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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B21D
管理番号 1089959
審判番号 無効2003-35089  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-03-10 
確定日 2003-12-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第1998343号実用新案「曲げ機」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第1998343号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
(1)本件登録第1998343号実用新案に係る考案(以下、「本件考案」という。)についての出願は、昭和63年3月11日に実用新案登録出願され、平成5年12月22日に、その考案について実用新案登録権の設定登録がなされた。
(2)請求人株式会社コムコは、平成15年3月10日付けで、無効審判を請求し、本件考案は、その出願前日本国内において公然知られ公然実施された考案であるから、実用新案法第3条第1項第1号、第2号及び第3号に該当し、あるいは同法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第2号に違反してなされたと主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証を提出している。また、平成15年4月25日付け及び平成15年9月18日付けで上申書を、それぞれ提出した。
(3)これに対して、被請求人は、平成15年6月16日付けで答弁書を提出し、請求人主張の公知、公用に基づく理由その1乃至その3、及び、新規制、進歩性に関する理由のいずれについても、その主張を立証する証拠がない旨主張している。
(4)当審より、平成15年7月1日付けで、本件考案は、その出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、本件登録実用新案に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるので同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべき旨の無効理由を通知した。
しかし、上記当審による無効理由通知に対して、被請求人は、応答をしなかった。
2.本件考案
本件考案は、設定登録時の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件明細書」という。)の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「曲げ加工部に対して棒状材Pをそれの長手方向の一端側から設定姿勢で供給可能な供給機構2を設けるとともに、前記曲げ加工部に、棒状材Pに対する曲げ曲率が異なる複数の曲げ加工面b,cを同芯状態で形成してある曲型21、前記曲型21の各曲げ加工面b,cとの間で棒状材Pを挟持するための複数の締付け面d,eを形成してある締付型23、この締付型23を前記曲型21に対して遠近方向に移動させる第1型締め機構A、前記曲型21及び締付型23を曲型21の曲率中心a周りに一体的に回動させる回転駆動機構19を設け、前記締付型23の棒状材供給方向上手側箇所に、前記曲型21との間で棒状材Pを挟持するための複数の押付面f,gを備えた押付型27を棒状材供給方向に直線状に移動自在に設け、かつ、前記押付型27を曲型21に対して遠近方向に移動させる第2型締め機構Bを設けてある曲げ機であって、前記押付型27を、前記押付面f,gを各別に備えた複数の押付け型材27a,27bから構成し、これら各押付け型材27a,27bを棒状材供給方向に各別に移動自在に構成するとともに、前記各押付け型材27a,27bを独立して棒状材供給方向に移動させる駆動機構33a,33bを設けてある曲げ機。」
2.引用刊行物
当審における無効理由通知で引用した英国特許出願公開第2187666号明細書(1987)(平成15年4月25日付け上申書に添付された翻訳文参照)には、以下の事項が記載されている。
(1)「本発明は、金属チューブ及びその他の細長い素材を曲げるための装置、即ちいわゆるパイプ曲げ装置に関する。・・・一般的にそのような装置は、装置の中心線に沿ってパイプを前進させるキャリッジ等と、枢動曲げアームと、該曲げアームに取り付けられた曲げダイス及びパイプクランプ、並びに従動スライドを含む。曲げ作業を行うには、まず曲げるべきパイプ部分が曲げダイスの領域に入るようにキャリッジによりパイプを前進させ、・・・クランプが曲げアームに沿って移動してダイス内のパイプを把持すると共に従動スライドがパイプに対してあてがわれる。曲げダイスを回転させるように曲げアームを枢動させることにより、曲げ作業が開始される。この曲げアームの枢動中に、パイプクランプがそれと共に移動する。同時に従動スライドが曲げダイスの方に接線方向に移動し、曲げが行われる。この曲げ作業中、パイプが(従ってキャリッジが)装置の中心線に沿って引っ張られる。」(第1頁左欄第3?26行)
(2)「装置1は、(共通の垂直軸に)異なる半径の上方及び下方曲げダイス3、4(図2参照、ダイス3はダイス4より大きい曲げ半径を有する)が取り付けられた枢動曲げアーム2と、上方及び下方クランプ5、6(アーム2に取り付けられた)と、以下に詳細に説明する従動スライド装置7を含む。」(第1頁右欄第40?47行)
(3)「従動スライド装置は上下ダイス3、4とそれぞれ連動する上下の溝付きブロック8、9を内蔵する。下方ダイス4が上方ダイス3より小径であることに対応するため、ブロック9がブロック8を越えて横に突出している。同様に、パイプクランプ6(小径ダイス4のための)がクランプ5を越えて突出している。ここで図1に戻ると、・・・溝付きブロック8及び9が(従来技術の装置のように)単一のユニットとして前進出来さえすれば、ブロック9がクランプ6と干渉する可能性があることが判るであろう(大径ダイスで曲げる場合によく起こるように、ブロック8及び9の直線前進移動がクランプ6の角速度より大きいとすると)。この問題を避けるために、本発明によれば、ブロック8、9が、装置のための独立して移動可能な従動スライドを提供する。スライド9の移動は流体圧(例えば油圧)シリンダ10により行われ、スライド8の移動は別の流体圧作動シリンダにより行われる。従って大径ダイス3で曲げ作業する間、スライド9は前進する必要がなく、クランプ6と干渉する可能性が防止される。図3は、従動スライド装置7の詳細を示す。シリンダ10、11(図3では隠れている)が支持ヘッド12に装着され、該支持ヘッド12はそれ自体機械の中心線の横方向に(スライド路7aに沿って)別のシリンダ13により移動可能であり、スライド8及び9をダイス3と4に対し前進及び後退させる。」(第1頁右欄第63行?第2頁左欄第33行)
(4)クランプ5、6を曲げダイスに対して遠近方向に移動させる機構が設けられていること。(図1参照。)
(5)曲げダイス3、4には、複数の曲げ加工面を同芯状態で形成してあり、クランプ5、6には、締付け面を形成してあり、溝付きブロック8、9には、押付面が形成してあること。(図2参照。)
以上の記載事項(1)?(5)から図面を参照すると、引用刊行物には次の考案(以下、「引用考案」という。)が記載されていると認める。
「曲げダイスの領域に対して棒状材をそれの長手方向の一端側から供給可能なキャリッジCを設けるとともに、前記曲げダイスの領域に、棒状材に対する曲げ曲率が異なる複数の曲げ加工面を同芯状態で形成してある曲げダイス3、4、前記曲げダイス3、4の各曲げ加工面との間で棒状材を挟持するための複数の締付け面を形成してあるクランプ5、6、このクランプ5、6を前記曲げダイス3、4に対して遠近方向に移動させる機構、前記曲げダイス3、4及びクランプ5、6が取り付けられ、曲げダイス3、4の垂直軸中心周りに一体的に回動する枢動曲げアーム2を設け、前記クランプ5、6の棒状材供給方向上手側箇所に、前記曲げダイス3、4との間でパイプを挟持するための複数の押付面を備えた溝付きブロック8及び9を棒状材供給方向に直線状に移動自在に設け、かつ、前記溝付きブロック8及び9を曲げダイス3、4に対して遠近方向に移動させる支持ヘッド12及びシリンダ13を設けてあるパイプ曲げ装置であって、前記溝付きブロック8及び9を前記押付面を各別に備えた複数の溝付きブロック8、9から構成し、これら各溝付きブロック8、9を棒状材供給方向に各別に移動自在に構成するとともに、前記各溝付きブロック8、9を独立して棒状材供給方向に移動させるシリンダ10、11を設けてあるパイプ曲げ装置。」
3.対比・判断
本件考案と引用考案とを対比すると、引用考案の「パイプ曲げ装置」、「曲げダイスの領域」、「キャリッジC」、「クランプ5、6」、「クランプ5、6を曲げダイス3、4に対して遠近方向に移動させる機構」、「溝付きブロック8及び9」、「支持ヘッド12及びシリンダ13」、「複数の溝付きブロック8、9」及び「各溝付きブロック8、9を独立して棒状材供給方向に移動させるシリンダ10、11」は、それぞれ本件考案の「曲げ機」、「曲げ加工部」、「供給機構2」、「締付型23」、「第1型締め機構A」、「押付型27」、「第2型締め機構B」、「複数の押付け型材27a,27b」及び「駆動機構33a,33b」に相当し、また、引用考案の「枢動曲げアーム2」と本件考案の「回転駆動機構」とは、「曲型及び締付型を曲型の曲率中心周りに一体的に回動させる部材」である限りにおいて共通しているので、両者は、
「曲げ加工部に対して棒状材をそれの長手方向の一端側から供給可能な供給機構を設けるとともに、前記曲げ加工部に、棒状材に対する曲げ曲率が異なる複数の曲げ加工面を同芯状態で形成してある曲型、前記曲型の各曲げ加工面との間で棒状材を挟持するための複数の締付け面を形成してある締付型、この締付型を前記曲型に対して遠近方向に移動させる第1型締め機構、前記曲型及び締付型を曲型の曲率中心周りに一体的に回動させる部材を設け、前記締付型の棒状材供給方向上手側箇所に、前記曲型との間で棒状材を挟持するための複数の押付面を備えた押付型を棒状材供給方向に直線状に移動自在に設け、かつ、前記押付型を曲型に対して遠近方向に移動させる第2型締め機構を設けてある曲げ機であって、前記押付型を、前記押付面を各別に備えた複数の押付け型材から構成し、これら各押付け型材を棒状材供給方向に各別に移動自在に構成するとともに、前記押付け型材を独立して棒状材供給方向に移動させる駆動機構を設けてある曲げ機」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
相違点1:曲型及び締付型を曲型の曲率中心周りに一体的に回動させる部材が、本件考案では、駆動機構を備えているのに対して、引用考案では、その点が不明である点。
相違点2:供給機構が、本件考案では、棒状材を設定姿勢で供給可能であるのに対して、引用考案では、その点が不明である点。
しかしながら、相違点1については、棒状材を曲げ加工するために曲型及び締付型を一体的に回動させる部材に駆動機構が必要であることは明らかであり、しかも、棒状材曲げ装置において前記駆動機構を設けることは周知慣用技術である(例えば、特公昭59-27659号公報、特開昭61-222634号公報、実願昭57-16817号(実開昭58-119919号)のマイクロフィルム、特開昭62-97717号公報)ので、該周知慣用技術を引用考案に採用して、本件考案のように構成することは当業者であれば何ら困難性なく成し得たことである。
また、相違点2についても、棒状材曲げ装置において、搬送装置に棒状材を把持するチャックが設けられていて棒状材を設定姿勢で供給することも周知慣用技術であり(例えば、実願昭57-16817号(実開昭58-119919号)のマイクロフィルムの第4頁第9?12行、特開昭62-97717号公報の第1頁右欄第7?11行参照。)、当該周知慣用技術を引用考案に適用して、本件考案のように構成することは当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
また、本件考案の奏する効果も、引用考案及び前記各周知慣用技術から予測されるものであって、格別なものとも認められない。
したがって、本件考案は、引用考案及び前記各周知慣用技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第2号に該当している。
したがって、当審が通知した無効理由以外の、請求人の主張する無効理由について検討するまでもなく、本件実用新案登録は無効とすべきものである。
また、審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-10-22 
結審通知日 2003-10-27 
審決日 2003-11-07 
出願番号 実願昭63-32701 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (B21D)
最終処分 成立    
前審関与審査官 沼沢 幸雄  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
平田 信勝
登録日 1993-12-22 
登録番号 実用新案登録第1998343号(U1998343) 
考案の名称 曲げ機  
代理人 畑 郁夫  
代理人 平野 恵稔  
代理人 河宮 治  
代理人 辻 淳子  
代理人 茂木 鉄平  
代理人 垣内 勇  
代理人 松村 貞男  
代理人 北村 修一郎  
代理人 藤本 英二  
代理人 瀧野 秀雄  

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