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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A63B |
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管理番号 | 1094776 |
判定請求番号 | 判定2003-60045 |
総通号数 | 53 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案判定公報 |
発行日 | 2004-05-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2003-06-13 |
確定日 | 2004-04-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2148765号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「ゴルフクラブ用ヘッド」は、登録第2148765号実用新案の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号図面並びに物件説明書に示すゴルフクラブ用ヘッドは、実用新案登録第2148765号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。イ号図面並びに物件説明書に示すゴルフクラブ用ヘッドとは、商品名「マックテック ナビ2 アイアン」の6番アイアンのゴルフクラブ用ヘッド(以下「イ号物件」という。)の趣旨である。 第2 本件考案 本件登録実用新案は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、構成要件に分説すると次のとおりである。 A.少なくともフェース部とホーゼル部とを異なる部材で形成してなるゴルフクラブ用ヘッドにおいて、 B.前記フェース部とホーゼル部との間に、使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の凹部を形成し、 C.この凹部に、フェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させてなる D.ことを特徴とするゴルフクラブ用ヘッド。 第3 イ号物件 1.請求人主張のイ号物件 請求人は、イ号物件は次のとおりのものと主張している。 a.フェース部15’はβ系15-3-3-3チタンで形成し、ホーゼル部19’は17-4ステンレスで形成してなるゴルフクラブ用ヘッド11’において、 b.フェース部15’とホーゼル部19’との間に、使用するゴルフボール35’の外形曲線より大曲率の部分と、その大曲率の部分を挟んで片側にフェース部15’の打球面13’に続く部分を接続し、他方の片側にホーゼル部19’に続く部分を接続して凹部37’を形成し、 c.この凹部37’に、フェース部15’とホーゼル部19’との連結部の境界線39’を位置させてなる、 d.ゴルフクラブ用ヘッド。 2.被請求人主張のイ号物件 被請求人は、イ号物件は次のとおりのものと主張している。 a’.平面形状のカップフェースと、ヘッドの背面側全体を構成し且つカップフェースがその上部におかれるボディとからなるゴルフクラブヘッドにおいて、 b’,c’.平面形状のカップフェースとボディとは、平面形状のカップフェースの全周囲においてボディの上部全周囲とが打球面に対して平行な面で特殊溶接されており、平面形状のカップフェースのシャフト挿入側とボディとの特殊溶接箇所は、ボディの平面部分と平面形状のカップフェースとが特殊溶接されている、 d’.ゴルフクラブヘッド。 第4 当事者の主張 1.請求人の主張 イ号物件の「フェース部15’はβ系15-3-3-3チタンで形成し、ホーゼル部19’は17-4ステンレスで形成してなる」は、本件考案の構成要件Aを充足する。 本件考案の構成要件Bの「ゴルフボールの外形曲率より大曲率の凹部」とは、ゴルフボールがフェース部とホーゼル部との間にまたがってあたったときに、ゴルフボールとフェース部、及びゴルフボールとホーゼル部との2つの当接点間で形成される凹部であって、その一部にゴルフボールの外形曲率より大曲率の部分を有する凹部との意味である。したがって、イ号物件の構成要件bは本件考案の構成要件Bを充足する。 凹部は上記のとおりの意味であるから、イ号物件の構成要件cは本件考案の構成要件Cを充足する。 イ号物件の構成要件dは本件考案の構成要件Dを充足する。 2.被請求人の主張 本件考案の「フェース部」、「ホーゼル部」、「フェース部とホーゼル部との間に、使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の凹部を形成し」及び「この凹部に、フェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させてなる」は、その技術的意義内容が一見して当業者には明らかでないので、本件考案の技術的範囲は明細書の考案の詳細な説明及び図面を参酌して解釈しなければならないところ、ここには唯一の実施例しか記載されていないから、構成要件Aは「コア部材を内包する外側部材からなるフェース部と、ソール部を含むホーゼル部とからなるゴルフクラブ用ヘッドにおいて、かかるフェース部とホーゼル部を異なる部材で形成してなるゴルフクラブ用ヘッド」と解釈しなければならない。 イ号別件は、平面形状のカップフェースと、カップフェースがその上部におかれてヘッドの背面側全体を構成するボディとから構成されているのであるから、本件考案の「フェース部」及び「ホーゼル部」を具備せず、構成要件Aを充足しない。 イ号物件は「フェース部」及び「ホーゼル部」を具備しないから、イ号物件にはフェース部とホーゼル部によって構成される凹部が存在せず、したがって本件考案の構成要件Bを充足しない。 イ号物件は「フェース部」、「ホーゼル部」及びフェース部とホーゼル部によって構成される凹部を具備しないから、フェース部とホーゼル部の「連結部」及び「連結部の境界線」を「凹部」に位置させるという構成も具備しない。すなわち、イ号物件は本件考案の構成要件Cを充足しない。 第5 本件判定請求についての当審の判断 イ号物件特定については第3で述べたとおり当事者間に争いがあるので、判定請求書に添付された調査報告書(参考資料1)及びマグレガーゴルフジャパン株式会社2002カタログ(参考資料2。以下「カタログ」という。)を考慮することにより、イ号物件の構成を特定しつつ、イ号物件が本件考案の各構成要件を充足するかどうか検討する。 1.構成要件A,D充足性 「ゴルフクラブの統一用語集」(佐藤勲著、社団法人日本ゴルフ用品協会より1991年発行、請求人が提出した参考資料3)には、「ホーゼル」との用語につき、「ゴルフ専用の英語。従って辞書等に全く出てこない単語Hoseから変化した単語で、シャフトを挿入する管を意味する。最も判りやすい用語はネックであり、・・・」(55頁左欄9?12行。下線は当審にて加入。)との説明がある。本件明細書に添付の【第1図】にも、符番19のホーゼル部に符番17のシャフトが挿入された図が示されている。イ号物件がゴルフクラブ用ヘッドであることは明らかであり(すなわち、構成要件Dを充足する。)、当然シャフトを挿入する部分、すなわちホーゼル部を有すると解するのが相当である。 カタログ19頁の図面には「チタンネック 比重の軽い6-4チタン採用」との説明があり、このチタンネックが17-4ステンレス製ボディに接続されている。そして、シャフトが挿入される管がボディではなくチタンネックであることは同図から明らかであり、上記「ホーゼル」の定義によれば、このチタンネックこそがホーゼル部であるとみるのが相当である。 また、カタログ19頁には「カップフェース 世界初のカップフェース。強度に優れたβ系15-3-3-3チタン。」との説明があり、このカップフェースが本件考案の「フェース部」に相当することは明らかである。 そして、カップフェース及びチタンネックは、それぞれβ系15-3-3-3チタン及び6-4チタンで形成されているから、異なる部材で形成してなるものである。すなわち、イ号物件は本件考案の構成要件Aを充足する。 仮に、イ号物件において、ホーゼル部に相当するものがチタンネックではなく、チタンネックに接続されたボディの一部である(それが請求人の主張である。)と解しても、そのボディはカップフェースとは異なる17-4ステンレス製であるから、イ号物件が本件考案の構成要件Aを充足することに変わりはない。 2.構成要件B充足性 (1)構成要件Bの解釈 本件考案の構成要件Bとは「前記フェース部とホーゼル部との間に、使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の凹部を形成し、」であるが、同構成要件Cによれば「フェース部とホーゼル部との連結部の境界線」がなければならないから、フェース部とホーゼル部との間に何らかの別部材があるわけではなく、これら両部材が連続してゴルフクラブヘッドを構成しているものである。ところが、フェース部とホーゼル部との間には「境界線」以外に何もないから、ここに凹部を形成することはできない。すなわち、構成要件Bについては、字句どおり解釈することができない。そこで、考案の詳細な説明及び図面を参酌する。 本件明細書(実公平7-15567号公報)には、「フェース部とホーゼル部との境界線が打球面上に位置しているため、この境界線にゴルフボールが当たり、長期間の使用により、境界線の両側で磨耗量に差が生じ、段状になったり、あるいは、打球時に、回転方向の力が作用するため、境界線が剥離して、隙間等が生じるという問題があった。」(2欄9?14行)及び「フェース部15とホーゼル部19との間に、使用するゴルフボール35の外径曲率より大曲率の凹部37を形成し、この凹部37に、フェース部15とホーゼル部19との連結部の境界線39を位置させたので、ゴルフボール35は、第2図に示したように、フェース部15とホーゼル部19とに股がって当たることがあるが、凹部37に形成される境界線39に直接当接することはない。」(4欄5?11行)との各記載がある。フェース部とホーゼル部の表面全体が、使用するゴルフボールの外径曲率以下の曲率ばかりであるとすると、そのすべての部分にゴルフボールが当接可能であることは明らかであり、逆に、使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の部分があれば、同部分を含むある領域にはゴルフボールが当接不可能であることも明らかである。本件考案の課題が、フェース部とホーゼル部との境界線にゴルフボールが直接当接不可能とすることにあることは明白であり、そのためにはゴルフボールが直接当接不可能となる領域にフェース部とホーゼル部との連結部の境界線を位置させればよいことも明白である。 そうすると、構成要件B(及び構成要件C)の「凹部」とは、ゴルフボールがフェース部とホーゼル部にまたがって当接した際に直接当接不可能となる領域を意味すると解するのが相当であり、そのために使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の部分が存することを構成要件Bとして規定したものと解され、凹部全体が使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率であることまで要件とするものと解することはできない。そのことは、本件考案の実施例においては、ホーゼル部のフェース部側に一対の蟻溝が形成されており、フェース部にはこの蟻溝と嵌合する一対の矩形状突部が形成されており、そのうちの打球面側突部はフェース面の延長となり、上記突部が上記蟻溝に嵌合した際、打球面側突部の途中がフェース部とホーゼル部の連結部の境界となるように【第2図】では描かれており、境界よりフェース部側近傍はフェース面と同曲率、すなわち実質上曲率0と解され、境界よりホーゼル部側近傍についても、大曲率であると解することが困難であることとも整合する。 以上の解釈は請求人の解釈とも一致するものであり、請求人の解釈自体に誤りはない。 (2)構成要件Bの充足性その1 構成要件Bの解釈は以上のとおりであって、「凹部」とは、ゴルフボールがフェース部とホーゼル部にまたがって当接した際に直接当接不可能となる領域を意味するものである。 ところが、イ号物件においては、ホーゼル部に相当するものが「チタンネック」であり、そもそもゴルフボールがカップフェース(フェース部)とチタンネック(ホーゼル部)にまたがって当接するということがあるとは考えられない、当然本件考案の「凹部」が存在すると認めることもできない。 したがって、イ号物件は本件考案の構成要件Bを充足しない。 (3)構成要件Bの充足性その2 しかし、イ号物件において、ホーゼル部に相当するものがチタンネックではなく、チタンネックに接続されたボディの一部であると解した場合には、イ号物件は本件考案の構成要件Bを充足する。その理由は次のとおりである。 イ号物件説明書5葉目の参考写真のうち、「物件の平面写真」には、イ号物件とゴルフボールが当接する様子が撮影されており、同写真によれば、明らかにゴルフボールはカップフェース(フェース部)とチタンネックに接続されたボディの一部(ホーゼル部)にまたがって当接しており、ゴルフボールが当接不可能な領域、すなわち凹部が存在する。そして、かかる凹部が存在するためには、使用するゴルフボールの外径曲率より大曲率の部分が不可欠であることは既に述べたとおりである。 3.構成要件C充足性 (1)構成要件Cの充足性その1 そもそも、イ号物件に本件考案の凹部が存在しないことは2.(2)で述べたとおりである。それに加えて、イ号物件ではフェース部たるカップフェースとホーゼル部たるチタンネック間にボディの一部が存在するから、本件考案の「フェース部とホーゼル部との連結部」も「連結部の境界線」も存在しない。 したがって、イ号物件は本件考案の構成要件Cを充足しない。 (2)構成要件Cの充足性その2 イ号物件において、ホーゼル部に相当するものがチタンネックではなく、チタンネックに接続されたボディの一部であると解した場合であっても、イ号物件は本件考案の構成要件Cを充足しない。その理由は次のとおりである。 本件考案の「連結部」とは、フェース部とホーゼル部とを連結する部であって、その連結方向がフェース面方向であることは明らかである。 カタログ19頁には、「チタンとステンレスの特殊溶接」との説明があり、ここでチタン及びステンレスが、カップフェース及びボディの素材をあらわすことは明らかである。 同頁右側の図及び45頁左側の図によれば、「ボディ」との引き出し線は、チタンネックに接続された部分ではなく、いわゆるソール部に相当する部分に延びている。そして、これら図によれば、ソール部相当部分にはカップフェース全周にわたって、打球面に平行な平面があり、この平面がカップフェース底面と当接するように設計されているものと認めることができる。カップフェースとボディは特殊溶接されているのであるが、どの部位で特殊溶接されているか明確なことはカタログからはわからない。そうではあるが、ソール部相当部の平面とカップフェース底面とが当接するのであれば、この面が溶接部位となっている可能性は相当程度高いといわなければならない。その場合、カップフェースとチタンネックに接続されたボディの一部を特殊溶接しなくとも、カップフェースとボディは強固に連結されることとなる。そして、カップフェースとチタンネックに接続されたボディの一部が特殊溶接されていないのであれば、これら両部材は連なっているだけであり、連なっただけでは連結部を有するとはいえない。連結部を有さなければ、連結部の境界線も存在しない。 仮に、カップフェースとチタンネックに接続されたボディの一部が特殊溶接されているとすれば、特殊溶接という形態によって、これら部材が連結されているということはできるが、その場合でもイ号物件は本件考案の構成要件Cを充足しない。 なぜなら、本件考案の課題は、フェース部とホーゼル部との連結部の境界線にゴルフボールが直接当接しないようにすることにあり、そのために本件考案ではゴルフボールがフェース部とホーゼル部にまたがって当接した際に直接当接不可能となる領域、すなわち凹部に「フェース部とホーゼル部との連結部の境界線」を位置させたものである。そうである以上、「連結部の境界線」の特定の1点が凹部にあればよいのではなく、「連結部の境界線」すべてが凹部に位置しなければならない。 ところが、調査報告書(参考資料1)に「測定位置を写真1の破線(赤線)で示す。写真に示す通り、対象物品の下(ソール側)から3本目と4本目のスコアラインのほぼ中間位置におけるフェース部からホーゼル部にかけての外形輪郭形状を打球面と垂直に、かつ、スコアラインと平行方向に、前記外形輪郭形状にそって測定した。」(1頁28?33行)とあるとおり、請求人が測定したのはソール側から3本目と4本目のスコアラインに沿った境界線上の1点のみである。すなわち、境界線すべてが凹部に位置するかどうかは、請求人にて立証すべき事項であるにもかかわらず、請求人はこれを怠っているといわなければならない。そこで、その点についてさらに検討をすすめる。 調査報告書(参考資料1)の写真1(とりわけ、その一点鎖線部拡大写真)によれば、境界線は打球面にだけ存在するのではなく、同写真で下方に当たるカップフェース側面とチタンネックに接続されたボディの一部との境界線(以下「側部境界線」という。)も「連結部の境界線」の一部であるというべきである。そして、この側部境界線がゴルフボールと直接当接すること、すなわち、側部境界線が凹部に位置しないことは一見して明らかである。したがって、カップフェースとチタンネックに接続されたボディの一部が特殊溶接により連結されているとしても、連結部の境界線全体が凹部に位置するとはいえない。 したがって、イ号物件のカップフェースとボディがどの位置で特殊溶接されていようと、イ号物件は本件考案の構成要件Cを充足しない。 第6 むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件考案の構成要件B及び構成要件Cを充足せず、イ号物件のチタンネックに接続されたボディの一部をホーゼル部と解する余地があるとしても、本件考案の構成要件Cを充足しない。したがって、イ号物件は本件考案の技術的範囲に属さない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2004-04-09 |
出願番号 | 実願平1-149965 |
審決分類 |
U
1
2・
1-
ZA
(A63B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長谷部 善太郎、小野 忠悦 |
特許庁審判長 |
番場 得造 |
特許庁審判官 |
小沢 和英 津田 俊明 |
登録日 | 1997-07-18 |
登録番号 | 実用新案登録第2148765号(U2148765) |
考案の名称 | ゴルフクラブ用ヘッド |
代理人 | 山崎 幸作 |
代理人 | 内田 博 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 幸長 保次郎 |