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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) F24F
管理番号 1081501
審判番号 無効2001-35107  
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2003-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-03-16 
確定日 2003-08-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第2067710号「空気調和機の制御装置」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成14年 2月13日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成14(行ケ)年第146号平成15年3月24日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第2067710号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2067710号に係る出願は、昭和60年9月25日に出願され、平成6年2月9日に出願公告された後、請求項1に係る考案について平成7年7月6日に実用新案登録の設定登録がなされたものである。
その後、平成13年3月16日にその実用新案登録に対して、株式会社富士通ゼネラルより無効審判の請求がなされ、平成14年2月13日に本件審判の請求は成り立たないとする審決がなされたところ、東京高等裁判所において、同審決を取り消す旨の判決(平成14年(行ケ)第146号、平成15年3月24日判決言渡)がなされたものである。

2.本件考案
本件請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「冷房運転または暖房運転が行えると共に、運転開始時に前記冷房運転または前記暖房運転を自動的に選択し、運転開始時の室温に基づいて設定温度を自動的に設定する自動運転が行え、この自動運転と、前記冷房運転と、前記暖房運転とから所望の運転を選択できるように成した空気調和機において、この空気調和機の制御装置には自動運転の際の温度設定値、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を上げる単一のUPスイッチと、自動運転の際の温度設定値、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を下げる単一のDOWNスイッチとを備えたことを特徴とする空気調和機の制御装置。」(以下、「本件考案」という。)

3.請求人の主張
請求人は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された考案を立証するために
甲第1号証:三洋電機株式会社の作成に係る暖冷兼用エアコン総合カタログ83・9ASB-0603(作成日;昭和58年9月))
甲第2号証:電波新聞社発行の昭和60年9月6日付け電波新聞(「三洋、61年度向け第一弾」と題する記事部分)
を提出し、
本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、
冷房運転または暖房運転が行えると共に、運転開始時に前記冷房運転または前記暖房運転を自動的に選択し、運転開始時の室温に基づいて設定温度を自動的に設定する自動運転が行え、この自動運転と、前記冷房運転と、前記暖房運転とから所望の運転を選択できるように成した空気調和機において、この空気調和機の制御装置には、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を上げる単一のUPスイッチと、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を下げる単一のDOWNスイッチとを備えた空気調和機の制御装置
の考案が記載されており、甲第2号証には、
自動運転の際の温度設定値をプラスマイナス2°C調整する
考案が記載されているとし、さらに、スイッチの共通化を図ることが格別ではない旨主張し、その例示のために、
甲第3号証:実願昭60-146457号に係る拒絶査定写し
を提出し、本件考案は、甲第1、第2証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであるから、無効とすべき旨主張している。

4.被請求人の主張
甲第2号証には「一発指令設定温度に対してプラスマイナス二度Cの範囲で調整できる“お好み温度メモリー”」との記載があるだけであるり、一発指令設定温度をプラスマイナス2℃の範囲で調整するのは「お好み温度メモリー」であり、この「お好み温度メモリー」がどのようなものか全く明らかにされていないのであるから、その調整について具体的手段が明示されていない。
これに対して、本件考案は、
空気調和機の制御装置には自動運転の際の温度設定値、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を上げる単一のUPスイッチと、自動運転の際の温度設定値、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を下げる単一のDOWNスイッチとを備えたこと
を構成としており、甲第1、第2証のものを組み合わせても、同構成に想到することはできないから、本件考案は、甲第1、第2証に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない旨主張している。

5.当審の判断
5-1 甲第1号証及び甲第2号証
甲第1、第2証は、本件に係る出願の出願前に頒布されたものと認める。

5-1-1 甲第1号証の記載
上記甲第1号証には、
「エアコンのそばにあったセンサーを・・・リモコンの中に。いまあなたのいる場所から、寒さ暑さをしっかり見張って刻々自動コントロール、・・・
テーブルから、ベッドサイドから・・・お好みの場所から、操作はピッ!運転ボタンを押すだけ。・・・その日にピッタリの適温運転が、室温に合わせたパワー運転が、効率を考えた省エネ運転が、すべてコンピュータまかせ。快適さ、経済性、使いやすさにいっそう磨きをかけました。」(第3頁右上部)
「コンピューター・一発指令の自動運転だから、操作は「ボタン」をポン!と押すだけ。
春夏秋冬、「運転ボタン」を押すだけで、お部屋の寒さ暑さの違いをセンサーがすばやくキャッチ。コンピューターが身体にやさしい健康的な「適温」・・を選んで、キメ細かく自動運転します。「暖房」「冷房」「冷房・除湿」の運転コースの選定、その日に合わせた「温度」・・の調節といった面倒な操作は、すべてコンピューターまかせ。あなたは運転ボタンを押すだけです。もちろん、あなたの好みに合わせた暖房・冷房・除湿(添字でドライ)の切り替えや、温度、風速の設定もできます。」(第4頁右下部)
と記載されているから、エアコンは、冷房運転または暖房運転が行えるものと認められ、「運転ボタン」を押すこと、即ち、運転の開始時に冷房運転または暖房運転を自動的に選択する自動運転が記載されるものと認める。
さらに、甲第1号証には、「コンピューター・一発指令」と表題される図があり、同図中に、「コンピューター・一発指令SAP-KV23BIの場合は、下図のように自動運転します。」と記載され、同図は、運転モードを図解したものと認められ、その内容は概ね、
「運転開始時の室温が21℃以上のときには冷房コースが選択され、そして、その時の室温が31℃以上であれば適温が28℃、29?31℃未満であれば適温が27℃、27?29℃未満であれば適温が26℃にそれぞれ設定されて自動運転が行なわれる。
また、運転開始時の室温が21℃未満のときには暖房コースが選択され、そして、その時の室温が15?21℃未満であれば適温が22℃、15℃未満であれば適温が20℃にそれぞれ設定されて自動運転が行なわれる。」というものであると認められるので、甲第1号証には、自動運転において、運転開始時の室温に基づいて設定温度を自動的に設定することが記載されるものと認める。
また、甲第1号証には、
「温度調節を手動で行なう場合、暖房時16?26℃、冷房時21?31℃の範囲でセットできます。」(第4頁左下部)
さらに、第3頁下部には、エアコンに用いられるリモコンの外観斜視図が示されており、このリモコンには、「運転/停止」と明記された部分の横に三角形のスイッチ、「自動入・切」と明記された部分の横に三角形のスイッチ、及び「温度設定」と明記された部分の両側に三角形のスイッチが2つあり、それらの三角形の向きから、一方が設定温度を上げるスイッチで、他方が設定温度を下げるスイッチであることが窺え、しかも、上記「もちろん、あなたの好みに合わせた暖房・冷房・除湿(添字でドライ)の切り替えや、温度、風速の設定もできます。」との記載からして、少なくとも、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を上げ、下げできるものと解される。
そして、甲第1号証には、コンピューターを有する旨記載されており、上述の各運転、制御を行うために制御装置を有することは自明であるので、これらを総合すると、甲第1号証には、実質的に以下の考案が記載されるものと認める。
冷房運転または暖房運転が行えると共に、運転開始時に前記冷房運転または前記暖房運転を自動的に選択し、運転開始時の室温に基づいて設定温度を自動的に設定する自動運転が行え、この自動運転と、前記冷房運転と、前記暖房運転とから所望の運転を選択できるように成したエアコンにおいて、この空気調和機の制御装置には、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を上げる単一のUPスイッチと、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を下げる単一のDOWNスイッチとを備えたエアコンの制御装置

5-1-2 甲第2号証の記載
甲第2号証には、下記の記載がある。
「三洋電機は五日、新製品六機種を中心に合計十一機種の六十一年度向け冷暖房エアコンを今月下旬から順次発売すると発表した。・・・インバーターエアコンの新機種『リニアインバーター』=SAP-KV23GI(二十八万九千円)は誰でも使える簡単操作、健康への配慮、経済性などをポイントに開発した“やさしいエアコン”で、一発指令の自動運転、温度センサーリモコン、お好み温度メモリーなど多彩な機能を装備している。・・・操作は運転ボタンを押すだけで運転モードの選択から温度、風速までマイコンが選んでムダのない快適な運転を自動的に行う。・・・一発指令設定温度に対してプラスマイナス二度Cの範囲で調整できる“お好み温度メモリー”や、生活に合わせて使いわけられる『入』『切』同時セット可能な十二時間タイマー、パワーの上限を二〇・十七・十五Aに切替えられる“パワーセレクトスイッチ”などを装備している」
ここに記載される「操作は運転ボタンを押すだけで運転モードの選択から温度,風速までマイコンが選んでムダのない快適な運転を自動的に行う。」は、「一発指令の自動運転」を説明するものと認められ、「一発指令の自動運転」時にマイコンが選ぶ温度が「一発指令設定温度」であるものと認められるので、甲第2号証には、
運転ボタンを押すだけで一発指令の自動運転として、運転モードが選択され、一発指令設定温度として温度が選択されるインバータエアコンにおいて、一発指令設定温度に対してプラスマイナス二度Cの範囲で調整できる“お好み温度メモリー”を備える
考案が記載されるものと認める。

5-2 対比
本件考案と、甲第1号証に記載された考案を対比すると、甲第1号証の「エアコン」、「設定温度を上げる単一のスイッチ」、「設定温度を下げる単一のスイッチ」は、それぞれ本件考案の「空気調和機」、「温度設定値を上げる単一のUPスイッチ」、「温度設定値を下げる単一のDOWNスイッチ」に対応するから、両考案は、
冷房運転または暖房運転が行えると共に、運転開始時に前記冷房運転または暖房運転を自動的に選択し、運転開始時の室温に基づいて設定温度を自動的に設定する自動運転が行え、この自動運転と、前記冷房運転と、前記暖房運転とから所望の運転を選択できるように成した空気調和機において、
この空気調和機の制御装置には、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を上げる単一のUPスイッチと、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を下げる単一のDOWNスイッチとを備えたことを特徴とする空気調和機の制御装置
の考案である点で一致し、下記の相違点で相違する。

【相違点】
本件考案は、自動運転の際の温度設定値、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を上げる単一のUPスイッチと、自動運転の際の温度設定値、冷房運転または暖房運転の際の温度設定値を下げる単一のDOWNスイッチとを備えたのに対し、甲第1号証のもののUPスイッチは、自動運転の際の温度設定値を上げることの記載はなく、DOWNスイッチは、自動運転の際の温度設定値を下げることの記載はない点。

5-3 判断
そこで、上記相違点について検討する。
甲第2号証には、運転ボタンを押すだけで一発指令の自動運転として、運転モードが選択され、一発指令設定温度として温度が選択されるインバータエアコンにおいて、一発指令設定温度に対してプラスマイナス二度Cの範囲で調整できる“お好み温度メモリー”を備えることが記載されており、一発指令の自動運転及び一発指令設定温度は、甲第1号証にいう自動運転及び自動運転時に自動的に設定される設定温度と意図するものに格別差異はないので、甲第1号証に記載の自動運転時に自動的に設定される設定温度に対して、甲第2号証に記載される一発指令設定温度に対してプラスマイナス二度Cの範囲で調整する技術を適用する点に格別の困難性は認められない。しかも、2度Cの範囲の内において調整を行うためには、何らかの選択・指示の手段を有することは、その直接の記載がなくとも自明の事項であり、しかも、スイッチの数を減らすようにスイッチ等を共通に用いることは、各分野において広く行われる周知の設計手法であるところ、甲第1号証に記載の「冷房運転または暖房運転の際の温度設定を上げる単一のスイッチ」及び「冷房運転または暖房運転の際の温度設定を下げる単一のスイッチ」は、温度設定値の調整のための操作手段として、冷房運転・暖房運転において共用されるものと解され、これを自動運転の際の温度設定値を調整するための操作手段としても共通化することは、当業者が適宜選定し得た設計上の事項というべきである。
したがって、前記相違点は、甲第1、第2号証のもの及び周知の技術に基づいて、当業者がきわめて容易になし得たものと認める。
そして、本件考案が奏する効果は、甲第1、第2号証のもの及び周知の技術から予測される以上の格別のものとは認められない。
よって、本件考案は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1、第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認める。

6. むすび
以上のとおりであるから、本件考案に対する実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるので、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-01-28 
結審通知日 2002-01-31 
審決日 2002-02-13 
出願番号 実願昭60-146457 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 丸山 英行  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 佐野 遵
長浜 義憲
岡本 昌直
粟津 憲一
登録日 1995-07-06 
登録番号 実用新案登録第2067710号(U2067710) 
考案の名称 空気調和機の制御装置  
代理人 大原 拓也  
代理人 芝野 正雅  
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