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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A01G
管理番号 1069054
判定請求番号 判定2001-60101  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2003-01-31 
種別 判定 
判定請求日 2001-09-10 
確定日 2002-11-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第2148883号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 イ号図面及びその説明書に示す「花卉の葉落し機および選別装置」は、登録第2148883号実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面並びにその説明書に記載する花卉の選別装置(以下、「イ号物件」と言う)が、登録実用新案第2148883号の請求項1ないし3に係る考案の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件登録実用新案
本件登録実用新案の請求項1ないし3に係る考案(以下、それぞれを「本件考案1」「本件考案2」「本件考案3」という)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであり、その請求項1ないし3に係る考案を構成要件に分説すると、次のとおりである。
【請求項1】
(A)花卉Pを水平な姿勢で横たわらせて搬送路1を搬送しながら、この搬送路1に配設された計量部3により重量別あるいは長さ別に選別する花卉の選別機Bへ向って、花卉Pを水平な姿勢で横たわらせて搬送するコンベヤ7と、
(B)このコンベヤ7に搬送される花卉Pの茎Paの基端部をはさむように配設されてこの基端部に弾性的に摺接し、駆動部16に駆動されてこの基端部の葉Pbを摺り落す摺接部材15bを備えた葉落し手段15と、
(C)この葉落し手段15による葉落し時に花卉Pの姿勢が崩れるのを防止するために、前記コンベヤ7に設けられて花卉Pの搬送方向Nにおける後側から花卉Pを位置決めする花卉Pの位置決め部12と
(D)を備えたことを特徴とする花卉の葉落し機。
【請求項2】
(E)前記葉落し手段15による葉落し時に花卉Pがふらつくのを防止するために、前記コンベヤ7に沿うようにこのコンベヤ7の上方に配設されて、このコンベヤ7で水平な姿勢で搬送される花卉Pを上方からこのコンベヤ7に弾性的に押えつける押えつけ部材22
(F)を備えたことを特徴とする請求項1記載の花卉の葉落し機。
【請求項3】
(A-1)花卉Pを水平な姿勢で横たわらせて支持する支持部材2と、
(A-2)この支持部材2の搬送路1と、
(A-3)この搬送路1に設けられてこの支持部材2に支持された花卉Pを計量して選別する花卉の計量部3とを備えた花卉の選別機Bと、
(A-4)この花卉の選別機Bに花卉Pを供給する花卉の葉落し機Aとから成る花卉の選別装置であって、
(A-5)前記花卉の葉落し機Aが、前記花卉の選別機Bへ向って、花卉Pを水平な姿勢で横たわらせて搬送するコンベヤ7と、
(B)このコンベヤ7に搬送される花卉Pの茎Paの基端部をはさむように配設されてこの基端部に弾性的に摺接し、駆動部16に駆動されてこの基端部の葉Pbを摺り落す摺接部材15bを備えた葉落し手段15と、
(C)この葉落し手段15による葉落し時に花卉Pの姿勢が崩れるのを防止するために、前記コンベヤ7に設けられて花卉Pの搬送方向Nにおける後側から花卉Pを位置決めする花卉Pの位置決め部12と
(L)を備えたことを特徴とする花卉の選別装置。

3.イ号物件
3-1.イ号物件についての当事者の主張等
(1)葉落し手段について
(i)請求人は、イ号装置の葉落し部材(摺接部材)15bは、直径3ミリ又は4ミリの弾性を有する細長いウレタンゴム製であるが、甲第1号証(葉落し前の写真a,b)及び甲第2号証(葉落し後の写真a,b)の写真から明らかなように、イ号装置で葉落しすれば、茎に摺り傷がつくので、イ号装置の葉落し部材15bも摺接部材である旨主張する(判定請求書5頁19?27行参照)。
(ii)被請求人は、イ号装置の葉落し部材は、直径3または4ミリ(被請求人の実施品では、2.5ミリ以下)のウレタンゴムヒモであつて屈曲自在であり、回転軸に、その軸方向に、花卉の茎直径の5,6倍以上の間隔を保って配置されており、ゴムヒモの長さは花弁の搬送面と回転軸との間の間隔よりも十分に長くされており、回転軸は毎分1300?1600で回転されるものであり、回転するゴムヒモで葉を衝撃的に叩き落とすものである旨主張する。(判定答弁書13頁15行?15頁2行、判定答弁書(第2回)4頁13?15行参照)
(2)押さえつけ部材について
(i)請求人は、「図2において、イ号装置の押えつけ部材22は、弾性(ばね性)を有する細長い片持ち型の鋼材から成っている。すなわち、押えつけ部材22は、わん曲部22aと、わん曲部22aの下端部からコンベヤ7と平行に図2において左方へまっすぐに伸びる伸長部22bから成っている。わん曲部22aの上端部はフレーム100に片持ちされており、また伸長部22bの先端部(図2において左端部)は自由端部となっている。したがって押えつけ部材22は上下方向(矢印K)の弾性を有しており、花卉Pを上方から弾性的に押え付ける作用を有している。」と主張する(イ号図面並びに説明書2頁6?14行)。
(ii)被請求人は、押え付け部材を構成する鋼丸棒は、イ号図2にも明記されるように、その下面とコンベヤ上面との間には花卉の茎直径の数倍の間隙が保持されて配置されており、鋼棒は、花卉の茎の周りに延び出ている多数の葉を、下方のコンベヤに向かって軽く押さえるだけであり、花卉の茎を直接コンベヤに対して「弾性的に」押さえ付けるものではない旨主張する(判定答弁書16頁17行?17頁9行参照)。
3-2.イ号物件の認定
(1)葉落し手段について
上記当事者の主張、イ号図面並びに説明書の記載及び判定弁ばく書に添付された資料4(下取品の葉落し機の回転軸の写真)、資料5(資料4の写真を実物大に拡大した拡大コピー)、資料6(回転軸の実物大の部分断面図)、検甲第1号証(直径2.5ミリのウレタンゴム)、検甲第2号証(直径3ミリのウレタンゴム)、検甲第3号証(直径4ミリのウレタンゴム)からみて、イ号物件の「葉落し手段」は、コンベヤ7で搬送される花卉の茎の基端部をはさむように回転軸17を配設し、この回転軸17に花卉の茎直径の5,6倍以上の間隔を保って可撓性を有するウレタンゴムヒモを取付け、回転軸17をモータ16で毎分1300?1600回で回転駆動してウレタンゴムヒモによって花卉Pの基端部の葉Pbを落とすものであると認められる。
(2)押えつけ部材について
イ号図面並びに説明書に添付した図2には、鋼棒の伸長部22bとコンベヤ7とは、花卉Pの茎Paの直径より大きい間隔が設けられているが示されており、上記当事者の主張、イ号図面並びに説明書の記載によると、イ号物件の鋼棒は、その一端がフレーム100に固定され、他端部は自由端部となっていて、コンベヤ7に沿うようにこのコンベヤ7の上方に配設され、鋼棒の下面とコンベヤ上面との間には花卉Pの茎直径の数倍の間隔が保持されている構成であると認められる。
以上のことから、イ号物件は次のとおりのものであると認められる。
(a-1)花卉Pを水平な姿勢で横たわらせて支持する支持部材2と、
(a-2)この支持部材2の搬送路1と、
(a-3)この搬送路1に設けられてこの支持部材2に支持された花卉Pを計量して選別する花卉の計量部3とを備えた花卉の選別機Bと、
(a-4)この花卉の選別機Bに花卉Pを供給する花卉の葉落し機Aとから成る花卉の選別装置であって、
(a-5)前記花卉の葉落し機Aが、前記花卉の選別機Bへ向って、花卉Pを水平な姿勢で横たわらせて搬送するコンベヤ7と、
(b)このコンベヤ7で搬送される花卉の茎の基端部をはさむように回転軸17を配設し、
この回転軸17に花卉の茎直径の5,6倍以上の間隔を保って可撓性を有するウレタンゴムヒモを取付け、回転軸17をモータ16で毎分1300?1600回で回転駆動してウレタンゴムヒモによって花卉Pの基端部の葉Pbを落とす葉落し手段15と、
(c)前記コンベヤ7に設けられて花卉Pの搬送方向Nにおける後側から花卉Pを位置決めする花卉Pの位置決め部12と、
(e)一端がフレーム100に固定され、他端部は自由端部となっていて、前記コンベヤ7に沿うようにこのコンベヤ7の上方に配設され、鋼棒の下面とコンベヤ上面との間には花卉Pの茎直径の数倍の間隔が保持されている鋼棒と、
(d)を備えた花卉の選別装置。
4.イ号物件が本件登録実用新案の技術的範囲に属するか否かについて
4-1.本件考案1とイ号物件との対比
イ号物件の構成が本件考案1の各構成要件を充足するか否かについて検討する。
(1)構成要件(A)について
イ号物件の構成(a-1)及び(a-2)は、「花卉Pを水平な姿勢で横たわらせて搬送路1を搬送しながら、」の構成を充足し、イ号物件の構成(a-3)及び(a-5)は、「この搬送路1に配設された計量部3により重量別あるいは長さ別に選別する花卉の選別機Bへ向って、花卉Pを水平な姿勢で横たわらせて搬送するコンベヤ7と、」の構成要件を充足しているから、イ号物件の構成(a-1)ないし(a-3)並びに(a-5)は、本件考案1の構成要件(A)を充足している(なお、この点に関し当事者間に争いはない。)。
(2)構成要件(C)について
イ号物件の「コンベヤ7に設けられて花卉Pの搬送方向Nにおける後側から花卉Pを位置決めする花卉Pの位置決め部12」が葉落し手段15による葉落し時に花卉Pの姿勢が崩れるのを防止する作用を奏することは明らかであるから、イ号物件の構成(c)は、前者の構成要件(C)を充足している(なお、この点に関し当事者間に争いはない。)。
(3)構成要件(D)について
イ号物件の(d)の構成は本件考案1の(D)の構成と相違していないから、イ号物件の(d)の構成は本件考案1の構成要件(D)を充足している(なお、この点に関し当事者間に争いはない)。
(4)構成要件(B)について
本件特許の特許明細書及び図面には、葉落し部8について次のように記載されている。
「図2および図3に示すように、葉落し部8は、コンベヤ7の側方へ突出する茎Paの基端部を上下からはさむように配設された上下一対の葉落し部材15,15を有している。この葉落し部材15,15はモータから成る駆動部16に駆動されて回転する回転軸17に、ベース材15aを装着し、このベース材15aに鋼線などの屈曲自在な摺接部材15bを突設してブラシ材として形成されており、これらの間を通過する茎Paの基端部に摺接し、その葉を摺り落す。
【0013】図3に示されるように、上方の葉落し部材15と下方の葉落し部材15の摺接部材15b,15bは同時に基端部に摺接して葉落しし、また同時に反対側(同図鎖線参照)に退去する。」(本件公告公報4欄44行?5欄6行)と記載されている。
上記記載によると、本件考案1の葉落し手段15は、モータから成る駆動部16に駆動されて回転する回転軸17に、ベース材15aを装着し、このベース材15aに鋼線などの摺接部材15bを突設してブラシ材として形成されており、摺接部材15bであるブラシ材の鋼線が、コンベヤ7によって搬送される花卉Pの茎Paの基端部を上下から挟むように同時に弾性的に摺接して葉を摺り落すものである。
これに対し、イ号物件の葉落し手段15は、可撓性を有するウレタンゴムヒモが毎分1300?1600回で回転してコンベアによって搬送される花卉Pの基端部の葉Pbを落とすものであるから、可撓性を有するウレタンゴムヒモは、高速で回転するウレタンゴムヒモの衝撃力で葉Pbをたたき落とすものであるといえる。
そうすると、イ号物件の葉落し手段15は、葉Pbを衝撃力でたたき落とすものであり、花卉Pの基端部に弾性的に摺接して葉Pbを摺り落すものではないから、葉Pbを摺り落す摺接部材を備えるものではない。
請求人は、「(6)イ号装置の葉落し部材(摺接部材)15bは、直径3ミリ又は4ミリの弾性を有する細長いウレタンゴム製であるが、被請求人は、本件考案とイ号装置は葉落し部材(摺接部材)が相違すると主張するものと予想されるので、この点について、次の(a),(b)を述べておく。
(a)甲第1,2号証の写真から明らかなように、イ号装置で葉落しすれば、茎に摺り傷がつくので、イ号装置の葉落し部材(弾性を有する細長いウレタンゴム)も、本件考案の摺接部材であることに相違ない。」(判定請求書5頁19?27行)と主張する。
しかしながら、イ号物件のものは、茎Paの基端部の葉をたたき落とす際に、可撓性を有するウレタンゴムヒモが茎Paの基端部に接触して茎に傷がつくものと考えられるが、茎に傷がつくからといっても、その葉落とし作用が同じとすることはできない。
したがって、イ号物件の構成(b)は本件考案1の構成要件(B)を充足しない。
4-1-2.均等論について
上記構成要件(B)における相違する構成が均等であるかについてて検討する。
請求人は、「イ号装置の葉落し部材であるウレタンゴムは、従来より各種の技術分野で広く用いられてきた硬さや弾性率が広い範囲で可変なきわめてポピュラーな合成樹脂であり(甲第3号証の「機械材料」)、葉落し部材として当業者であればきわめて容易に置換できるものである。また葉落し部材は、本件考案の本質的部分でもない。よって仮に被請求人が、本件考案とイ号装置は葉落し部材(摺接部材)が相違すると主張するにしても、均等論の見地から、イ号装置は本件考案の技術的範囲に属する。」(判定請求書6頁4?11行)と主張する。
しかし、ウレタンゴムがイ号物件の製造等の時点において公知であることは甲第3号証により立証されているが、ウレタンゴムヒモによって花卉の葉を衝撃的に叩き落とす葉落し手段がイ号物件の製造等の時点において公知であるはいえず、本件考案の「葉落し手段15」を、前記ウレタンゴムヒモによって花卉の葉を衝撃的に叩き落とす葉落し手段に置き換えることは、イ号物件の製造等の時点において当業者が容易に想到することができるものとはいえない。
したがって、最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成6年2月24日言渡)が判示する、「(3)対象製品の製造時に、異なる部分を置換することを、当業者が容易に想到できる。」の条件を満たしていないから、均等であるとする請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、「本件考案は、葉落し手段や押えつけ部材などの個々の要素の具体的構造(実施例に例示された構造)に特徴があるのではなく、ましてや葉落し部材の直径に特徴があるものではなく、実用新案登録請求の範囲に記載した全体構成を特徴としているのである。」(判定弁ばく書6頁14?17行)と主張する。
しかし、実用新案登録請求の範囲には、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項のみが記載されているのであり、本件考案1の「このコンベヤ7に搬送される花卉Pの茎Paの基端部をはさむように配設されてこの基端部に弾性的に摺接し、駆動部16に駆動されてこの基端部の葉Pbを摺り落す摺接部材15bを備えた葉落し手段15」は、実施例に例示された構造ではなく、実用新案登録請求の範囲に記載された必須の構成要件であり、この必須の構成要件から離れて上記のように主張することは許されない。したがって、請求人の上記主張は採用できない。

4-2.本件考案2とイ号物件との対比
イ号物件の構成が本件考案2の構成要件(E)を充足するか否かについて検討する。
押さえつけ部材22について、実用新案登録明細書には、「図1において、ふらつき防止部9は、プーリ21に押えつけ部材としてのベルト22を調帯して成るベルトコンベヤにて構成されている。ベルト22の下側走行部は、上記コンベヤ7の上側走行部に沿うようにこれに平行に配設されており、かつこの上側走行部の走行方向Nと同方向に同速度もしくは略同速度で回転する。
【0016】ベルト22はゴムベルトのような伸縮自在な弾性ベルトであり、コンベヤ4上に横架された花卉Pが葉落し時にふらつかないように、ベルト22により上方から花卉Pを押えつける(図4参照)。この場合、ベルト22は弾性を有するので、上方から花卉Pを弾性的にしっかりと押えつけることができ、かつ花卉Pを強く押えつけてもこれを痛めることはない。」(本件公告公報5欄18?31行)、
「また花卉Pの茎Paはコンベヤ7の位置決め部12に位置決めされており、かつ花卉Pはベルト22により上方から弾性的に押えつけられているので、摺接部材15bが花卉Pに摺接して葉落しする際の摺接摩擦力により花卉Pがふらついてその姿勢が崩れることはなく、確実に葉落しできる。」(5欄42行?6欄3行)、
と記載されている。
これらの記載及び図面(特に図4)の記載からみて、本件考案1の押さえつけ部材22(実施例では、ベルト22で構成されている)は、弾性を有しており、コンベヤ7で水平な姿勢で搬送される花卉Pの茎Paを上方から弾性的にしっかりと押えつけることができる構成であり、摺接部材15bが花卉Pに摺接して葉落しする際の摺接摩擦力により花卉Pがふらついてその姿勢が崩れるのを防止し、しかも、花卉Pを強く押えつけてもこれを痛めることはない作用を奏するものである。
これに対し、イ号物件の鋼棒は、鋼棒の下面とコンベヤ上面との間には花卉Pの茎直径の数倍の間隔が設けられているので、コンベヤ7で水平な姿勢で搬送される花卉Pの茎Paを上方から弾性的にしっかりと押えつけるものではなく、花卉Pの葉Pbを上方から緩く規制して花卉Pが所定距離以上移動することを防止するものである。このことは、イ号物件の「葉落し手段」が、高速回転して花卉Pの葉Pbを叩き落とすものであり、その叩き落とす際に花卉Pがコンベヤ7の上方に飛び出すおそれはあるが、摺接摩擦力が花卉Pに作用しないから花卉Pの茎Paを上方から弾性的にしっかりと押えつける必要がないことからも明らかである。
すなわち、本件考案1の押さえつけ部材22は、花卉Pの茎Paを上方から直接しっかりと弾性的に押えつけるものであるのに対し、イ号物件の鋼棒は、花卉Pが所定距離以上移動するのを上方から規制するものであり、本件考案1の押さえつけ部材22とは明らかにその作用が相違するから、イ号物件の鋼棒は、押さえつけ部材ということはできない。
なお、請求人は、「本件公報(0018)の第6?10行には、『また、押えつけ部材の具体的形状や構造は・・・その構造は任意に決定できるものであるが』と記載されているから、これは本件考案の押えつけ部材に含まれる。」(イ号図面並びに説明書2頁14?17行)と主張する。確かに、実用新案登録明細書には、「また押えつけ部材の具体的形状や構造は本実施例に限定されるものではなく、例えば弾性を有する長板状の板ばねを配設して、この板ばねにより花卉Pを上方から弾性的に押えつけるようにしてもよく、その構造は任意に決定できるものである」(本件公告公報6欄3?7行)と記載されているが、イ号物件の鋼棒は、花卉Pの茎Paを上方から弾性的に押えつけるものでもないから、本件考案のような、弾性を有する長板状の板ばねに相当するものではない。
したがって、イ号物件の構成(e)は、本件考案2の構成要件(E)を充足しない。

4-3.本件考案3とイ号物件との対比
イ号物件の構成が本件考案3の各構成要件を充足するか否かについて検討する。
(1)構成要件(A-1)ないし(A-5)について
本件考案3の構成(A-1)ないし(A-5)とイ号物件の構成(a-1)ないし(a-5)とは、両者に構成に相違は認められず、イ号物件の構成(a-1)ないし(a-5)は、本件考案3の構成(A-1)ないし(A-5)を充足する。
なお、この点に関し当事者間に争いはない。
(2)構成要件(B)について
上記4-1.「(3)構成要件(B)について」に記載したとおり、イ号物件の(b)は、本件考案3の(B)を充足しない。
(3)構成要件(C)について
イ号物件の「コンベヤ7に設けられて花卉Pの搬送方向Nにおける後側から花卉Pを位置決めする花卉Pの位置決め部12」が葉落し手段15による葉落し時に花卉Pの姿勢が崩れるのを防止する作用を奏することは明らかであるから、イ号物件の(c)は、前者の(C)を充足している(なお、この点に関し当事者間に争いはない。)。
(4)構成要件(E)について
上記「4-2.本件考案2とイ号物件との対比」に記載したとおり、イ号物件の構成(e)は、本件考案3の構成要件(E)を充足しない。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案1、本件考案2及び本件考案3の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-11-18 
出願番号 実願平5-65221 
審決分類 U 1 2・ 1- ZB (A01G)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 木原 裕
村山 隆
登録日 1997-08-29 
登録番号 実用新案登録第2148883号(U2148883) 
考案の名称 花卉の葉落し機および選別装置  
代理人 高松 利行  
代理人 平木 道人  
代理人 田中 香樹  

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