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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A01K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 無効としない A01K
管理番号 1066095
審判番号 審判1998-35092  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-03-06 
確定日 2001-03-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第2041230号実用新案「魚釣用リール」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 (1)手続の経緯・本件登録実用新案の要旨
本件登録第2041230号実用新案は、昭和62年8月29日に実用新案登録出願され、平成6年3月23日に出願公告され、平成6年11月21日に実用新案の設定登録されたもので、その考案の要旨は、出願公告された明細書と図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「リールボディに支持されたハンドル操作による回転を、リールボディに組み込まれた回転伝達系を介して糸巻付回転体に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル操作により回転される回転体の外周に一方向ベアリングを嵌合し、この一方向ベアリングの外周に爪車を回り止め嵌着すると共に、上記爪車に係止爪を係合状態と離脱状態の夫々に切換え保持したことを特徴とする魚釣用リール。」
(2)請求人の主張
請求人は、本件出願前に頒布された甲第1号証及び甲第2号証を提出し、本件実用新案登録請求の範囲に記載された考案は、甲第1号証に記載された考案であり、又は甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第1項第3号又は第3条第2項に該当し、本件実用新案登録は無効とされるべきものと主張している。
(3)証拠方法
甲各号証には、以下の事項が記載されている
【甲第1号証(実公昭55-38380号公報)】
「本体の前面板より外方に突出し、先端にフライヤーを一体回転状に固着した回転軸にクラッチケースを遊転可能に嵌着し、そのクラッチケース内にフライヤーの逆回転時のみ前記クラッチケースを連係回転させるクラッチを取付けると共に、クラッチケースの外側には歯車を設け、且前面板上には前記歯車と噛合する歯車を回転自在に軸支すると共に、該歯車に強弱調節自在な摩擦手段を設けたことを特徴とするスピニングリールに於けるフライヤーのブレーキ機構。」(実用新案登録請求の範囲)
「この考案はフライヤーのブレーキ機構に関し、その目的とする処はフライヤーの逆回転時に於ける回転に弱から強までの範囲内でブレーキ力を調整することが出来るようにしたもので、それにより釣糸がフケるのを防止したものである。」(第1欄第30行?第34行)
「クラッチ6はワンウエイプレート6-_(1)、座板6-_(2)及びワンウエイローラ6-_(3)より成り、前記ワンウエイプレート6-_(1)は回転軸4のスリ割部4´に嵌合合致して一体回転する軸孔を有すると共に、その外周面は段付きの円弧面を有しており、そうしたワンウエイプレート6-_(1)がクラッチケース5内に嵌着された座板6-_(2)内に嵌着してある。
座板6-_(2)は起立した周壁に間隔をおいてワンウエイローラ6-_(3)が嵌合される凹欠部11が形成され、その凹欠部にワンウエイローラ6-_(3)がワンウエイプレート6-_(1)外周面とクラッチケース5内面との間隙を介して嵌合されている。
従って、回転軸4が正回転した場合、ワンウエイプレート6-_(1)、座板6-_(2)及びワンウエイローラ6-_(3)は一体化されて回転するが、クラッチケース5は回転せず、そのままの状態を維持する。
逆に、回転軸4が逆回転した場合、ワンウエイプレート6-_(1)が回転軸4と一体回転してワンウエイローラ6-_(3)を外側方へ押し出し、クラッチケース5の内周面に押圧接し、そのワンウエイローラ6-_(3)を介してワンウエイプレート6-_(1)とクラッチケース5が一体化され、クラッチケース5も回転軸4の回転方向に連係回転することになる。
歯車7はクラッチケース5の筒部外周面に同一体に刻設形成するか、又は別途に形成した歯車を一体的に嵌着係合して構成し、その歯車7と噛合する歯車8が前面板2上に軸12で回転自在に軸支してあり、且その歯車8には該歯車8の回転に摩擦抵抗を与える摩擦手段9が設けられ、その摩擦手段9の調節によりクラッチケース5の逆回転にブレーキが作用するようになっている。
摩擦手段9は、歯車8の凹部13に収納した複数枚の摩擦板14、歯車8の底面と前面板2との間に挟入した皮ワッシャー15及び、歯車8を軸支すると共に前記摩擦板14を歯車8の底面側に圧接する摺動自在な軸12より成り、前記軸12の摺動は前面板2より後方に突出した軸12の端部との間に取付けた傾斜カム16、16´により行なうようになっている。
又、可動(回動)する傾斜カム16´の周面には操作レバー17を一体的に固着し、その操作レバー17を回動操作することにより軸12が摺動し、歯車8の回転に強弱の回転抵抗を付与するもので、その結果、歯車7の回転が重くなったり、或いは軽くなったりし、ブレーキ力が働くものである。
図中、18は逆止め歯車、19は逆止め爪、20は摺動杆、21は逆止め爪19を逆止め歯車18に対して強制的に係脱するカム、22はクリック歯車10に当接係合するクリック爪である。
又、前記したクラッチ6は図面の形態に限定されるものではなく、要はフライヤーの逆回転時にのみ歯車7を逆回転させる一方向クラッチであればよい。
本考案は以上の如く構成したので、歯車が一体回転状に取付けられたクラッチケースは釣糸を巻き取る正回転時は回転しないで巻き取りを無抵抗の状態で行わしめ、釣糸が繰り出されるフライヤーの逆回転時にはクラッチが作動して回転軸とクラッチケース(歯車)とが一体化され、そのクラッチケースと一体の歯車に噛合する摩擦手段を内蔵した歯車を速動回転させ、フライヤーの逆回転にブレーキ力が作用する。
しかも、そのブレーキ力は歯車に内蔵した摩擦手段を強弱調節することにより歯車相互の回転動が重くなったり、或いは軽くなったりし、釣魚の状況に応じて適宜調節することが出来る。
従って、釣魚中に釣糸がフケるといった不具合を確実に防止し、円滑な釣魚を可能ならしめることが出来る。」(第2欄第30行?第4欄第26行)」
【甲第2号証(実公昭52-26469号公報)】
「本考案魚釣用リールは以上の如く構成されるもので、釣糸をスプール15に巻取る場合には第2図イに示される如く操作用ツマミ17をして操作軸16を回転させ、操作片18をして爪体19が爪車21の各歯部23・・・に係合する位置に切換えるのであり、これによって回転枠8の正回転による釣糸のスプール15への巻取り時この回転枠8が不用意に逆回転しようとしても爪体19が爪車21の各歯部23・・・に係合し、逆回転が阻止されるのである。又前記回転枠8を逆回転させる場合には第2図ハに示される如く操作用ツマミ17をして爪体19を爪車21の各歯部23・・・に対し非係合位置に切換えるのであり、」(第3欄第29行?第41行)
(4)本件登録実用新案の対比・判断
本件実用新案登録請求の範囲に記載された考案(以下、前者という。)と上記甲第1号証記載の考案(以下、後者という。)を比較する。
両者は、魚釣用リールであって、
後者の「本体1」、「フライヤー3」、「回転軸4」は、前者の「リールボディ」、「糸巻付回転体」、「回転体」にそれぞれ相当し、後者において、ハンドル及び回転伝達系は明らかではないが、これらは魚釣用リールの基本構成であるから当然備えていることは明らかであり、また後者において、逆止め歯車18と逆止め爪19の作用は明確ではないが、甲第2号証に記載される魚釣用リールにおけるこれらと同様の機能を有する爪車21と爪体19の作用を参酌すると、「逆止め歯車18に逆止め爪19を係合状態と離脱状態の夫々に切換え保持した」ものと認められ、前者の「上記爪車に係止爪を係合状態と離脱状態の夫々に切換え保持した」に相当している。
したがって、両者は、「リールボディに支持されたハンドル操作による回転を、リールボディに組み込まれた回転伝達系を介して糸巻付回転体に伝達する魚釣用リールにおいて、上記ハンドル操作により回転される回転体の外周に爪車を設けるると共に、上記爪車に係止爪を係合状態と離脱状態の夫々に切換え保持したことを特徴とする魚釣用リール。」である点で一致し、
前者は、回転体の外周に一方向ベアリングを嵌合し、この一方向ベアリングの外周に爪車を回り止め嵌着しているのに対し、後者は回転体の外周に直接爪車を設けている点で相違している。
そこで、上記相違点について検討する。
前者は、上記相違点の構成によって、スプール23に巻かれている釣糸を放出する場合、爪車12には係止爪13が係合され、かつ爪車12とフライや軸間は一方向ベアリング11によって矢印B方向の逆転方向回転をロックしており、しかも一方向ベアリング11はコロをフライや軸4の外周と一方向ベアリング11の外輪間に楔状に係合させることでロックするものであるため、逆転時の空転角が小さくなるように作用するものである。
上記相違点について、請求人は、審判理由補充書で、「甲第1号証第2頁4欄11?16行には、『歯車(本件の「爪車」)が一体回転状に取付けられたクラッチケース(本件の「一方向ベアリングの外周」)は、釣糸を巻き取る正回転時は回転しないで巻き取りを無抵抗の状態で行わしめ、釣糸が繰り出されるフライヤーの逆転時にはクラッチ(本件の「一方向ベアリング」)が作動して回転軸とクラッチケース(本件の「一方向ベアリングの外周」(歯車)とが一体化する』と記載されている。又、甲第1号証においては、「図中、18は逆止め歯車」(4欄3行)であり、第2図における18の位置がクラッチケース5の左外側にあるが、逆止め歯車18がクラッチケース5と一体回転状に取付けられた状態にあるので、甲第1号証においてクラッチケース5及びその外側に取付けられた逆止め歯車はそれらの機能及び作用効果において本件構成要件bのものと差異はなく、同一のものである。」と主張している。
後者において、「回転軸にクラッチケースを遊転可能に嵌着し、そのクラッチケース内にフライヤーの逆回転時のみ前記クラッチケースを連係回転させるクラッチを取付けると共に、クラッチケースの外側には歯車を設け、且前面板上には前記歯車と噛合する歯車を回転自在に軸支すると共に、該歯車に強弱調節自在な摩擦手段を設けた」という記載からみて、クラッチ6は一方向クラッチであって、クラッチケース5、歯車7、8、及び摩擦手段9と共にフライヤーのブレーキ機構を構成するものである。そして、このブレーキ機構は、歯車が一体回転状に取付けられたクラッチケースは釣糸を巻き取る正回転時は回転しないで巻き取りを無抵抗の状態で行わしめ、釣糸が繰り出されるフライヤーの逆回転時にはクラッチが作動して回転軸とクラッチケース(歯車)とが一体化され、そのクラッチケースと一体の歯車に噛合する摩擦手段を内蔵した歯車を速動回転させ、フライヤーの逆回転にブレーキ力が作用するものである。このように、上記クラッチは、ブレーキ機構を釣糸を巻き取る正回転時には作用させず、釣糸が繰り出されるフライヤーの逆回転時に作用させるためのものである。
しかしながら、魚釣用リールにこのような一方向クラッチを設けることが記載されているからといって、後者において、回転軸4の外周に一方向クラッチを嵌合し、この一方向クラッチの外周に逆止め歯車18を回り止め嵌着するようにすることは当業者がきわめて容易に推考し得ることとはいえない。
そして、前者は、上記相違点の構成によって、「逆転止め動作時の空転角を小さくできてフッキング操作を確実に行えると共に、糸フケや釣糸放出時に誤ってベイルが振り落ちることがなく、実用時においてトラブルの発生を防止できる。」、及び「ユニット化した市販の一方向ベアリングをリールの逆転防止として容易に構成できる」という明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件実用新案登録請求の範囲に記載された考案は、甲第1号証に記載された考案ではなく、また甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-07-15 
結審通知日 1999-07-23 
審決日 1999-07-28 
出願番号 実願昭62-131739 
審決分類 U 1 112・ 113- Y (A01K)
U 1 112・ 121- Y (A01K)
最終処分 不成立    
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 佐藤 昭喜
木原 裕
登録日 1994-11-21 
登録番号 実用登録第2041230号(U2041230) 
考案の名称 魚釣用リール  
代理人 中村 誠  
代理人 水野 浩司  
代理人 坪井 淳  
代理人 斎藤 栄一  
代理人 布施田 勝正  
代理人 伊藤 晴之  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 瀬谷 徹  

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