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審決分類 審判 一部申し立て   H01L
管理番号 1070567
異議申立番号 異議1998-74857  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2003-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-09-25 
確定日 2003-01-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第2566207号「電流注入型窒化ガリウム系発光素子」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2566207号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録2566207号の出願は、平成4年10月21日に出願したものであって、平成9年12月12日に設定登録され、その後、その実用新案登録について実用新案登録異議申立人シャープ株式会社より、請求項1に係る考案について実用新案登録異議の申立てがなされたものである。そして、平成11年1月7日付けで取消理由通知が通知され、平成11年3月23日付けで実用新案登録異議意見書が提出された。

2.異議申立について
2-1.本件考案
請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲請求項1に記載された次の事項により特定される。
「【請求項1】Al、Inを含まないn型GaNよりなるn電極形成層と、Al、Inを含まないp型GaNよりなるp電極形成層と、それら電極形成層の間に、InGaNよりなる、電子と正孔とが再結合して発光する発光層を有する電流注入型の窒化ガリウム系発光素子であって、前記p電極形成層のほぼ全面に、透明であってかつ導電性を有する薄膜よりなるp電極が形成され、該p電極から前記p電極形成層全面に電流が注入されて、p電極側が発光観測面側とされていることを特徴とする電流注入型窒化ガリウム系発光素子。」(以下、「本件考案」という。)
なお、関連する無効審判事件である平成11年審判第35070号において訂正請求がなされたが、審決取消訴訟継続中に、該無効審判事件の請求の取り下げがなされたため、上記訂正請求は無かったものとなるから、本件考案は、登録時の実用新案登録明細書及び図面に記載のものとなる。

2-2.異議申立ての理由及びそれに基づく取消理由の概要
実用新案登録異議申立人シャープ株式会社は、証拠として下記刊行物を提出し、本件考案は該証拠に基づききわめて容易になし得たものであると主張して、本件考案は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき旨主張している。
そして、この異議申立に基づいて、平成11年1月7日付けで取消理由を通知した。

刊行物1:Jpn.J.Appl.Phys.Vol.31(1992)p.L1457‐1459 Part2,No.10B,15 0ct.1992(実用新案登録異議申立人の提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭56-81986号公報(同甲第2号証)
刊行物3:S.M.Sze著「Physics of Semi-conductor Devices,2nded.」JOHN WILLY & SONS,1981,p.708‐711(同参考資料)

3.刊行物
刊行物1(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.31(1992))には、次の事項が記載されている。
「§1緒言
青色発光ダイオード(LED)及び青色発光レーザーダイオード(LD)に対しては多くの需要がある。最近、第II-VI族化合物の半導体で大きな進歩が見られ、その中には初めて青-緑及び青色注入型LDと並んで高効率の青色LEDが特記される。
青色発光デバイスの適用に対しては、他の有望な物質、即ちワイドバンドギャップの窒化物半導体があり、その半導体は、物理的に優れた硬度、極めて大きいヘテロ接合オフセット、高い熱伝導度及び高い溶融温度を持っている。この分野では、最近、GaN薄膜の結晶性、p型の制御及び成長方法に関して大きな進歩が見られた。特に、Amano等は、Mgドーピング、低速電子線照射処理及びAlN緩衝層技術を用いて、初めてp型GaN薄膜を得るのに成功した。本著者等は、AlN緩衝層の代わりにGaN緩衝層を用いてp型GaN薄膜を得るのに成功したが、そのキャリア濃度は10^(18)/cm^(3)のオーダー程の高さであった。このようなp型GaN薄膜を用いて、p-n接合の青色LEDが作製された。
他方、ワイドバンドギャップ半導体(In、Ga、Al)N、即ちIII-V属化合物系がMatsuoka等によって提案された。この系を利用すると、2ないし6.2eVのバンドギャップエネルギーを選ぶことができる。高機能性光デバイスに対しては、ダブルヘテロ構造が必要不可欠である。この物質によってダブルヘテロ構造の構築が可能となる。この系では、三元系のIII-V族半導体化合物、即ちInGaNはインジウムのモル分率によるが、バンドギャップが2.0eVから3.4eVまで変化するので、青色発光用の活性層としては1つの候補化合物である。InGaN半導体化合物がダブルヘテロ構造物の中で活性層として使用されるならば、現在、p型伝導が(In,Ga,Al)N系の中でGaNの場合にのみ得られているので、GaN/InGaN/GaNダブルヘテロ構造体を青色発光用として考慮することができる。」(L1457頁左欄1行?39行)、
「§2実験
ツーフローMOCVD法を用いてInGaN薄膜を成長させた。・・・この成長は大気圧で行なった。直径2インチの(0001)配向(C面)を持つサファイアを基板として使用した。トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)及びアンモニア(NH3)を、各々、Ga、In及びN源として使用した。最初に、基板を水素気流中で1050℃まで加熱した。次に、基板温度を510℃まで下げてGaN緩衝層を成長させた。・・・続いて基板は1020℃に上げられ、GaNフィルムを成長させた。・・・GaN成長後に、温度は830℃と780℃の間に下げられ、InGaNフィルムを成長させた。」(L1457頁右欄23行?L1458頁左欄3行)と記載されている。

刊行物2(特開昭56-81986号公報)には、以下の事項が記載されている。
「本発明は、透明な薄膜電極を発光体全面に付着することにより電流の広がりをよくし、ダイオードの面発光出力を増加させるようにした新規な発光ダイオードを提供することを目的とし、本発明によって叙上の問題すなわち1)広い電極面積による内部発光の遮蔽、2)表面層の低キャリア濃度に基く電流広がり不良、3)表面層の高キャリア濃度に基づく光散乱や光吸収を一挙に解決するものであり、少くとも一つのpn接合を有する発光体のpn接合に平行な面をなす発光体表面から主として光を取出す面発光ダイオードにおいて、該発光体表面を形成する半導体に対してオーム性の良好な電極金属を該発光体表面全面に亘って100Å?300Åの厚さに付着し、該半導体との界面を加熱合金化したことを特徴とする発光ダイオードに係る。」(2頁右上欄10行?同頁左下欄5行)、
「以下に本発明の一実施例を図面とともに説明する。なお、以下の実施例においてはGaAlAs系赤色発光ダイオードを例にとって説明するが、本発明はこの実施例に限らず、他の種々の素材を用いた面発光ダイオードにも適用されるものである。
第6図において・・・11はp形GaAs基板、12はp形Ga_(1-x)Al_(x)As発光層、13はn形Ga_(1-y)Al_(y)As窓層(y>x)、14はn側オーミック電極である。
窓層13の表面は、・・・n形Ga_(1-y)Al_(y)As材料に対して、電気抵抗の小さい、即ち良好なオーム性を示す電極材料にてなる透明な合金薄層17が形成されている。」(2頁左下欄6行?同頁右下欄2行)、
「上記のように構成した面発光ダイオード10のp形基板11と電極14との間に所定の直流電圧を印加すると、電極14から注入された電流は合金薄層17の面に沿って拡がって流れ、n形の窓層13の全表面から均一にpn接合15に注入される。
この注入された電流によって、pn接合15のほぼ全面で均一に発光し、その発光は合金薄層17の表面16から外部に投射される。」(3頁左上欄1行?9行)

刊行物3(S.M.Sze著「Physics of Semi-conductor Devices,2nded.」)には、以下の事項が開示されている。
第26図には、pn接合レーザの基本構造が示されている。
第27図(c)には、n-Al_(x)Ga_(1-x)As/p-GaAs/p-Al_(x)Ga_(1-x)Asのダブルヘテロ構造のレーザが示されている。

4.異議申立て及び取消理由ついての対比・判断
刊行物1記載には、サファイアを基板とし、GaNを緩衝層として利用したGaN/InGaN/GaNダブルヘテロ構造の青色発光素子が提示されているが、これに関する具体的な素子の態様について記載がない。
これに関し異議申立人は、刊行物3(参考文献)の第26図を提示し、該文献の記載を参照すれば、甲第1号証は本件考案の発光素子を開示すると主張するが、第26図はpn接合レーザの基本構造を示すものであって、その点でダブルヘテロ構造とは相違するばかりでなく、光の投射方向にしても本件考案と同様のものとはいえない。また、第27図にGaAs系のダブルヘテロ構造のレーザが示されているが、用いられている材料はGaAs系のものであって、刊行物1とは構成する材料が相違するばかりでなく、具体的な素子の構造は何ら示されていないから、刊行物3を参酌したとしても、刊行物1記載のGaN/InGaN/GaNダブルヘテロ構造の青色発光素子がどのようなものかは明確でない。

また、刊行物2には、透明な薄膜電極を発光体全面に付着した発光ダイオードが記載されているが、該発光ダイオードはGaAs系のものであって、本件考案並びに刊行物1記載のものとは、基本的に材料の組成が相違するばかりでなく、合金薄層からなる透明電極は、本件考案のようにp電極形成層に形成されるのではなく、n形Ga_(1-y)Al_(y)Asに対して形成されている。
さらに刊行物2には、「電極14から注入された電流は合金薄層17の面に沿って拡がって流れ・・・pn接合15に注入される。この注入された電流によって、pn接合15のほぼ全面で均一に発光し、その発光は合金薄層17の表面16から外部に投射される。」と記載されていることから、刊行物2の発光ダイオードはpn接合15において発光するものであるから、本件考案のn型GaN及びp型GaN層の間の「電子と正孔とが再結合して発光する発光層」を有するものではない。

結局、刊行物3を勘案したとしても、刊行物1には、GaN/InGaN/GaNダブルヘテロ構造の青色発光素子の具体的な構造が記載されておらず、また、刊行物2には、透明な薄膜電極を発光体全面に付着した発光ダイオードが記載されているが、該発光ダイオードはGaAs系であって材料が本件考案及び刊行物1のものと相違するばかりでなく、透明電極はn層に形成され、発光層を有するものでもないので、刊行物1及び2には構成上の共通性もなく結びつける契機もないから、刊行物1ないし3から本件考案の技術的事項を導くことはできない。
よって、本件考案は、刊行物1ないし3に記載された考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。

5.むすび
したがって、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2002-12-18 
出願番号 実願平4-79449 
審決分類 U 1 652・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 稲積 義登
青山 待子
登録日 1997-12-12 
登録番号 実用新案登録第2566207号(U2566207) 
権利者 日亜化学工業株式会社
徳島県阿南市上中町岡491番地100
考案の名称 電流注入型窒化ガリウム系発光素子  
代理人 青山 葆  
代理人 河宮 治  
代理人 石井 久夫  
代理人 木下 雅晴  
代理人 小池 隆彌  
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