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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B29C
管理番号 1066082
審判番号 審判1999-35022  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-01-12 
確定日 2002-09-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2149899号「樹脂成形機」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成12年 3月27日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成12(行ケ)年第165号平成13年12月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第2149899号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2149899号は、平成2年5月29日に出願し、平成6年6月29日に実公平6-24178号として出願公告され、平成10年7月17日に設定登録されたものである。
請求人である株式会社 スター精機は、平成11年1月12日に本件考案の実用新案登録を無効にすることについて審判を請求し、特許庁は、これを平成11年審判第35022号事件として審理し、平成12年3月27日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本を当事者に送達した。
請求人はこの審決を不服として提訴し、東京高等裁判所はこれを平成12年(行ケ)第165号事件として審理し、平成13年12月25日に「特許庁が平成11年審判第35022号事件について平成12年3月27日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を言い渡し、この判決は確定した。

II.本件考案
本件考案は、本件明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次のものである。
「樹脂成形機の長手方向および幅方向に延びる軌道に沿って成形品取出チャック部を往復移動させる成形品取出装置が当該樹脂成形機の固定金型ホルダに搭載された樹脂成形機において、該樹脂成形機の前記長手方向の中心軸線より前記幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し、かつ前記固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して電動サーボモータ用ドライバーボックスが前記成形品取出装置に取付けられていることを特徴とする樹脂成形機。」

III.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、「第2149899号実用新案登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、証拠として下記の甲第1?7号証を提出して、以下、(1)及び(2)のような主張をしている。
(1)本件考案は、甲第1?3号証に示されたNT-600型自動取出機の考案(以下、「引用考案」という。)及び甲第4、5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
(2)本件実用新案登録出願に係る平成5年11月22日付手続補正書による明細書および図面の補正は、明細書の要旨を変更するものであるから、本件実用新案登録の出願は、その手続補正書を提出した時にしたものとみなされる。
そして、本件実用新案登録出願は、平成4年2月7日に出願公開されており、本件考案は、その公開公報に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである。

甲第1号証:「横走行型自動取出機+オートゲートカッター NT-600型」カタログ,(株)スター精機
甲第2号証:「NT-600 取扱いの手引書 技術研修会資料」,(株)スター精機,表紙、目次頁及び第1?23頁及び図面6葉
甲第3号証:見出し「スター精機 取出して粉砕 回収までの一貫システム」の記事,プラスチックタイムス,s53.11.13
甲第4号証:特開昭58-110232号公報
甲第5号証:土手、木下編著「ブラシレスサーボモータの基礎と応用」,総合電子出版社,s62.3.30,表紙、目次頁及び第104頁
甲第6号証:「証明願」,平成11年8月18日 塩谷 陽右 作成
甲第7号証:平成11年(ヨ)第929号事件(京都地方裁判所)に係る2000年1月14日付け準備書面、債務者 株式会社 ユーシン精機 作成

2.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、請求人が主張する上記(1)及び(2)の点に対して、以下のように主張している。
(1)本件考案は、甲第1?3号証に示された引用考案及び甲4及び5号証に記載された考案に基づいて当業者が容易に考案をすることができたものではない。
(2)本件実用新案登録出願に係る平成5年11月22日付手続補正書による明細書および図面の補正は、明細書の要旨を変更するものではなく、それを前提とした請求人の主張は理由がない。

IV.当審の判断
1.本件考案の概要
本件考案の出願明細書(以下「本件明細書」という。)の【考案の詳細な説明】欄には,次の記載があることが認められる。
[産業上の利用分野]
「本考案は樹脂成形機に係り、特に、電動サーボモータ用ドライバーボックスから成形品取出装置に収納されている電動サーボモータあるいは該サーボモータに付設されているエンコーダに対して、電気的に接続される導電線の長さを短縮し、かつ電動サーボモータ用ドライバーボックスの設置位置と前記導電線の配置位置を作業者の邪魔にならない位置に設定するための技術に関する。」(第1欄第12行?第2欄第4行)
[従来の技術]
「この種従来の樹脂成形機は、・・・成形品取出装置3に収容されているDCサーボモータもしくはACサーボモータ・・・およびこれらのサーボモータに付設されているエンコーダ・・・に対して、制御信号を出力する電動サーボモータ用ドライバーボックス1・・・と、この電動サーボモータ用ドライバーボックス1に制御信号を出力する制御ボックス1Aを、樹脂成形機2近傍の床面に設置した構成になっている。
しかし、電動サーボモータ用ドライバーボックス1が樹脂成形機2近傍の床面に設置された床置き式の構造では、電動サーボモータ用ドライバーボックス1から成形品取出装置3に収容されているAC,DCサーボモータやエンコーダまでの距離が長くなり、当然、電動サーボモータ用ドライバーボックス1からAC,DCサーボモータやエンコーダに制御信号を出力する導電線EWの長さが長くなる。このように、導電線EWの長さが長くなるとアンテナ作用が増大し、AC,DCサーボモータやエンコーダに対するノイズの影響度が大きくなって成形品取出装置3の誤動作を招き、成形品の取出精度・・を低下させる要因になっている。
一方、導電線EWの通電量は大きいので大きい横断面積が必要になる。しかも、導電線EWの必要数量が多い。・・・つまり、寸法の長い多数の導電線EWが必要になる。したがって、イニシャルコストが高くなり経済的に不利である。
他方、電動サーボモータ用ドライバーボックス1が樹脂成形機2近傍の床面に設置された床置き式の構造では、導電線EWの一部が床面に配線されることになる。このように導電線EWの一部が床面に配線されると、作業者の足元に干渉するので邪魔になり作業環境を悪くするとともに、干渉により導電線EWが切断される虞れを有している。」(第2欄5行?第3欄第34行)
[考案が解決しようとする課題]
「解決しようとする問題点は、導電線の長さが長いために、アンテナ作用が増大し、AC,DCサーボモータやエンコーダに対するノイズの影響度が高くなって、誤動作を招き、成形品の取出精度を低下させる点、横断面積が大きく、かつ寸法の長い多数の導電線を必要とするので、イニシャルコストが高くなり経済的に不利な点および作業者の足元に干渉するので邪魔になり、作業性を低下させる一因になるとともに、干渉により導電線が切断する点などの諸点である。」(第3欄第35?44行)
[問題を解決するための手段]
「本考案は、樹脂成形機の長手方向及び幅方向に延びる軌道に沿って成形品取出チャック部を往復移動させる成形品取出装置が当該樹脂成形機の固定金型ホルダに搭載された樹脂成形機において、該樹脂成形機の前記長手方向の中心軸線より前記幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し、かつ前記固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して電動サーボモータ用ドライバモータボックスが前記成形品取出装置に取付けられていることを特徴とし、ノイズの影響度を小さくして誤動作を避け、成形品の取出制度(「精度」の誤記と認める。)を向上させ、イニシャルコストを低くするとともに、作業者の足元への干渉をなくして作業環境を良くし、干渉による導電線の切断を防止する目的を達成した。」(第3欄第45行?第4欄第8行)
「作用]
「本考案によれば、導電線の長さを短縮できる。その結果、AC,DCサーボモータやエンコーダに対するノイズの影響度が小さくなる。また、導電線が床面に配線されなくなるので、作業者の足元への干渉がなくなる。さらに、成形品取出チャック部の往復運動に干渉しない。」(第4欄第9?14行)
本件明細書の上記認定の記載によれば、本件考案は、樹脂成形機の成形品取出装置内に収容されて、同装置の成形品取出チャック部を往復移動させる電動サーボモータを制御する電動サーボモータ用ドライバーボックスの位置の設定に関する考案であり、従来技術においては、これを床面に設置していたのを、成形品取出装置の近傍の、成形品取出チャック部の往復移動に干渉しない位置に配置したものであり、これによって、電動サーボモータと電動サーボモータ用ドライバーボックスをつなぐ導電線の長さを短縮し、電動サーボモータに対するノイズの影響度を小さくして誤動作を防止するとともに、寸法の長い多数の導電線の使用を不要としてイニシャルコストを低減し、かつ、導電線を床面に配置しないことを通じて、作業者の足元への干渉をなくして作業環境を良くし、干渉による導電線の切断を防止することを目的とした考案であると認められる。本件考案に上記以外の目的があることを意味する記載は、本件明細書に存在しない。

2.引用考案(NT-600型取出機)の概要
(1)引用考案であるNT-600型取出機が、本件実用新案登録出願前に日本国内において販売され、公然実施されたことは、当事者間に争いがない。
甲第1号証(請求人製造販売に係るNT-600型取出機の製品カタログ)及び甲第2号証(NT-600型取出機の取扱手引書)中の記載及び写真、図面によれば、引用考案は、本件考案と同じく、樹脂成形機上に搭載される成形品取出装置に関する考案であり、その取扱手引書(甲第2号証)中には、次の記載があることが認められる。
「2-1 スライドベース
これは本取出機を取付架台を通じて成形機に据付けるためのものです。この取付にはM12CAPボルトを4本使用して行ないます。この上面において、走行レール(2)(原文は丸囲みの2。)と1体構造をもっている本体部とスライド結合されている。」(甲第2号証第4頁第2?5行)
「2-2 走行レール
これは走行体を正面より向って左右方向にスライドさせるためのもので上面に平面受けのレールが前端と後端に設けてあり後端レールの前側には走行駆動モータのピニオンに対してラックギヤが切られています。又、レール内部の下方向には走行体の安定性をもたせるため、丸ガイドが設置されており、これにより走行体の前後方向、上下方向の制限を行ないます。」(第4頁第6?10行)
「2-3 走行体
これは走行レールの上を左右に横行するボデー部分で、これに前後方向、上下方向の各作動機構が全て装着されています。又、内部には各作動用のエアバルブがセットされており、同じく各動作速度調整用スピコンも取付けられています。又、これらのバルブおよび各種リミットスイッチ等の電気配線もこの中の端子台により行ないます。そして走行体の側面部に走行駆動用エアモーターが固定されています。」(第4頁第11?15行)
「2-4 走行用エアモーター
これは走行体側面に固定されて走行体を左右方向に走行動作させるためのもので、自社製品です。このモータは^(φ)30シリンダが3気筒構造で作られています。このとき、エア圧力が5kg/cm^(2)時に走行方向に対して約20kgの推力を発生します。」(第4頁第16?19行)
「2-5 上下ユニット
これは走行体より前後ガイドを通じてスライド構造となっています。そして、この先端には標準装備のスプールチャックが取付いております。この上下のシリンダは標準機で^(φ)20 600^(ST)、姿勢付ユニットで^(φ)25-600^(ST)となっており両者間で下降位置調整輪の構造等が若干相違しております。」(第4頁第20?23行)
「2-6 制御盤および操作パネル
これは取出機の制御機能を全て含みます。又、操作側では走行レールの下面、反操作側では走行レールの取出側端面にそれぞれ下方向に若干の角度振りの可能な形で取付けます。」(第4頁第24?26行)
「2-19 スタンダードチャック
これは標準機、姿勢付オプション機を問わずに標準装備されています。但し、標準機の場合はNP型時に使用したものを、姿勢オプション機については新規開発したものを装着します。別に製品掴みの必要な場合はミニシリンダによる掴み、吸着盤によるパット吸着とそれぞれを併用して行なう事もできるでしょう。」(第5頁第16?19行)
「3-1 NT-600型取出機の成形機への取付方法を図3を使用して詳細説明します。
これはFS・75を例にして示してあります。
先ず取付架台を成形機固定盤上に据付けます。これはM10CAPボルトを4本使用するのを原則とします。
又、この時固定盤上に安全装置等細工の施してある機械については、事前に現場確認により架台を作成します。これは将来的には兼用型で使用出来るものを計画して行きます。(現状では鋳造品1種類を使用中)
この取出機は成形機のノズル芯と、取出機のスライドベースの左右芯を合せます。そして次に、取出機を据付ますが、この時にはM12CAPボルトにて据付けます。」(第6頁第2?8行)
「8 制御部の説明
NT-600の制御は走行レールの下面に取付けられた制御Boxと同じく、操作パネルにおいて行ないます。
制御Boxには、電源機能とプリント基板、それに自動モードSWの他、調整の必要なタイマのツマミ等が含まれています。又、操作パネル面には、自動、手動時に必要な操作スイッチと成形機よりの信号、成形機の信号、内部のリミットスイッチの状態表示、そして各種SOLの動作状態の表示のそれぞれの機能を含めてあります。」(第12頁第1?5行)
(2)甲第2号証中の上記の記載及び甲第1、2号証中の写真、図面によれば、引用考案については、次のようにいうことができる。
ア スライドベースは、成形品取出機本体部を取付架台を介して樹脂成形機に据え付けるためのもので、樹脂成形機の長手方向に延びる軌道を構成している(甲第1号証の1枚目掲載の写真及び2枚目記載の外形寸法図、甲第2号証の第1頁記載の図面及び第6頁記載の図-3参照)。
イ スライドベース上にはスライドベース送りネジによって上記アの軌道を前後方向(長手方向)に往復移動する成形品取出機本体部が載置されている(甲第2号証第6頁記載の図-3参照)。
ウ 成形品取出機本体部には、走行レールが取り付けられ、走行レールは、取出機本体部が前後方向に往復移動するのに伴って往復移動する。
エ 走行レールは、その上を左右方向(幅方向。上記長手方向と直交し、かつ上下方向と直交する方向)に往復移動する走行体を有し、その走行体には前後ガイドによってスライド構造とされた上下ユニット、すなわち、前後方向に往復移動する上下ユニットが装備されている(甲第2号証の第3頁記載の図面参照)。
オ 上下ユニットは、その先端に成形品取出チャック部を設け、そのチャック部は、上下のシリンダで上下に往復移動する。
カ 走行体は、走行用エアモータで左右方向に往復移動され、その内部には上記前後ガイドや上下のシリンダによる成形品取出チャック部の前後及び上下方向への往復移動を調整するエアバルブがセットされている。
キ 制御Boxは、走行レールの下面に、樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側に変位した位置に設定されて取付けられている(甲第1号証の1枚目掲載の写真参照)。
ク 制御Boxの「制御盤および操作パネル」は取出機の制御機能をすべて含んでいる。
以上のとおり、NT-600型取出機(引用考案)は、取出機本体部がスライドベース上を前後方向(長手方向)に往復移動するのに伴って、結果的に、走行レール及び成形品取出チャック部も同じように往復移動するものであること、走行体を左右方向(幅方向)に、上下ユニットを前後方向(長手方向)に、成形品取出チャック部を上下方向に、それぞれ往復移動させ、これらの往復移動を組み合わせることにより同チャック部を三次元的に移動させるよう構成していること、制御Boxには、走行体を左右方向(幅方向)に往復移動させる走行用エアモータ及び成形品取出チャック部を前後方向(長手方向)及び上下方向へ往復移動させる前後ガイドや上下のシリンダを調整するエアバルブを制御するための制御機器を収容していること、制御Boxは樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側に変位した位置に設定されて取り付けられていること、走行レールが前後方向(長手方向)に往復移動し、その移動した位置によっては制御Boxが固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った場所に位置されることがあること、が認められる。

3.実用新案法第3条第2項違反の主張について
(1)本件考案と引用考案とを対比すると、以下の3つの点でこれらの考案の間には相違が認められる。
・相違点1
本件考案が、成形品取出チャック部を往復移動させるための樹脂成形機の長手方向に延びる軌道を備えているのに対して、引用考案はこのような軌道を持たない点。
・相違点2
本件考案においては、成形品取出装置に取付けられているドライバボックスが電動サーボモータ用であるのに対して、引用考案においては、走行レール下面に取付けられた「制御Box」がエアモーターを作動させるためのエアの供給および遮断を行うエアバルブを開閉する制御ボックスである点。
・相違点3
本件考案においては、電動サーボモータ用ドライバーボックスを、積極的に、樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し、かつ固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して成形品取出装置に取付けるのに対して、引用考案においては、このようにされていない点。

(2)検討
(i)相違点2について
ア 甲第4号証には、次の記載があることが認められる。
「本発明は射出成形機から射出成型品・・・を自動的に取出す成型品自動取出装置に関するものである。」(甲第4号証第2頁左上欄第14?16行)
「図中本体フレーム1は射出成形機2に固定される架台部3と、図示左右方向へ延出する走行フレーム4とが一体形成され、該走行フレーム4長手方向には逆テーパ状の一対の左右レール5a・5bが、また、一方レール5a(「5b」の誤りと認める。第2図参照)側にはラックギヤ6が夫々固着されている。」(第2頁右下欄第1?6行)
「走行体9は前記左右レール5a・5b上を往復移動可能に嵌装されるものであり、該左右レール5a・5bの長手方向と直行する前後方向へ延出する一対の前後フレーム10a・10bが一体に形成され、該前後フレーム10a・10b上には逆テーパ状からなる一対の前後レール11a・11bが・・・固着されている。」(第2頁右下欄第11?20行)
「前記走行体9には前記ラック・ギヤ6に噛合するギヤ14を一方回転子端に装着してなるインダクションモータ15が装着され、該インダクションモータ15の回転駆動に従って走行体9は左右方向へ往復移動される。
前記前後走行体16は前記前後レール11a・11b上を前後方向へ往復移動可能に嵌装され、該前後走行体16には前後方向と直行する上下方向へロッドを往復動させる上下シリンダ17が固着されると共に、該上下シリンダ17両側においてロッドと平行状に上下動するガイド・ロッド18a・18bが嵌装されている。
インダクションモータ19は前記走行体16に固着され、・・・インダクションモータ19の回転駆動力をスクリュー軸23に付与し、スクリュー軸23の回転に従って前後走行体16を前後方向へ往復移動させるものである。
チャック部26は前記上下シリンダ17のロッド、並びにガイド・ロッド18a・18bの下端に固着されてなる姿勢制御部材27を介して取付けられるチャックプレート28と、該チャックプレート28に固着され成型品Pを保持するエア・シリンダ、若しくは吸盤等の保持部材29とからなり、・・・。」(第3頁左上欄第1行?同頁右上欄第10行)
「第5図は成型品自動取出装置の制御回路を示すブロック図であり、・・・」(第3頁右上欄第15?16行)
「制御回路51・52は正転信号L、逆転信号Mに基づいてインダクションモータ15・19を可逆運転すると共に、速度指示信号Nに基づいてインダクションモータ15・19に供給される交流電圧を電圧制御し、走行体9、並びに前後走行体16の移動速度を加減速すると共に、一致信号Nに基づいてインダクションモータ15・19を停止制御し、走行体9、並びに前後走行体16を所望の停止位置で停止させる。」(第4頁右上欄第16行?同頁左下欄第4行)

甲第4号証中の上記認定の記載によると、同号証に記載された射出成型品自動取出装置は、射出成形機2の上に架台部3及び走行フレーム4を設け、この走行フレーム4の上に走行体9を設け、走行体9はインダクションモータ15によって走行フレーム4上を左右方向に往復移動し、また、走行体9には前後フレーム10a・10bが設けられ、これらの上を前後走行体16がインダクションモータ19によって前後方向に往復移動し、チャック部26が前後走行体16に固着された上下シリンダ17によって上下方向に往復移動する取出機であり、これらインダクションモータ15、19は制御装置により制御されているということができる。
イ また、インダクションモータ、すなわち誘導モータとは、電動サーボモータのことであることは技術常識であり、かつ電動サーボモータの駆動装置は、本件出願前において周知であったということができる(「精密小形モータの基礎と応用」,昭和54年7月10日第4版,総合電子出版社発行 及び甲第5号証参照)。
ウ 以上の認定によれば、甲第4号証記載の取出機と、NT-600型取出機(引用考案)とは、樹脂成形品を取り出すという利用分野において一致し、また、三つの装置要素、すなわち、甲第4号証記載の取出機に即して表現するならば、走行体9、前後走行体16及びチャック部26を左右、前後及び上下方向のそれぞれに往復移動させることにより、結果的に、チャック部26を三次元的に移動させるよう構成しているという構造上の類似性を有するものであるから、NT-600型取出機の、走行体を往復移動させる走行用エアモータに代えて、甲第4号証記載の取出機の走行体9を往復移動させる電動サーボモータであるインダクションモータ15に変更し、これに伴い、制御Boxに、このインダクションモータを制御する機能を有する制御装置を収容させ、この制御Boxを電動サーボモータ用ドライバーボックスとすることは、それを困難とする何か特別な事情がない限り、きわめて容易になし得ることというべきである。
被請求人は、エアモータ駆動制御装置と電動サーボモータ駆動制御装置とは同一視できない別種の装置であるので、前者を後者に代えることは当業者が行う設計変更的技術の範囲内とはいえない旨主張する。しかしながら、この主張に理由がないことは、以上に説示したところから明らかというべきである。
エ 被請求人は、電動サーボモータ駆動制御装置はエアモータ駆動制御装置に比べて複雑な機構であって大きく、総重量が相当大きくなるため、本件出願時の技術水準では、床置き式にせざるを得ないから、成形品取出機の走行レールの下面に取り付けられた引用考案の制御Boxを電動サーボモータ駆動制御装置に置き換えることはできない旨、主張する。
確かに、もし、電動サーボモータ駆動制御装置は、その総重量の大きさのゆえに床置き式にせざるを得ない、とするのが本件出願当時の技術水準であり、技術常識であったとするならば、そのような状況の下で、引用考案におけるエアーモータ駆動装置を電動サーボモータ駆動制御装置に置き換えることを極めて容易になし得たこととすることはできないであろう。しかしながら、被請求人は、当審においては上記のように主張しているものの、出願に当たってはそのようなことは何ら述べていないこと、すなわち、本件考案は、成形品取出装置の近接した位置に電動サーボモータ用ドライバーボックスを取り付けるという取付位置に関する事項のみをその技術事項とするものであって、重量物である電動サーボモータ用ドライバーボックスを取り付けることの困難性の克服を技術課題とするものでも、その技術課題を解決するための取付構造を開示するものでもないことが明らかである。換言すれば、本件の出願は、重量物である電動サーボモータ用ドライバーボックスを成形品取出装置に近接して設置することに格別困難はないことを当然の前提としてなされているのである。
よって、被請求人の主張は採用することができない。

(ii)相違点1について
引用考案と甲第4号証記載の取出機とが利用分野において一致し、これらの構造上の類似性が高いことは(i)で説示したとおりであるから、引用考案における前後ガイドによる上下ユニットの前後方向への往復移動に代えて、甲第4号証記載の取出機の走行体9に設けられた前後フレーム10a・10b上を前後走行体16が往復移動する構成とすることは、きわめて容易になし得たことというべきである。

(iii)相違点3について
NT-600型取出機(引用考案)は、その制御Boxを樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位させており、かつ、固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定することが可能なものである。そして、(i)で説示したとおり、引用考案の制御Boxを電動サーボモータ用ドライバーボックスとすることは、甲第4号証を適用することによってきわめて容易になしうる事項である。この場合、電動サーボモータ用ドライバーボックスは、いずれにせよ成形品取出装置のどこかには取り付けられなければならないのであるから、その具体的な取付位置をどこにするかは、格別の特徴のある位置、あるいは電動サーボモータ用ドライバーボックスが成型品取出チャック部の往復移動に干渉するなど、特段の不都合を生む位置でない限り、当業者において適宜に選択し得る設計事項にすぎないものというべきである。そして、本件において、成形品取出装置に取り付けるべき位置として、樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し、かつ固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置を、格別の特徴のある位置とすることができないことは明らかであり、また、この位置を、引用考案及び甲第4号証に基づいて、電動サーボモータ用ドライバーボックスを成形品取出装置に取り付けるべき位置として不都合とするような事情は、本件全証拠を検討しても何ら見いだすことができない。そうである以上、上記の位置を取付位置とすることは、きわめて容易になし得ることであるというべきである。

(3)まとめ
したがって、本件考案は、甲第1?3号証に示されている自動取出機NT-600に係る考案および甲第4?5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反し、実用新案登録を受けることができない。

V.結 論
以上のとおり、本件考案の登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求人が主張するその余の点について検討するまでもなく、同法第37条第1項の規定により、これを無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-02-24 
結審通知日 2000-03-21 
審決日 2000-03-27 
出願番号 実願平2-56792 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (B29C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多喜 鉄雄野村 康秀  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 石井 淑久
高梨 操
石井 克彦
加藤 志麻子
登録日 1998-07-17 
登録番号 実用新案登録第2149899号(U2149899) 
考案の名称 樹脂成形機  
代理人 玉田 修三  
代理人 伊藤 研一  
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