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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A45C
管理番号 1070570
判定請求番号 判定2002-60049  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2003-02-28 
種別 判定 
判定請求日 2002-05-01 
確定日 2002-12-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第3069620号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「ストラップ」は、登録第3069620号の請求項3に係る登録実用新案の技術的範囲に属しない。
理由 1.本件請求の趣旨
イ号図面及びその説明書に示す「ストラップ」(以下、「イ号物件」という。)は、実用新案登録第3069620号の請求項3に係る登録実用新案の技術的範囲に属さない、との判定を求める。

2.本件考案
(イ)実用新案登録第3069620号については、無効審判の請求がなされ(審判2001-40011号)、「請求項1、2、4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。請求項3に係る考案についての審判請求は、成り立たない。」との審決が確定しており、本件登録実用新案として存続しているのは、請求項3に係る考案のみである。
(ロ)本件の願書に添付した明細書(以下、「本件登録明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の請求項3には次のように記載されている。
「雄型連結部材の紐留め部に対して細紐及び太紐の留め構造が複数の留め構造を有することを特徴とする請求項1のストラップ。」
また、この請求項3で引用されている同請求項1には、次のように記載されている。
「キャラクター本体内に雌形連結部材が形成されていることを特徴とするストラップ。」
(ハ)上記請求項3の記載からでは、「複数の留め構造」なる用語の意味が必ずしも明白であるとはいえない。すなわち、「複数の留め構造」とは複数の「紐留め部」を指していうのか、一つの「紐留め部」であっても細紐又は太紐のいずれもが留められるのであれば複数の「留め構造」といえるのか、また、「複数の留め構造」とは紐の太さに係わらない複数の「紐の留め方」をいうのかが明白でない。
(ニ)そこで、考案の詳細な説明についてみると、段落【0009】及び【0012】には、次のように記載されている。
「図4a乃至図4cでは細紐又は太紐の結合状態を多種類に行うことのできることを示している。図4aでは細紐2が雄形連結部材5の先端部より連結される。また図4bでは細紐2が紐留め部51に取り付けられる。そして図4cでは太紐6が紐留め部51に取り付けられている。即ち雄形連結部材5の紐留め部51に対して細紐2及び太紐6の留め構造が複数の留め構造を行えることを示している。」(段落【0009】)
「なお、図8aでは雄形連結部材5の先端部に細紐留め部10が形成されており、細紐2を図示のように細紐留め部10に掛けて引っ張ると図8bのように細紐2が細紐留め部10に引っ掛かりながら曲がり、雄形連結部材5の上部の穴の中に納まるので、細紐2の先端に結び目をつける手間が省けるように構成されている。」(段落【0012】)
(ホ)段落【0009】の「雄形連結部材5の紐留め部51に対して細紐2及び太紐6の留め構造が複数の留め構造を行える」という記載からすると、一つの紐留め部51に対して、細紐2又は太紐6のいずれかを留めた場合を一種類の「留め構造」と数えていることが明らかであるから、「複数の留め構造」とは、複数の「紐留め部」及び複数の「紐の留め方」を意味するのではなく、太紐又は細紐のそれぞれを留める複数種類の「紐留め態様」を意味していると認められ、段落【0012】の記載も合わせ考慮すると、実施例においては、「紐留め部51」における、太紐又は細紐を留める2態様が、「細紐留め部10」における、細紐を留める1態様が、また、雄形連結部材5の先端部(上部の穴の中)における、細紐2の先端に結び目をつける1態様が、上記「紐留め態様」に該当するものと認められる。
なお、雄型連結部材の紐留め部とは、上記「紐留め態様」が得られる雄型連結部材の部分と解すべきであり、実施例においては、「紐留め部51」、「細紐留め部10」及び「先端部(上部の穴の中)」がこれに該当するものと認められる。
(ヘ)そこで、上記認定を踏まえ、本件請求項3についてみると、「雄型連結部材の紐留め部に対して細紐及び太紐の留め構造」とは、「雄型連結部材の紐留め部に対する細紐及び太紐の留め態様」を意味するものと解されるから、本件請求項3に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、以下のとおりのものと認められる(なお、分説して符号を付してある。)。
「(A)キャラクター本体内に雌形連結部材が形成されているストラップであって、
(B)雄型連結部材の紐留め部に対する細紐及び太紐の紐留め態様が複数種類とされていることを特徴とするストラップ。」

3.イ号物件
イ号図面及びイ号説明書の記載を総合すると、イ号物件は次のとおりのものと認められる。
「(a)キャラクター本体3内に吊下紐2を取付けた雌型連結部材4が形成されているストラップであって、
(b-1)上端部に凹孔15を、下端部に摘み片8を設け、この凹孔9の底部と摘み片8の下面間に通孔16を貫設してなる雄型連結部材7と、
(b-2)吊下紐6の雄型連結部材7への取付け構造が、通孔16に挿通した取付紐6の先端部を係止体14に引っ掛け、凹孔15内において通孔16の切縁に係止体14を支え止めする取り付け構造を有するストラップ。」

4.当事者の主張
(1)請求人の主張
(イ)雄形連結部材に設けた凹孔(本件考案の実施例において雄形連結部材5上部の穴に相当する。)及び通孔(本件考案の実施例において雄形連結部材5を上下に貫通する孔(図3中上より三番目の図参照)に相当する。)が紐留め部に該当しないことは、審決(審判2001-40011号)にも示されており、「紐の留め構造」とは、「太紐若しくは細紐を他に格別の固定手段を必要とせずに紐止め部に直ちに止め付けが可能な構造を具えた部分」と解すべきところ、イ号物件における凹孔9は、掛止体6を嵌合して支え止めするものであって、直ちに紐自体の留め付けに供するものではないから(上記(b-1)、(b-2))、イ号物件における雄形連結部材は、本件考案における構成要件(B)を充足しない。

(2)被請求人の主張
本判定請求に対し、期間を指定して、答弁の機会を与えたが、答弁書は提出されなかった。

5.当審の判断
イ号物件において、雄型連結部材7に設けられた摘み片8には、雄型連結部材7本体の凹孔9へと貫通する細紐通し用の通孔16が形成されており、この通孔16を利用して細紐を留めるようにしているが、上記雄型連結部材7本体及び摘み片8は、他に紐を留めるための構造部分を有しておらず、雄型連結部材7は、太紐を留めることができないものである。
してみると、雄形連結部材7は、太紐の紐留め態様を有していないから、イ号物件の構成(b-1)及び(b-2)は、本件考案の構成要件(B)を充足しない。
そうであれば、イ号物件の構成(a)が、本件考案の構成要件(A)を充足するかどうかの判断を行なうまでもなく、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属さないというべきである。

6.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件考案の技術的範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2002-11-27 
出願番号 実願平11-10134 
審決分類 U 1 2・ 1- ZA (A45C)
最終処分 成立    
特許庁審判長 梅田 幸秀
特許庁審判官 千壽 哲郎
和泉 等
登録日 2000-03-29 
登録番号 実用新案登録第3069620号(U3069620) 
考案の名称 ストラップ  

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