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審決分類 審判 全部申し立て   E04F
管理番号 1071944
異議申立番号 異議2000-73792  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2003-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-04 
確定日 2002-05-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2604601号「幅木及び廻り縁」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2604601号の請求項1に係る実用新案登録を取り消す。
理由 【1】手続の経緯
本件実用新案登録第2604601号の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案の出願は、平成5年10月22日に実用新案登録出願され、平成12年3月17日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録についてトステム株式会社、大平章、株式会社ノダ、大建工業株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、当審において取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成13年8月24日(平成13年8月22日差出)に訂正請求がなされたものである。


【2】訂正の適否についての判断
〔1〕訂正の要旨
1.訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1を、「【請求項1】中密度繊維板、パーティクルボード、合板または単板積層材からなる木質基板の表面を化粧紙で被覆した幅木及び廻り縁において、取付け時に外部露出される角部(11b)および釘打ち溝(13)における角部(13a)を曲率半径1mm以上の断面円弧状としたことを特徴とする幅木及び廻り縁。」と訂正する。
2.訂正事項b
実用新案登録明細書の段落【0001】(【産業上の利用分野】)の記載において、「造作部材」(公報1欄9行,12行)を「幅木及び廻り縁」と訂正し、「更に詳しくは、」(公報1欄9?10行)を「さらに詳しくは、」と訂正する。
3.訂正事項c
実用新案登録明細書の段落【0002】(【従来の技術】)の記載において、「廻縁」(公報1欄15行)を「廻り縁」と訂正し、「基板101は」(公報2欄7行)を「基板101は、」と訂正する。
4.訂正事項d
実用新案登録明細書の段落【0003】(【考案が解決しようとする課題】)の記載において、「角部に応力が集中して皺aや破れbが発生する」(公報3欄9?10行)を「角部に応力が集中して、化粧紙102に局所的な皺aや破れbが発生する」と訂正し、「廻縁」(公報3欄13行)を「廻り縁」と訂正し、「造作部材」(公報3欄18?19行)を「幅木及び廻り縁」と訂正する。
5.訂正事項e
実用新案登録明細書の段落【0004】(【課題を解決するための手段】)の記載において、「造作部材」(公報3欄22行,24行)を「幅木及び廻り縁」と訂正し、「合板又は単板積層材」(公報3欄23行)を「合板または単板積層材」と訂正し、「取付時に」(公報3欄24行)を「取付け時に」と訂正し、「角部を曲率半径1mm以上の、断面円弧状にしている。」(公報3欄25?26行)を「角部(11b)および釘打ち溝(13)における角部(13a)を曲率半径1mm以上の断面円弧状にしている。」と訂正し、「異形湾曲状」(公報3欄27行)を「異形彎曲状」と訂正する。
6.訂正事項f
実用新案登録明細書の段落【0005】(【作用】)の記載において、「造作部材」(公報3欄29行)を「幅木及び廻り縁」と訂正し、「その取付時に外部露出される」(公報3欄31?32行)を「その取付け時に外部露出する」と訂正する。
7.訂正事項g
実用新案登録明細書の段落【0007】の記載において、「被ったものであり、」(公報3欄46行)を「被覆したものであり、」と訂正する。
8.訂正事項h
実用新案登録明細書の段落【0008】の記載において、「幅9mm、深さ4mmの」(公報4欄4行)を「幅9mm深さ4mmの」と訂正し、「その各角部13aが曲率半径2mmの」(公報4欄5行)を「その角部13aが半径2mmの」と訂正する。
9.訂正事項i
実用新案登録明細書の段落【0009】の記載において、「酢酸ビニル系樹脂エマルジョン系接着剤」(公報4欄11?12行,20行)を「酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤」と訂正し、「なお」(公報4欄13行)を「なお、」と訂正し、「23?55g/m^(2)程度の」(公報4欄14行)を「23g/m^(2)?55g/m^(2)程度の」と訂正し、「あるは」(公報4欄15行)を「或は」と訂正し、「合成樹脂塗料により」(公報4欄18行)を「合成樹脂により」と訂正し、「などが採用できる。」(公報4欄19行,21?22行)を「などを採用できる。」と訂正する。
10.訂正事項j
実用新案登録明細書の段落【0010】の記載において、「移動させる」(公報4欄24?25行)を「移動される」と訂正し、「引っ張り力」(公報4欄26行)を「引張り力」と訂正し、「各角部13a」(公報4欄28行)を「角部13a」と訂正し、「壁面取付時に」(公報4欄30行,32行)を「壁面取付け時に」と訂正する。
11.訂正事項k
実用新案登録明細書の段落【0011】の記載において、「ところで、」(公報4欄36行)を「処で、」と訂正し、「あるので」(公報4欄42行)を「あるので、」と訂正し、「皺や破れが回避できる。」(公報4欄43?44行)を「皺や破れを回避できる。」と訂正し、「湾曲した」(公報4欄45行)を「彎曲した」と訂正する。
12.訂正事項l
実用新案登録明細書の段落【0012】の記載において、「図2?4に基づいて本考案の第2?4の実施例に係る」(公報5欄1?2行)を「図2?図4に基づいて、本考案の第2?第4の実施例に係る」と訂正し、「第2の実施例は」(公報5欄2?3行)を「第2の実施例は、」と訂正し、「廻縁20」(公報5欄4行)を「廻り縁20」と訂正し、「第3の実施例は」(公報5欄4?5行)を「第3の実施例は、」と訂正する。
13.訂正事項m
実用新案登録明細書の段落【0013】の記載において、「設計変更などがあっても」(公報5欄11行)を「設計変更があっても」と訂正し、「廻縁」(公報5欄12行)を「廻り縁」と訂正し、「ものではく、」(公報5欄17行)を「ものではなく、」と訂正し、「異形湾曲状」(公報5欄19行)を「異形彎曲状」と訂正する。
14.訂正事項n
実用新案登録明細書の段落【0014】(【考案の効果】)の記載において、「造作部材」(公報5欄22行,6欄6行)を「幅木及び廻り縁」と訂正し、「壁面取付時に」(公報6欄1行)を「壁面取付け時に」と訂正する。
15.訂正事項o
実用新案登録明細書の【符号の説明】の記載において、「20:廻縁」(公報6欄20?21行)を「20:廻り縁」と訂正する。

〔2〕訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
1.訂正事項aについて
この訂正は、実用新案登録請求の範囲において、「造作部材」,「取付け時に外部露出される角部」を、より下位概念の「幅木及び廻り縁」,「取付け時に外部露出される角部(11b)および釘打ち溝(13)における角部(13a)」に、それぞれ限定しようとするものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、上記訂正しようとする事項は、明細書の段落【0008】又は図1,2に記載されているから、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2.訂正事項b?oについて
これらの訂正は、考案の詳細な説明及び図面の簡単な説明の記載を、上記訂正事項aの訂正に伴ってこれと整合させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、これらの訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

〔3〕訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するものであり、当該訂正を認める。


【3】実用新案登録異議申立について
〔1〕請求項1に係る考案
以上のとおり、平成13年8月24日(平成13年8月22日差出)の訂正請求は認められるので、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という)は、訂正明細書及び実用新案登録査定時の図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される【2】〔1〕1.「訂正事項a」に記載されたとおりのものである。

〔2〕取消理由の引用発明
1.当審が平成13年6月14日付けで通知した取消理由通知書において刊行物3として引用した実願昭61-91121号(実開昭62-201240号)のマイクロフィルム(大平章が提出した甲第1号証、以下「刊行物1」という)には、建築用巾木や建築用回縁などの造作材に関して、次のような技術事項が記載されている。
(ア)「〔考案の産業上の利用分野〕この考案は、建築用巾木や建築用回縁として有効な造作材に関する。」(1頁12?14行)
(イ)「この考案において、基材1としては、合板・平行合板・パーティクルボード・中質繊維板・パーティクルボード等が使用できる。」(2頁15?17行)
(ウ)「〔実施例1〕第2図に示すように、厚み12mm、高さ50mmの長尺の合板製基材11の表面に断面正三角形状の溝12が形成されている。この溝12を形成している上片14は基材11の表面から内側下方に向かっており、下辺15は基材11の表面から内側上方に向かっている。16は表面化粧層で、銘木単板・化粧紙・化粧合成樹脂シート等の化粧シートを貼着したり、塗装を施して形成されている。次に、この考案を巾木として使用した時の施工方法について述べると、第2図の矢印で示したように、溝12を形成している上辺14の斜め下方から釘を打ち込んで巾木を壁面に取り付ける。・・・なお、この考案を回縁として使用する場合は、溝12を形成している下辺15の斜め上方から釘を打ち込んで壁面に取り付けることになる。」(2頁18行?3頁15行)
(エ)「〔実施例2〕第3図に示すように、厚み20mm、高さ70mmの長尺の中質繊維板製の基材21の表面に、底が狭くなった断面台形状の溝22が形成されている。この溝22を形成している上辺23・底辺24・下辺25のうち、上辺23は基材21表面から内側下方に向かっており、下辺25は基材21表面から内側上方に向かっている。26は実施例1と同じ表面化粧層である。」(3頁16行?4頁3行)
(オ)第2図には、厚み12mmの基材11を持つ巾木や回縁の角部断面を、該厚みの略1/3程度の曲率半径の円弧状としたものが記載され、また、第3図には、厚み20mmの基材21を持つ巾木や回縁の角部断面を、該厚みの略1/4程度の曲率半径の円弧状としたものが記載されている。
これら(ア)?(オ)の記載を含む刊行物1全体の記載からみて、刊行物1には、以下の考案が記載されているものと認められる。
「合板・平行合板・パーティクルボード・中質繊維板等からなる基材の表面を銘木単板・化粧紙・化粧合成樹脂シート等からなる化粧シートで被覆した巾木及び回縁において、取付け時に外部露出される角部を基材厚み12mmの略1/3程度或いは基材厚み20mmの略1/4程度の曲率半径の断面円弧状とし、取付け時に外部露出される釘打ち込み用の溝における上辺を基材表面から内側下方に向け且つ下辺を基材表面から内側上方に向けて形成した巾木及び回縁。」

2.同、当審が刊行物2として引用した特開昭50-107077号公報(トステム株式会社が提出した甲第2号証、以下「刊行物2」という)には、その1頁右下欄1?2行,12?17行,1頁右下欄18行?2頁左下欄2行の記載及び図面(第12図)の記載を含む刊行物2全体の記載からみて、次の技術事項が記載されている。
ベニヤ板や石膏ボードのような素材からなる板4の表面に、紙1や布やビニール薄膜を貼着してなる建築用化粧板において、取付け時に外部露出される板4の表面上稜に、凹部を有する弧状部分を形成するとともに、該凹部の角部を断面円弧状としたこと。
板4の表面上稜を弧状とすると、転子6,8,9,10により板4の表面に紙1などを貼着する場合、紙1などに皺を生じることなく密着して貼着できること。

3.同、当審が刊行物8として引用した実願昭59-197750号(実開昭61-176339号)のマイクロフィルム(大建工業株式会社が提出した甲第3号証、以下「刊行物3」という)には、その1頁13?18行,1頁20行?2頁3行,3頁6?19行の記載及び図面(第1,3,4図)の記載を含む刊行物3全体の記載からみて、次の技術事項が記載されている。
無垢の木材や合板やMDFなどからなる板の表面に、合成樹脂シートや化粧紙或いは塗料などにより化粧を施してなり、回り縁として使用できる部材Aにおいて、取付け時に外部露出される板の表面に、凹部を有する弧状部分を形成するとともに、該凹部の角部を断面円弧状としたこと。
該部材Aにおいて、長端片1の厚さbを約5?10mmの範囲内にし、短端片2の厚さdを10?20mmの範囲内にすること。

〔3〕本件考案と刊行物に記載された考案との対比
1.本件考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、刊行物1に記載された考案の「合板・平行合板・パーティクルボード・中質繊維板等からなる基材」,「銘木単板・化粧紙・化粧合成樹脂シート等からなる化粧シート」,「巾木」,「回縁」,「基材厚み12mmの略1/3程度或いは基材厚み20mmの略1/4程度の曲率半径」,「釘打ち込み用の溝」が、本件考案の 「中密度繊維板、パーティクルボード、合板または単板積層材からなる木質基板」,「化粧紙」,「幅木」,「廻り縁」,「曲率半径1mm以上」,「釘打ち溝」に、それぞれ相当するから、両者は、
「中密度繊維板、パーティクルボード、合板または単板積層材からなる木質基板の表面を化粧紙で被覆した幅木及び廻り縁において、取付け時に外部露出される角部を曲率半径1mm以上の断面円弧状とし、取付け時に外部露出される釘打ち溝を有する幅木及び廻り縁。」の点で構成が一致し、以下の点で構成が相違する。
〈相違点〉
取付け時に外部露出される釘打ち溝の角部の構成について、本件考案が、「曲率半径1mm以上の断面円弧状」であるのに対して、刊行物1に記載された考案では、釘打ち溝(釘打ち込み用の溝)を「上辺を基材表面から内側下方に向け且つ下辺を基材表面から内側上方に向けて形成し」ているものの、その角部が「曲率半径1mm以上の断面円弧状」であることは勿論、「断面円弧状」であること自体も定かでない点。

2.相違点についての検討
上記したように、刊行物1に記載された考案の釘打ち溝(釘打ち込み用の溝)については、「上辺を基材表面から内側下方に向け且つ下辺を基材表面から内側上方に向けて形成し」てあり、その角部が断面円弧状であるとは明言できないが、「上辺」及び「下辺」が斜面として形成されていることから、該角部が鈍角になっていることは明かである。
そして、木材へ溝等を加工する場合において、その角部の断面がある程度の丸みをもって形成されることが加工精度上普通であると考えられるところ、該角部が鈍角に形成されるものである場合には、その丸みの形成は必至であると推測できるから、上記相違点に係る本件考案の構成については、刊行物1に記載された考案において、丸みの形成が必至であると推測できる角部の曲率半径を、設計的考察を加えて単に「1mm以上」の数値に限定した程度のことにすぎない。(尚、実用新案登録権者は、刊行物1に記載された考案の釘打ち溝(釘打ち込み用の溝)の角部は「鋭く折曲」している旨主張しているが、上記したように、当該角部は「鋭く折曲」していない。)
また、本件考案のような仕上部材において、溝や凹部の角部を断面円弧状とすることは、例えば、上記刊行物2,3(但し、釘打ち用ではない)に記載されているように従来周知の技術である。そして、上記刊行物2,3に記載された溝や凹部の角部の曲率半径は、該仕上部材の厚みを考慮した場合、「1mm以上」の数値であることは明かであるから、上記相違点に係る本件考案の構成は上記刊行物2,3に記載されているものと認められる。
(尚、上記周知例(刊行物2,3)以外にも、特開昭3-10839号公報(異議申立人・大建工業株式会社が提出した甲第2号証)には、凹凸のエッジ部に凹凸の大きさに応じて適宜丸みを付与することが記載され、実願昭55-179898号(実開昭57-101033号)のマイクロフィルム(同、甲第4号証)には、溝の角部を断面円弧状(曲率半径1mm以上と推測できる)とすることが記載され、実願昭57-113792号(実開昭59-17919号)のマイクロフィルムには、製造上の有利さ及び耐久性向上のため断面形状の一部の陵線を円、楕円もしくはこれらに類似する曲線等とすることが記載されている。)

3.まとめ
そして、本件考案の全体の構成によって奏する効果についても、刊行物1に記載された考案並びに建築用仕上部材に係る当業者の技術常識及び従来周知技術から推測し得る範囲以上の格別のものとは認められないから、本件考案は、刊行物1に記載された考案並びに建築用仕上部材に係る当業者の技術常識及び従来周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものと認められる。


【4】むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、本件考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
幅木及び廻り縁
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 中密度繊維板、パーティクルボード、合板または単板積層材からなる木質基板の表面を化粧紙で被覆した幅木及び廻り縁において、取付け時に外部露出される角部(11b)および釘打ち溝(13)における角部(13a)を曲率半径1mm以上の断面円弧状としたことを特徴とする幅木及び廻り縁。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、幅木及び廻り縁に係り、さらに詳しくは、化粧紙の基板貼着時および湿度変化を原因とした基板伸縮時の化粧紙の破れや皺を防止でき、またデザイン性の向上が図れる幅木及び廻り縁に関する。
【0002】
【従来の技術】
造作部材とは、例えば床と壁板との継ぎ目を隠す幅木、天井と壁板との継ぎ目を隠す廻り縁、床板や壁板などにアクセントを付与する見切りや、壁板と窓との継ぎ目を隠す窓枠といった異部材の継ぎ目を美しく化粧するための板部材であり、本体となる基板の表面に化粧紙が貼着されている。図5は造作部材の一例である幅木100を示しており、合板からなる基板101の底面を除く全面に、紙製の化粧紙102が接着剤により貼着されている。基板101は、露出された一端部の角部101aがほぼ45度に面取りされており、その表面101bに断面視して長方形の釘打ち溝103が一条だけ形成されている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の幅木100は、基板101に化粧紙102を貼着する際に、ローラにより化粧紙102を基板101の表面に押し当てているが、このとき、基板101の形状に合った化粧紙102の正確な寸法出しが困難であるため、45度に面取りされた角部101aや釘打ち溝103の直角の角部に応力が集中して、化粧紙102に局所的な皺aや破れbが生じるという問題点があった。
また、幅木100は湿度の変化に伴い水分の吸放出量が変わって伸縮するが、相対的に水分の吸放出量の大きな基板101が伸長した際に、剛性が乏しく水分の吸放出量も小さい化粧紙102は追従できず、同様に基板101の角部101aや釘打ち溝103の角部に応力が集中して、化粧紙102に局所的な皺aや破れbが発生するという問題点があった。
さらに、従来の幅木100は、その表面に露出する釘打ち溝103を含む角部が角張っているので、デザイン的に硬く、ぶつかると痛いというイメージがあった。
なお、廻り縁や見切りなどの他の造作部材においても、角部101aや釘打ち溝103において同様の問題点があった。
本考案はかかる事情に鑑みなされたもので、化粧紙の基板貼着時および湿度変化を原因とした基板伸縮時の化粧紙の破れや皺を防止でき、またデザイン性の向上が図れる幅木及び廻り縁を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載の幅木及び廻り縁は、中密度繊維板、パーティクルボード、合板または単板積層材からなる木質基板の表面を化粧紙で被覆した幅木及び廻り縁において、取付け時に外部露出される角部(11b)および釘打ち溝(13)における角部(13a)を曲率半径1mm以上の断面円弧状にしている。
なお、ここで断面円弧状とは、円、楕円及びその他の異形彎曲状も含む。
【0005】
【作用】
請求項1記載の幅木及び廻り縁は、ローラなどにより基板に化粧紙を貼着する際や、湿度の変化に伴い化粧紙より基板が大きく伸長した際において、その取付け時に外部露出する角部が断面円弧状になっているので、ローラにより大きな圧力で化粧紙が基板に押し付けられても、また湿度変化により基板が化粧紙より大きく伸長しても、化粧紙に皺や破れが生じ難い。
【0006】
【実施例】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本考案を具体化した実施例につき説明し、本考案の理解に供する。
ここに、図1は本考案の第1の実施例に係る造作部材の拡大斜視図、図2は本考案の第2の実施例に係る造作部材の拡大斜視図、図3は本考案の第3の実施例に係る造作部材の拡大斜視図、図4は本考案の第4の実施例に係る造作部材の拡大斜視図を示している。
【0007】
図1に示すように、本考案の第1の実施例に係る造作部材の一例である幅木10は、基板11の底面を除く全表面を化粧紙12により被覆したものであり、一端部の外部露出される表面11a側の角部11bを有し、表面11aの一端部付近に、断面視して長方形の釘打ち溝13が一条形成されている。
【0008】
基板11は、中密度繊維板(MDF)からなる長さ3950mm、高さ65mm、奥行き9mmの板材であり、角部11bが曲率半径6mmの断面円弧状である一方、釘打ち溝13は基板11の一端から14mmの表面位置に形成された幅9mm深さ4mmの長方形の溝であって、その角部13aが半径2mmの断面円弧状になっている。
なお、基板11のその他の素材として、例えば合板、単板積層材(LVL、LVB)やパーティクルボードが挙げられる。
【0009】
化粧紙12は、重さが30g/m^(2)の薄葉紙上に木目模様をインク印刷した後、ポリウレタン系樹脂塗料を塗布したものであり、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤を介して、ローラを有するラッピング装置により基板11上に貼着されている。なお、化粧紙12としては、その他にも重さが23g/m^(2)?55g/m^(2)程度の紙、合成紙或は前記薄葉紙を含むこれらの紙裏面に裏打ち紙を貼着して補強したものを用い、この紙の表面に所望の模様にインクで印刷した後、アミノアルキッド樹脂やポリウレタン樹脂などの合成樹脂によりコーティングしたものなどを採用できる。また、接着剤としても酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤の他に、エポキシ樹脂系接着剤や合成ゴム系接着剤などを採用できる。
【0010】
この基板11への化粧紙12の貼着は、化粧紙12上からローラを大きな力で押し付けて移動されることにより行われるが、このとき化粧紙12には、貼着と同時にローラの進行方向に向かう大きな引張り力がかかる。しかし、前述したように外部露出される角部11bや釘打ち溝13の角部13aには円弧状の形状加工がなされているので、これらの部分にかかる応力は分散され、少なくとも壁面取付け時に外から見える幅木10の部分にはこのような皺や破れができ難い。なお、その他の角部に皺や破れが発生しても壁面取付け時に隠れてしまうので問題はない。
【0011】
こうして製造された幅木10は、釘打ち溝13に釘を打ち付けることにより床と壁との継ぎ目に取付けられる。
処で、幅木10は湿度変化により水分を吸放出して伸縮するが、このとき素材の違いにより化粧紙12に比べて基板11が大きく伸縮する。これにより、基板11が湿気を吸収して大きく伸長しても化粧紙12は少ししか伸長せず、角部11b、13aに大きな応力が加わろうとする。ところが、前述したようにこれらの部分は円弧状であるので、この応力は集中せずに分散されてしまう。従って、化粧紙12の局所的な皺や破れを回避できる。なお、釘打ち溝13の奥側の角部は内方に彎曲した円弧状の角部なので、基板11の伸長時には、これに対応する化粧紙12の部分に、破れではなく皺ができ易くなる(図5参照)。また、外部露出される角部11b、13aはなだらかな円弧状であるので、幅木10に柔らかいイメージを与えることができ、建物の内外壁の外観を向上できる。
【0012】
次いで、図2?図4に基づいて、本考案の第2?第4の実施例に係る造作部材を説明する。
図2に示す第2の実施例は、本考案の造作部材を天井と壁板との継ぎ目を隠す廻り縁20に適用した例であり、また、図3に示す第3の実施例は、釘打ち溝13がなくて床板や壁板などにアクセントを付与する見切り30への適用例、図4に示す第4の実施例は同じく釘打ち溝13がなくて壁板と窓との継ぎ目を隠す長幅な窓枠40への適用例である。
【0013】
以上、本考案を図面に基づいて説明したが、本考案はこの実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲での設計変更があっても本考案に含まれる。実施例では、造作部材として幅木、廻り縁、見切りや窓枠を例示したが、これに限定しなくても例えば扉などの開口部周囲に取付けられる化粧桟などその他どのような造作部材に適用してもよい。また、基板の外部露出される角部は、実施例の半径寸法のものに限定されるものではなく、曲率半径1mm以上の範囲の断面円弧状であればよい。また、この角部はこのような断面が真円状でなくても楕円およびその他の異形彎曲状であってもよい。
【0014】
【考案の効果】
請求項1記載の幅木及び廻り縁は、このように壁面取付け時に外部露出される角部が断面円弧状になっているので、ローラなどにより基板に化粧紙を貼着する際や、湿度の変化に伴い化粧紙より基板が大きく伸長した際にも、この角部に加わる応力が分散されるので、これにより化粧紙に皺や破れが生じるのを防止できる。また、角部がなだらかになって幅木及び廻り縁に柔らかいイメージを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の第1の実施例に係る造作部材の拡大斜視図である。
【図2】
本考案の第2の実施例に係る造作部材の拡大斜視図である。
【図3】
本考案の第3の実施例に係る造作部材の拡大斜視図である。
【図4】
本考案の第4の実施例に係る造作部材の拡大斜視図である。
【図5】
従来手段に係る造作部材の拡大斜視図である。
【符号の説明】
10:幅木、11:基板、11a:表面、11b:角部、12:化粧紙、13:釘打ち溝、13a:角部、20:廻り縁、30:見切り、40:窓枠
訂正の要旨 訂正の要旨
1.訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「【請求項1】中密度繊維板、パーティクルボード、合板または単板積層材からなる木質基板の表面を化粧紙で被覆した幅木及び廻り縁において、取付け時に外部露出される角部(11b)および釘打ち溝(13)における角部(13a)を曲率半径1mm以上の断面円弧状としたことを特徴とする幅木及び廻り縁。」と訂正する。
2.訂正事項b
実用新案登録明細書の段落【0001】(【産業上の利用分野】)の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「造作部材」(公報1欄9行,12行)を「幅木及び廻り縁」と訂正し、「更に詳しくは、」(公報1欄9?10行)を「さらに詳しくは、」と訂正する。
3.訂正事項c
実用新案登録明細書の段落【0002】(【従来の技術】)の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「廻縁」(公報1欄15行)を「廻り縁」と訂正し、「基板101は」(公報2欄7行)を「基板101は、」と訂正する。
4.訂正事項d
実用新案登録明細書の段落【0003】(【考案が解決しようとする課題】)の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「角部に応力が集中して皺aや破れbが発生する」(公報3欄9?10行)を「角部に応力が集中して、化粧紙102に局所的な皺aや破れbが発生する」と訂正し、「廻縁」(公報3欄13行)を「廻り縁」と訂正し、「造作部材」(公報3欄18?19行)を「幅木及び廻り縁」と訂正する。
5.訂正事項e
実用新案登録明細書の段落【0004】(【課題を解決するための手段】)の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「造作部材」(公報3欄22行,24行)を「幅木及び廻り縁」と訂正し、「合板又は単板積層材」(公報3欄23行)を「合板または単板積層材」と訂正し、「取付時に」(公報3欄24行)を「取付け時に」と訂正し、「角部を曲率半径1mm以上の、断面円弧状にしている。」(公報3欄25?26行)を「角部(11b)および釘打ち溝(13)における角部(13a)を曲率半径1mm以上の断面円弧状にしている。」と訂正し、「異形湾曲状」(公報3欄27行)を「異形彎曲状」と訂正する。
6.訂正事項f
実用新案登録明細書の段落【0005】(【作用】)の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「造作部材」(公報3欄29行)を「幅木及び廻り縁」と訂正し、「その取付時に外部露出される」(公報3欄31?32行)を「その取付け時に外部露出する」と訂正する。
7.訂正事項g
実用新案登録明細書の段落【0007】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「被ったものであり、」(公報3欄46行)を「被覆したものであり、」と訂正する。
8.訂正事項h
実用新案登録明細書の段落【0008】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「幅9mm、深さ4mmの」(公報4欄4行)を「幅9mm深さ4mmの」と訂正し、「その各角部13aが曲率半径2mmの」(公報4欄5行)を「その角部13aが半径2mmの」と訂正する。
9.訂正事項i
実用新案登録明細書の段落【0009】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「酢酸ビニル系樹脂エマルジョン系接着剤」(公報4欄11?12行,20行)を「酢酸ビニル系樹脂エマルジョン接着剤」と訂正し、「なお」(公報4欄13行)を「なお、」と訂正し、「23?55g/m^(2)程度の」(公報4欄14行)を「23g/m^(2)?55g/m^(2)程度の」と訂正し、「あるは」(公報4欄15行)を「或は」と訂正し、「合成樹脂塗料により」(公報4欄18行)を「合成樹脂により」と訂正し、「などが採用できる。」(公報4欄19行,21?22行)を「などを採用できる。」と訂正する。
10.訂正事項j
実用新案登録明細書の段落【0010】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「移動させる」(公報4欄24?25行)を「移動される」と訂正し、「引っ張り力」(公報4欄26行)を「引張り力」と訂正し、「各角部13a」(公報4欄28行)を「角部13a」と訂正し、「壁面取付時に」(公報4欄30行,32行)を「壁面取付け時に」と訂正する。
11.訂正事項k
実用新案登録明細書の段落【0011】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「ところで、」(公報4欄36行)を「処で、」と訂正し、「あるので」(公報4欄42行)を「あるので、」と訂正し、「皺や破れが回避できる。」(公報4欄43?44行)を「皺や破れを回避できる。」と訂正し、「湾曲した」(公報4欄45行)を「彎曲した」と訂正する。
12.訂正事項l
実用新案登録明細書の段落【0012】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「図2?4に基づいて本考案の第2?4の実施例に係る」(公報5欄1?2行)を「図2?図4に基づいて、本考案の第2?第4の実施例に係る」と訂正し、「第2の実施例は」(公報5欄2?3行)を「第2の実施例は、」と訂正し、「廻縁20」(公報5欄4行)を「廻り縁20」と訂正し、「第3の実施例は」(公報5欄4?5行)を「第3の実施例は、」と訂正する。
13.訂正事項m
実用新案登録明細書の段落【0013】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「設計変更などがあっても」(公報5欄11行)を「設計変更があっても」と訂正し、「廻縁」(公報5欄12行)を「廻り縁」と訂正し、「ものではく、」(公報5欄17行)を「ものではなく、」と訂正し、「異形湾曲状」(公報5欄19行)を「異形彎曲状」と訂正する。
14.訂正事項n
実用新案登録明細書の段落【0014】(【考案の効果】)の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「造作部材」(公報5欄22行,6欄6行)を「幅木及び廻り縁」と訂正し、「壁面取付時に」(公報6欄1行)を「壁面取付け時に」と訂正する。
15.訂正事項o
実用新案登録明細書の【符号の説明】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「20:廻縁」(公報6欄20?21行)を「20:廻り縁」と訂正する。
異議決定日 2002-03-12 
出願番号 実願平5-61855 
審決分類 U 1 651・ 121- ZA (E04F)
最終処分 取消    
前審関与審査官 青山 敏  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 伊波 猛
中田 誠
登録日 2000-03-17 
登録番号 実用新案登録第2604601号(U2604601) 
権利者 段谷産業株式会社
福岡県北九州市小倉北区東港2丁目5番12号
考案の名称 幅木及び廻り縁  
代理人 山本 拓也  
代理人 ▲桑▼原 史生  
代理人 後藤田 章  

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