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審決分類 審判 全部無効 1項1号公知 無効としない B65B
管理番号 1076565
審判番号 審判1999-35508  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-09-17 
確定日 2000-10-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2142669号実用新案「粘着テープの貼着装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯の概要
本件登録第2142669号実用新案(以下、本件考案という)は、平成1年6月29日に出願され、平成8年1月24日に出願公告(実公平8-2084号)され、平成8年11月13日に設定登録されたものである。
その後、平成11年9月17日付けで請求人井下卓男より無効審判の請求がなされ、平成12年1月17日付けで被請求人株式会社モトロニクスより答弁書の提出がなされ、平成12年6月12日付けで被請求人より口頭審理陳述要領書の提出がなされ、平成12年6月16日及び平成12年6月29日に口頭審理と証拠調べを行い、審理を終結したものである。

2.本件考案
本件考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 板状素材を複数枚積層した積層体の表裏面を積層板体が圧入された際に押圧すべく、弾性材料で支持された一対の押さえ部材と、
前記押さえ部材と積層板体とが離間している際に、前記押さえ部材と積層板体との間に、積層板体の厚さ方向に粘着テープを所定長さで送り出し機構と、
前記押さえ部材と積層板体とを相対的に移動させて、積層板体を一対の押さえ部材間に圧入し、粘着テープを押さえ部材で押圧して積層板体の厚さ方向にコの字状に跨がるように積層板体の外表面に圧着した際に粘着テープを適宜位置で切断すべく設けたカッターとからなる構成において、
前記積層板体の平面側を押さえる細長形の弾性ゴム板(31)と、その少なくとも片面にステンレス薄板(32)を貼着して摩擦挟圧体(3)とし、
その基端(3_(1))を受け板材とともに移動ブロック(1)の上部又は下部に固定し、その長手を凸弧状部(3′)を形成すると共に、他端(3_(2))を移動ブロック(1)の下部又は上部に摺動可能に取り付け、押さえ部材(2)の近傍に前記の摩擦挟圧体(3)を介在してナイフ形カッタ(4)を取り付けたことを特徴とする粘着テープの貼着装置。」

3.当事者の主張
【請求人の主張】
これに対して、請求人は、下記甲第1乃至9号証及び参考資料1乃至8を提出し、本件考案は、その出願前に日本国内において公然知られた考案または日本国内において公然実施された考案であり、実用新案法第3条第1項の規定に違反するものであるから、実用新案法第37条第1項第1号の規定により無効とされるべきである旨主張している。
【証拠方法】
[書証]
甲第1号証;公証人柏樹修作成の「事実実験公正証書」
添付資料;写真1ないし24
添付資料;PC-CLAMPER30 取扱説明書
甲第2号証;曙産業株式会社発行の株式会社愛工機器製作所宛の売り上げ伝票(写し)
甲第3号証;公証人清水伸之作成の「宣誓供述書」
添付資料;宣誓供述人の名刺
添付資料;曙産業株式会社発行の株式会社愛工機器製作所宛ての売り上げ伝票(写し)
添付資料;実公平8-2084号公報(写し)
添付資料;写真1ないし24
甲第4号証;公証人落合威作成の「宣誓供述書」
添付資料1;社団法人日本プリント回路工業会主催の1985年JPCAショーの総合カタログの抜粋
添付資料2;社団法人日本プリント回路工業会主催の1986年JPCAショーの総合カタログの抜粋
添付資料3;PATOLIS(コンピュータ検索ソフト)による出願経過のアウトプット
添付資料4;実開昭62-44866号公報(写し)
添付資料5;社団法人日本プリント回路工業会主催の1987年JPCAショーの総合カタログの抜粋
添付資料6;社団法人日本プリント回路工業会発行の1988年プリント回路総覧
添付資料7;社団法人日本プリント回路工業会発行の1989年プリント回路総覧
添付資料8;本件装置販売先リスト
添付資料9;売主曙産業株式会社発行から買主愛工機器製作所宛ての見積書
添付資料10;売主曙産業株式会社発行から買主愛工機器製作所宛の売り上げ伝票控の写し
添付資料11;PC-CLAMPER30取扱説明書及び写真1ないし24
甲第5号証;社団法人日本プリント回路工業会が主催した1987年JPCAショーの総合カタログの抜粋
甲第6号証;実公平8-2084号公報(写し)
[追加]
甲第7号証;公証人半谷恭一作成の池田定男の「宣誓供述書」
甲第8号証;株式会社アクト代表取締役刀根剛の「供述書」
甲第9号証;冨沢諭作成の旧型上バネの「試験結果報告書」
参考資料1;社団法人日本プリント回路工業会の1990年プリント回路総覧
参考資料2;社団法人日本プリント回路工業会の1991年プリント回路総覧
参考資料3;社団法人日本プリント回路工業会の1993年JPCAショーガイドブック
参考資料4;社団法人日本プリント回路工業会の1994年JPCAショーガイドブック
参考資料5;社団法人日本プリント回路工業会の1995年JPCA総覧
参考資料6;社団法人日本プリント回路工業会の1996年JPCA総覧
参考資料7;社団法人日本プリント回路工業会の1997年JPCA総覧
参考資料8;被請求人「株式会社モトロニクス」から請求人「井下卓男」の代理人に宛てた「警告書」の写し
[人証]
井下卓男(請求人本人)
野々山容充
【被請求人の主張】
一方、被請求人は、下記乙第1乃至5号証を提出し、本件考案に係る装置が、その出願前に日本国内において公然と展示されたり、公然と譲渡または使用されたりした事実はない。したがって、本件実用新案登録は無効とすべきではないと主張している。
【証拠方法】
[書証]
乙第1号証;菅和則 陳述書
乙第2号証;取扱説明書 旧型
乙第3号証;取扱説明書 新型
乙第4号証;西華産業株式会社向け売掛台帳(写し)
乙第5号証;菅和則 陳述書(その二)
[人証]
菅和則(被請求人の代表者)

4.当審の判断
請求人及び被請求人から提出された証拠及び参考資料並びに証拠調べによる井下卓男、野々山容充、菅和則の供述から、請求人が平成1年(1989年)2月28日に株式会社愛工機器製作所中津川工場に納入されたとするPC-CLAMPER30について検討した結果は以下のとおりである。
[PC-CLAMPER30の開発及び出品の経緯について]
株式会社モトロニクスは、昭和60年9月7日に出願した「粘着テープ貼付け装置」を千曲技研工業株式会社と共同開発し、昭和60年6月10日?13日に開催された「’85JPCAショー」にPC-CLAMPER30(以後、旧々型製品という)を出品し、その後、毎年、JPCAショーにPC-CLAMPER30を出品していたことは甲第4号証の添付資料1,2、甲第5号証並びに参考資料1乃至7等より明らかである。
昭和60年及び昭和61年(1985年及び1986年)のJPCAショーに出品されたPC-CLAMPER30は、窓のないものであって、旧々型製品であることは明らかである。
昭和62年(1987年)以降のJPCAショーに出品されたPC-CLAMPER30は、窓のあるものであって、摩擦挟圧体にステンレス板を採用したもの(以後、旧型製品という)或いはステンレス板と弾性ゴム板を貼着したもの(以後、新型製品という)であることは明らかである。
昭和62年以降のJPCAショーに出品されたPC-CLAMPER30について、井下卓男は、摩擦挟圧体にステンレス板を採用した旧型製品は、商品としては販売されたことはなく、窓があるものであるから新型製品であると供述しているが、この供述のとおりであるとしたならば、ステンレス板と弾性ゴム板を貼着した新型製品は、昭和63年の「’87JPCAショー」で既に公然と知られた状態にあり、それから2年後の平成1年(1989年)6月29日に株式会社モトクロニクスが新型製品に関する実用新案を出願することは、不合理なことである。
一方、菅和則は、昭和62年(1987年)?平成1年(1989年)のJPCAショーに出品したものは摩擦挟圧体にステンレス板を採用した旧型製品であって、平成2年(1990年)のJPCAショーに出品したものから、摩擦挟圧体にステンレス板と弾性ゴム板を貼着した新型製品を出品したと供述している。
菅和則の供述のとおりであるとするならば、新型製品に関する実用新案を平成1年(1989年)6月29日に出願する際に、旧々型製品に関する実用新案を出願した際に行った「’85JPCAショー」に出品したことによる特許法第30条第1項の適用申請と同様な申請をすることなく出願したことには、何ら不合理な点はない。
また、菅和則は、旧々型製品と新型製品については実用新案を出願したが、旧型製品について実用新案を出願しなかったことについて、旧型製品は摩擦挟圧体をステンレス板のみで構成したので格別の考案性がないと判断したと供述しているが、この供述にも不合理な点はない。
そうすると、株式会社モトクロスは、PC-CLAMPER30として、昭和60年(1985年)?昭和61年(1986年)には、旧々型製品を出品・販売し、昭和62年(1987年)?平成1年(1989年)には、旧型製品を出品・販売し、本件考案についての実用新案の出願以降、新型製品を販売し、平成2年(1990年)の「’90JPCAショー」では、新型製品が出品されたものとすることに何ら不合理な点はない。
[株式会社愛工機器製作所中津川工場に納入されたPC-CLAMPER30について]
株式会社愛工機器製作所中津川工場には、少なくとも平成1年2月28日に3台のPC-CLAMPER30が納入され、平成3年(1991年)2月以降に1台のPC-CLAMPER30が納入されたこと、及び、平成3年2月以降に納入されたPC-CLAMPER30は、その納入時期から見て新型製品であることは明らかである。
そして、上記[PC-CLAMPER30の開発及び出品の経緯について]の項で検討した事実からは、平成1年2月28日に株式会社愛工機器製作所中津川工場に納入された3台のPC-CLAMPER30は、旧型製品であるとすることに、何ら不合理な点はないものであるが、請求人は、平成1年2月28日に納入された3台のPC-CLAMPER30も、新型製品であると主張しているので、請求人の提出した各証拠について検討する。
甲第1号証の公証人相樹修作成の「事実実験公正証書」は、平成10年10月25 日に株式会社愛工機器製作所中津川工場(以下、「愛工機器工場」という。)に現存する3台のPC-CLAMPER30を検分したものである。ところで、この愛工機器工場のPC-CLAMPER30の中の2台は平成1年2月28日に納入されたものでPC-CLAMPER30という機器であり、他の1台は平成3年2月以降に納入されたものでPC-CLAMPER30Aという機器となっているが、摩擦挟圧体は消耗品であって、消耗すると取り替えられるものであるから、平成10年10月25日に検分したものに新型製品の摩擦挟圧体が取り付けられていたという事実から、納入当時にも、同一の新型製品の摩擦挟圧体が該機器に取り付けられていたことを証明するものではない。
しかも、野々山容充の証言によれば、PC-CLAMPER30の取扱説明書(新型製品の取扱説明書に相当)は平成1年2月28日に愛工機器工場に納入されたものに添付されたものであるとしているが、また、同証言では、取扱説明書は、要求すればいつでも入手することが可能なものであるとしている。
また、菅和則の証言によれば、取扱説明書には、旧型製品のもの(乙第2号証)と新型製品のもの(乙第3号証)があり、新型製品のものは、旧型製品の取扱説明書に「PCクランパー消耗品部品図」を1頁追加したものである。取扱説明書の図4についての菅和則の証言で、カッターASSY(10)は、90度の切り込みになっており(平成12年1月17日付け審判答弁書添付書類1.添付図面の(三)を併せて参照)、1頁追加したとする頁のPC-30のC1,C2,等を説明する図でC2は切り込みが45度になっていること(平成12年1月17日付け審判答弁書添付書類1.添付図面の(五)を併せて参照)から見ても、該頁の図面は違う構成の摩擦挟圧体の図として、後日、新型製品が販売されたときに添付されたものであると解するのが合理的である。
しかも、新型製品は、愛工機器工場には平成3年2月以降に少なくとも1台納入されており、旧型製品の摩擦挟圧体も適宜新型製品のものと交換されるものであり、新型製品の取扱説明書が新型製品の納入時、或いは、その後の消耗品としての旧型製品の摩擦挟圧体の交換時に愛工機器工場に納付された可能性があるから、「事実実験公正証書」作成の平成10年10月25日に愛工機器工場にあったPC-CLAMPER30の取扱説明書が、平成1年2月28日に愛工機器工場に納入されたものに添付されたものであると確定することはできない。
したがって、甲第1号証の「事実実験公正証書」は、平成10年10月25日に愛工機器工場にあったPC-CLAMPER30の摩擦挟圧体を検分したものにすぎないものであって、平成1年2月28日に愛工機器工場に納入されたPC-CLAMPER30が新型製品であることを立証するための証拠としては採用することができない。
次に、甲第2号証の売上伝票写しも、3台のPC-CLAMPER30が平成1年2月28日に販売された事実を立証するものにすぎず、PC-CLAMPER30が旧型製品であるか、新型製品であるか不明である。
甲第3号証は、公証人清水伸之作成の野々山容充の「宣誓供述書」であるが、証人尋問での野々山容充の供述からも、摩擦挟圧体の具体的な構成について関心があったものとは認められず、平成1年2月28日の納入当時にPC-CLAMPER30の摩擦挟圧体がどのような構成を具えていたかを明りょうに認識することはなかったものとするのが、合理的であり、この「宣誓供述書」をそのまま採用することはできない。
甲第4号証は、公証人落合威作成の井下卓男の「宣誓供述書」であるが、証人尋問による井下卓男の供述からも、PC-CLAMPER30の旧型製品と新型製品の販売時期等の供述には、不合理な点が多く、この「宣誓供述書」は、採用することができない。
甲第5号証は、「’87JPCAショー」に出品されたPC-CLAMPER30が窓のあるものに変更された事実を立証しているにすぎないものである。
甲第6号証は、本件考案の公告公報にすぎないものである。
甲第7号証は、公証人半谷恭一作成の池田定男の「宣誓供述書」であるが、新生電機に納入されたとするPC-CLAMPER30の納入当時の摩擦挟圧体の具体的構成を理解していたものとは認められず、この「宣誓供述書」をそのまま採用することはできない。
甲第8号証は、刀根剛の供述書であるが、株式会社アクトが昭和63年(1988年)4月に購入したとするPC-CLAMPER30の納入当時の摩擦挟圧体の具体的構成を理解していたものとは認められず、この「宣誓供述書」をそのまま採用することはできない。
甲第9号証は、冨沢論作成の「試験結果報告書」であるが、証人尋問での菅和則の供述のとおり、旧型製品の摩擦挟圧体(ステンレス製のもの)は、約3ヶ月の寿命があったものと認められるが、試験に使用したテストワークは、当時の業界の常識である3枚重ねではなく、4枚重ねを使用して試験結果を故意に悪くするものであって、この試験結果は採用することができない。
さらに、請求人が提出した参考資料1?8を検討しても、平成1年2月28日に3台納入されたPC-CLAMPER30が新型製品であると確定することができない。

[ 総合的な判断 ]
請求人及び被請求人の提出した証拠並びに証人尋問による3名の証言を詳細に検討しても、平成1年(1989年)2月28日に愛工機器工場に納入されたPC-CLAMPER30が、新型製品であるとすることができないものであるから、本件考案が、その出願前に日本国内において公然知られた考案又は日本国内において公然実施された考案であるとは認めることができない。

4.むすび
以上のとおりであるので、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件実用新案登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2000-08-17 
出願番号 実願平1-76470 
審決分類 U 1 112・ 111- Y (B65B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 佐藤 洋鳥居 稔  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 市野 要助
佐藤 雪枝
登録日 1996-11-13 
登録番号 実用新案登録第2142669号(U2142669) 
考案の名称 粘着テープの貼着装置  
代理人 笹岡 峰夫  
代理人 中村 稔  
代理人 大塚 文昭  
代理人 岡 潔  
代理人 飯田 圭  
代理人 朝倉 正幸  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 弟子丸 健  
代理人 宍戸 嘉一  

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