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審決分類 審判 全部申し立て   H03H
審判 全部申し立て   H03H
管理番号 1071946
異議申立番号 異議2002-72137  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2003-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-30 
確定日 2003-01-25 
異議申立件数
事件の表示 登録第2607677号「弾性表面波装置」の請求項1ないし3に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2607677号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を維持する。
理由 【1】手続の経緯
本件実用新案登録第2607677号に係る考案は、平成3年12月19日に実用新案登録出願(実願平3-111148号)されたものであって、その実用新案登録は平成13年11月22日にその考案(請求項の数3)について設定登録がなされ、平成14年3月4日に実用新案登録公報が発行され、その後その実用新案登録(全請求項)について平成14年8月30日に実用新案登録異議申立人雨山範子から実用新案登録異議の申立てがなされ、平成14年12月19日に同実用新案登録異議申立人雨山範子から上申書が提出されたものである。
【2】本件実用新案登録
本件実用新案登録第2607677号は「弾性表面波装置」に係るものであって、その考案は、登録査定時の明細書及び図面の記載からみてその実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 信号側共通電極、これに接続された複数本の電極指、この複数本の電極指に非接触で交互に挿入された複数本の電極指及びこれに接続されたグランド側共通電極で構成された電極膜を、圧電基板の表面に下層を高抵抗膜と上層を低抵抗膜との少なくとも2層で形成し、
前記電極膜の近傍に設けられ前記信号側共通電極とグランド側共通電極間を短絡する短絡膜を、圧電基板の表面に下層を高抵抗膜で上層を選択的に除去される低抵抗膜との少なくとも2層で形成して構成し、
前記電極指部分で起きる放電を前記短絡膜にて防止するようにしたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】 請求項1記載の弾性表面波装置において、
上層の低抵抗の電極膜及び短絡膜がアルミニウム膜であり、かつ下層の高抵抗の電極膜及び短絡膜がチタン膜であることを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項3】 請求項2記載の弾性表面波装置において、
高抵抗の電極膜及び短絡膜であるチタン膜の厚さが約2nm?50nmであり、かつ低抵抗の電極膜及び短絡膜であるアルミニウム膜の厚さが前記チタン膜の厚さの約5?50倍であることを特徴とする弾性表面波装置。」
【3】実用新案登録異議の申立てについて
(1)異議申立ての理由の要点
異議申立人雨山範子は、証拠方法として以下の甲第1乃至3号証を提出し、『請求項1乃至3に係る本件考案は、甲第1乃至3号証に記載された考案から当技術分野における通常の知識を有する者が極めて容易に為し得る程度のものであって、実用新案法第3条第2項に該当し、実用新案登録を受けることができないものであり、取り消されるべきものであります。
また、請求項1の考案に係る明細書の記載は不備であるため、実用新案法第5条第5項の要件を満足しないものであり、実用新案登録を受けることができないものであります。』旨主張している。(異議申立書第9頁第6?12行)
<証拠方法>
甲第1号証:実開昭62-181036号のマイクロフィルム
甲第2号証:特開昭61-142811号公報
甲第3号証:特開平02-048811号公報
(2)異議申立人の主張(具体的な理由)
(2-1)実用新案法第3条第2項について
『c.本件考案と証拠との対比
○1 本件の請求項1に係る考案
前述したように、「A.信号側共通電極、これに接続された複数本の電極指、この複数本の電極指に非接触で交互に挿入された複数本の電極指及びこれに接続されたグランド側共通電極で構成された電極膜を、B.圧電基板の表面に下層を高抵抗膜と上層を低抵抗膜との少なくとも2層で形成し、C.前記電極膜の近傍に、前記信号側共通電極とグランド側共通電極間を短絡する高抵抗の短絡膜を設けたことを特徴とする弾性表面波装置。」が、実質的に請求項1に係る考案です。
この請求項1に係る考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると、弾性表面波装置の信号側共通電極とグランド側共通電極間を高抵抗膜で短絡することで、電極指部分で起きる放電を防止する点で一致し、甲第1号証の信号側共通電極、電極指、グランド側共通電極が、下層を高抵抗膜とし、上層を低抵抗膜とした少なくとも2層で形成されていない点で相違します。しかしながら、請求項1に係る考案において、信号側共通電極、電極指、グランド側共通電極を高抵抗膜と低抵抗膜の少なくとも2層にすることに格別の効果があるわけではなく、甲第2号証に記載のように、弾性表面波装置のインタディジタル変換器等の電極膜をTi等の高抵抗膜とAu等の低抵抗膜の2層構造とすることは周知技術であるため、この周知技術を甲第1号証に記載の考案に適用することは、当業者にとって容易になし得ることに過ぎません。
したがって、本件の請求項1に係る考案は、甲第1及び2号証に記載の内容から当業者が容易に導き出せる程度のことであり、実用新案法第3条第2項に該当し、実用新案登録を受けられないものであります。
○2 本件の請求項2、3に係る考案
本件の請求項2に係る考案と甲第1及び2号証に記載の考案とを対比すると、甲第1及び2号証に、上層の低抵抗の電極膜及び短絡膜がアルミニウム膜であり、かつ下層の高抵抗の電極膜及び短絡膜がチタン膜であり、これらの構成により、基板とアルミニウムの密着が良くなることが記載されていない点で相違しますが、甲第3号証に記載されているように、弾性表面波素子において、アルミニウムの下地にチタンを用いて、圧電基板とアルミニウムの密着性を向上させることは周知技術であります。
また、本件の請求項3に係る考案と甲第1乃至3号証に記載の内容とを対比すると、甲第1乃至3号証に、チタン膜の厚みは2nm?50nm程度で設定し、アルミニウム膜の厚さをその5?50倍程度で設定すればSAWフィルタの電気的特性に影響を及ぼさないことが記載されていない点で相違しますが、これらの膜の厚さを限定することに、臨界的意義は認められず、フィルタの周波数と電気的特性を考慮しながら、膜の厚さを選定することは、当業者が設計活動において通常行うことに過ぎません。
したがって、本件の請求項2、3に係る考案は、甲第1乃至3号証に記載の内容から当業者が(極めて)容易に導き出せる程度のことであり、実用新案法第3条第2項に該当し、実用新案登録を受けられないものであります。』(異議申立書第7頁第8行?第8頁第17行)
(2-2)実用新案法第5条について
『d.記載不備の理由
前述したように、本件の請求項1に係る考案によれば、
(1)パッド膜形成工程のときに既に電極部分は低抵抗の膜で短絡されているので、放電による破壊を効果的に防止できる。
(2)パッド膜形成後、低抵抗の短絡膜がエッチングにより除去することにより、このまま、ウェハ段階での容量測定による検査を行うことができる。
(3)切断、パッケージング後も高抵抗として動作するため、従来必要であった回路側での放電防止用の高抵抗も不要になる。
という効果を奏するものです。
しかし、請求項1に係る考案では、どの時点で低抵抗膜が除去されるのか特定されていないため、上記効果(1)を奏しないパッド膜形成前に低抵抗膜が除去された物品や、パッド膜を電極指、信号側共通電極、グランド側共通電極等と同時に形成する物品、または上記効果(2)を奏しない切断後に低抵抗膜が除去された物品まで含むことになり、本件考案を特定する事項の記載に不備があります。
なお、実施的な請求項1に係る考案である、作成過程を除いた最終的な物品は、上記効果(3)だけは奏しますが、この効果は甲第1号証の考案も奏するものであり、格別なものではありません。』(異議申立書第8頁第18行?第9頁第4行)
【4】当審の判断
(1)実用新案法第5条(本件請求項1に係る考案の記載不備)について
異議申立人が主張する本件考案を特定する事項の記載不備については、理由がない。
すなわち、異議申立人は、「請求項1に係る考案では、どの時点で低抵抗膜が除去されるのか特定されていない」ことを指摘し、これを記載不備の根拠としているが、当該請求項1には「短絡膜を、圧電基板の表面に下層を高抵抗膜で上層を選択的に除去される低抵抗膜との少なくとも2層で形成」とその構成が明確に規定されており、「選択的に除去される低抵抗膜」は結果として除去されるもので有ればよいものであって、その時点が、「パッド膜形成工程のときに既に電極部分は低抵抗の膜で短絡されている(ので、放電による破壊を効果的に防止できる)」時点、あるいは「ウェハ段階での容量測定による検査を行う」時点まで等、所望の作用効果が達成される時点を適宜に選択して除去するように構成するものであるから、このような請求項1の記載において、本件考案を特定する事項の記載に不備が有るとまではいえない。
したがって、請求項1に係る考案の記載に不備があるとの異議申立人の主張は採用することができない。
(2)実用新案法第3条第2項について
(2-1)本件請求項1について
[a]引用刊行物
(a-1)甲第1号証(実開昭62-181036号のマイクロフィルム)には、弾性表面波装置に係わる考案が記載されており、その実施例及び図面第2図を参酌すると、以下のような記載が認められる。
・「第2図は本考案による弾性表面波装置の他の実施例を示す平面図であり、前述の図と同一部分には同一符号を付してある。同図において、交叉指状電極4を形成する電極指2の電極端子部2aと、アース接地される電極指3の電極端子部3aとの間には前述と同一構成による高抵抗薄膜7が接続されている。このような構成においても電極指2上に生じる静電気が高抵抗薄膜7を通して電極指3に放電される。」(出願公開明細書第4頁8?17行)
・「以上説明したように本考案によれば、交叉指状電極とアース電極との間を高抵抗薄膜で接続したことにより、交叉指状電上に発生する静電気を放電させることができるので、静電気の影響に起因する交叉指状電極の破壊あるいは静電気により付着した導電性異物による電極間の短絡を回避することができる。」(出願公開明細書第5頁2?8行)
以上によれば、弾性表面波装置において、電極指(2)の電極端子部(2a)(信号側共通電極)と、アース接地される電極指(3)の電極端子部(3a)(グランド側共通電極)との間を高抵抗薄膜(7)で短絡し、電極指部分で起きる放電をこの高抵抗薄膜(7)で防止する技術的事項が開示されている。
(a-2)甲第2号証(特開昭61-142811号公報)は、弾性表面波共振子に関するものであって、「実施例ではインタディジタル変換器及びグレーティング反射器の電極、反射体の構造がアルミニウム薄膜から構成されていたが、これに限定されることなくAlにCuやSiなどの不純物を徴量ドープした組成のもの、AuやTiとAu,CrとAuなどの二層構造のものなど導電体材料からできたものであれば本発明の効果は適用される。」(第4頁右下欄4?10行)と記載されている。
(a-3)甲第3号証(特開平02-048811号公報)は、弾性表面波素子に関するものであって、「この発明においては、ボンディングパッド部にはアルミパターンの下地にチタンが蒸着されているためパッド部における圧電基板とアルミパターンの密着性を向上できる。」(第2頁右上欄13?16行)と記載されており、アルミニウムの下地にチタンを用いて、圧電基板とアルミニウムの密着性を向上させる技術的事項が開示されている。
[b]対比・判断
本件請求項1に係る考案と前記甲第1号証(実開昭62-181036号のマイクロフィルム)に記載された考案(以下「引用考案」という。)とを対比すると、引用考案における「高抵抗薄膜(7)」は電極指(2)部分の放電を防止するものであるから、本件請求項1に係る考案における「短絡膜」に相当するものと認められる。
したがって、両者は以下とおりの一致点及び相違点を有するものである。
(一致点)
「信号側共通電極、これに接続された複数本の電極指、この複数本の電極指に非接触で交互に挿入された複数本の電極指及びこれに接続されたグランド側共通電極で構成された電極膜を低抵抗膜で形成し、
前記電極膜の近傍に設けられ前記信号側共通電極とグランド側共通電極間を短絡する短絡膜を、圧電基板の表面に高抵抗膜で形成して構成し、
前記電極指部分で起きる放電を前記短絡膜にて防止するようにした弾性表面波装置。」
(相違点)
(1) 電極膜が、本件請求項1に係る考案にあっては、圧電基板の表面に下層を高抵抗膜と上層を低抵抗膜との少なくとも2層で形成するものであるのに対して、引用考案にあっては、低抵抗膜の1層で形成するものである点、
(2) 短絡膜が、本件請求項1に係る考案にあっては、圧電基板の表面に下層を高抵抗膜で上層を選択的に除去される低抵抗膜との少なくとも2層で形成するものであるのに対して、引用考案にあっては、高抵抗薄膜の1層で形成するものである点、
(検討)
以下、相違点(1)(2)について、併せて検討する。
本件請求項1に係る考案は、その請求項において、電極膜及び短絡膜を2層構造とし、かつその具体的構成を圧電基板の表面に「下層を高抵抗膜」「上層を低抵抗膜」と規定するとともに、短絡膜を「上層を選択的に除去される低抵抗膜」となすことでその製造等を良好ならしめるものであって、本件明細書の段落番号【0020】に記載された作用効果を奏するものと認められる。
しかしながら、前記甲第2号証乃至甲第3号証には前記したように、いずれも電極膜あるいはボンディングパッド部を2層構造とすることに係わる技術的事項が開示されているにとどまるものであり、これからさらに進んで「下層を高抵抗膜」、また「上層を低抵抗膜」とすること、及び短絡膜を「上層を選択的に除去される低抵抗膜」とすることは、前記甲第2号証乃至甲第3号証の何れにも開示されておらず、さらにこの構成が自明乃至周知・慣用される技術的事項であるとも、あるいは当業者の技術常識によって適宜なし得る設計上の事項であるとも認められない。
なお、異議申立人が上申書で提出した刊行物(特開平3-29407号公報)を参酌しても、前記甲第2号証と同様に、電極膜を2層構造とすることに係わる技術的事項が開示されているにとどまるものである。
したがって、本件請求項1に係る考案は、前記相違点(1)(2)に係る構成について、甲第1号証乃至甲第3号証によっても当業者が極めて容易になし得るものとは認められない。
(2-2)本件請求項2及び請求項3について
本件請求項2に係る考案は、前記【2】記載のとおり請求項1に係る考案を引用するものであり、また本件請求項3に係る考案は、請求項1に係る考案を引用する請求項2をさらに引用するものであって、2層で形成される電極膜及び短絡膜についての構成をさらに限定するものである。
したがって、請求項2及び請求項3に係る考案と前記甲第1号証における考案との対比・判断においても、少なくとも前記請求項1に係る考案におけると同様の相違点を有するものであり、その判断においても同旨であるからこれを引用する。
よって、本件請求項2及び請求項3に係る考案は、甲第1号証乃至甲第3号証によっても当業者が極めて容易になし得るものとは認められない。
【5】むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1乃至3に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1乃至3に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2003-01-09 
出願番号 実願平3-111148 
審決分類 U 1 651・ 534- Y (H03H)
U 1 651・ 121- Y (H03H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 植松 伸二
治田 義孝
登録日 2001-11-22 
登録番号 実用新案登録第2607677号(U2607677) 
権利者 日本無線株式会社
東京都三鷹市下連雀5丁目1番1号
考案の名称 弾性表面波装置  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 宮寺 利幸  
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