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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A61G 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A61G |
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管理番号 | 1083245 |
審判番号 | 無効2000-35405 |
総通号数 | 46 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2003-10-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-07-24 |
確定日 | 2003-09-01 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1908777号「マツトレスの滑り落ち防止機構を備えたベツド」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成13年 2月 5日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成13年(行ケ)第127号、平成14年12月26日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1908777号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件登録第1908777号実用新案の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)についての出願は、昭和60年7月19日に実用新案登録出願がされ、平成4年5月26日に登録がされた後、平成12年7月24日にこれを無効とすべき旨の審判(審判2000-35405号)が請求され、この審判に対し平成13年2月5日に、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がされたところ、平成14年12月26日に、東京高等裁判所において、上記審決の判断は誤りであるとして審決取消の判決がなされた。 2.本件考案 本件考案は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「鋼板、合成樹脂板等の表面平滑な床板の端縁あるいはその他の任意の個所に、表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片を複数個付着してなり、これにより床板上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」 3.当事者の主張 (1)請求人の主張 請求人は、「登録第1908777号実用新案の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として、「本件実用新案登録に係る考案は、甲第1号証及び甲第2号証又は甲第3号証に記載された考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案できたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号により無効とすべきである。」と主張し、次の証拠方法を提出している。 (証拠) 甲第1号証:実公昭57-40844号公報 甲第2号証の1:実願昭56-81418号(実開昭57-193826号)のマイクロフィルム 甲第2号証の2:実願昭56-81419号(実開昭57-193827号)のマイクロフィルム 甲第2号証の3:実開昭57-81820号公報 甲第2号証の4:実開昭57-81821号公報 甲第2号証の5:実開昭58-58032号公報 甲第3号証:ハード カンパニー発行の価格表 #H-90(1970-11-1)P.9 甲第4号証:石井重三「特許明細書の作成用語集」日刊工業新聞社、昭和55年10月30日、P.176?177 そして、請求人は、「甲第1号証のすのこ状床板に代えて、甲第3号証に記載の表面平滑な床板を適用すること、そして甲第1号証の滑り防止片を甲第3号証に示されるように複数添着することは、容易にできる設計変更にすぎない。」と主張する。 (2)被請求人の主張 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」(答弁の趣旨)ものであって、上記請求人の主張は理由がないと主張する。 なお、被請求人は、証拠方法として、乙第1号証(実公平3-25780号公報(本件実用新案登録の実用新案出願公告公報))を提出している。 4.甲第1号証及び甲第3号証に記載された考案について (1)甲第1号証に記載された考案 請求人が提出した甲第1号証には、次の事項が記載されている。 (イ)「ギャッチベッドにおけるマットレス敷台上に表面に断面∩状の小突起を群設するか、断面∩状の突条を突設せしめた滑り止め体を添着せしめたことを特徴とするギャッチベッドにおける滑り止め具」(第1頁第1欄16行?20行の実用新案登録請求の範囲) (ロ)「本案はギャッチベッドにおけるマットレスの滑りを防止する用具を提供しようとするものである。 従来提供されているギャッチベッド1にあっては、マットレス敷台1A上にマットレス(図示略)を敷設して使用している。しかし、上記敷台1Aをギャッチにより操作して所定角度に斜向せしめると、マットレスは斜向方向へずれてしまう。そして、敷台1Aを水平にもどすと、このずれたマットレスをも元の状態になるよう手をかけなければならない。 本案はかかる問題を充分解決しようとするもので、以下、図面を参照しながらその1実施例の詳細を説明する。」(第1頁第1欄22行?35行) (ハ)「2は本案のギャッチベッドにおける滑り止め具である。そして、その構成は、ギャッチベッドにおけるマットレス敷台を構成するすのこ板2A上に表面に断面∩状の小突起2Cを群設するか、断面∩状の突条2Dを突設せしめた滑り止め体2′が添着せしめられている。そこで、上記滑り止め体の素材としては、A.ゴム,ゴム混合,、ゴムと石油化学製品の混合化合物、B.石油化学製品による硬質軟質の製品および混合化合物で弾力を有する物、C.植物性物質を固形状にした物、又は化工物質を混合して弾性を与えた物、D.各種繊維物を固形にした物あるいは化学物質を化工又は混合し、さらに弾力を与えたものが好適である。また、突条2Dについては第3図の如く高さの異なる断面略Λ状に構成しても、また、小突起2Cについては第4図,第5図の如く、断面Λ状の小突起を1列ごとにその高さを異なるよう構成してもよい。また、この小突起2Cは第6図,第7図の如く円錐状の小突起を群設しても、また、この円錐状の小突起の高さを第8図の如く異なるものにしても、さらに第9図の如く傾斜せしめた場合、下方に位置する側の突起を高く構成してもよい。そして、突条や小突起の上端はベッドの頭部側に少しく傾斜するよう構成してもよい。」(第1欄36行?第2欄22行) (ニ)「本案のものは上述の如く構成したから、滑り止め体を張設した敷台上にマットレスやシーツを敷設して使用すると、ギャッチ操作により角度を起伏せしめても敷台上のマットレスなどがずれることがない。この結果、冒頭で指摘した従来のものでの問題を解決しうる有用な考案と言うべきものである。」(第2欄23行?29行) 上記(イ)ないし(ニ)の記載事項並びに図面に示された事項を総合すると、甲第1号証には、次の考案(以下、「甲第1号証考案」という。)が記載されていると認められる。 (甲第1号証考案) 「すのこ板2Aを用いて構成されたマットレス敷台1A上に、その表面に断面略Λ状の突条を複数列状に設けた滑り止め体を添着することにより、該マットレス敷台上に載置したマットレスの滑りを防止するように構成したギャッジベッド。」 (2)甲第3号証に記載された考案 本願出願前に頒布された刊行物と認めることができる甲第3号証には、その第9頁に示された「EXTENDIFLEX 262」に関する図面及びその説明事項を参酌すると、次の考案(以下、「甲第3号証考案」という。)が記載されていると認められる。 (甲第3号証考案) 「表面平滑な床板の端縁に、マットレスの滑り落ち防止のための滑り止めを複数個設置しているベッド。」 5.対比・判断 (1)上記判決(平成13年(行ケ)第127号、平成14年12月26日判決言渡)は、本件考案につき、次のように判示する。 (イ)本件考案は、「滑り防止片」の大きさについて、『床板よりも小さいものである』という『以上の限定はないということができる』(判決書第11頁24行?第12頁9行参照)。 (ロ)『本件考案の「滑り防止片」及び「ぎざぎざ」の大きさと、甲第1号証考案の「滑り止め体」並びに「小突起」及び「突条」の大きさとが異なるとすることはできず、これらの構成について、本件考案と甲第1号証考案とで相違するということはできない。』(同上判決書第13頁14?17行参照) (ハ)甲第1号証考案及び第3号証考案は、『いずれも、ベッドに関する考案であること、甲第3号証考案は、表面平滑な床板の端縁に、マットレスの滑り落ち防止のための滑り止めを設置しているものである点において甲第1号証考案と共通性を有すること、が認められる』から、『上記各考案を組み合わせようとする起因ないし契機(動機付け)となるものがあるというべきである。』(同上判決書第14頁3?9行参照) (2)一致点・相違点 そこで、改めて、本件考案と甲第1号証考案とを対比すると、後者の「ギャッジベッド」は前者の「ベッド」に相当し、また、後者の「マットレス敷台1A」は、前者の「床板」に、その上にマットレスが配置される敷き台である点で共通し、さらに、後者の「その表面に断面略Λ状の突条を複数列状に設けた滑り止め体」は、その「断面略Λ状の突条を複数列状に設けた」形状がのこぎりの歯のような刻み目があるさまを呈することが明らかであって、前者の「表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片」に相当するといえるし、さらにまた、後者における「滑り止め体」の配置位置は、前者における「任意の箇所」に相当するから、両者は、 「その上にマットレスが配置される敷き台上の任意の個所に、表面がぎざぎざな面で形成された滑り防止片を設け、これにより敷き台上に配置されるマットレスの滑り落ちを防止するようにしたことを特徴とするマットレスの滑り落ち防止機構を備えたベッド。」である点で一致し、次の点で相違するといえる。 (相違点1)その上にマットレスが配置される敷き台の構成に関して、本件考案は「鋼板、合成樹脂板等の表面平滑な床板」であるのに対して、甲第1号証考案は「すのこ板2Aで構成された敷き台」を用いている点。 (相違点2)滑り防止片の設置態様につき、本件考案は「複数個付着」しているのに対して、甲第1号証考案では、「添着」される「滑り止め体」が複数個設けられるか否かにつき明確にされていない点。 (3)相違点の検討 表面平滑な床板の端縁に、マットレスの滑り落ち防止のための滑り止めを複数個設置しているベッドは、甲第3号証考案により本願出願前に公知であったといえる。 そして、甲第3号証考案と甲第1号証考案とは、いずれもベッドに関する考案であって、マットレスの滑り落ち防止のための滑り止めを設置するものであるという点で共通している。 してみると、相違点1及び相違点2は、いずれも、甲第1号証考案におけるマットレスの敷き台とその滑り止め体の配置態様に代えて、甲第3号証考案の床板とその滑り止めを床板の端縁に複数個配置するという配置態様を採用することにより、当業者がきわめて容易に想到し得た設計上の変更であるといえる。 なお、本件考案における「表面平滑な床板」を構成する板材の例示として「鋼板、合成樹脂板等」を規定した点は、ベッドの床板を、プレス成形により容易に製作し得る等の目的で、鋼板等を用いて形成することが、本件考案の明細書においても従来技術に関して説示されているように、従来より当業者において周知の手段であることから、当業者が適宜採用し得る設計的事項を単に例示的に規定したに止まるものといえるし、また、滑り止めが「付着」により設置されているのか、または、「添着」により設置されているのかの取付態様の相違については、いずれもマットレス敷き台と別部材で形成された滑り止め手段を、滑り止めとしての機能を果たし得る程度の固定力でマットレス敷き台上に取り付けるという取付態様を表現したに止まるものといえるから、両者の取付態様に実質的な相違があるということができない。 (4)まとめ したがって、その余の証拠について検討するまでもなく、本件考案は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された考案に基いて、当業者がきわめて容易に考案することができたものといえる。 6.むすび 以上のとおりであるから、本件考案は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、本件考案は、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、実用新案法41条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-01-11 |
結審通知日 | 2001-01-23 |
審決日 | 2001-02-05 |
出願番号 | 実願昭60-110734 |
審決分類 |
U
1
112・
121-
Z
(A61G)
U 1 112・ 121- Z (A61G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 西川 正俊 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 千壽 哲郎 田中 秀夫 和泉 等 |
登録日 | 1992-05-26 |
登録番号 | 実用新案登録第1908777号(U1908777) |
考案の名称 | マツトレスの滑り落ち防止機構を備えたベツド |
代理人 | 染谷 仁 |
代理人 | 三觜 晃司 |