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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A47G
管理番号 1076563
審判番号 無効2000-35591  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-10-26 
確定日 2003-03-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第2577654号実用新案「被服用ハンガー」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由
1.手続の経緯と本件登録実用新案

本件登録第2577654号実用新案(以下、「本件考案」という)は、平成3年4月9日に実用新案登録出願され、平成10年5月15日に実用新案登録がなされ、平成12年10月26日に請求人プラコム株式会社より、無効審判の請求がなされた。

そして、本件考案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】中央部にフック5を有するハンガー本体2と、このハンガー本体の水平部3の左右に摺動可能に設けられた1対のピンチ4とから成る合成樹脂製被服用ハンガーに於いて、前記ハンガー本体の側壁3a、3bの少なくとも上縁部に前記ピンチのガイド用断面T字部状突壁7、7を形成し、またこれらの断面T字部状突壁7、7よりも下位のハンガー本体の水平部の側壁には、直線状のガイド用突起8を形成し、一方前記ピンチは、長さ方向にバネ貫挿用窓11および挾持バネ15の両端部15a、15aが係合するバネ係合用の外壁凹所12、12をそれぞれ有すると共に、内壁面に前記縁部の突壁7、7とそれぞれスライド係合する第1係合部13、13並びに前記直線状のガイド用突起8と係合スライドする第2係合部14、14を有する左右一対の挾着片9、10と、前記両端部15a、15aが前記窓11から貫挿され,かつ,前記外壁凹所に弾発的に係合圧接すると共に、非磁性体としての鉄分を有しない材料でU字型状に形成された前記挟持バネ15とから成ることを特徴とする被服用ハンガー。
【請求項2】請求項1に於いて、ハンガー本体2の水平部3は、縦断面がやや漢字の「王」の字に似た形状であることを特徴とする被服用ハンガー。」

2.当事者の主張

2-1.請求人の主張

請求人は、「実用新案登録第2577654号明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に係る考案についての登録を無効とする、審判請求の費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、本件請求項1及び2に係る考案は、甲第2号証乃至甲第3号証記載のものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであって実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第37条により無効とすべきものである、旨主張し、証拠方法として下記のものを提出している。

甲第1号証:本件考案に係る実用新案登録第2577654号公報
甲第2号証:実願昭47-143765号(実開昭49-97036号)のマイクロフィルム
甲第3号証:米国特許4382531号明細書

2-2.被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求め、(1)本件審判請求は一事不再理の原則に該当し却下すべき、又は(2)本件考案は甲第2号証乃至甲第3号証に記載されたものに基づいてきわめて容易に考案をすることができたものではない、旨主張している。

3.当審の判断

3-1.一事不再理について

まず、本件審判請求が一事不再理に該当するか否かについて、当事者間に争いがあるので、この点について判断する。

本件審判請求で証拠として挙げられた甲第2号証、甲第3号証と、先の平成10年審判第35409号において挙げられた甲号各証とは、別個独立の出願に基づく異なる刊行物であり、その記載内容を検討しても実質的に同一のものとも認められない。したがって、本件審判請求は、一事不再理に該当するとは言えず、特許法167条の規定を適用することはできない。

3-2.実用新案法第3条第2項違反について

次に、請求人の、本件請求項1及び2に係る考案は甲第2号証乃至甲第3号証記載のものから当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであって実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第37条により無効とすべきものである旨の主張について検討する。

3-2-1.請求項1に係る考案について

(1)甲号各証記載の考案

甲第2号証の刊行物である実願昭47-143765号(実開昭49-97036号)のマイクロフィルムには、図1及び図2と共に、次の記載がある。

「1はハンガーの本体で、係止部2及び左右の肩部3を一体的に形成してあり、左右の肩部3にクリップ4を装着している。肩部3は凸状とした上縁5、外側縁6及び下縁7を形成し、(中略)さらに、上縁5の下方に一定間隔を有して凸状の枠8を形成することにより上縁5と枠8の間にガイド9を設け、(中略)ガイド9は上縁5、下縁7、外側縁6及び仕切り10により囲まれて形成されていることになる。」(第2頁4?16行)

「次にクリップ4の構造を説明する。クリップ4は2枚1組の支持板11を相対向させ、バネ12により肩部3を挾んで2枚の支持板11を取り付けている。支持板11は上方にバネ12の貫挿通する窓13を形成すると共に前記ガイド9内を左右摺動する突起14及び下方にズボン等を挾着固定する挾着部15を凹凸歯状を成して形成している。バネ12は逆U字状で、突起14をガイド9に遊嵌合させた2枚の支持板11を外方より肩部3方向に押圧」(第2頁17行?第3頁5行)

「クリップ4を組立てた後移動させてガイド9内に突起14を嵌合させる際、突起14が枠8の下方に移動する虞れがなく、組立時に非常に便利が良いと共に仕切り10の作用でクリップ4が必要以上内方に移動せず、常にガイド9の範囲内において左右動する」(第4頁5?10行)

甲第3号証の刊行物である米国特許4382531号明細書には、図面と共に、次の記載がある。

「Like the body portion 20, the hook 24 is also formed as an integral unit of plastic, and preferably the same plastic as that of the body portion.(当審翻訳:本体部20と同様に、留め部24もまた必須構成としてのプラスチックで形成され、望ましくは当該本体部と同じプラスチックで形成される。)」(第4欄8?10行)

「Each of the jaws is formed of plastic material which is low in cost, lightweight, durable and resilient. The biasing means 204 is also formed of a plastic material but which preferably exhibits a higher tensile strength and resiliency than the material forming the jaws 202.(当審翻訳:各顎部は、低廉かつ軽量で、耐久性と弾力性のある、プラスチック材料で形成される。偏性部材204もまたプラスチック材料で形成されるが、当該顎部204のそれよりも高い張力と弾力性を有することが望ましい。)」(第4欄22?27行)

(2)対比

本件請求項1に係る考案と上記甲第2号証記載のものとを対比すると、後者の「係止部2」、「肩部3」、「クリップ4」、「ハンガー」、「上縁5」、「枠8」、「窓13」、「バネ12」、「支持板11」は、前者の「フック5」、「水平部3」、「ピンチ4」、「被服用ハンガー」、「ガイド用断面T字部状突壁7、7」、「ガイド用突起8」、「バネ貫挿用窓11」、「挾持バネ15」、「挾着片9、10」にそれぞれ相当する。

してみれば、両者は、「中央部にフックを有するハンガー本体と、このハンガー本体の水平部の左右に摺動可能に設けられた1対のピンチとから成る被服用ハンガーに於いて、前記ハンガー本体の側壁の少なくとも上縁部に前記ピンチのガイド用断面T字部状突壁を形成し、またこれらの断面T字部状突壁よりも下位のハンガー本体の水平部の側壁には、直線状のガイド用突起を形成し、一方前記ピンチは、長さ方向に挾持バネ貫挿用窓を有する左右一対の挾着片と、両端部が前記窓から貫挿され,かつ,弾発的に係合圧接するU字型状に形成された前記挾持バネとから成る被服用ハンガー」の点で一致し、次の各点で相違する。

相違点1:被服用ハンガーの材質に関し、本件請求項1に係る考案が「合成樹脂製」であるのに対し、甲第2号証記載のものは、その材質が不明の点。

相違点2:挾持バネのピンチへの係合に関し、本件請求項1に係る考案が「バネ係合用の外壁凹所」を設け、かかる「外壁凹所」に挾持バネを弾発的に係合圧接するのに対し、甲第2号証記載のものは、こうした「バネ係合用の外壁凹所」を有していない点。

相違点3:ハンガー本体の側壁とピンチの挾着片との関連構成において、本件請求項1に係る考案が挾着片の内壁面に「(側壁の)縁部の(断面T字部状)突壁7,7とそれぞれスライド係合する第1係合部13,13並びに(側壁の)直線状のガイド用突起8と係合スライドする第2係合部14,14を有する」のに対し、甲第2号証記載のものは、側壁の縁部の断面T字部状突壁とガイド用突起との間の「ガイド9」に、挾着片の内壁面に設けられた「突起14」を「遊嵌合」させている点。

相違点4:挾持バネの材質に関し、本件請求項1に係る考案が「非磁性体としての鉄分を有しない材料」であるのに対し、甲第2号証記載のものは、その材質が不明の点。

そこで、請求人、被請求人共に、「相違点に実質的な差異は無い」との共通の主張により、双方において争いのない上記相違点2を除き(第1回口頭審理調書被請求人の陳述3参照)、各相違点について以下に検討する。

上記相違点3について、請求人は、「クリップ4が摺動する際には、支持板11の突起14は、上縁5、枠8に挟まれて支持された状態となっており、突起14は上縁5、枠8の間をスライドする。この場合、甲第2号証の突起14が上縁5及び枠8の間に入り込んでこれらに係合している構造であるのに対し、本件考案では、第1係合部13及び第2係合部14が突壁7、ガイド用突起8に対して外側から係合した構造であり、凹凸が逆となっているが、上下の2箇所で支持する基本的な構造及びその作用に変化はなく、実質的に同じとなるものである」(平成13年6月8日付口頭審理陳述要領書及びこれを訂正する第1回口頭審理調書参照)と主張しているが、甲第2号証記載のものは、前掲の通り、「ガイド9」に、挾着片の内壁面に設けられた「突起14」を「遊嵌合」させるものであり、かかる「遊嵌合」の記載から、請求人も認めるように、「突起14」は上下面に隙間を持って「ガイド9」に支持されるものである(第1回口頭審理調書請求人の陳述5参照)。

このように当該箇所の上下面に隙間を有する限り、上下面において二カ所の「係合」関係を有するとは言えず、請求人の「甲第2号証の突起14が上縁5及び枠8の間に入り込んでこれらに係合している構造である」との主張は認められない。

また、本件請求項1に係る考案が、「第1係合部」に加え、「第2係合部」も「係合スライド」するように構成したことから、「ピンチ4は、「上下の2点」で支持された状態で水平方向に移動」し、「ピンチを水平方向へ移動させる際に対向する前後の挾着片が上下または左右にずれない」とする明細書記載の特有の作用効果を奏するものであり、前掲の請求人の「上下の2箇所で支持する基本的な構造及びその作用に変化はなく、実質的に同じ」とする主張も認められない。

そして、甲第3号証には、先に引用したように、「本体部20」(本件請求項1に係る考案の「水平部」に相当)、「留め部24」(同「フック」)、「顎部204」(同「ピンチ」)、「偏性部材204」(同「挾持バネ」)を、それぞれプラスチックで形成したものが記載される。一般にプラスチックが、「合成樹脂」の一態様であり、特段の事情のない限り「非磁性体としての鉄分を有しない材料」であることに鑑み、当該甲第3号証記載のものは、上記相違点1及び4に係る構成を示唆しうるものであるが、上記相違点3の「(側壁の)縁部の(断面T字部状)突壁とそれぞれスライド係合する第1係合部並びに(側壁の)直線状のガイド用突起8と係合スライドする第2係合部を有する」点ばかりか、その前提である「断面T字部状突壁」や「ガイド用突起」の記載や示唆さえも認められない。

以上の通り、上記相違点3において認定した、本件請求項1に係る考案の構成は、甲第2号証及び甲第3号証の何れにも、何ら記載も示唆するものではなく、加えて、かかる構成により、本件請求項1に係る考案には、明細書記載の本件特有の作用効果を生じせしめているものである。

そうすると、本件請求項1に係る考案は、甲第2号証乃至甲第3号証記載のものに基づいて当業者がきわめて容易に成し得たものとはいえず、請求人の主張する無効理由は理由がない。

3-2-2.請求項2に係る考案について

本件請求項2に係る考案は、上記請求項1に係る考案を更に限定したものであるから、本件請求項1に係る考案について判断したと同様の理由により、上記甲号各証記載のものから当業者がきわめて容易に想到できたものとすることはできない。

4.むすび

以上の通りであるから、本件実用新案登録は請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2001-06-22 
出願番号 実願平3-31900 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (A47G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 寛  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 澤井 智毅
岡本 昌直
登録日 1998-05-15 
登録番号 実用新案登録第2577654号(U2577654) 
考案の名称 被服用ハンガー  
代理人 斎藤 栄一  
代理人 瀬谷 徹  
代理人 三浦 光康  
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