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審決分類 審判 判定  属する(申立て成立) C02F
管理番号 1088182
判定請求番号 判定2002-60059  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2004-01-30 
種別 判定 
判定請求日 2002-06-14 
確定日 2003-12-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第2598330号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「スカム除去装置」は、登録第2598330号実用新案の技術的範囲に属する。
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面(図1乃至2、参考図1及び2)に示すスカム除去装置(以下「イ号装置」という)は、実用新案登録第2598330号の技術範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件実用新案登録
本件実用新案登録第2598330号の請求項1に係る考案(以下「本件考案」という)は、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、その構成を符合を付して分節して記載すると以下のとおりとなる。
(イ)処理池の水面よりも低くなる誘引口を備え同池内に両端支持状態で固定して設置されるトラフと、
(ロ)前記トラフと同様の長尺状部材で同トラフの前側において上部が水面を境に浮き沈み可能とされた堰と、
(ハ)池内で循環運動するフライト側の下回りへの循環時において蹴り上げられるカムを有するとともに同カムの蹴り上げ動作に応じて前記堰の長手方向に平行な回転中心を介して揺動する押下アーム部を有する揺動アームと、前記押下アーム部に下端部が連結され上部は前記堰を応動させるための伝達機構の1つの部材として上方に延びている昇降ロッドとを備えたスカム除去装置であって、
(ニ)前記揺動アームのカムは、前記下回りにくるフライトを案内するための左右1対のガイドレールにおける一方のガイドレール寄りにあるように平面上位置する一方、
(ホ)前記フライトには、前記カムに対応する長手方向の位置にアタッカーが設けられ、
(ヘ)同アタッカーは、前記フライト上面よりも上向きに突設され、
(ト)前記昇降ロッドは、フライトが上回りから下がってくる軌道より横側方に外れた位置を通るようにされていることを特徴とする
(チ)スカム除去装置。

3.イ号物件
請求人が提出した、判定請求書に添付されたイ号図面(図1ないし図4)及び平成15年8月12日付回答書の図面(参考図1及び2)の記載からみて、イ号装置は次のとおり特定されるものと認める。
なお、平成15年6月18日付の審尋において、被請求人に対し、請求人が提出したイ号図面についての意見を求めたが、被請求人からは何の応答もなかった。
【イ号装置の構成】
(i)図3及び4によれば、イ号装置はチェーンに配列されたフライトの循環運動により、処理池の水面上のスカムを除去する装置であり、図3によれば、トラフは、誘引口を有し同誘引口が処理池の水面よりも低くなるように位置し、参考図1及び2によれば、その両端は、両側壁を挿通し固定された一対の連通トラフにフランジを介して固定されている。
(ii)図3によれば、トラフの誘引口に設けられた堰は、トラフと同様の長尺状の部材でトラフの前側にあってその上部が処理池の水面を境に浮き沈み可能に配置され、参考図1及び2によれば、堰とトラフのフランジ間には、前方からの水の浸入を阻止するための側部シールが設けられている。
(iii)図2及び図3によれば、池底側の両側壁間に堰の長手方向と平行に横架固定された前後一対の固定軸の各一端側外周に回転パイプが装着され、下回りへの循環時におけるフライトの進行方向上流側に向け、回転パイプの一方から押下アーム部が突設され、この押下アーム部と堰側の間に、下端が押下アーム部に連結され上部は堰を応動させるための上方に伸びた昇降ロッドを備え、一対の回転パイプの他端からはそれぞれ下向きに補助リンクが突設され、該各補助リンクの突端を板状部材で回動可能に連結している。
(iv)図2によれば、板状部材は、下回りにくるフライトを案内するための左右一対のガイドレールの一方のガイドレール寄りにあるように平面上に位置している。
(v)図2によれば、フライトには板状部材に対応する長手方向の位置にアタッカーが設けられている。
(vi)図2乃至4によれば、アタッカーは、フライト上面よりも上向きに突設されている。
(vii)図2によれば、昇降ロッドは、フライトが上回りから下がってくる軌道より横側方に外れた位置を通るようにされている。
【イ号装置の動作】
(viii)図4によれば、フライト上部に取り付けられたアタッカーが図3の矢印方向、すなわち池内下回りへの循環時に移動してきて対向する板状部材を蹴り上げると、補助リングが図1の矢印の方向に回動して回転パイプを回転させ、該回転パイプに突設された押下アームを下方に回動させ、昇降ロッドを引き下げる。
(ix)参考図1及び2によれば、昇降ロッドがA1の方向に引き下げられると、上部駆動アームがA2のように下がり、上部駆動アームの基部に固着された上部シャフトがA3の方向に回転し、この回転により上部シャフトの他の個所に固定した作動アームがA4の方向に下がり、それとともに押さえロッドがA5のように押し下がり、これによって、押さえロッドの下端のブラケットを介してA6の方向に堰が下がる。
(x)板状部材からアタッカーが通り過ぎると、重量バランスの関係で、昇降ロッドは参考図2の矢印とは逆の方向に作用し、堰は浮上する。

4.対比・判断
4-1.イ号物件の構成が本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについての検討
(1)構成(イ)について
イ号装置の構成(i)によれば、イ号装置におけるトラフは、処理池の水面よりも低くなる誘引口を備えており、同池内に両端支持状態で固定して設置されているといえ、本件考案の構成(イ)を充足する。
(2)構成(ロ)について
イ号装置の構成(ii)によれば、イ号装置は、本件考案の構成(ロ)を充足する。
(3)構成(ハ)について
イ号装置の動作(viii)によれば、補助リンク、回転パイプ、押下アーム部からなる部材は、池内で循環運動するフライトの下回りへの循環時において蹴り上げられる板状部材の動作を、固定軸を回転中心として回動することにより、昇降ロッドに伝達するものであり、該固定軸は堰の長手方向に平行であるから、本件考案における「池内で循環運動するフライト側の下回りへの循環時において蹴り上げられるとともに、同動作に応じて前記堰の長手方向に平行な回転中心を介して揺動する押下アーム部を有する揺動アーム」といえ、イ号装置の動作(ix)によれば、押下アーム部の動きは、昇降ロッドを介し、上部駆動アーム及び作動アームを固定する上部シャフトを回動させ、堰を上下動させるのであるから、イ号装置における「昇降ロッド」は、本件考案における「堰を応動させるための伝達機構の1つの部材」と云える。
したがって、イ号装置は、「カム」の構成を除いて、本件考案の構成(ハ)を充足する。

以下、イ号装置が、本件考案の「カム」の構成を有するか否かについて検討する。
本件考案における「カム」について、本件明細書には「カム取付アーム部15aには、ボルト付の長孔18…を介してカム19が上下調節可能に取付けられている。」(実用新案登録公報第3頁5欄29?31行)、「カム19は、その下面に第1カム19aと第2カム19cとを下向きに突出して備え、これらの間に水平な凹み19bを備えている。アタッカー7が第1カム19aに当たると、揺動アーム15の一端15aは持ち上がり、他端15bは下がるようになり、昇降ロッド20が下げられる。これにより、ケーブル21を通して堰13が大きく下がり、大きいスカムまでもトラフ9内に誘引するようになる。凹み19bにアタッカー7が対応すると、堰13がやや浮くがまだ若干沈んだ状態を保つようになる。」(実用新案登録公報第3頁5欄33?42行)と説明されている。
これらの記載によれば、本件考案における「カム」とは、直進運動するアタッカーと接触する部材であって、アタッカーと共にカム機構を構成するものと云うことができ、カム取付アームに取り付けられる部材であって、アタッカーの移動に伴い、アタッカーと当接する面の形状に応じてカム取付アームを揺動させ、昇降ロッドなどの伝達部材を介して堰の一を上下させる部材ということになる。
一方、イ号装置における「板状部材」は、一方の補助リンクと協動し、アタッカーが所定の区間を移動するとき、アタッカーと接触し、その動きに合わせて堰を上下動させるようなカム機構を、アタッカーと共に構成する部材と云えるから、本件考案における「カム」と同一の機能を有することは明らかであり、本件考案における「カム」に相当する。
したがって、イ号装置は本件考案の構成(ハ)をすべて充足する。
(4)構成(ニ)について
イ号装置の構成(iv)における「板状部材」本件考案における「カム」に相当するのであるから、イ号装置は、本件考案の構成(ニ)を充足する。
(5)構成(ホ)について
イ号装置の構成(v)における「板状部材」本件考案における「カム」に相当するのであるから、イ号装置は、本件考案の構成(ホ)を充足する。
(6)構成(ヘ)について
イ号装置の構成(vi)によれば、イ号装置は、本件考案の構成(ヘ)を充足する。
(7)構成(ト)について
イ号装置の構成(vii)によれば、イ号装置は、本件考案の構成(ト)を充足する。
(8)構成(チ)について
イ号装置の構成(i)によれば、イ号装置は、本件考案の構成(チ)を充足する。

5.本件考案の作用効果
本件明細書によれば、本件考案は、池内で循環運動するフライト側の下回りへの循環時において蹴り上げられるカムを有するとともに同カムの蹴り上げ動作に応じて前記堰の長手方向に平行な回転中心を介して揺動する押下アーム部を有する揺動アームと、前記押下アーム部に下端部が連結され上部は前記堰を応動させるための伝達機構の1つの部材として上方に延びている昇降ロッドとを備えたスカム除去装置(実用新案登録公報第2頁4欄13?19行)において、フライトの一端にアタッカーを追加すると、アタッカーが側面壁に非常に接近して運動することになり、設計上も大変であるばかりでなく、フライトを駆動するチェーンの蛇行運動は避けられことから稼働の安全上も好ましくないという問題点(実用新案登録公報第2頁3欄39?47行)を解決しようとするものであり、本件考案による効果は、揺動アームのカムを、前記下回りにくるフライトを案内するための左右1対のガイドレールにおける一方のガイドレール寄りにあるように平面上位置させ、前記フライトには、前記カムに対応する長手方向の位置にアタッカーを設けるとともに、前記昇降ロッドを、フライトが上回りから下がってくる軌道より横側方に外れた位置を通るようにすることにより、池底駆動方式における堰を応動させる機構が、フライト式汚泥掻寄装置が既設の状態であっても、無理無く確実に作動するようにしたスカム除去装置を提供することができる(実用新案登録公報第3頁6欄31?35行)というものである。
そして、イ号装置も、本件考案の「カム」に相当する「板状部材」を、前記下回りにくるフライトを案内するための左右1対のガイドレールにおける一方のガイドレール寄りにあるように平面上位置させ、前記フライトには、前記板状部材に対応する長手方向の位置にアタッカーを設けるとともに、前記昇降ロッドを、フライトが上回りから下がってくる軌道より横側方に外れた位置を通るようにするという本件考案と同一の構成を採用している以上、本件考案と同一の作用効果を奏していることは明らかである。

6.むすび
以上のとおりであるから、判定請求書及び回答書に添付の図面に記載されたイ号装置は、本件考案の構成をすべて充足するから、本件登録実用新案の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
判定日 2003-12-05 
出願番号 実願平9-8514 
審決分類 U 1 2・ - YA (C02F)
最終処分 成立    
前審関与審査官 斉藤 信人川上 美秀繁田 えい子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 岡田 和加子
金 公彦
登録日 1999-06-11 
登録番号 実用新案登録第2598330号(U2598330) 
考案の名称 スカム除去装置  

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