープを貼着し、かつ上記のファスニングテープによりリリーステープを先端側からU字状に挟んでファスニングテープがリリーステープに対しては着脱自在なウエスト用ファスナーを構成したことを特徴とする紙おむつ」、
で一致するが、下記の点で、相違する。
<相違点A>
本願請求項1に係る考案の紙おむつの本体の長手方向の一方端部の両側の不透水性シート面にそれぞれ横方向の延長部材を設けてウエスト用ファスナーが、「該延長部材の先端に」、すなわち、おむつの長手方向の一方端部の「両側」の「それぞれ」の延長部材の先端に構成した(以下、「相違点Aの構成」という)のに対し、
引用例1記載の考案においては一方の延長部材の先端のみにファスナーがある。
<相違点B>
本願請求項1に係る考案においては、1種類のウエストサイズを有する紙おむつが「大人用と子供用とを兼ねた」もので、「フリーサイズ紙おむつ」である(以下、「相違点Bの構成」という)のに対して、引用例1記載の考案は、その旨明示されてはいない。
<相違点C>
本願請求項1に係る考案においては、紙おむつの本体が「巾320mm」でそれぞれの延長部材が「長さ150mm」で、「最大約900mm」のウエストサイズに適用できる(以下、「相違点Cの構成」という)が、引用例1記載の考案は、そのような構成ではない。

上記相違点について、次に検討する。
<相違点Aについて>
引用例2記載の考案において、バックシート面に取り付けた帯片(本願請求項1に係る発明の「延長部材」)は、その両先端部には圧感性テープ片(本願請求項1に係る発明の「ウエスト用ファスナー」)が、相対向する腰当部のバックシート面に対して接着・剥離可能なように取り付けてある(記載e)から、相違点Aの構成は引用例2に記載されているということができる。
また、引用例2には「帯片8は・・・第2図に示すように短い二本のものを用いてもよい。・・・おむつ1の幅方向外側へ延出するその長さは6?10cm」(記載f)の具体例が記載されてあり、大人用というほど大きなサイズではないが、相違点Aの構成により1種類のウエストサイズのおむつで左右の帯片を合わせてウエストサイズが12?20センチ小さい人にも着用できることがわかる。
そうしてみると、引用例1記載の考案の紙おむつの本体の長手方向の一方端部の両側の不透水性シート面にそれぞれ横方向に設けた延長部材の、もう一方の先端にも、引用例2記載の考案のようにウエスト用ファスナーを設けて相違点Aの構成にしたことは、当業者がきわめて容易になしうることである。
<相違点Bについて>
引用例1記載の考案において「ベルトの長さは、両方のベルトの長さとおむつの幅方向の長さの合計が着用者の腰廻り寸法以上になる長さにする必要がある。」(記載b【0007】)という記載等から、当業者であれば、ベルトの長さを大人にも着用できる長さとしておき、子供に対しては、ベルトの長さの範囲内で所望の長さとなるように調節することは、当業者であれば自明の事項に過ぎないものである。
そうしてみると、引用例1記載の考案の1種類のウエストサイズを有する紙おむつを「大人用と子供用を兼ねた」ものにし、「フリーサイズ紙おむつ」にして相違点Bの構成にする点は、当業者が必要に応じてきわめて容易になし得ることである。
<相違点Cについて>
引用例1記載の考案は「特に大きい大人用おむつ」の問題点の解決を目的にしたものである(【0003】)が、本願請求項1に係る考案の「最大約900mmのウエストサイズ」の着用者用のおむつも一種の「特に大きい大人用」であるということができる。そして、引用例1記載の考案において「ベルトの長さは、両方のベルトの長さとおむつの幅方向の長さの合計が着用者の腰廻り寸法以上になる長さにする必要がある」(段落【0007】)と明示されている。
一方、<相違点Aについて>で検討したように、引用例2記載の考案において、第6図の例では、帯片8を取り付けた腰当部5の巾と、該腰当部の巾方向外側へ延出する左右の帯片の長さと、該帯片先端が接着される対向する腰当部6の巾で一回りのウエストサイズを形成する(帯片先端の感圧テープ片の接着位置によりウエストサイズを調節できる)(記載i)から、必要に応じて具体的寸法を設定することは、当業者がきわめて容易になし得ることである。
そうしてみると、特に大きな大人である「最大約900mmのウエストサイズ」の着用者用に相違点Cのように数値を限定することは当業者がきわめて容易になし得る設計変更であるということができる。

したがって、引用例1及び2記載の考案から本願請求項1に係る考案を構成したことは、当業者がきわめて容易になしうるものである。
そして、本願請求項1に係る考案の効果として記載されている「本考案によれば、身体のウエストサイズの大小に自由に合わせられる紙おむつを提供できる等の効果を有する」(【0011】)ことは、引用例1及び2記載の考案からきわめて容易に予測可能なものである。

<3-2>本願の請求項2に係る考案について
本願の請求項2に係る考案において、「延長部材が弾性体又は非弾性体である」点は、引用例2記載の考案に示されている(記載f)から、請求項2に係る考案は、引用例1及び2記載の考案から当業者がきわめて容易に想到することができるものであるということができる。

<4>むすび
以上、検討したように、本願請求項1および2に係る考案は、引用例1および2の刊行物に記載された考案に基づいて 当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるということができるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-04-24 
結審通知日 2002-04-25 
審決日 2002-05-22 
出願番号 実願平5-21187 
審決分類 U 1 8・ 121- WZ (A41B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 門前 浩一植前 津子  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 鈴木美知子
西村 綾子
考案の名称 フリーサイズ紙おむつ  
代理人 箕浦 清  

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