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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A01K
審判 全部無効 5号その他政令で定めるもの。 無効とする。(申立て全部成立) A01K
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 無効とする。(申立て全部成立) A01K
管理番号 1073409
審判番号 無効2000-35407  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-04-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-24 
確定日 2003-01-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第2552677号実用新案「両軸受リール」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2552677号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件登録第2552677号実用新案(以下、「本件実用新案登録」という。)は、平成2年8月7日に実用新案登録出願された実願平2-83879号(以下、「本件出願」という。)に係り、その考案について平成9年7月11日に設定登録され、その後、リョービ株式会社より実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由が通知され、指定期間内の平成11年2月2日付けの訂正請求書により訂正請求がなされた後、前記異議の申立について、訂正の認容及び本件実用新案登録を維持する決定がなされ、その後、リョービ株式会社より本件実用新案登録について無効審判が請求され、被請求人より平成12年10月27日付けの審判事件答弁書の提出がなされ、請求人より平成13年3月30日付けの審判事件弁駁書の提出がなされ、請求人より平成13年4月9日付けの審判事件上申書の提出がなされ、請求人より平成13年5月16日付けの口頭審理陳述要領書が、また被請求人より平成13年5月16日及び平成13年5月30日付けの口頭審理陳述要領書がそれぞれ提出され、口頭審理(平成13年5月30日)がなされ、請求人より平成13年6月26日付けの上申書、及び被請求人より平成13年6月27日付けの意見書がそれぞれ提出されたものである。

第2 本件実用新案登録に係る考案
本件実用新案登録の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、設定登録後の平成11年2月2日付けの訂正請求により訂正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】リール本体を構成する左右のケース部(1),(1)に亘ってサムレスト(12)とリール脚取付用のロアーフレーム(13)とを配置するとともに、ハンドル軸(16)、レベルワインド機構(R)、スプール(6)、クラッチ操作具(7)夫々を配置して成る両軸受リールであって、前記リール本体の外形を、前記スプール(6)の軸芯(Q)に沿う方向視で円形、若しくは、略円形に成形するとともに、前記サムレスト(12)と前記ロアーフレーム(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、前記スプール(6)の軸芯(Q)を前記外形中心(P)を基準として前記サムレスト側に設け、前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置し、前記サムレスト(12)を前記リール本体における前記仮想水平面上に沿った前後方向において前記スプール(6)の軸芯(Q)より前方側でかつ前記レベルワインド機構(R)より後方側に位置させ、前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、かつ下方に位置させ、前記左右のケース部(1),(1)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある両軸受リール。」

第3 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、登録第2552677号実用新案の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、下記の証拠方法を提出し、以下の無効理由を主張する。その無効理由の要点は、次のとおりである。
無効理由1:本件考案は、甲第1号証ないし甲第8号証に記載の公知技術から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反するものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされた実用新案法(以下、「平成5年旧実用法」という。)第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。
無効理由2:本件実用新案登録は、平成5年旧実用法第5条第4項の規定に違反するものであり、平成5年旧実用法第37条第1項第3号の規定に基づき無効とされるべきものである。
無効理由3:本件実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項により新々特許法第5章の規定が準用され、特許法第120条の4第3項において準用される同第126条第2項の規定に反するものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第2項別表で読み替える平成5年旧実用法第37条第1項の規定に基づき無効とされるべきものである。
無効理由4:本件実用新案についてなされた平成8年7月19日付補正は、明細書の要旨を変更するものであり、手続補正書を提出した時に出願したとみなされるため(平成5年旧実用法第9条において準用する平成5年改正前特許法第40条)、本件考案は、甲第9号証に記載されている実施例の図面考案の存在により、その出願前に全部公知であったのであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第1項の規定に違反するものであり、また、少なくとも当業者であればきわめて容易に考案をすることができるものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反するものであり、平成5年旧実用法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。

甲第1号証:米国特許第2163914号明細書及びその訳文
甲第2号証:実開昭60-15167号公報
甲第3号証:実公昭60-8693号公報
甲第4号証:米国特許第1565402号明細書及びその抄訳
甲第5号証:米国特許第4223854号明細書
甲第6号証:米国特許第4226387号明細書
甲第7号証:米国特許第4919362号明細書
甲第8号証:実開昭60-36077号公報
甲第9号証:実開平4-41264号公報
甲第10号証:平成10年異議第72201号の異議決定書
甲第11号証:実願昭56-142437号(実開昭58-52965号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
甲第12号証:実願昭59-97728号(実開昭61-12373号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
甲第13号証:「昭和46年11月30日東高民六判」を引用紹介した文献(発行日及び発行者は不明)
甲第14号証:平成12年(ワ)第4634号実用新案権侵害差止等請求事件の原告株式会社シマノが平成12年8月25日に大阪地方裁判所第21民事部に提出した「準備書面(1)」の33頁及び別紙図面
参考資料1:甲第5号証及び甲第6号証の2欄1行?17行の抄訳
参考資料2:ABU日本総代理店株式会社エビスフィッシングが発行した冊子「ABU SWEDEN」の7頁、8頁及び15頁の写し(発行日は不明)
参考資料3:冊子「日本語版 Abu Garcia ambassadeur baitcasting reel」の3頁、4頁、11頁及び12頁の写し(発行日及び発行者は不明)

2.被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の前記主張に対し、下記の証拠方法を提出し、本件審判請求人の主張はいずれも失当であり、本件実用新案登録は無効にされるものではないと主張する。

乙第1号証:実開昭58-52965号公報
乙第2号証:実開昭61-12373号公報

第4 当審の判断
請求人が主張する無効理由1ないし無効理由4の無効理由のうち、まず無効理由1について検討し、次に無効理由3について検討する。
A.無効理由1について
1.甲号各証の記載事項
甲第1号証には、その訳文を参照すると、次の技術事項が記載されている。
「様々な可動部品を支持するリールのメイン・フレームは、垂直に配置され、かつ、互いに水平方向に離間する好ましくは円形の2つの端部ヘッド、即ち、プレート11,12と、両端を前記の複数のフレーム・プレートにそれぞれ連結した複数の水平ピラー、即ち、バー13,14,15,16とを有する。バー13はフレーム・ピラーとしてのみ機能し、バー14は釣り用リールを釣り竿へ取り付けるための手段の一部を構成するサドル17を支持する別の機能を有し、バー15は、スプール及び均等巻取機構の間に位置する釣糸18の一部が均等巻取機構の動作を妨げることを防止するガードとしても機能し、バー16は、釣糸配置機構、即ち、釣糸均等巻取機構の複数のエレメントのうちの1つに対するガイドとしても機能する。メイン・フレームの複数の端部プレート及び複数の長手方向バーによって囲まれた空間内には、釣糸18を巻き取るスプールが配置されている。スプールは小径のハブ19と、釣糸をスプール上に閉じ込めるための大径の端部ヘッド20,21とを有する。スプールのハブは、両端を対応するベアリングによってそれぞれ軸支したシャフト22へ取り付けられており、前記の一方のベアリングはフレームの端部プレート12内に設けられており、他方のベアリングは、フレーム・プレート11の外側に固定されたキャップ、即ち、ケーシング23に設けられている。リールの手動回転は様々な方法で実施可能である。例えば、図1,図5及び図6に示すキャップ、即ち、ケーシング23内に設けられたベアリングによって軸支された駆動シャフト24と、駆動シャフト24の外端に固定されたクランク25と、駆動シャフト24の内端に固定されるとともに、隣接するスプール・シャフトの端に位置する小型ギヤ・ピニオン27に歯合する比較的大きな直径の駆動歯車26とを有する手段によって、リールを手動で回転させ得る。スプールのハブに巻き取られる釣糸を、ハブの長さに沿って均等に配分するために、釣糸配置手段、即ち、釣糸均等巻取手段が設けられている。この手段は様々な構造を有し得るが、図示する手段は長手方向に沿って螺刻された2重のネジ山を備えたレベリング・スクリュー28を有する。レベリング・スクリュー28はスプールの一方の側部に配置されている。更に、レベリング・スクリュー28は、その両端がフレーム・プレート12及びケーシング、即ち、キャップ23内でそれぞれ軸支されているとともに、キャップ23内に設けられたギヤ.ピニオン29を有する。クランク25を回転させた際、レベリング・スクリューが釣糸支持用スプールと同時に回転するように、ギヤ・ピニオン29は駆動歯車26に歯合している。符号30はレベリング・スクリュー28へ取り付けられたトラベラー、即ち、キャリッジを示す。トラベラーは、レベリング・スクリュー28の長さに沿って往復動するとともに、レベリング・スクリュー28上で僅かに傾動できる。トレーサー、即ち、爪31によって、トラベラーはレベリング・スクリュー上を長手方向に移動する。爪31はトラベラー上でピボットするとともに、歯32を有する。歯32はレベリング・スクリューのネジ山に係合するとともに、レベリング・スクリューを回動した際に、トラベラーをレベリング・スクリューの長さに沿って前後へ移動させる。トラベラーの外側には、隣接する釣糸の部分を通す弾性ガイド・ループ33の一端が固定されている。この結果、釣糸をスプール上に巻き取る際、スプールの巻き取り回転中に、トラベラー及びガイド・ループが周知の方法でスプールの軸線に平行に同時に往復動することによって、釣糸がスプールの長さに沿って均等に配分される。トラベラーはレベリング・スクリュー上での僅かな傾動が可能である。しかし、スプリング・ワイヤから好ましくはなる釣糸ガイド・ループ33の外端を、メイン・フレームのうちのガイド・バーとして機能する隣接ピラー16内に設けられた長手方向案内溝、即ち、案内チャネル34に摺接させることによって、トラベラーを長手方向に摺動させ得る。」(甲第1号証の1頁左欄52行?2頁左欄21行(訳文の1頁28行?3頁18行参照))
そして、甲第1号証の釣り用リールの正面図である図1及び該図1の6-6線におけるリールの水平断面図である図6に、リール本体の左右側にフレーム・プレート(端部プレート)11、12が配置され、リール本体の右側(図1及び図6の左側)のフレーム・プレート11面に駆動シャフト24が突出してその先端部にクランク25が設けられ、リール本体の前側(図1の手前側、図6の上側)にレベリング・スクリュー28、トラベラー30及び弾性ガイド・ループ33からなる釣糸均等巻取手段がリール本体の左右両側のフレーム・プレート11、12にまたがるように配置され、バー14及びサドル17が一体となって、バー14の左右両端がリール本体の左右両側のフレーム・プレート11、12内面間に横架する姿勢でリベット等の手段により固着されて配置された釣り用リール、が図示されている。また、甲第1号証の図1の3-3線上の矢印の方向に見た3-3線における垂直断面図である図3に、外形が円形であるフレーム・プレート12の中心からやや斜め後上方に偏倚した位置にあるスプールのシャフト22の軸方向の水平視において、小径のハブ19と大径の端部ヘッド21とからなるスプールがフレーム・プレート12の外形からはみ出していないように配置され、フレーム・プレート12の外形内の右側(図3の右部、即ち、リール本体前部)の中程にレベリング・スクリュー28、トラベラー30及び弾性ガイド・ループ33からなる釣糸均等巻取手段が配置され、フレーム・プレート12の外形内の上側(図3の上部、即ち、リール本体上部)の中央位置からやや前側に、弾性ガイド・ループ33の先端部の自由端を移動可能に支持する状態でバー16が配置され、フレーム・プレート12の下側端縁からやや中心方向の上方に偏倚した位置にバー14及びサドル17が一体となって横断するように、かつ、サドル17の底面がフレーム・プレート12の外形からはみ出していないように配置された釣り用リール、が図示されている。
甲第2号証には「左右一対のフレーム基板(1)(1)とその下部に架設したリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)と上部に架設した連結杆(4)とからなる枠体(5)は炭素ガラス繊維等の補強材を混合した合成樹脂で一体に形成される」(3頁16行?4頁4行)が記載され、そして、その第2図に、フレーム基板(1)の下部にはリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)が配置され、またフレーム基板(1)の上部には連結杆(4)が配置され、かつ、スプール(19)の前方には釣糸のレベルワインド装置(24)が配置され、また前記レベルワインド装置(24)と反対側のスプール(19)の後方にはクラッチ操作レバー(26)が配置された魚釣用両軸受型リール、が記載されている。
甲第3号証には、両軸受けリールの枠体に関して、「左右の両側枠板1,1’の内側に夫々固定する左右の内面枠板2,2’と、リール取付脚3および中空主柱4等とを一体に成形し、」(2欄2行?5行)及び「上記内面枠板2,2’、リール取付脚3、中空主柱4は、それらを形成するのに適した任意所望の材料でダイカストにより一体に成形される。」(2欄20行?23行)が記載されている。
甲第4号証には、その明細書の1頁右欄90行?2頁右欄46行及び図1?図4の記載からみて、円形の端板1、2間にスプール3がリールの後方で斜め上方に偏倚して設けられ、これら端板1、2の前方にラインガイド4及びキャリッジ5が設けられ、また端板1、2間の上部前方には連結部材18が設けられ、端板1、2の下方にはベースプレート8の取り付け用のトランスバース部材9、10が設けられた両軸受リール、の記載が認められる。そして、この両軸受リールにおけるスプール3の軸芯が、端板1、2の外形中心より上方に偏倚した位置にあることが認められる。
甲第5号証及び甲第6号証には、請求人が提出した平成13年6月26日付け上申書の疎明及び抄訳を参酌すると、スーパーサムコントロールバー又はサムバータイプのフリースプールボタンと称せられる操作具をスプールの後方に配置し、レベルワインド機構をスプールの前方に配置した両軸受けリール、が記載されている。
甲第7号証には、FISHING REEL OF THE MULTIPLIER TYPEと題する発明、が記載されている(訳文の添付なし)。
甲第8号証には、その明細書及び図面の記載からみて、外形が側面視円形の左右両側枠2、2’間にスプール4の軸5が該両側枠2、2’の外形中心からやや偏倚して配置され、左右両側枠2、2’間に複数本の支持杆3が設けられると共に、左右両側枠2、2’間の下方に竿受8が設けられ、前記スプール4の後方にクラッチ機構をON、OFF操作可能なスライド型式のプッシュレバー9が配置された両軸リール、が記載されている。
甲第9号証は、本件考案の実用新案登録出願のマイクロフイルムであって、甲第9号証には、本件考案の願書に添付した明細書及び図面が示されている。
甲第10号証には、本件実用新案登録に対する異議申立事件(平成10年異議第72201号)の異議決定書が示されている。
甲第11号証には、乙第1号証の全文明細書及び図面が記載され、「大勢の釣人はキャスティングハンドルとリールを掌中に保持し、スプールの上側でかつスプール軸芯より前側に配置された円柱状支柱に親指を掛けてキャスティングハンドルとリールを仰角方向に操作容易に使用している。」(明細書2頁4行?8行)及び「しかし、円柱状支柱に親指があてられて力が掛けられていると、指の当たり位置が痛み、長時間指をあてておられない欠点がある。」(明細書2頁13行?15行)が記載されている。
甲第12号証には、乙第2号証の全文明細書及び図面が記載され、「従来魚釣用両軸受型リールの両側枠板間のスプールより前側には支柱とレベルワインダーが配置され、手の平で釣竿に取り付けられたリールが握られると上側の支柱に親指が掛けられてリールが保持され、支柱が円柱の場合は長時間親指が掛けられると親指が疲れて痛み、」(明細書1頁15行?20行)が記載されている。
甲第13号証には「構成要件が同一であれば同一の作用効果を営むことは条理上当然であり、かつ発明の目的は発明者の主観的意図に過ぎないから、本件特許発明の構成要件が全部引用例に開示されている以上、原告主張の本件特許発明の目的および作用効果が引用例に記載されていると否とを問わず、本件特許発明は引用例に容易に実施できる程度に記載されているものと認めざるを得ない」旨が記載されている。
甲第14号証には「仮想水平面の近傍」の定義についての被請求人の主張が記載されている。
参考資料1には、甲第5号証及び甲第6号証の2欄1行?17行の抄訳が記載されている。
参考資料2には、両軸受けリールにおけるスーパーサムコントロールバーについて記載されている。
参考資料3には、両軸受けリールにおけるサムバータイプのフリースプールボタンについて記載されている。

2.対比、判断
(1)本件考案と甲第1号証に記載の考案との対比、判断
(1-1)「近傍」の意義についての検討
請求人は、無効理由2として「本件考案は、リール本体の中心(P)を通過する仮想水平面の『近傍』においてスプール(6)の前方にレベルワインド機構(R)、及び、スプール(6)の後方にクラッチ操作具(7)を配置するとされているが、『近傍』の意義、すなわち、どの程度の範囲を近傍というのかについてはまったく記載されていない。また、被請求人は、本件考案の効果として『スプール軸芯をリール本体の外形中心より上方に偏位させて、前後長が最も長く採れる外形中心を通る仮想水平面上のスペースをより大きくして、その前端部と後端部とにレベルワインド機構とクラッチ操作具とを配置してスペースの有効利用を図る』ことを挙げているが、実用新案登録請求の範囲中には『サムレスト側』とあるのみで『上方』との記載はなく、スプールを上方に変位させた場合、レベルワインド機構及びクラッチ操作具を仮想水平面の上方(すなわち、スプールに近接する方向)に配置したのでは、スプールに妨げられ、前記スペースの有効利用という効果を奏しないものであり、『近傍』というだけでは、考案の外延が不明確であり、考案の詳細な説明に開示された技術事項をクレームしているとはいえない。したがって、本件考案に係る本件実用新案登録は、平成5年旧実用法第5条第4項の規定に違反してされたものである。」旨を主張し、本件実用新案における実用新案登録請求の範囲の記載不備を無効理由に挙げている。
そこで、本件考案における「近傍」について検討するに、本件考案の願書に添付した明細書又は図面(実用新案登録第2552677号公報参照)には、「近傍」についての定義が記載されていないところ、広辞苑第5版によれば、「近傍」の意義を「(1)近所。近辺。(2)〔数〕距離空間で、1点Pからの距離が或る値より小さいすべての点から成る部分集合を、Pの近傍という。一般の位相空間でも、この概念を拡張して、集合に属する各要素に対して近傍を設定する。」と定義している。
しかして、本件考案における「近傍」の意義を上記のとおりの一般的・通例的な意義の「近所。近辺。」として考えた場合でも、本件考案の作用効果の上でなんらの不都合を認めることができない。
そうしてみると、本件考案における「近傍」の範囲は、前記した一般的・通例的な意義どおりの「近傍」であり、そして、本件考案の作用効果を満たすような、レベルワインド機構(R)、スプール(6)、及びクラッチ操作具(7)の配置の位置が、すなわち本件考案における「中心(P)の近傍」というべきであるから、したがって、実用新案登録請求の範囲における「近傍」についての明細書の記載不備についての請求人の前記主張は、採用できない。

(1-2)甲第1号証に記載の考案
「近傍」の意義を、前記した一般的・通例的な意義どおりの「近所。近辺。」であると認定した上で、前記「1.甲号各証の記載事項」の欄における甲第1号証の記載事項を総合すると、甲第1号証には、リール本体を構成しスプールの軸芯に沿う方向視で外形が円形に成形された左右の2つのフレーム・プレート11,12間に、小径のハブ19と大径の端部ヘッド20,21とからなるスプールの軸芯がリール本体の外形中心を基準として前記外形中心よりやや上方に偏倚して設けられるとともに、前記スプールはフレーム・プレート11,12の外形からはみ出していないように配置され、前記フレーム・プレート11,12間の前記外形中心の近傍の高さ位置のスプールの前方に釣糸均等巻取手段が設けられ、また前記スプールの軸芯より前方側でかつ前記釣糸均等巻取手段の後方であって、フレーム・プレート11,12の上部内面間に亘ってバー16が横架されるとともに、前記フレーム・プレート11,12の下部内面間に亘って釣り竿取付け用のサドル17が一体に取り付けられたバー14が架橋されて、前記バー16と前記バー14とは前記リール本体の外形中心を基準にして上下に振り分けられて前記リール本体の外形より内側に位置するように配置されるとともに、前記バー14は、サドル17の底面から前記本体の外形中心までの距離が本体外形の半径以下としてあり、駆動シャフト24が前記釣糸均等巻取手段より後方かつ下方に配置された釣り用リール、が記載されているということができる。

(1-3)対比及び一致点・相違点
ここで、甲第1号証に記載の考案と本件考案とを対比すると、甲第1号証の「外形が円形の2つのフレーム・プレート11,12」「バー14」「駆動シャフト24」「釣糸均等巻取手段」「スプール」「釣り用リール」「サドル17」が、それぞれ本件考案の「リール本体を構成する左右のケース部(1),(1)」「ロアーフレーム(13)」「ハンドル軸(16)」「レベルワインド機構(R)」「スプール(6)」「両軸受リール」「釣り竿取付け用の脚部(14)」に相当する。
また、本件考案の「サムレスト(12)」と、甲第1号証に記載の考案における「バー16」とは、いずれも、それぞれリール本体を構成する左右のケース部(1),(1)及び2つのフレーム・プレート11,12の上部を連結する部分であるから、甲第1号証に記載の考案の「バー16」は、本件考案の「サムレスト(12)」とともに、等しく「上部連結部」であるということができる。
そこで、本件考案と甲第1号証に記載の考案とを比較すると、両者は「リール本体を構成する左右のケース部(1),(1)に亘って上部連結部とリール脚取付用のロアーフレーム(13)とを配置するとともに、ハンドル軸(16)、レベルワインド機構(R)、スプール(6)夫々を配置して成る両軸受リールであって、前記リール本体の外形を、前記スプール(6)の軸芯(Q)に沿う方向視で円形に成形するとともに、前記上部連結部と前記ロアーフレーム(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、前記スプール(6)の軸芯(Q)を前記外形中心(P)を基準として前記上部連結部側に設け、前記中心(P)の近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)を配置し、前記上部連結部を前記リール本体における前後方向において前記スプール(6)の軸芯(Q)より前方側でかつ前記レベルワインド機構(R)より後方側に位置させ、前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、かつ下方に位置させてある両軸受リール」である点で一致し、次の点で構成が相違している。
相違点1:リール本体を構成する左右のケース部(1),(1)に亘って配置される上部連結部が、本件考案では「サムレスト」とされているのに対して、甲第1号証に記載の考案の上部連結部である「バー16」が「サムレスト」であるか否か不明である点。
相違点2:本件考案が「前記中心(P)の近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置」するのに対して、甲第1号証に記載の考案は外形中心の近傍においてスプールの前方にレベルワインド機構が配置されてはいるが、スプールの後方にクラッチ操作具が配置されていない点。
相違点3:本件考案では、左右のケース部(1),(1)とサムレスト(12)とロアーフレーム(13)とが一体成型してあるのに対して、甲第1号証に記載の考案では一体成型されていない点。
相違点4:本件考案が「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部(14)を取付け」るものであるのに対し、甲第1号証に記載の考案ではバー14に釣り竿取付け用のサドル17が一体に取付けられている点。

(2)相違点についての検討
(2-1)相違点1について
本件考案の上部連結部である「サムレスト(12)」について検討すると、前記「サムレスト」の文言の意義が、その字義のとおり、親指(thumb)を置いて休ませる(rest)部分であることは容易に把握できるところ、被請求人は「乙第1号証及び乙第2号証におけるサムレストに対して、甲第1号証に記載のバー16のような単なる円柱状の棒では、親指を置くための幅がないから、本件考案のようなサムレストの機能を十分に果たさない」旨を主張する。
しかしながら、本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第11号証には「円柱状支柱に親指を掛けて」及び「円柱状支柱に親指があてられて」の記載のあることが認められ、また、同じく本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第12号証にも「上側の支柱に親指が掛けられてリールが保持され、支柱が円柱の場合は長時間親指が掛けられる」の記載のあることが認められる。
しかして、甲第11号証及び甲第12号証にそれぞれ記載された「円柱状支柱」及び「円柱の支柱」は、甲第11号証及び甲第12号証の前記記載から、いずれも、親指を置いて休ませる「サムレスト」ということができるから、したがって、前記甲第11号証及び甲第12号証にそれぞれ記載された「円柱状支柱」及び「円柱の支柱」と同様形状の柱状部材からなる甲第1号証に記載の考案における「バー16」も、本件考案の「サムレスト(12)」と等しく、親指を置いて休ませる「サムレスト」の機能を果たすものであるということができる。
以上のことから、甲第1号証に記載の考案の上部連結部である「バー16」は、本件考案の上部連結部である「サムレスト(12)」と同じく「サムレスト」と呼ばれるべきものであることが明らかである。
そうしてみると、甲第1号証には「サムレスト」としての「バー16」が実質上記載されているということができるから、本件考案と甲第1号証に記載の考案との間に、前記相違点1に係る構成上の差異はない。

(2-2)相違点2について
本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に、フレーム基板(1)の下部にはリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)が配置され、またフレーム基板(1)の上部には連結杆(4)が配置され、かつ、スプール(19)の前方には釣糸のレベルワインド装置(24)が配置され、また前記レベルワインド装置(24)と反対側のスプール(19)の後方にはクラッチ操作レバー(26)が配置された魚釣用両軸受型リールの記載のあることが認められ、前記甲第2号証の上記記載から、「両軸受けリールのリール本体の中央部またはその近傍において、スプールの前方にレベルワインド機構を配置し、前記スプールの後方にクラッチ操作具を配置すること」は、本件出願前の公知技術であるということができる。
また、同じく本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証に、スーパーサムコントロールバー又はサムバータイプのフリースプールボタンと称せられる操作具(本件考案の「クラッチ操作具(7)」に相当する。)をスプールの後方に配置し、レベルワインド機構をスプールの前方に配置した両軸受けリール、或いは、円形の両側枠2、2’間にスプール4の軸5が該両側枠2、2’の中心から偏倚して設けてあり、前記スプール4の後方には、クラッチ機構をON、OFF操作可能なプッシュレバー9が架橋され、支持杆3、竿受8及びスプール4が側枠2、2’間に配置されている両軸リールの記載のあることが認められることからみて、「外形が円形のリール本体の外形中心の近傍において、スプールの前方にレベルワインド機構を配置し、前記スプールの後方にクラッチ操作具を配置すること」は、本件出願前に広く採用されていた周知・慣用技術であるということができる。
そして、甲第1号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証にそれぞれ記載された考案の相互間に、甲第1号証に記載の考案に前記公知技術または周知・慣用技術を適用することを阻害する要因を認めるに足る記載を認めることができないから、甲第1号証に記載の考案に前記公知技術または周知・慣用技術を適用することに、当業者が格別の困難性を要するものとは認められない。
そうしてみると、甲第1号証に記載の考案に、前記公知技術または周知・慣用技術を適用することにより、本件考案の相違点2に係る「スプール(6)の後方にクラッチ操作具(7)を配置」する構成を得ることは、当業者がきわめて容易になし得ることである。

(2-3)相違点3について
本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に、フレーム基板(1)の下部にはリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)が配置され、またフレーム基板(1)の上部には連結杆(4)が配置され、かつ、スプール(19)の前方には釣糸のレベルワインド装置(24)が配置され、また前記レベルワインド装置(24)と反対側のスプール(19)の後方にはクラッチ操作レバー(26)が配置された魚釣用両軸受型リールにおいて、「左右一対のフレーム基板(1)(1)とその下部に架設したリール固定脚(2)を有する前後一対の支持柱(3)(3)と上部に架設した連結杆(4)とからなる枠体(5)は炭素ガラス繊維等の補強材を混合した合成樹脂で一体に形成される」ことが記載され、また、同じく本件考案の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証にも、左右の内面枠板2、2’とリール取付脚3および中空主柱4とを任意所望の材料でダイカストにより一体に成形した両軸受けリールの枠体、が記載されていることは、前記「1.甲号各証の記載事項」の欄に前述したとおりである。そして、これらの記載から、「両軸受けリールの左右の枠とリール取付脚及び支持柱とを一体に成形すること」は、本件考案の出願前の公知技術であるということができる。
そうしてみると、甲第1号証に記載の考案に甲第2号証及び甲第3号証に記載の上記公知技術を適用することにより、本件考案のような「前記左右のケース部(1),(1)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある」という構成を得ることは、当業者がきわめて容易に想到できることである。

(2-4)相違点4について
本件考案のように、ロアーフレーム(13)に釣り竿取付け用の脚部(14)を取付けられるように、ロアーフレーム(13)と釣り竿取付け用の脚部(14)とを別体にするか、或いは、甲第1号証に記載の考案のように、予めバー14(本件考案の「ロアーフレーム(13)」に相当する。)にサドル17(本件考案の「釣り竿取付け用の脚部(14)」に相当する。)を一体に取付けておくかは、必要に応じて当業者が適宜選択できる設計事項である。

そして、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載の考案の技術分野は、いずれも本件考案の技術分野と共通しているから、上記甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証にそれぞれ記載された考案から、当業者が本件考案の上記相違点2、相違点3及び相違点4に係る構成を想到することは、格別の困難性を要することではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件考案は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載の考案及び周知・慣用技術から当業者がきわめて容易に想到することができる程度のものであり、その作用効果も甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載の考案及び周知・慣用技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別のものということができない。
したがって、本件考案は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載の考案及び周知・慣用技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反するものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされた実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とされるべきものである。

B.無効理由3について
(1)訂正請求の手続の経緯及びその内容
被請求人は、本件実用新案登録に対する異議申立事件(平成10年異議第72201号)において、平成11年2月2日付けの訂正請求書を提出し、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、請求項1に係る考案の構成に「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、」なる限定要件を付加する訂正を含む訂正請求をした。
そして、被請求人は、この訂正請求の根拠として「明細書の『スプールを上方に偏位させたので、その分だけ二本のロアーフレームに取付けられる脚部位置をスプール軸芯近くに配置できて、脚部とサムレストとの間隔を狭めてリーリングにリールを握り込む手の握り易さを確保し』(登録公報2頁2欄40行?44行)の記載、及び第3図に基づくものであり、実用新案登録請求の範囲を減縮するものである」(本件登録異議意見書5頁1行?5行)をあげている。

(2)当審の判断
上記訂正請求の「脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下」という訂正が、脚部(14)の底面から前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)を上限としてそれ以下の範囲内にあることを意味するところ、本件考案の願書に添付した明細書又は図面(実用新案登録第2552677号公報参照)には、上記範囲の上限及び範囲の根拠となる記載がない。また、本件考案の願書に添付した図面の第3図(実用新案登録第2552677号公報参照)に示されているロアーフレーム(13)が配置されている位置は、上記訂正の「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、」という範囲の上限「本体外形の半径(T/2)」を示唆するものでもない。
そして、訂正された上記範囲において、特に脚部(14)の底面から前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が上記範囲の上限であるところの丁度本体外形の半径(T/2)であるような距離の、リール本体の下部位置にロアーフレーム(13)を設ける場合を考えたときに、本件考案の作用効果の一つである「リールを釣り竿に取付けた状態での釣り竿から上方への突出量を小さくする」なる作用効果を奏し得なくなることは明らかである。
そうしてみると、脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下の範囲内であること、特に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)の上限が「本体外形の半径(T/2)」であることを内容とする前記訂正請求における明細書の訂正事項は、本件考案の願書に添付した明細書又は図面(実用新案登録第2552677号公報参照)に記載した事項の範囲内のものではなく、また示唆されてもいない事項であり、そして、前記訂正事項が自明の事項であるということもできない。
したがって、上記訂正請求における明細書の訂正は、本件考案の願書に添付した明細書又は図面(実用新案登録第2552677号公報参照)に記載した事項の範囲内においてしたものと認めることができない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項により新々特許法第5章の規定が準用され、特許法第120条の4第3項において準用される同第126条第1項ただし書の規定に違反するものであるから、本件実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第2項別表で読み替える平成5年旧実用法第37条第1項の規定に基づき無効とされるべきものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証及び甲第8号証に記載の考案及び周知・慣用技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反するものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされた実用新案法第37条第1項第1号の規定に基づき無効とすべきものである。
また、平成11年2月2日付けの訂正請求による訂正が、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項により新々特許法第5章の規定が準用され、特許法第120条の4第3項において準用される同第126条第1項ただし書の規定に違反するものであるから、本件実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第2項別表で読み替える平成5年旧実用法第37条第1項の規定に基づき無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-08-27 
結審通知日 2001-08-31 
審決日 2001-09-13 
出願番号 実願平2-83879 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (A01K)
U 1 112・ 645- Z (A01K)
U 1 112・ 841- Z (A01K)
最終処分 成立    
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 佐藤 昭喜
二宮 千久
登録日 1997-07-11 
登録番号 実用新案登録第2552677号(U2552677) 
考案の名称 両軸受リール  
代理人 樋口 次郎  
代理人 小野 由己男  
代理人 小谷 悦司  
代理人 平野 和宏  
代理人 植木 久一  
代理人 鎌田 邦彦  

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