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審決分類 審判 全部申し立て   G11B
管理番号 1066099
異議申立番号 異議1997-71896  
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2002-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-04-23 
確定日 2002-09-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第2514540号「バッテリによる給電回路」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2514540号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 1.手続の経緯
本件考案は、平成4年1月30日の出願で、原審において平成8年8月2日付で設定登録したものの、小塚浩から実用新案登録異議申立てがなされたので、当審が取消理由通知をしたところ、平成9年10月31日付で意見書並びに訂正請求がなされた。この訂正請求に対し、当審は訂正拒絶理由を通知したが、権利者からは意見書が提出された。当審は、この意見書を検討しても訂正請求は認められないとして、本件考案を設定登録時請求項に記載された考案で認定をして、先の取消理由通知の理由により平成10年7月24日付で設定登録を取り消す旨の異議決定をしたが、東京高等裁判所において異議決定取消の判決[平成年10(行ケ)第298号、 平成14年2月19日判決言渡]があったので、当審において更に審理の上、改めて訂正拒絶理由を通知したところ、権利者からは指定期間内に意見書及び手続補正書の提出がなかったので、これまでの手続経緯を総合して以下に決定する。

2.訂正請求の概要
(1)考案の名称「バッテリによる給電回路」を不明瞭な記載の釈明を目的として「ディスク記録及び/又は再生装置のバッテリによる給電回路」と訂正する。

(2)設定登録時実用新案登録請求の範囲
「【請求項1】記録及び/又は再生装置が作動状態のときに動作する第1の回路と、該記録及び/又は再生装置が待機状態ときと上記作動状態のいずれの場合も動作する第2の回路とに夫々電源電圧を供給するバッテリと、
該バッテリからの電源電圧を供給又は遮断する電源スイッチと、
該電源スイッチのオンにより該バッテリからの電源電圧が前記第2の回路と共に印加されるスイッチ回路と、
前記記録及び/又は再生装置が作動指令を受けたときのみ該スイッチ回路を通して該バッテリからの電源電圧を前記第1の回路に印加するように該スッチ回路をスイッチング制御する制御回路とよりなることを特徴とするバッテリによる給電回路。」(以下、設定登録考案という)
を減縮を目的として、
「【請求項1】少なくともディスクのモー夕駆動回路及びモータ駆動回路を制御するサーボ回路を有し、かつ、ディスク記録及び/又は再生装置が作動状態のときに動作する第1の回路と、該ディスク記録及び/又は再生装置が待機状態のときと上記作動状態のいずれの場合も動作する第2の回路とに夫々電源電圧を供給するバッテリと、
該バッテリからの電源電圧を供給又は遮断する電源スイッチと、
該電源スイッチのオンにより該バッテリからの電源電圧が前記第2の回路と共に印加されるスイッチ回路と、
前記ディスク記録及び/又は再生装置が作動指令を受けたときのみ該スイッチ回路を通して該バッテリからの電源電圧を前記第1の回路に印加するように該スイッチ回路をスイッチング制御する制御回路と、
該制御回路に対する該作動指令を入力するキー入力回路とを有し、
前記第1の回路及び前記第2の回路によりディスク記録及び/又は再生が行われ、かつ、前記制御回路の制御によりディスク記録及び/又は再生が制御されることを特徴とするディスク記録及び/又は再生装置のバッテリによる給電回路。」(以下、訂正請求考案という)
と訂正する。

(3)上記実用新案登録請求の範囲の訂正に伴い考案の名称を明瞭でない記載の釈明を目的として「ディスク記録及び/又は再生装置」と訂正し、考案の詳細な説明を明瞭でない記載の釈明を目的として訂正(訂正の内容は省略)する。

3.訂正の適否
(1)特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第126条第1項ただし書き各号に規定される訂正の目的の検討。
訂正請求事項の内、本件登録請求の範囲の「記録及び/又は再生装置」を「ディスク記録及び/又は再生装置」と訂正することについては、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであることが、上記確定判決で下記の通り判示された。
この判示事項の点は、審判合議体を拘束する。


判示事項要旨
(イ)主文
「特許庁が平成9年異議第71896号事件について平成10年7月24日にした取消決定を取り消す。」
(ロ)「第5 当裁判所の判断」の概要
2取消事由1(訂正の適否についての判断の誤り)について
(1)本件訂正の中で,決定が採り上げて検討の対象としたのは,本件考案の実用新案登録請求の範囲の「記録及び/又は再生装置」との記載を,実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として,「ディスク記録及び/又は再生装置」とするものである。


又、訂正事項の内、上記確定判決が判示しなかった上記実用新案登録請求の範囲の他の訂正請求事項である「少なくともディスクのモー夕駆動回路及びモータ駆動回路を制御するサーボ回路を有し、かつ、」と構成を付加する訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同様に上記請求の範囲の減縮に伴い考案の名称を訂正すること及び考案の詳細な説明の項を訂正することは、同じく上記確定判決の判示事項で示されなかったものの、請求人が申し立てたとおり、同法第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に相当するものと認められる。

(2)特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第2項に規定される訂正による登録請求の範囲の拡張・変更・新規事項の有無の存否の検討
この点については、上記確定判決で訂正による登録請求の範囲の拡張・変更・新規事項はないと以下の通り判示された。
以下の判示事項は、審判合議体の判断を拘束する。


判示事項要旨
(イ)主文
「特許庁が平成9年異議第71896号事件について平成10年7月24日にした取消決定を取り消す。」
(ロ)「第5 当裁判所の判断」の概要
「2取消事由1(訂正の適否についての判断の誤り)について
(1)本件訂正の中で,決定が採り上げて検討の対象としたのは,本件考案の実用新案登録請求の範囲の「記録及び/又は再生装置」との記載を,実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として,「ディスク記録及び/又は再生装置」とするものである。
本件登録実用新案は,平成4年1月30日に出願され,平成6年法律第116号の附則9条1項により出願公告を経ることなく登録されたものである。本件登録実用新案については,同附則9条2項により,平成6年法律第116号による改正後の特許法第5章の規定(いわゆる付与後異議申立ての規定)が適用されるから,同改正後の特許法120条の4第3項によって準用される同法126条2項により,本件登録実用新案の明細書又は図面の訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
同項は,願書に添付した明細書にも図面にも記載されていない事項を,訂正によって,追加することを禁止するものである(いわゆる新規事項の追加の禁止)。ある訂正が許されるか否かは,訂正請求に係る事項が願書に添付した明細書又は図面に記載されているとみることができるか否かに懸かることになる。そして,訂正請求に係る事項が願書に添付した明細書又は図面に記載されているとみることができるか否かは,訂正請求に係る事項と願書に添付した明細書又は図面に記載された事項との技術的事項としての対比によって決められるべき事柄であることは,明らかであるから,この判断に当たっては,単に,訂正請求に係る事項を示す語句と明細書の語句とを比較するだけではなく,訂正請求に係る事項,並びに,願書に添付した明細書又は図面に記載された技術的事項についても検討を加えた上で,訂正によって,願書に添付した明細書又は図面に記載されているとはみることができない技術的事項が付加されることになるか否かを,検討すべきである。
決定は,本件訂正につき,「「記録及び/又は再生装置」には,「ディスク記録及び/又は再生装置」に限らず,テープ記録及び/又は再生装置等も含まれる。また,登録査定時の明細書には「記録及び/又は再生装置」の一例として,「CD-ROM再生装置」が記載されているが,「CD-ROM再生装置」は記録機能を有しないから,「ディスク記録及び/又は再生装置」は「CD-ROM再生装置」の上位概念ではない。さらに,「CD-ROM再生装置」の上位概念としてはディスク再生装置に限らず,光ディスク再生装置等の上位概念が存在し,登録査定時の明細書の「記録及び/又は再生装置」及び「CD-ROM再生装置」のいずれの記載からも,訂正後の「ディスク記録及び/又は再生装置」を直接的かつ一義的に導き出すことはできない。」(決定書2頁15行?3頁10行)との理由により,本件訂正は認められない,とした。
しかしながら,まず,本件登録実用新案の願書に添付した明細書の「記録及び/又は再生装置」には,「ディスク記録及び/又は再生装置」が,「テープ記録及び/又は再生装置」等とともに,概念上含まれることは明らかである。加えて,前記認定によれば,本件考案は,「記録及び/又は再生装置」が作動指令を受けたときのみに,スイッチ回路を通してバッテリからの電源電圧を第1の回路に印加するようにスイッチ回路をスイッチング制御する制御回路を設けることにより,再生等を行う前の待機時において,バッテリの電力消費を低減し,バッテリの寿命を長くすることを目的とする考案であり,その技術的事項の内容は,「記録及び/又は再生装置」が「ディスク記録及び/又は再生装置」であっても,「テープ記録及び/又は再生装置」であっても,それら相互の相違に無関係に,また,どのような「ディスク記録及び/又は再生装置」であっても,どのような「ディスク記録及び/又は再生装置」等であっても,適用が可能な汎用性のあるものであることが極めて明らかである。このような本件考案の技術的事項の内容に照らすと,上記訂正によって,実用新案登録請求の範囲を「記録及び/又は再生装置」から「ディスク記録及び/又は再生装置」と減縮する変更をしても,願書に添付した明細書にも図面にも記載されていない技術的事項を変更することになるものではないことは明白というべきであるから,同訂正は,新規な事項を付け加えることにはならないと解するのが相当である。同訂正についての決定の判断は,訂正請求に係る事項につき,単にそれを示す語句と明細書の語句とを比較しただけで,それと願書に添付した明細書又は図面に記載された技術的事項との関係の検討をしないままになされたものというべきであり,決定が,同訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であるとはいえないとして,それを根拠に本件訂正請求を斥けたのは,誤りであって,本件訂正については,改めて,その要件の有無を判断する必要がある。
(2)以上によれば,決定には,根拠にできないものを根拠として本件訂正を斥けた誤りがあり,その誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは明らかというべきである(以上に述べた本件考案の技術的事項の内容に照らすと,本件考案についての決定の判断は,訂正考案にそのまま当てはまる見込みが極めて大きいので,決定を取り消したとしても,特許庁が,訂正考案についての判断において,本件考案についての判断に用いられたのと同一の公知事実に基づいて,同一の判断をするに至るであろうことが当然に予想され,このような場合に,本件考案についての決定の認定判断に触れないままに,決定をいったん取り消さなければならないとするのは,不合理であるようにもみえる。
しかしながら,裁判所が,訂正に関し,上記訂正事項がいわゆる新規事項の追加の禁止に反するか以外の点についての特許庁の判断を待つことなく,本件考案についての決定の認定判断を訂正考案についてのものであると仮定して,判断することはできないというべきである。)。
3 以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,決定は,違法なものとして,取り消されるべきであることが明らかである。」


(3)特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項規定の独立特許要件項の検討

a)刊行物に記載される考案の認定
刊行物:特開昭59-146324号公報
イ)第2頁左下欄8?11行「本発明はメインスイッチによるシステム全体への通電とシステムの一部への通電とを確実に、しかも安定に判別できる省電力マイクロコンピュータ装置を提供することを目的とする。」
ロ)第3頁左上欄18行?右下欄9行「第1図において、(1)は電池等の電源、(2)は電源(1)とシステムの電源回路(2)との間に設けられたシステム全体への通電をオンーオフする手動のメインスイッチである。前記システムの電源回路(3)はシステム全体への給電を行う定電圧電源回路で構成されており、大出力電流モードと小出力電流モードとの2つのモードを有し、このモードはスイッチ回路(4)の制御信号によりCPU(5)等への通電と同時に大電流出力モードへ切換えられる。これはCPU(5)がオフしている時の定電圧回路(3)での消費電力を最小にするためである。また、前記スイッチ回路(4)は電源回路(3)の出力ライン(18)に一端が接続されており、他端はCPU(5)だけでなくリードオンリメモリ〔以下、ROMと称す〕(6)の電源端子にも接続されており、CPU(5)とROM(6)への通電をオンーオフする。ここで、CPU(5)はN-MOS型のもので、データバス(15)、アドレスバス(16)およびコントロールバス(17)により、メモリや周辺機器とデータの授受を行ってシステム全体を制御する。前記ROM(6)もN-MOS型で、CPU(5)を制御するプログラムが内蔵されており、各バスラインを介してCPU制御される。(7)はシステムランダムアクセスメモリ〔以下、RAMと称す〕でスタテック型C-MOSランダムアクセスメモリで構成されており、前記電源ライン(18)より常時通電されると共に、CPU(5)の制御下に各バスラインを介してデータの読み/書きが行われる。(8)はキーボード-で、アドレスバス(16)を介してCPU(5)へ伝送されて、CPU(5)でキー操作が検出されるる。(9)はキーボード(8)の何れかのキーが操作されたことを検知するキー入力検知回路で、この検知出力(a)はOR回路(10)を介してメモリ(11)のセット端子に入力されてこのメモリ(11)をセットする。・・・中略・・・メモリ(11)の出力(b)がスイッチ回路(4)の前述の制御信号となると共に、CPU(5)のリセット信号を発生する単安定マルチバイブレータ(13)とNORゲート」(14)の一方の入力に接続されている。
マルチバイブレータ(13)の出力(c)はNORゲート(14)の出力(d)はCPU(6)のリセット端子に接続されている。
尚、ORゲート(10)の入力にはキー入力検知回路の他に周辺機器からの割り込み信号(19)が供給されている。」
第1図・第2図に上記構成に対応する回路図が示されている。
そうしてみると、刊行物には、

マイクロコンピュータ装置が作動状態の時に動作する中央演算処理装置(5)・リードオンリメモリ(6)と、マイクロコンピュータ装置が待機状態の時と作動状態の何れの場合も動作するランダムアクセスメモリ(7)とに夫々電源電圧を供給する電池(1)と、
電池1からの電源電圧を供給遮断するメインスイッチ(2)と、
メインスイッチ(2)のオンにより電池(1)からの電源電圧が補助メモリ(11)やランダムアクセスメモリ(7)と共に印加されるスイッチ回路(4)と、
マイクロコンピュータ装置が作動指令を受けたときのみスイッチ回路(4)を通して電池(1)からの電源電圧を前記中央演算処理装置(5)及びリードオンリメモリ(6)に印加するように該スイッチ回路(4)をスイッチング制御する補助メモリ11等からなる制御回路と、
該制御回路に対する該作動指令を入力するキ-ボード(8)とを有し、
前記中央演算処理装置(5)・リードオンリメモリ(6)及びランダムアクセスメモリ(7)により、マイクロコンピュータ装置の動作が制御されるマイクロコンピュータ装置の電池による給電回路。

の考案(以下、刊行物記載考案という)が記載されているものと認められる。

b)対比・判断
刊行物記載考案と訂正請求考案とを対比すると、共に、使用しない回路に電池からの給電を行わないようにして省電力を図ろうとすることの目的では一致しており、具体構成(注:〈〉書きは刊行物記載考案、()書きは本件訂正請求考案の構成として区分)も、
刊行物考案の〈中央処理装置装置〉と〈リードオンリメモリ〉は電子回路の一種であるから本件訂正請求考案の(第1の回路)に相当する。同様に〈補助メモリ〉と〈ランダムアクセスメモリ〉は(第2の回路),〈電池〉は(バッテリ),〈メインスイッチ〉は(電源スイッチ),〈スイッチ回路〉は(電源スイッチ),〈制御回路〉は(制御回路),〈キ-ボード〉は(キー入力回路),〈電池による給電回路〉は(バッテリによる給電回路)にそれぞれ対応するものと認められる。
そうしてみると、
刊行物記載考案と本件訂正請求考案とは、

少なくとも電子回路を有し、かつ、電子装置が作動状態のときに動作する第1の回路と、電子装置が待機状態のときと上記作動状態のいずれの場合も動作する第2の回路とに夫々電源電圧を供給するバッテリと、
該バッテリからの電源電圧を供給又は遮断する電源スイッチと、
該電源スイッチのオンにより該バッテリからの電源電圧が前記第2の回路と共に印加されるスイッチ回路と、
前記電子装置が作動指令を受けたときのみ該スイッチ回路を通して該バッテリからの電源電圧を前記第1の回路に印加するように該スイッチ回路をスイッチング制御する制御回路と、
該制御回路に対する該作動指令を入力するキー入力回路とを有し、
前記第1の回路及び前記第2の回路により記録及び/又は再生が行われ、かつ、前記制御回路の制御により電子装置のバッテリによる給電回路

では構成が一致しているものの、
バッテリによる給電回路が給電をする電子装置の具体構成が、刊行物記載考案では「省電力マイクロコンピュータ装置の電池による給電回路」であるのに対して、本件訂正請求考案が「ディスクの記録及び/又は再生装置のバッテリによる給電回路」であることから、
バッテリによる給電回路の対象である電子装置が、刊行物記載考案では「マイクロコンピュータ装置」で、電子回路が「中央演算処理装置」と「リードオンリメモリ」の構成であるのに対して、本件訂正請求考案では考案の対象が「ディスク記録及び/又は再生装置」で、そのため電子回路が「ディスクのモータ駆動回路」及び「モータ駆動回路を制御するサーボ回路」である点で相違(以下、相違点という)するものと認められる。

そこで、この相違点について以下に検討をする。

本件訂正請求考案も刊行物記載考案も、バッテリから電力を給電される電子装置の一種であることには相違がなく、課題もバッテリの消耗を防止して、長時間作動できるようにするものであって、具体的な構成も、特定の回路については、給電路中にスイッチ回路を設けて、使用しないときにはバッテリからの給電を遮断してバッテリの寿命を伸ばすことでも同じである。
この技術課題は、容量に限りのあるバッテリを使用する電子装置全体に対するものであることは、本件考案の出願時点において電子機器工業界において自明のことに他ならないだけでなく、本件訂正請求考案の属する記録再生装置の技術分野においても実願昭60-141706号の願書及び図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭62-51530号参照)はじめ特開昭60-98584号公報・特開昭61-224189号公報・実願昭57-28409号の願書に添付された明細書及び図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭58一131411号参照)(以下、周知文献という)に見られるように普通に認識されている課題にすぎない。
そうしてみれば、同訂正によって電子回路を含めて装置構成が「ディスク記録及び/又は再生装置」に限定される考案に減縮しても、このような本件考案の技術課題の内容に照らすと、「ディスク記録及び/又は再生装置」それ自体は、本願出願前に周知慣用の装置であることと、この技術課題が上述したように訂正請求考案の属する記録再生装置の技術分野においても認識されているので、刊行物記載考案を「ディスク記録及び/又は再生装置」に適用することに格別の技術的意義を認められず、且つ、「ディスクのモー夕駆動回路」や「モータ駆動回路を制御するサーボ回路」も「ディスク記録及び/又は再生装置」が当然に有する構成にすぎないので、第1回路の給電回路中にスイッチ回路を挿入して第1回路の駆動が必要な時にのみ選択的に給電をするようにすることで、バッテリからの給電を行う際の省電力化を図り、もってバッテリの寿命を伸ばすようにすることは、当業者が極めて容易になし得たところにすぎないから、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記刊行物記載の考案に基いて当業者が極めて容易に考案をすることができたものである。
この当審の上記判断は、上記確定判決が、その判示事項中で、「加えて、本件考案は、「記録及び/又は再生装置」が作動指令を受けたときのみに、スイッチ回路を通してバッテリからの電源電圧を第1の回路に印加するようにスイッチ回路をスイッチング制御する制御回路を設けることにより、再生等を行う前の待機時において、バッテリの電力消費を低減し、バッテリの寿命を長くすることを目的とする考案であり、その技術的事項の内容は、「ディスク記録及び/又は再生装置」であっても、「省電力マイクロコンピュータ装置」であっても、それら相互の相違に無関係に、また、どのような「電子装置」であっても、バッテリ給電型の電子装置に適用が可能な汎用性のあるものであることが極めて明らかである」と説示し、確定判決は、さらに続けて「特許庁が,訂正考案についての判断において,本件考案についての判断に用いられたのと同一の公知事実に基づいて,同一の判断をするに至るであろうことが当然に予想され」ると説示するところでもある。

c)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記刊行物記載の考案に基いて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものと認められるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書各号及び特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定には適合(確定判決による拘束)するものの、同じく特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第3項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。

4.異議申し立てについて
異議申立人小塚浩が申し立てた異議理由について以下に検討する。
(1)本件設定登録考案の認定
上記2.(2)設定登録時実用新案登録請求の範囲の記載を援用。

(2)当審の平成9年7月31日付取消理由(実用新案法第3条第2項)で引用した特開昭59-146324号公報に記載される考案の認定
上記3.(3)a)刊行物記載考案の認定を援用。

(3)対比・判断
本件設定登録考案と上記刊行物記載考案とを対比する。
刊行物記載考案と本件設定登録考案とを対比すると、共に、使用しない回路に電池からの給電を行わないようにして省電力を図ろうとすることの目的では一致しており、具体構成(注:〈〉書きは刊行物記載考案、()書きは本件設定登録考案の構成として区分)も、
刊行物記載考案の〈中央処理装置装置〉と〈リードオンリメモリ〉は電子回路の一種であるから本件設定登録考案の(第1の回路)に相当する。同様に〈補助メモリ〉と〈ランダムアクセスメモリ〉は(第2の回路),〈電池〉は(バッテリ),〈メインスイッチ〉は(電源スイッチ),〈スイッチ回路〉は(電源スイッチ),〈制御回路〉は(制御回路),〈電池による給電回路〉は(バッテリによる給電回路)にそれぞれ対応するものと認められる。
そうしてみると、刊行物記載考案と本件設定登録考案とは、

電子装置が作動状態のときに動作する第1の回路と、該電子装置が待機状態ときと上記作動状態のいずれの場合も動作する第2の回路とに夫々電源電圧を供給するバッテリと、
該バッテリからの電源電圧を供給又は遮断する電源スイッチと、
該電源スイッチのオンにより該バッテリからの電源電圧が前記第2の回路と共に印加されるスイッチ回路と、
前記記録及び/又は再生装置が作動指令を受けたときのみ該スイッチ回路を通して該バッテリからの電源電圧を前記第1の回路に印加するように該スッチ回路をスイッチング制御する制御回路とよりなることを特徴とするバッテリによる給電回路。

では構成が一致しているものの、
電子装置が、刊行物記載考案では「省電力マイクロコンピュータ装置」であるのに対して、本件設定登録考案が「記録及び/又は再生装置」である点で相違(以下、相違点という)するものと認められる。
そこで、この相違点について以下に検討をする。

本件設定登録考案も刊行物記載考案も、バッテリから電力を給電される電子装置の一種であることには相違がなく、課題もバッテリの消耗を防止して、長時間作動できるようにするものであって、具体的な構成も、特定の回路について、給電路中にスイッチ回路を設けて、使用しないときにはバッテリからの給電を遮断してバッテリの寿命を伸ばすことでも同じである。
この課題は、容量に限りのあるバッテリを使用する電子装置全体に対するものであることは本件考案の出願時点において電子機器工業界において自明のことに他ならないばかりでなく、この技術課題は、本件設定登録考案の属する記録再生装置の技術分野においても実願昭60-141706号の願書及び図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭62-51530号参照)はじめ特開昭60-98584号公報・特開昭61-224189号公報・実願昭57-28409号の願書に添付された明細書及び図面を撮影したマイクロフィルム(実開昭58一131411号参照)(以下、周知文献という)に見られるように普通に認識されている課題にすぎない。
そうしてみれば、刊行物記載考案を「記録及び/又は再生装置」に適用すし、第1回路の給電回路中にスイッチ回路を挿入して第1回路の駆動が必要な時にのみ選択的に給電をするようにすることで、バッテリからの給電を行う際の省電力化を図り、もってバッテリの寿命を伸ばすようにすることは、当業者が極めて容易になし得たところにすぎない。

5.むすび
以上のとおりであるから、設定登録時の請求項1に係る考案は、上記刊行物記載の考案に基いて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録をされたものと認められる。
従って、本件設定登録時の請求項1に係る考案は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条2項の規定により結論の通り決定する。
異議決定日 1998-07-24 
出願番号 実願平4-3056 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (G11B)
最終処分 取消    
前審関与審査官 相馬 多美子  
特許庁審判長 内藤 二郎
特許庁審判官 犬飼 宏
川上 美秀
田良島 潔
麻野 耕一
登録日 1996-08-02 
登録番号 実用新案登録第2514540号(U2514540) 
権利者 ミツミ電機株式会社
東京都調布市国領町8丁目8番地2
考案の名称 バッテリによる給電回路  
代理人 伊東 忠彦  

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