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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B60Q |
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管理番号 | 1076564 |
審判番号 | 無効2002-35407 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2003-06-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-09-25 |
確定日 | 2003-04-28 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2600605号実用新案「車両ウインカーランプの減光装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第2600605号の請求項1及び2に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件考案 本件登録第2600605号実用新案の請求項1及び2に係る考案(平成5年6月26日出願、平成11年8月13日設定登録。以下「本件考案1及び2」という。)は、登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 スモール信号が入力されるスモール信号入力部と、 ウインカー信号が入力されるウインカー信号入力部と、 ウインカー信号を出力するウインカー信号出力部と、 左右のウインカーランプに対し片側ずつ独立して設けられるとともに発振回路を備え、前記スモール信号入力部に信号が入り、前記ウインカー信号入力部に入力信号がない場合には、所定のデューティ比によりパルス幅制御された制御出力をウインカー信号出力部より出力させる一方、前記ウインカー信号入力部に信号が入った場合にはウインカー信号を出力させる出力制御回路と、 を備えたことを特徴とする車両ウインカーランプの減光装置。 【請求項2】 スモール信号が入力されるスモール信号入力部と、 ウインカー信号が入力されるウインカー信号入力部と、 ウインカー信号を出力するウインカー信号出力部と、 左右のウインカーランプに対し片側ずつ独立して設けられるとともに発振回路を備え、前記スモール信号入力部に信号が入り、前記ウインカー信号入力部に入力信号がない場合には、所定のデューティ比によりパルス幅制御された制御出力をウインカー信号出力部より出力させる一方、前記ウインカー信号入力部に信号が入った場合には、前記ウインカー信号入力部から入力されたウインカー信号を出力させる出力制御回路とを備え、 前記出力制御回路は、前記ウインカー信号入力部に断続的なウインカー信号が入ったときにこれを連続信号に変換する変換回路部を備え、前記発振回路は、その変換回路部からの前記連続信号を受けることにより、前記デューティ比によるパルス幅制御を停止することを特徴とする車両ウインカーランプの減光装置。」 2.請求人の主張 これに対して、請求人は、本件考案1及び2の実用新案登録を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件考案1及び2は、本件出願前に頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである旨主張している。 3.被請求人の主張 一方、被請求人は、本件考案1及び2は甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできず、本件審判請求は成り立たない旨主張している。 4.甲第1号証及び甲第2号証 (1)甲第1号証(実公昭49-4632号公報)には、車輛に於ける方向指示灯駆動回路について、図面と共に以下の事項が記載されている。 ・「第1図の回路は左右何れか一方の回路が示されているものである。」(第2頁第3欄第22?23行) ・「今第2図のTsなる方向指示信号が回路の入力端子Tに加わえられると、該信号Tsの1?2の期間はその信号電圧が電源電圧を抵抗R_(1),R_(2)で分圧したその中点の電圧よりも高くなるのでトランジスタT_(1)は作動状態となり、従って端子Tから流れ込んだ信号電流は抵抗R_(4)を経てトランジスタT_(3)のベースに流れ該トランジスタT_(3)を作動状態としてリレーRを励磁し、可動接点aが固定接点Cより固定接点b側に閉じられランプLは通電される。 次に方向指示信号Tsが[「か」は誤記。]3?4の期間は信号電流がたたれる為、トランジスタT_(1),T_(3)は不作動状態となる為、可動接点aは固定接点Cに復帰しランプLは消灯する。 更に方向指示信号Tsが5?6の期間になると前記した1?2の期間の場合と同様の動作によってランプLは点灯するものである。従ってランプLは方向指示信号Ts[「Te」は誤記。]と全く同じ作動する。」(第2頁第3欄第25?43行) ・「次に第2図の制動信号Bsのみが回路の入力端子Bに加えられると、信号電流は抵抗R_(3)ダイオードD_(2)を介してトランジスタT_(3)のベースに加えられるので、該トランジスタT_(3)は作動状態となる為、前記した方向指示信号の時と同様にしてランプLは点灯される。」(第2頁第3欄第44行?第4欄第5行) ・「次に方向指示信号Tsと制動信号Bsとが、それぞれの入力端子T,Bに加えられる(方向指示信号Tsは左右の回路のどちらか一方)と端子Tより入った方向指示信号電流はトランジスタT_(1)を通り一部は抵抗R_(4)を経てトランジスタT_(3)のベースに流れて該トランジスタT_(3)を作動状態としランプLを点灯する。 一方信号電流の一部はダイオードD_(1)を経てコンデンサCを充電すると共に抵抗R_(5)を経てトランジスタT_(2)のベースに流れて該トランジスタT_(2)を作動状態とする。 従って入力端子Bから入った制動信号電流は抵抗R_(3)を経てトランジスタT_(2)でアースされる結果となり制動信号Bsは遮断される。この状態に於いて方向指示信号Tsが9?10の期間になるとトランジスタT_(1)は不作動状態なり抵抗R_(4)を経てトランジスタT_(3)のベースに流れる電流は断れるが、一方コンデンサCに充電された電荷は抵抗R_(5)を経てトランジスタT_(2)のベースに流入し、従って該トランジスタT_(2)の作動状態は保持されるので制動信号Bsは遮断されたままとなる。その為トランジスタT_(3)には方向指示信号Ts及び制動信号Bsが入らないのでランプLは消灯される。 次に方向指示信号Tsが11?12の期間になると再びトランジスタT_(1)が作動し、端子Tから入った信号電流は抵抗R_(4)を経てトランジスタT_(3)のベースに流れるので、該トランジスタT_(3)が作動状態となりランプLを点灯する。 一方ダイオードD_(1)を経てコンデンサCに充電され、且つ抵抗R_(5)を経てトランジスタT_(2)のベースに流れた電流によって該トランジスタT_(2)は作動状態となり、従って制動信号Bsを遮断しつづけて、両信号Ts,Bsが[「ば」は誤記。]同時入った時は方向指示信号Tsによって作動するものである。」(第2頁第4欄第8?42行) ・「本考案は上記した様に既設の装置による方向指示信号と制御信号との両方を同一の補助ランプ等の負荷で表示する様にすると共に両信号が同時に入った時は制御信号に方向指示信号が優先して点滅動作する」(第3頁第5欄第4?8行) ・また、第1図には、左右のランプLに対し片側ずつ独立して設けられる回路であって、トランジスタT_(3)のベース信号供給部にトランジスタT_(3)を作動状態にする信号が供給されている期間はリレーRを励磁してランプLを点灯させ、かつ、入力端子Bに信号が入り、入力端子Tに入力信号がない場合には、制動信号BsをダイオードD_(2)を介してトランジスタT_(3)のベース信号供給部へ供給する一方、前記入力端子Tに信号が入った場合には、前記入力端子Tから入力された方向指示信号TsをトランジスタT_(3)のベース信号供給部へ供給する制御回路が示され、さらに、第2図には、断続的な方向指示信号Tsが示されている。 これらの記載事項及び図示内容によれば、甲第1号証には、次の考案(以下、「甲第1号証考案」という。)が記載されているものと認められる。 「トランジスタT_(3)のベース信号供給部にトランジスタT_(3)を作動状態にする信号が供給されている期間はリレーRを励磁してランプLを点灯させるものにおいて、制動信号Bsが入力される入力端子Bと、断続的な方向指示信号Tsが入力される入力端子Tと、方向指示信号Tsを供給するトランジスタT_(3)のベース信号供給部と、左右のランプLに対し片側ずつ独立して設けられるとともに、前記入力端子Bに信号が入り、前記入力端子Tに入力信号がない場合には、制動信号BsをダイオードD_(2)を介してトランジスタT_(3)のベース信号供給部へ供給する一方、前記入力端子Tに信号が入った場合には、前記入力端子Tから入力された方向指示信号TsをトランジスタT_(3)のベース信号供給部へ供給することにより、前記両信号が同時に入った時は方向指示信号Tsが優先してランプLを点滅動作させる制御回路と、を備えた車輛に於ける方向指示灯駆動回路。」 (2)甲第2号証(特開平5-139204号公報)には、電子式方向指示装置について、図面と共に以下の事項が記載されている。 ・「この動作はメインスイッチOが入ると指示灯Q、Rを介して電源回路Aが立上る。次にある周波数で第1の発振回路Bよりオン、オフ信号が第1の半導体スイッチC及び第2の半導体スイッチDに与えられ、指示灯Q、Rは点滅する。この時第1の発振回路Bの周波数を数百Hz程度にすれば薄暮点灯する。その状態の時にターンスイッチPが入ると、ウィンカートリガ回路Hによりウィンカー作動が開始され、ウィンカー作動保持回路Jにより作動継続される。」(第2頁第1欄第46行?第2欄第4行) ・「周波数切換回路Eにより第1の発振回路Bが停止し、第2の発振回路Fが作動し、ある周波数でオン、オフ信号が第3の半導体スイッチGに与えられ、指示灯SあるいはTが点滅する。同時に第2の発振回路Fより出されるオン、オフ信号がウィンカー作動同期回路Kにより、第1の発振回路Bには無関係に第1あるいは第2の半導体スイッチC、Dに与えられる。この時指示灯QあるいはRが第2の発振回路Fの周期で点滅しようとするが、第3の半導体スイッチGがオンすることにより、ターンスイッチPを介して第1あるいは第2の半導体スイッチ停止回路Iが作動する。ターンスイッチPのオンされている指示灯、たとえばSであれば、Sは左側のリアであるから右側のフロント[「フ(3)ロント」は誤記。]指示灯Rを停止させる様にしておけば、指示灯SとQがウィンカー作動することになる。」(第2頁第2欄第5?19行) ・「同様に指示灯TにターンスイッチPをONすれば、指示灯Qが第1あるいは第2半導体スイッチ停止回路Iにより消灯し、指示灯RとTでウィンカー作動する。」(第2頁第2欄第20?23行) ・「現状このシステムでは、前車方向指示灯薄暮点灯装置と方向指示装置を2つのユニットで構成しており、非常に複雑な構成でかつコストも非常に多額なものとなっている。本発明によればそれらの2つのユニットを統合化でき、非常に簡単な構成で安価なシステムとして成立させることが可能となる。」(第3頁第4欄第20?25行) これらの記載事項によれば、甲第2号証には、次の考案(以下、「甲第2号証考案」という。)が記載されているものと認められる。 「メインスイッチが入ると第1の発振回路よりの信号に基いて点滅する指示灯Q,Rを備え、第1の発振回路の周波数を数百Hz程度にして薄暮点灯させ、その状態の時にターンスイッチが入ると、指示灯Q,Rの一方が第2の発振回路よりの信号に基いて点滅しウィンカー作動するようにした方向指示装置。」 5.対比・判断 (1)本件考案1について 本件考案1と甲第1号証考案とを比較すると、後者における「制動信号Bs」と前者における「スモール信号」は、共に、断続的なウインカー信号とは異なる信号である「非ウインカー信号」という概念で共通しており、同様に、後者の制動信号Bsが入力される「入力端子B」と前者の「スモール信号入力部」は、共に、「非ウインカー信号入力部」という概念で共通している。 そして、後者における「断続的な方向指示信号Ts」がその作用・機能からみて前者における「ウインカー信号」に相当し、以下同様に、「入力端子T」が「ウインカー信号入力部」に、「方向指示信号Tsを供給するトランジスタT_(3)のベース信号供給部」が「ウインカー信号を出力するウインカー信号出力部」に、「ランプL」が「ウインカーランプ」に、「制動信号BsをダイオードD_(2)を介してトランジスタT_(3)のベース信号供給部へ供給する」が「制御出力をウインカー信号出力部より出力させる」に、「方向指示信号TsをトランジスタT_(3)のベース信号供給部へ供給する」が「ウインカー信号を出力させる」に、「制御回路」が「出力制御回路」に、「車輛に於ける方向指示灯駆動回路」が「車両ウインカーランプの装置」に、それぞれ相当する。 したがって、両者は、 「非ウインカー信号が入力される非ウインカー信号入力部と、 ウインカー信号が入力されるウインカー信号入力部と、 ウインカー信号を出力するウインカー信号出力部と、 左右のウインカーランプに対し片側ずつ独立して設けられるとともに、前記非ウインカー信号入力部に信号が入り、前記ウインカー信号入力部に入力信号がない場合には、制御出力をウインカー信号出力部より出力させる一方、前記ウインカー信号入力部に信号が入った場合にはウインカー信号を出力させる出力制御回路と、 を備えた車両ウインカーランプの装置」、 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本件考案1が、非ウインカー信号を「スモール信号」とし、非ウインカー信号入力部を「スモール信号入力部」とし、出力制御回路は「発振回路」を備えるとともに、非ウインカー信号のみの場合の制御出力について、「所定のデューティ比によりパルス幅制御」を行うものであり、車両ウインカーランプの装置をそれの「減光」装置としたのに対し、甲第1号証考案は、かかる特定された構成を有していない点。 以下、上記の相違点について検討する。 [相違点1]は、ウインカーランプを非ウインカーランプと兼用させるべく、1つのランプに対して、ウインカー信号と非ウインカー信号の2種類の信号を供給する際の、非ウインカー信号の種類の相違に基づくものと捉えることができる。 ところで、上記甲第2号証考案は、1つの指示灯Q又はRに対して、ウィンカー作動用信号(本件考案1の「ウインカー信号」に相当。)と薄暮点灯用信号の2種類の信号を供給するようにした制御回路を有し、該制御回路は薄暮点灯用信号のための発振回路を備えた方向指示装置(同「車両ウインカーランプの装置」に相当。)を開示するものであり、かかる方向指示装置は、薄暮点灯用信号が発振回路による断続的な信号に基づいて減光されることになるためスモール信号と捉え得るものであり、結果として減光装置を構成していることが窺える。 そうすると、甲第1号証考案及び甲第2号証考案は、いずれも方向指示装置という同一の技術分野に属し、しかも、一つのランプを二つの機能を有するランプとして兼用させてコストを削減するという共通の課題を有するものであるから、甲第1号証考案において、上記甲第2号証考案の技術思想を適用して、非ウインカー信号の種類を薄暮点灯用信号として構成すること、即ち、非ウインカー信号及び非ウインカー信号入力部を、「スモール信号」及び「スモール信号入力部」とし、出力制御回路に「発振回路」を備えることで、車両ウインカーランプの「減光」装置を実現することは、当業者がきわめて容易に想到し得ることである。 その際、非ウインカー信号のみの場合の制御出力について、所定のデューティ比によりパルス幅制御するように構成することは、ランプの輝度調整における周知慣用の手段であること、及び、かかる周知手段を本件考案1において採用したことで新たに格別顕著な作用効果が奏されるとは認められないことを考慮すれば、当業者が必要に応じて適宜採用し得る設計的事項というべきである。 そして、本件考案1により奏される効果は、甲第1号証考案及び甲第2号証考案から、当業者が予測し得る範囲のものである。 したがって、本件考案1は、甲第1号証考案及び甲第2号証考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 なお、被請求人は、答弁書において、「本件考案のウインカー信号入力部(構成要件B)は、ウインカーランプをウインカー作動させるウインカー信号が出力制御回路に入力される部位である。またウインカー信号出力部(構成要件C)はウインカー信号入力部において出力制御回路に入ったウインカー信号が出力制御回路から出力される部位である。」とした上で、「甲第1号証考案の方向指示信号入力端子Tは、ランプLを実際に点滅点灯させる電流が入力されるというよりは、ランプLの点滅点灯のための周波数を得るための信号が入力される部位であって、ランプLの点灯はその周波数に従ってバッテリー+BからリレーLに流れた電流によって行われる。 従って方向指示信号入力端子Tは、ウインカーを作動させる信号が入力される部位ということはできず、本件考案のウインカー信号入力部(構成要件B)に相当すると言うことは出来ない。 またリレーRは方向指示信号入力端子Tからの方向指示信号Bsを受け取るが、同時にランプLを実際に作動させるバッテリー+Bからの電流が入りまた出力される部位である。従ってリレーRをウインカー信号入力部において出力制御回路に入ったウインカー信号を出力するウインカー信号出力部(構成要件C)に相当すると言うことが出来ない。」と主張している。 しかしながら、上記構成要件Bに関する被請求人の主張については、本件の実用新案登録請求の範囲に、ウインカー信号入力部はウインカーランプを実際に点滅点灯させる電流が入力される部位であるとの特定がなされているわけではないから、実用新案登録請求の範囲の記載に基づかないものといわざるをえず、採用できない。 また、上記構成要件Cに関する被請求人の主張についても、甲第1号証考案の「方向指示信号Tsを供給するトランジスタT_(3)のベース信号供給部」が「ウインカー信号を出力するウインカー信号出力部」に相当するものであるから、甲第1号証考案も本件考案における構成要件Cを備えているというべきであり、採用できない。 (2)本件考案2について 本件考案2は、本件考案1における「ウインカー信号入力部に信号が入った場合にはウインカー信号を出力させる出力制御回路」を「ウインカー信号入力部に信号が入った場合には、前記ウインカー信号入力部から入力されたウインカー信号を出力させる出力制御回路」(以下、「特定事項1」という。)とすると共に、「出力制御回路は、前記ウインカー信号入力部に断続的なウインカー信号が入ったときにこれを連続信号に変換する変換回路部を備え、前記発振回路は、その変換回路部からの前記連続信号を受けることにより、前記デューティ比によるパルス幅制御を停止すること」(以下、「特定事項2」という。)をさらに限定したものである。 本件考案2と甲第1号証考案とを比較すると、後者における「入力端子Tに信号が入った場合には、前記入力端子Tから入力された方向指示信号TsをトランジスタT_(3)のベース信号供給部へ供給する制御回路」が前者の「特定事項1」に相当している。 したがって、上記(1)での検討を踏まえれば、両者は、 「非ウインカー信号が入力される非ウインカー信号入力部と、 ウインカー信号が入力されるウインカー信号入力部と、 ウインカー信号を出力するウインカー信号出力部と、 左右のウインカーランプに対し片側ずつ独立して設けられるとともに、前記非ウインカー信号入力部に信号が入り、前記ウインカー信号入力部に入力信号がない場合には、制御出力をウインカー信号出力部より出力させる一方、前記ウインカー信号入力部に信号が入った場合には、前記ウインカー信号入力部から入力されたウインカー信号を出力させる出力制御回路とを備え(る)、 車両ウインカーランプの装置」、 である点で一致し、上記[相違点1]と実質上同一の相違点を有すると共に、さらに次の点で相違する。 [相違点2] 出力制御回路に関し、本件考案2が、上記「特定事項2」として具体的に特定された構成を有するのに対して、甲第1号証考案は、かかる構成を有していない点。 上記[相違点1]と実質上同一の相違点については、既に上記(1)で検討したとおりであるから、上記[相違点2]について以下検討する。 本件考案2における「特定事項2」の技術的意義は、登録明細書の「ウインカー信号入力回路に信号が入った場合には出力制御回路は出力を停止して、ウインカー動作を優先させる。」(段落【0006】参照。)なる記載によれば、ウインカー動作を優先させるためのものと捉えることができる。 一方、甲第1号証考案においても、両信号が同時に入った時は方向指示信号Tsが優先してランプLを点滅動作させる制御回路を備えているものであるから、ウインカー動作を優先させていることは明らかであり、この点において両者は軌を一にするものといえる。 ところで、ウインカー動作を優先させるという課題を解決するための具体的な回路構成は、当業者が必要に応じて適宜設計し得るものであるところ、本件考案2において、特に「特定事項2」の構成を採用したことにより格別な作用効果が奏されるものとも認められない。 そうすると、かかる「特定事項2」の限定は、上記課題を解決すべく具体的な出力制御回路を構築する上での単なる設計的事項にすぎないものというべきである。 そして、本件考案2により奏される効果は、甲第1号証考案及び甲第2号証考案から、当業者が予測し得る範囲のものである。 したがって、本件考案2は、上記(1)での検討内容を加味すれば、甲第1号証考案及び甲第2号証考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本件考案1及び2は、何れも、甲第1号証考案及び甲第2号証考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、本件考案1及び2の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するものとされた平成5年改正前の実用新案法第37条第1項第1号に該当し、これを無効にすべきものとする。 また、審判費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定を適用する。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-02-26 |
結審通知日 | 2003-03-03 |
審決日 | 2003-03-14 |
出願番号 | 実願平5-45027 |
審決分類 |
U
1
112・
121-
Z
(B60Q)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 槙原 進 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
千壽 哲郎 藤原 直欣 |
登録日 | 1999-08-13 |
登録番号 | 実用新案登録第2600605号(U2600605) |
考案の名称 | 車両ウインカーランプの減光装置 |
代理人 | 鵜飼 英行 |
代理人 | 西村 教光 |