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審決分類 審判 全部申し立て   B43L
審判 全部申し立て   B43L
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審判 全部申し立て   B43L
管理番号 1083251
異議申立番号 異議2003-70059  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2003-10-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-08 
確定日 2003-08-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第2607725号「転写器」の請求項1に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2607725号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2607725号の請求項1に係る考案は、平成5年8月10日に出願され、平成14年1月25日にその考案についての実用新案権の設定登録がなされ、その後、小林初江及び木下史子よりそれぞれ異議の申立てがなされたものである。

2.本件考案
本件請求項1に係る考案は、実用新案権設定登録時の明細書(以下、「登録明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 転写テープを送り出す巻出し部と、転写テープ上の転写層を先端部で被転写物に圧着、移動して転写する圧着ブレードと、転写層が転写された後の転写テープ基材を巻取る為の巻取り部と、これらを収納するカセットケースとを有し、転写テープは巻出し部、圧着ブレード、巻取り部の順に搬送される転写器において、前記圧着ブレードは、カセットケース両側壁から延びる圧着ブレードホルダーに挟まれることにより、該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されていることを特徴とする転写器。」(以下、「本件考案」という。)

3.異議申立ての理由の概要
3-1.異議申立人 小林初江の主張
異議申立人 小林初江は、以下の理由により、本件考案の実用新案登録は取り消されるべきものである旨、主張している。
3-1-1.要旨変更について
平成13年10月22日付け提出の手続補正書により補正された明細書中、実用新案登録請求の範囲の欄の請求項1と考案の詳細な説明の欄の段落【0006】に記載の「前記圧着ブレードは、カセットケース両側壁から延びる圧着ブレードホルダーに挟まれることにより、該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されていること」、及び、段落【0016】に記載の「圧着ブレード30は、カセットケース20の両側壁から延びる圧着ブレードホルダー31に挟まれることにより、該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されている。」は、出願当初の明細書及び図面に記載されておらず、かつ、出願当初の明細書及び図面の記載から自明であるとも認められないから、上記補正書による補正は、明細書の要旨を変更するものであって、本件出願は、準用する特許法第40条の規定により、上記手続補正書を提出した時にしたものとみなされる。
3-1-2.実用新案法第3条第2項について
本件考案は、下記の甲第1?4号証に記載された考案であり、またはこれら考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第1項第3号または同条第2項の規定に該当する。

甲第1号証:特開平10-264592号公報(平成10年10月6日)
甲第2号証:特開2000-25393号公報(平成12年1月25日)
甲第3号証:特開平8-2187号公報(平成8年1月9日)
甲第4号証:特開平11-20388号公報(平成11年1月26日)
なお、上記( )内の記載は、各公報の公開日である。
3-1-3.実用新案法第5条第4項、第5項第2号について
登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1における「前記圧着ブレードは、カセットケース両側壁から延びる圧着ブレードホルダーに挟まれることにより、該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されている」という記載事項を当業者が容易に実施するための技術的手段は、考案の詳細な説明及び図面に記載されていない。また、上記記載事項だけでは、本件考案の構成が特定されず不明瞭である。

3-2.異議申立人 木下史子の主張
異議申立人 木下史子は、以下の理由により、本件考案の実用新案登録は取り消されるべきものである旨、主張している。
3-2-1.実用新案法第5条第5項第1、2号について
登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載の「該圧着ブレードの中心軸線」について、考案の詳細な説明及び図面に対応する記載がないことにより、実用新案登録を受けようとする考案が考案の詳細な説明に記載したものとはならず、また、「該圧着ブレードの中心軸線」の意義が明確でなく、他の構成要件とどのような関係にあるのか記載されていないことにより、本件考案の構成を特定することができず、上記請求項1は、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項を記載したものではない。
3-2-2.実用新案法第3条第1項第3号について
本件考案は、下記の甲第1?3号証に記載された考案であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定に該当する。

甲第1号証:特表平5-502211号公報
甲第2号証:特開平2-228383号公報
甲第3号証:実願昭61-150313号(実開昭63-56690号)の マイクロフィルム

4.当審の検討・判断
4-1.異議申立人 小林初江の主張について
4-1-1.要旨変更について
i.まず、「圧着ブレードは、カセットケース両側壁から延びる圧着ブレードホルダーに挟まれることにより、・・・回転可能に保持されている」点について検討する。
出願当初の明細書の記載を参酌して、出願当初の図面をみると、【図1】は、圧着ブレード30の基端部に前方及び後方のフランジが設けられ、圧着ブレード30は、圧着ブレードホルダー31に上記前後のフランジ間で挟まれていることを示している。そして、同【図2】に記載の円形の部材、及び、該円形の部材の左右両側にあってカセットケース両側壁の内側に位置している水平の部材は、上記【図1】を参酌すると、それぞれ、圧着ブレード30の前方のフランジ、及び、圧着ブレードホルダー31を示していることは明らかであり、出願当初の明細書の段落【0016】の「圧着ブレード30は、圧着ブレードホルダー31によって回転可能にカセットケース20に装着されており、」との記載から、圧着ブレードホルダー31はカセットケース20と一体的であることが読みとれるので、「圧着ブレードは、カセットケース両側壁から延びる圧着ブレードホルダーに挟まれることにより、・・・回転可能に保持されている」点は、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。
ii.次に、「圧着ブレードは、・・・該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能」である点について検討する。
出願当初の明細書の記載を参酌して、出願当初の図面をみると、【図2】は、圧着ブレード30がその先端部の中心の回りに45゜回転していることを示しており、【図1】は、圧着ブレード30の回転の中心が、圧着ブレード30の基端部の中心と一致していることを示しているから、圧着ブレード30の先端部の中心と基端部の中心を通る直線が、圧着ブレード30の回転の中心となっていることは明らかである。「軸」には、「物体が回転運動をする時、空間的位置を変えず物体に固定したものとみなされる直線。」の意味がある(「広辞苑」1991年11月15日 第四版第一刷 参照。)から、上記直線を「圧着ブレードの中心軸線」と表現したものであり、「圧着ブレードは、・・・該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能」である点は、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。
iii.したがって、上記平成13年10月22日付け提出の補正書により補正された明細書中、実用新案登録請求の範囲の欄の請求項1と考案の詳細な説明の欄の段落【0006】に記載の「前記圧着ブレードは、カセットケース両側壁から延びる圧着ブレードホルダーに挟まれることにより、該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されていること」、及び、段落【0016】に記載の「圧着ブレード30は、カセットケース20の両側壁から延びる圧着ブレードホルダー31に挟まれることにより、該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されている。」は、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、上記補正は、明細書の要旨を変更するものではない。

4-1-2.実用新案法第3条第2項について
上記「4-1-1.」で述べたように、上記補正は、明細書の要旨を変更するものではなく、本件考案の出願日は平成5年8月10日であるから、本件考案の出願日後に頒布された刊行物である甲第1?4号証に記載された考案と本件考案との対比・判断は行わない。

4-1-3.実用新案法第5条第4項、第5項第2号について
i.転写テープを送り出す巻出し部と、転写テープ上の転写層を先端部で被転写物に圧着、移動して転写する圧着ブレードと、転写層が転写された後の転写テープ基材を巻取る為の巻取り部と、これらを収納するカセットケースとを有する装置において、カセットケースをそれぞれが側壁を備えた二つの部材で構成することは、通常行われていることであり、本件考案において、圧着ブレードホルダー31はカセットケース20両側壁から延びる構成となっていることから、圧着ブレードホルダー31も二つの部材で構成され、圧着ブレードを挟んで保持していることは明らかである。そして、登録明細書の記載を参酌して、図面をみると、上記「4-1-1.」の「ii.」で述べたように、【図1】【図2】から、「圧着ブレードの中心軸線」は、圧着ブレード30の先端部の中心と基端部の中心を通り、圧着ブレード30の回転の中心となる直線を意味することが明らかである。そうしてみると、「前記圧着ブレードは、カセットケース両側壁から延びる圧着ブレードホルダーに挟まれることにより、該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されている」という記載事項を当業者が容易に実施するための技術的手段は、考案の詳細な説明および図面に記載されているといえる。
ii.上記「i.」で述べたように、「圧着ブレードの中心軸線」の意味も、圧着ブレードが圧着ブレードホルダーに保持される態様も明らかであるから、「前記圧着ブレードは、カセットケース両側壁から延びる圧着ブレードホルダーに挟まれることにより、該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されている」という記載事項だけでは、本件考案の構成が特定されず不明瞭であるということはできない。

4-2.異議申立人 木下史子の主張について
4-2-1.実用新案法第5条第5項第1、2号について
i.登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載の「該圧着ブレードの中心軸線」は、登録明細書の記載を参酌して、図面をみると、上記「4-1-1.」の「ii.」で述べたように、【図1】【図2】から、圧着ブレード30の先端部の中心と基端部の中心を通り、圧着ブレード30の回転の中心となる直線を意味することが明らかであるから、考案の詳細な説明に記載されたものである。
ii.上記「i」で述べたように、上記請求項1に記載の「該圧着ブレードの中心軸線」の意味するところは明らかであるから、他の構成要件との関係も明らかであり、登録明細書の実用新案登録請求の範囲は、実用新案登録を受けようとする考案の構成に欠くことができない事項を記載したものである。

4-2-2.実用新案法第3条第1項第3号について
i.甲各号証に記載された事項
甲第1号証:特表平5-502211号公報
「1.接着剤材料層を備えた支持体帯片を保持する供給リールをそれに備えたハウジング、支持体帯片を集める巻き取り装置、および前記接着剤材料層を基板上に転送する塗布装置からなり、該塗布装置が前記ハウジングに堅固に接続された取り付け体、および該取り付け体に取り付けられた塗布装置本体を含む、接着剤材料を基板上に塗布するための基板上への接着剤材料の塗布用分配装置において、
前記塗布装置本体(6)が・・・可動に取り付けられることを特徴とする基板上への接着剤材料の塗布用分配装置。」(1頁左下欄 請求の範囲)
「接着剤分配装置の場合において、供給リールに保持された接着剤帯片の接着剤層が塗布装置の位置において接着剤帯片の支持体帯片から「引き剥がされ」そして基板上に塗布される一方、剥き出しの支持体帯片は巻き取りハブまたは巻き取りリールに向けて案内される。」 (3頁左上欄下から6?2行)
「本発明の目的は、・・・安定した塗布圧力による基板上への接着剤材料の均一な塗布が保証され、そして材料の均一に信頼し得る塗布がまた種々の方向において可能でありかつ基板に対する分配装置の角度的な姿勢を変化するような方法において改善することにある。」(3頁右上欄12?第17行)
「塗布装置本体(6)は、塗布装置本体(6)の上側に備えたシリンダ体17の長手方向軸線Sのまわりに回転する」点。(7頁左上欄2?末行 第9図a)b))
甲第2号証:特開平2-228383号公報
「1.コイル上に巻かれた担持テープに貼着するに先だって粘着フィルムを基材に粘着するための貼着装置であって、前記装置は前記粘着フィルムをそれを移動通過する前記担持テープを剥させる貼着器および前記貼着器の下流の前記担持テープを巻戻す引出しリールを含み、前記引出しリールが前記担持テープコイルに作用的に連結されており、
巻戻し前のからの引出しリール・・・の直径が前記担持テープコイル・・・の最大可能直径と少くとも等しい大きさであり、前記引出しリール・・・および前記担持テープコイル・・・が共通軸線・・・上に配置されており、かつ前記作用的連結がディスククラッチ・・・によって形成されていることを特徴とする粘着フィルムの貼着装置。」(1頁左下欄 特許請求の範囲)
「第2図に示されるように、本発明による装置は、担持テープ4上に支持された粘着フィルム3を該テープから容易に剥がすことを可能にさせる貼着器片25を含む貼着器23を具備している。」(4頁左下欄13?16行)
「第4図は貼着器片25の拡大説明図を示す。貼着器片25は、少くともテープ給送経路の縦軸線まわりに回転できるように取り付けられることが好ましく、それにより、この装置自身の姿勢を変える必要なく基材の輪部の変化に容易に適合できる。」(5頁右上欄10?14行)
甲第3号証:実願昭61-150313号(実開昭63-56690号)のマイクロフィルム
「誤記修正テープの裏面を押圧して表面の修正剤を紙面などに貼付する際に用いられる誤記修正テープの貼付具であって、
誤記修正テープの裏面を押圧する転写ヘッドと、
巻き付けられた誤記修正テープを繰り出して該転写ヘッドに送り出す供給リールと、
該供給リールに連動して回転し、前記転写ヘッドに押圧された誤記修正テープを巻き取る巻上げリールとから成り、
誤記修正テープが前記転写ヘッドに供給される方向と直角の方向へ前記転写ヘッドを揺動可能に、前記転写ヘッドの基端部を支持したことを特徴とする誤記修正テープの貼付具。」(1頁 実用新案登録請求の範囲)
「第2図および第3図からわかるように、支持部材13の円筒状の溝15には転写ヘッド20の円筒状の基端部21が回動可能に嵌合され、転写ヘッド20は第2図においてA方向へ揺動可能に支持部材13に枢支されている。」(7頁13?17行)
「転写ヘッド20は、転写ヘッド20の円筒状の基端部21の長手方向軸線の回りに回転するが、該長手方向軸線の延長線は転写ヘッド20の先端部の中心を通らない」点。(7頁13?17行 第2、3図)
ii.対比・判断
本件考案と、上記甲第1?3号証に記載の考案とを対比する。
本件考案においては、「圧着ブレードの中心軸線」は、上記「4-1-1.」の「ii.」で述べたように、圧着ブレード30の先端部の中心と基端部の中心を通り、圧着ブレード30の回転の中心となる直線を意味するものであるから、圧着ブレード30は、圧着ブレード30の先端部の中心と基端部の中心を通る直線の回りを回転するのに対して、上記甲第1号証に記載の「塗布装置本体(6)」、上記甲第2号証に記載の「貼着器23」、上記甲第3号証に記載の「転写ヘッド20」は、本件考案の「圧着ブレード」に相当し、いずれも、回転はするものの、それぞれの先端部の中心と基端部の中心を通る直線の回りに回転するものではない。
したがって、本件考案の構成要件である「圧着ブレードは、・・・該圧着ブレードの中心軸線回りに回転可能に保持されている」点は、上記甲第1?3号証には、記載されておらず示唆する記載もない。
そして、本件考案は、上記の点により、登録明細書に記載の「圧着ブレードが回転する事で、カセットケースを手で持ち移動することにより転写層を転写する際生じる傾きを圧着ブレードの回転により吸収し圧着ブレードの先端が被転写物に全面確実に接するので、転写層全面を正確かつ完全に所定の箇所に転写できる。」(段落【0020】)という効果を奏するものである。
したがって、本件考案は、上記甲第1?3号証に記載された考案であるということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1に係る考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2003-08-04 
出願番号 実願平5-47978 
審決分類 U 1 651・ 531- Y (B43L)
U 1 651・ 113- Y (B43L)
U 1 651・ 534- Y (B43L)
U 1 651・ 121- Y (B43L)
最終処分 維持    
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 白樫 泰子
鈴木 寛治
登録日 2002-01-25 
登録番号 実用新案登録第2607725号(U2607725) 
権利者 ユニオンケミカー株式会社
大阪府枚方市招提田近3丁目10番地
考案の名称 転写器  
代理人 三枝 英二  
代理人 舘 泰光  
代理人 掛樋 悠路  

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