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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B65D |
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管理番号 | 1075001 |
審判番号 | 審判1999-35182 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2003-05-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-04-16 |
確定日 | 2003-03-31 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2528061号「輸送用コンテナへのラベル貼付構成」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成12年 6月 8日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成12(行ケ)年第0282号平成14年 9月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第2528061号の請求項に係る考案についての実用新案登録を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.特許庁における手続の経緯 本件登録第2528061号実用新案は、平成3年10月22日に出願され(優先権主張 平成3年8月30日)、平成8年12月2日に設定登録がなされたものである。 請求人である岐阜プラスチック工業株式会社は、平成11年4月16日に本件実用新案登録を無効にすることについて審判を請求し、特許庁は、これを平成11年審判第35182号事件として審理するなかで、被請求人より平成11年8月5日付けで訂正請求がなされ、平成12年6月8日に「請求を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本を当事者に送達した。 請求人はこの審決を不服として提訴し、東京高等裁判所はこれを平成12年(行ケ)第282号事件として審理し、平成14年9月24日に「特許庁が平成11年審判第35182号事件について、平成12年6月8日にした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を言い渡し、この判決は確定した。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正の内容 a.考案の名称を、「輸送用コンテナへのラべル貼付構成」と訂正する。 b.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1において、「物品」とあるのを、「輸送用コンテナ」と訂正する。 c.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1において、「前記ラベル貼付部は」とあるのを、「前記輸送用コンテナが、その側壁に前記ラベル貼付部を有するとともに、前記ラベル貼付部は」と訂正する。 d.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1において、「前記物品の表面より突出して設けられた」とあるのを、「前記輸送用コンテナの側壁の外面から突出した台座形状となっており、且つ、ラベルを貼る貼着表面に梨地加工が施されている」と訂正する。 e.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求頃2において、「物品」とあるのを、「輸送用コンテナ」と訂正する。 f.願書に添付した明細書の明細書実用新案登録請求の範囲において、請求項3を削除する。 g.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲において、「請求項4」を、「請求項3」と訂正する。 h.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項4において、「請求項1から3のいずれか」とあるのを、「請求項1又は請求項2」と訂正する。 i.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項5において、「前記ラベル貼付部は」とあるのを、「前記輸送用コンテナが、その側壁に前記ラベル貼付部を有するとともに、前記ラベル貼付部は」と訂正する。 j.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項5において、「形成する」とあるのを、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、「形成し、且つ、ラベルを貼る貼着表面に梨地加工が施されている」と訂正する。 k.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項5において、「物品」とあるのを、「輸送用コンテナ」と訂正する。 l.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲において、「請求項5」を、「請求項4」と訂正する。 m.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求頃6において、「物品」とあるのを、「輸送用コンテナ」と訂正する。 n.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲において、「請求項6」とあるのを、「請求項5」と訂正する。 o.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項6において、「請求項5」とあるのを、「請求項4」と訂正する。 p.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲において、請求項7を削除する。 q.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項8において、「物品」とあるのを、「輸送用コンテナ」と訂正する。 r.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項8において、「溝部」とあるのを、「底面を有する溝部」と訂正する。 s.願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲において、「請求項8」とあるのを、「請求項6」と訂正する。 t.願書に添付した明細書の【0007】【0008】【0009】【0017】【0019】及び【0027】において、「物品」とあるのを、「輸送用コンテナ」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (訂正事項aについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の各請求項に記載の考案を、実施例に記載の輸送用コンテナへのラべル貼付構成と訂正したので、考案の名称を、明りょうでない記載の釈明を目的として、実用新案登録請求の範囲の各請求頃に整合させるように訂正したものであり、従って、この訂正は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項bについて) 願書に添付した明細書の請求項1に係る考案は、物品へのラベル貼付構成に関する考案であったが、訂正明細書の請求項1に係る考案は、物品を、願書に添付された明細書の【0012】等に記載されているように、実施例に記載の輸送用コンテナに限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項cについて) 願書に添付した明細書の請求項1に係る考案は、ラベル貼付部の位置を特定していなかったが、訂正明細書の請求項1に係る考案は、願書に添付した明細書の【0012】や【0013】等に記載されているように、ラベル貼付部を、輸送用コンテナの側壁に限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項dについて) 願書に添付した明細書の請求項1に係る考案は、ラベル貼付部が、物品の表面より突出して設けられた点のみを限定したものであったが、訂正明細書の請求項1に係る考案は、願書に添付した明細書の【0013】等に記載されているように、ラベル貼付部を、輸送用コンテナの側壁の外面から突出した台座形状で、且つ、ラベルを貼る貼着表面に梨地加工が施されていると限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項eについて) 願書に添付した明細書の請求項2に係る考案は、物品へのラベル貼付構成に関する考案であったが、 訂正明細書の請求項2に係る考案は、物品を、願書に添付した明細書の【0012】等に記載されているように、実施例に記載の輸送用コンテナに限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項fについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項3を削除したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項gについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項3を削除したので、請求項4を、請求項3と訂正したものであり、従って、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項hについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求頃3を削除したので、請求項1又は請求項2と訂正したものであり、従って、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項iについて) 願書に添付した明細書の請求項5に係る考案は、ラベル貼付部の位置を特定していなかったが、訂正明細書の請求項5に係る考案は、願書に添付した明細書の【0012】や【0013】等に記載されているように、ラベル貼付部を、輸送用コンテナの側壁に限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項jについて) 願書に添付した明細書の請求項5に係る考案は、ラベルを貼る粘着表面についての限定はなかったが、訂正明細書の請求項5に係る考案は、願書に添付した明細書の【0013】等に記載されているように、ラベルを貼る貼着表面に、梨地加工が施されていると限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項kについて) 願書に添付した明細書の請求頃5に係る考案は、物品へのラベル貼付構成に関する考案であったが、訂正明細書の請求項5に係る考案は、物品を、願書に添付した明細書の【0012】等に記載されているように、実施例に記載の輸送用コンテナに限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項lについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求頃3を削除したので、請求項5を、請求項4と訂正したものであり、従って、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項mについて) 願書に添付した明細書の請求項6に係る考案は、物品へのラベル貼付構成に関する考案であったが、訂正明細書の請求項6に係る考案は、物品を、願書に添付した明細書【0012】等に記載されているように、実施例に記載の輸送用コンテナに限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又影変更するものではない。 (訂正事項nについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求頃3を削除したので、請求項6を、請求項5と訂正したものであり、従って、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項oについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項3を削除したので、請求項6において、請求項5とあるのを、請求項4と訂正したものであり、従って、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項pについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求頃7を削除したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項qについて) 願書に添付した明細書の請求項8に係る考案は、物品へのラベル貼付構成に関する考案であったが、訂正明細書の請求項8に係る考案は、物品を、願書に添付した明細書の【0012】や【0021】等に記載されているように、実施例に記載の輸迭用コンテナに限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項rについて) 願書に添付した明細書の請求項8に係る考案は、溝部を限定していなかったが、訂正明細書の請求項8に係る考案は、願書に添付した明細書の【0022】等に記載されているように、「底面を有する溝部」と限定したものであり、従って、この訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するとともに、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項sについて) 願書に添付した明細書の実用新案登録求の範囲の請求項3及び請求頃7を削除したので、請求頃8を、請求頃6と訂正したものであり、従って、この訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (訂正事項tについて) 願書に添付した明細書の物品を、訂正明細書において、願書に添付した明細書の【0012】等に記載されているように、実施例に記載の輸送用コンテナに限定したものであり、従って、この訂正は、特許請求の範囲の減縮に伴う明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-3.独立登録要件 ア.訂正明細書の請求項1?6に係る考案 訂正明細書の請求項1?6に係る考案(以下、「本件考案1?6」という。)は、その実用新案登録請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 輸送用コンテナに設けたラベル貼付部に剥離されるラベルを貼付するためのラベル貼付構成において、前記輸送用コンテナが、その側壁に前記ラベル貼付部を有するとともに、前記ラベル貼付部は該貼付部に貼付したラベルの少なくとも一部の縁部と前記輸送用コンテナとの間に、作業者が手指を挿入可能な幅及び深さの溝部を形成するように前記輸送用コンテナの側壁の外面から突出した台座形状となっており、且つ、ラベルを貼る貼着表面に梨地加工が施されていることを特徴とする輸送用コンテナへのラベル貼付構成。 【請求項2】 前記ラベル貼付部が前記輸送用コンテナとは別体にて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の輸適用コンテナへのラベル貼付構成。 【請求項3】 前記ラベル貼付部は略矩形に構成され、該略矩形のラベル貼付部の角部分に前記溝部が設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラベル貼付構成。 【請求頃4】 輸送用コンテナに設けたラベル貼付部に剥離されるラベルを貼付するためのラベル貼付構成において、前記輸送用コンテナが、その側壁に前記ラベル貼付部を有するともに、前記ラベル貼付部は複数の貼付台が前記輸送用コンテナの表面より突出して併設されることにより該貼付台間に間隙を形成し、該間隙は該貼付部に貼付したラベルの少なくとも一部の縁部と前記輸送用コンテナとの間に、作業者が手指を挿入可能な幅及び深さの空隙を形成し、且つ、ラベルを貼る貼着表面に梨地加工が施されていることを特徴とする輸送用コンテナへのラベル貼付構成。 【請求項5】 前記ラベル貼付部が前記輸送用コンテナとは別体にて形成されたことを特徴とする請求項4に記載の輸送用コンテナへのラベル貼付構成。 【請求項6】 輸送用コンテナに設けたラベル貼付部に剥離されるラベルを貼付するためのラベル貼付構成において、前記ラベル貼付は該貼付部に貼付したラベルの少なくとも一部の縁部と前記輸送用コンテナとの間に、作業者が手指を挿入可能な幅及び深さの空隙を形成する底面を有する溝部が前記輸送用コンテナの表面から凹んで設けられたことを特徴とする輸送用コンテナへのラベル貼付構成。」 イ.証拠に記載された事項 本件考案1?6に対して、請求人が書証として提出した甲第1号証〔実願昭57-79495号(実開昭58-183694号)のマイクロフィルム〕には、図面と共に、「磁気テープ用リール」に関して次のように記載されている。 1)「辺にかかった穴をあけた板(1)を、表面(2)に固着した、磁気テープ用リール。」(実用新案登録請求の範囲) 2)「第3図の様に指先が入る穴(4)があいた、合成樹脂、金属等の板(1)をリールの表面(2)に接着剤等で固着する。 そして、第1図の様に板の上へラベル(3)を穴にかかる様に貼り使用する。 この様にすると、穴に指先を入れて簡単にラベルをはがすことができる。・・・ (ニ)穴は、つきぬけていなくても良い。 (ホ)複数の板を間隔をあけて穴のかわりとしても良い。 (ト)板の形状は角形、円形、だ円形等どの様な形でも良い。 (チ)板をリールと一体成形しても良い。」(第2頁第1行-第3頁第1行) 同甲第3号証〔実願昭61-74584号(実開昭62-188414号)のマイクロフィルム〕には、「合成樹脂製容器」 に関して次のように記載されている。 1)「容器の側壁外面に多数の凹部もしくは凸部が設けられていることを特徴とする合成樹脂製容器。」(実用新案登録請求の範囲) 2)「第1図は本考案に係わる合成樹脂製容器の一例を示す斜視図である。 合成樹脂製容器は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂によって成形され、側壁外面1に多数の凹部もしくは凸部2が設けられている。凹部もしくは凸部2の形状としては円形、角形等を挙げることができる。一般に凹部もしくは凸部2の面積は5?30mm2、凹部もしくは凸部2の分布率は100?500個/100cm2、凹部の深さ及び凸部の高さは0.3?0.8mmとすることが好ましい。」(第2頁第9?19行) 3)「本考案に係わる合成樹脂製容器は、側壁外面1の凹部もしくは凸部2が多数設けられた部分に貼着紙を貼り付けると、凹部もしくは凸部2が多数設けられていることによって側壁外面1と貼着紙との接触面積が小さいために貼り付けた粘着紙を容器の側壁外面1から容易に剥離させることができる。」(第3頁第1?7行) 同甲第4号証〔実願平1-86886号(実開平3-26737号)のマイクロフィルム〕には、「平パレット」 に関して次のように記載されている。 1)「側面にラベル貼付可能な高さを有する平パレットにおいて、4側面のうち少なくとも1側面にラベル貼付用の凹部を設けるとともに該凹部表面を凹凸面としたことを特徴とする平パレット。」(実用新案登録請求の範囲) 同甲第5号証〔実願平1-68668号(実開平3-8116号)のマイクロフィルム〕には、「運搬用容器」 に関して次のように記載されている。 1)「本考案は第1図に示すように容器本体1の側壁2,3の窓部5に隣接した外面に凹凸群からなる貼着部4,4を形成し、該貼着部4,4の周縁の壁には部分的に手指を挿入し得る程度の大きさの欠如部6,7を設けてある。切欠部6,7は図面に示すように窓部5の一部をなすように設けてもよいが窓部と別個に設けてもよく、個数も複数個以上設けてもよい。また貼着部4の凹凸群は縦じま、横じま格子状或いはランダム凸部等適宜の形状を採ることができる。」(第2頁第12行?第3頁第2行) ウ.対比・判断 (本件考案1について) 本件考案1と甲第5号証に記載された考案(以下、「甲第5号証」という。)とを対比すると、両者は、 「 輸送用コンテナに設けたラベル貼付部に剥離されるラベルを貼付するためのラベル貼付構成において、前記輸送用コンテナが、その側壁に前記ラベル貼付部を有するとともに、前記ラベル貼付部は該貼付部に貼付したラベルの少なくとも一部の縁部と前記輸送用コンテナとの間に、作業者が手指を挿入可能な幅及び深さの溝部を形成することを特徴とする輸送用コンテナへのラベル貼付構成」の点において一致し、次の2点において相違するものと認められる。 (1)本件考案1においては、ラベル貼付部は輸送用コンテナの側壁の外面から突出した台座形状となっているのに対し、甲第5号証においては、ラベル貼付部は凹凸群が形成されているものの、輸送用コンテナの側壁の外面から突出した台座形状ではない点、 (2)本件考案1においては、ラベルを貼る貼着表面に、梨地加工が施されているのに対して、甲第5号証においては、凹凸群が形成されている点。 そこで相違点について検討する。 (相違点1について) 作業者が、輸送用コンテナ等の容器の側壁の外面に貼付られたラベルを、手指を該ラベルの下に挿入することによって剥がすために、溝部を形成したラベル貼付部を、輸送用コンテナ等の容器の側壁の外面から突出した台座形状とすることは、本件考案に係る優先権主張日(以下「本件優先権主張日」という。)当時、当業者の一般的認識としてあったものと認められる(甲第1号証参照)。 してみれば、本件考案1において、ラベル貼付部を輸送用コンテナの側壁の外面から突出した台座形状とすることは、上記のとおり周知の技術手段を単に輸送用コンテナの側壁に転用したにすぎず、格別の困難性があるものとはいえない。 (相違点2について) 甲第5号証をはじめ、甲第3号証及び甲第4号証には、ラベルを貼る貼着表面に、多数の凹部もしくは凸部を設けたり、一定間隔の筋状突条もしくは格子状突条を設けたり、多数の点状の突起を設けたり、縦じま、横じま格子状或いはランダム凸部等からなる凹凸群を設けることにより、ラベルを貼着面より容易に剥離できるようにすることが記載されており、本件優先権主張日当時、ラベルを貼着面より容易に剥離できるようにするために輸送用コンテナ等の容器の表面に凹凸群を設けることが、当業者の一般的認識としてあったものと認められる。 ところで、梨地加工とは、一般的に、研磨剤により表面に微細でかつランダムな凹凸を形成することにより、銀白色ないし銀鼠色を呈するように加工することを意味するものであるとされている(「切削加工技術便覧」日刊工業新聞社 昭和37年9月30日発行 第940頁参照)。 また、実願昭62-4708号(実開昭63-115481号)のマイクロフィルムには、「従来、この種の複合成形品においては、・・・しぼを形成するとともに表面処理を行なった成形品1の表面2に、シール3を直接貼り付けていた。・・・成形品1と表面2とシール3との間に空気が存在してしまうため、貼り付けたシールが剥れやすい。」(第1頁第18行?第2頁第7行)との記載があり、本件考案に係る願書に添付した明細書には「また、容器のラベル貼付面にシボ加工(梨地加工)を施して剥離性を高めることが提案されている。」(【0005】欄第5-6行)と記載されており、本件考案の訂正明細書にも、同一箇所に同一の記載がある。これらの記載によれば、本件優先権主張日当時、成形品に「しぼ」を形成した表面では、貼り付けたシールがはがれやすいことが、当業者の一般的認識としてあったものと認められる。 社団法人日本合成樹脂技術協会編「プラスチック金型ハンドブック」(日刊工業新聞社、1989年6月30日発行)には、「シボ工法としてのブラスト法は、一般にサンドブラスト(sand blast)、ショットブラスト(shot blast)を意味し、物理的処理による梨地加工法である。」(第690頁第14?15行)との記載があり、「射出金型の基本と応用」(日本プラスチック加工技術協会編集、昭和59年9月1日発行)には、「化成処理には化学的腐食(エッチング)によるシボ(梨地)・・・などがあるが、・・・」(第310頁末行?第311頁第2行)との記載がある。これらの記載によれば、本件優先権主張日当時、「しぼ」とは、通常、梨地加工を意味するものであるとされていたことが認められる。 本件考案の願書に添付した明細書には「シボ加工(梨地加工)」(【0005】欄第6行)、「上面14aは梨地状にシボ加工されている」(【0013】欄第4行)と記載されており、本件考案の訂正明細書の同一欄にも同一の記載がある。これらの記載によれば、被告においても「しぼ」と「梨地加工」とを同一のものとして認識していたものと認められる。 したがって、本件優先権主張日当時、「しぼ」とは、通常「梨地加工」のことを意味することは、当業者の技術常識であり、成形品の表面に「しぼ」すなわち「梨地加工」を施した表面において、貼り付けたシールがはがれやすいことは、当業者において周知の技術的事項だったというべきである。 そこで、甲第3?5号証に記載されたものが、シボ加工(梨地加工)に相当するか否かについて検討すると、甲第5号証に記載されたランダム凸部からなる凹凸群が形成されたものは、凸部がランダムになっている凹凸群と認められるが、凹凸の大きさを限定する記載はなく、かつ本件考案の実用新案登録請求の範囲第1項においても、「梨地加工が施されている」との記載があるだけで、「微細な多数の凹凸からなる」との記載はなく、その他凹凸の大きさや数について限定する記載は何もないから、実質的に本件考案の「梨地加工」は、甲第5号証に記載された「ランダム凸部からなる凹凸群」と同じものといえる。 したがって、本件考案1は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 してみれば、本件考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものではない。 エ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第2項の規定により読み替えられる旧実用新案法第40条第2項により準用する旧実用新案法第39条第3項の規定に適合しないので、当該訂正を認めない。 3.無効審判請求についての判断 3-1.請求人の主張 請求人は、書証として甲第1?5号証を提出し、甲第3?5号証にラベルを貼る貼着表面に梨地加工を施すことが記載されており、かりにそうでないとしても、ラベルを貼る貼着表面に梨地加工を施すことは、上記上申書に添付した刊行物にみられるように本件の出願前に周知の事項であるから、本件考案1?3及び本件考案4、5は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができる程度のものであり、また、本件考案6は、甲第1号証及び甲第5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができる程度のものであり、本件考案1?6に係る実用新案登録は、旧実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである、旨主張している。 3-2.被請求人の主張 被請求人は、答弁書及び第2答弁書において、甲第3?5号証には、ラベルを貼る貼着表面に梨地加工を施すことは記載されていないし、また、上記上申書をみても、ラベルを貼る貼着表面に梨地加工を施すことが本件の出願前に周知の事項であるとは認められないから、請求人の主張には理由がない旨主張している。 3-3.当審の判断 上記「2-3.独立登録要件」において示したとおり、本件考案1?6は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 なお、甲第2号証は、口頭審理において、請求人より参考資料とする旨の陳述があったものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案は、旧実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、旧実用新案法第37条第1項第1号の規定に該当するので、無効とする。 また、審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-05-16 |
結審通知日 | 2000-05-26 |
審決日 | 2000-06-08 |
出願番号 | 実願平3-86088 |
審決分類 |
U
1
112・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 粟津 憲一、会田 博行 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
吉国 信雄 山崎 豊 渡邊 真 祖山 忠彦 |
登録日 | 1996-12-02 |
登録番号 | 実用新案登録第2528061号(U2528061) |
考案の名称 | 輸送用コンテナへのラベル貼付構成 |
代理人 | 森 厚夫 |
代理人 | 西川 惠清 |
代理人 | 平井 保 |