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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A44C
管理番号 1098179
審判番号 無効2002-35019  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-01-22 
確定日 2003-11-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第2149768号「ネックレス等の装飾具」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成14年7月19日付け審決に対し、東京高等裁判所において、審決のうち、「実用新案登録第2149768号の請求項1及び4(訂正2002-39215号の審決による訂正前の請求項1及び4であり、同審決による訂正後の請求項1及び2である。)に係る実用新案登録を無効とする旨の部分を取り消す。」との判決(平成14年(行ケ)第442号平成15年3月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 【1】手続の経緯

本無効審判事件の審理の対象である実用新案登録第2149768号は、平成2年7月27日に出願され、平成7年8月9日に出願公告(実公平7-34570号)され、平成10年6月5日に設定登録された。そして、平成14年1月23日付けで、請求人である丹沢洋より、本件の実用新案登録に対して無効の審判が請求され、平成14年7月19日に本件実用新案登録を無効とする旨の審決がなされた。

これに対して、被請求人は、上記審決の取り消しを求めて、平成14年8月27日付けで東京高等裁判所に提訴し、本事件が平成14年(行ケ)第442号事件として訴訟係属中の平成14年10月10日に、被請求人は本件の明細書の訂正を求める審判(訂正2002-39215号事件)を請求し、平成15年2月12日、上記訂正を認める旨の審決がなされ、同審決は確定し、同年3月12日に確定登録された。

そして、平成14年(行ケ)第442号事件について、平成14年7月19日にした審決のうち、「実用新案登録第2149768号の請求項1及び4(訂正2002-39215号の審決による訂正前の請求項1及び4であり、同審決による訂正後の請求項1及び2である。)に係る実用新案登録を無効とする旨の部分を取り消す。」との判決(平成15年3月27日判決言渡)がなされ、同判決は確定した。

【2】本件実用新案登録

訂正2002-39215号事件の審決の確定により、本件実用新案登録第2149768号の請求項1ないし2に係る考案(以下、「本件考案1ないし2」という。)は、訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものと認める。

[請求項1] 適宜の長さを有する長尺部材をフェライト粉末に樹脂を混合して押出成形により断面円形で全体がフレキシブルな1本の線形状に成形し、この長尺部材の外表面を薄膜で被覆し、かつ、この長尺部材の長さ方向に沿って断面円形半分にS極を、他の断面円形半分にN極を着磁すると共に、この長尺部材を巻回して断面円形の周面を長さ方向に沿って重ね合わせた異極同志を吸着させることにより環状装飾部材を構成し、巻回された長尺部材の周面同志をずらしながら前記環状装飾部材の径を適宜に調整可能に設けたことを特徴とするネックレス。
[請求項2] 前記長尺部材の両端部に飾体を設け、かつ前記長尺部材の略中央部に装入したリング部に飾りを設けた請求項1記載のネックレス。

【3】当事者の主張

当事者の主張は、概ね、以下の「(1)請求人の主張」及び「(2)被請求人の主張」のとおりである。

(1)請求人の主張

請求人は、本件考案1ないし4についての登録を無効とする、との審決を求め、その理由として、本件考案1ないし4は、本件出願前に頒布された刊行物に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであって、その登録は平成5年法改正前の実用新案法(以下、「旧実用新案法」という。)第37条第1項第1号に該当し、無効とされるべきである旨主張すると共に、証拠方法として甲第1ないし3号証を提出している。

また、先の審決が取消された後、当審が訂正後の本件実用新案登録考案についての意見又は補充する証拠を求めた通知に対し、請求人は平成15年6月30日付け意見書において、参考資料1?3を提出し、以下の主張をしている。
請求人は、訂正後の本件実用新案登録考案は、参考資料1?3に基づく周知技術を参酌しながら甲第1ないし3号証に基づいて判断すれば、甲第1ないし3号証に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであって、その登録は旧実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とされるべきである旨主張する。

(2)被請求人の主張

被請求人は、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件考案1ないし4についての登録を無効とすることはできない旨主張している。

【4】証拠に記載された事項

(1)甲各号証

(1-1)甲第1号証(米国特許第4941236号明細書)には、
・明細書1欄43行?2欄11行に、
「これまで、永久磁石は、宝飾品や動物の首輪等に、離脱可能な留め具を提供する為、提案されてきた。 ・・・ 保持具なしで離脱可能にしようとした、別の磁性留め具は、1971年6月29日特許されたUSP3589341、Krebsに示すように、動物の首輪に提供されている。プラスチックのさやの中に、2つの硬質な、相互作用磁石を有する、更に他の宝飾品用磁性留め具は、磁性で引き付け合う部材が横滑りして離脱するのを防ぐ為、様々な機械的に噛み合う突起や、刻み目について、開示している。
1981年5月17日特許されたUSP4255837、Holtzと、1986年11月4日特許されたUSP4620725、Maehaskiは、それぞれ、柔軟な合成樹脂製の一組の片を示し、両片内の磁化可能な粒子を永久磁化させ両片間に保持力を与える、磁極を交互に替える列を形成することを示している。しかし、磁性で引き付け合う部材が横滑りして離脱するのを防ぐ、畝や突起、歯についての記載は無い。
従って、本発明の目的の一つは、腕時計用の、改良された柔軟なストラップ及び留め具を提供することにある。
本発明の他の目的は、バックルや他の種類の突起部材を無くし、より薄く、より快適で柔軟なストラップ具を可能にする、柔軟なストラップ用の、改良された留め金を提供することである。」(翻訳については、上記無効審判請求人の提出した甲第1号証抄訳及び被請求人が平成14年7月9日付け上申書において参考資料3として提出した訳文参照、以下同様。)、
・明細書2欄66行?3欄12行に、
「図1を参照すると、図1及び2に示す腕時計は、ストラップ装着用突部2を備えた時計ケース1と、熱可塑性樹脂材料の柔軟なストラップ3を有している。ストラップは、折曲し、装着者の手首の周りに湾曲するようにしている。本発明は、時計の爪部の環を通って2つのストラップ端部に至る、1つのストラップ部材も考慮しているが、このストラップ3は、通常のばね棒で突部2に装着される、2つの別個のストラップ端部4,5から成る。ストラップ端部4,5は相互に重なり合っており、ストラップ端部4上に均一間隔で横方向に設けられ、外方向へ向くリブ4aを、同様にストラップ端部5上に均一間隔で横方向に設けられ、内方向へ向くリブ5aと互いに噛み合わせることで、重なり部6を形成する。」、
・明細書3欄29?62行に、
「本発明によれば、ストラップ部材は、時計のストラップに通常使用される種類の、柔軟で熱可塑性の材料が好ましい。これら材料の例には、ポリウレタン、PVC(塩ビ)、ABS樹脂、或はポリプロピレンがある。熱可塑性のストラップ部材には、細かく分割された磁性化材料の粒子が埋め込まれ、それらは永久的磁性材のため、実質的磁性残留物を有するよう選択され、 ・・・ 好適な材料は、これらの永久的或は実質的副産物誘導(残留物)を有する”硬質”磁性材料であり、好適な永久的的磁性材料としては、アルニコ(永久磁石の商標名)、フェライトや、希土磁石がある。 ・・・ 永久的磁性材料粒子は、好ましくは粒子径0.1から100ミクロン(SI単体の0.0001mmから0.1mm)で、通常の重合工程の間に、液体プレポリマー内で相互に混合され、ストラップ端に成形される。」、
・明細書4欄47?67行に、
「図7において、ストラップ端部9と、それに重なり合ったストラップ端部10には、長さ方向に延長するリブ9aと10aが設けられている。ストラップ端部9aと10aを構成する柔軟な熱可塑性樹脂材料に内蔵されている永久的に着磁可能な粒子が、ストラップ端部9において複数の交互磁極9b,9cから成る横列形式で、ストラップ端部10においては、同様な交互列10b,10cとから成る形式で、着磁形成されている。図5及び6の配列に反し、磁極は縦方向に交互に配設され、ストラップを挟んで横方向に延びている。本件の場合、相互にロックしている凸部9a,10aにより、重なり合う端部が横方向に整合し、それにより、両磁極が保持力と長さ方向の調整をする一方、側面方向乃至横方向の滑りを阻止している。ストラップ端部9のストラップ端部10に対する離反や復位によってのみ、両極が適正に整列する複数の均一な間隔位置が決まって、南北両極間の相互吸引による保持力が与えられる。長さ方向に離間する位置の一例を点線9'で示す。」、旨それぞれ記載されていると認められる。
また、第2図には、適宜の長さを有する腕時計用のストラップを巻回して長さ方向の周面に沿って重ね合わせて環状部材を構成したものが示され、第5図には、板形状で断面角形のストラップの長さ方向に沿って上面側をN極に下面側をS極にそれぞれ着磁した磁極部と、ストラップの長さ方向に沿って上面側をS極に下面側をN極にそれぞれ着磁した磁極部とをストラップの幅方向に交互に配列すると共に、このストラップを重ね合わせて異極同志を吸着させ、ストラップを重ね合わせる位置を長さ方向に異ならせることにより位置決めがなされるようにしたものが示されている。
なお、明細書1欄43行?2欄11行には、従来技術として「動物の首輪等」の記載があることから、首に掛ける輪という点で本件考案1、2の「ネックレス」と一見類似する感があるものの、その使用目的や使用形態を考慮すれば、動物の首輪等は腕時計の腕に巻く輪と類似はするものの、一般的なネックレスに類似するとはいえないことは明らかであるし、甲第1号証の発明の詳細な説明からみて、ストラップにおける断面形状の着磁に関しては専ら腕時計用を意図していると認められる。
そして、明細書の上記記載事項及び図面の記載内容を総合すると、甲第1号証には次の考案(以下、「甲第1考案」という。)が記載されていると認められる。
「適宜の長さを有する腕時計用のストラップを細かく分割された磁性化材料の粒子の好適な材料としてのフェライトに熱可塑性樹脂材料を混合して、断面角形で全体が柔軟なストラップを1本の板形状に成形し、この断面角形のストラップの長さ方向に沿って上面側をN極に下面側をS極にそれぞれ着磁した磁極部と、ストラップの長さ方向に沿って上面側をS極に下面側をN極にそれぞれ着磁した磁極部とをストラップの幅方向に交互に配列すると共に、このストラップを巻回して断面角形の周面を長さ方向に沿って重ね合わせた異極同志を吸着させることにより環状部材を構成し、ストラップの離反や復位によって重ね合わせる位置を長さ方向に異ならせることにより位置決めがなされることを特徴とする腕時計。」

(1-2)甲第2号証(特開平1-110303号公報)には、図面とともに、
「超弾性効果を示す特徴を付与した金属合金線により、両端部をオーバーラップさせて略円環状に形成して巻回リングに形成したことを特徴とする装身具」(特許請求の範囲第1項)において、巻回リングにメッキ等の表面処理を施して付加価値を付与したものとする考案(以下、「甲第2考案」という。)が記載されていると認められる。

(1-3)甲第3号証(特開昭60-68867号公報)には、図面とともに、
「永久磁石粒子が埋設された、皮膚適合性のゴム状軟質プラスチックより成り、その場合シートの有効面が交番極性の複数の磁極で磁化されている磁気シートにおいて、交番極性の複数の磁極(2)が幾何学模様の形状を有し、その場合これら磁極(2)がシート(1)上で、同心に、角度をなしておよび/または半径方向に延びる複数の平面中に配置されていることを特徴とする医療用の軟質磁気シート」(請求項1)において、該シートの少なくとも片面に蒸着金属被覆等からなる金属被覆が設けられており、なおかつ金属被覆には保護層を設けて金属被膜の損耗を回避するようにしたものとする考案(以下、「甲第3考案」という。)が記載されていると認められる。

(2)参考資料

(2-1)参考資料1(実願昭58-179234号(実開昭60-90804号)のマイクロフィルム)には、「変形や屈曲自在なひも状マグネット」に関し、以下の事項が記載されている。
イ)「(1)軟質合成樹脂にハードフェライト粉末を混入し着磁したひも状のマグネットと、このマグネットの中心に同軸状に設けた折曲げ自在な金属芯とから成る変形や屈曲自在なひも状マグネット。(2)金属芯として、磁性体から成る金属を用いた実用新案登録請求の範囲第1項記載の変形や屈曲自在なひも状マグネット。」(実用新案登録請求の範囲)
ロ)「軟質合成樹脂にフェライト粉末を混入して磁化しただけのマグネットもある。この構成では素材に弾力性があるので比較的自由な形状をつくりだすことができる。しかし、力を加えている場合はよいが、その弾性のため力を抜くと元の形状に戻ってしまうので好みの形状を維持することはできない。」(明細書2頁12?18行「従来例の構成とその問題点」)
ハ)「本考案は広く装飾効果を有し、好みの形状をつくりだすことができる変形や屈曲自在なひも状マグネットを提供することを目的とする。」(明細書2頁末行?3頁2行「考案の目的」)
ニ)「この構成によって、ある程度の弾性を有するマグネットも、金属芯を設けたことによって好みの形状にして力を抜いても同じ形状を維持することができる。」(明細書3頁8?11行「考案の構成」)
ホ)「2は軟質の合成樹脂中にハードフェライト粉末を混入して成型した後に着磁した軟質のマグネット、3は金属芯である。」(明細書3頁15?18行「実施例の説明」)
ヘ)「尚、本考案品は横断面円形のみでなく、・・・(略)・・・第6図は本考案のひも状マグネットをコイル状に巻回して筒状とし、価格表等を挟みこんだディスプレイ器具として用いているところを示す。マグネットの吸磁力によって隣り合う面がしっかりと吸着しており、さらに金属芯によって軟質のマグネットの弾性力を押えているので端末部4もはね返ることもなく、自由な造型を行うことができる。」(明細書4頁8?20行「実施例の説明」)
ト)「尚、軟質のマグネットの表面には金属メッキや着色等も施せるので、希望によってより豪華なひも状マグネットを提供することもできる。」(明細書5頁7?9行「実施例の説明」)
チ)「本考案によればマグネット自体は軟質なので自由に造型ができると共に金属芯によってマグネットの弾力性を押えることができ、好みに応じたディスプレイ器具として用いることができる。又、吸磁力を有するので壁面等に立体的な造型が自由にでき、断面の形状によってはコイル状、波型等様々な形状をつくりだすこともできる。」(明細書5頁14?20行「考案の効果」)
リ)第2、3図には、軟質マグネット2の長さ方向に沿って断面一方にS極を、断面他方にN極が配され、かつ内側の金属芯3は軟質マグネットのS極及びN極に対してそれぞれN極及びS極が配されることが示されている。
ヌ)第6図には、ひも状マグネットを巻回して隣り合う面を長さ方向に沿わせることが示されている。
上記記載事項及び図面の内容を総合すると、参考資料1には次の考案(以下、「参考考案1」という。)が記載されていると認められる。
「ひも状マグネットを軟質の合成樹脂中にハードフェライト粉末を混入して成形し横断面円形で中心に同軸状に設けた折曲げ自在な金属芯とから成り変形や屈曲自在なひも状とし、マグネットの表面には金属メッキや着色等を施し、ひも状マグネットの長さ方向に沿って断面一方側にS極を、断面他方側にN極を着磁し、かつ内側の金属芯3は軟質マグネットのS極及びN極に対してそれぞれN極及びS極が配されると共に、ひも状マグネットを巻回して断面円形の隣り合う面を長さ方向に沿って吸着させることにより筒状のディスプレイ器具を構成し、巻回されたひも状マグネットの金属芯によって軟質のマグネットの弾性力を押えて自由な造型を行うことができるディスプレイ器具。」

(2-2)参考資料2(特公昭61-53844号公報)には、図面とともに次の考案(以下、「参考考案2」という。)が記載されていると認められる。
「フェライト粉を可撓性バインダに分散混合した素材を押出成形により概矩形断面で長尺の吸着用ゴム磁石を成形し、長尺の吸着用ゴム磁石の長手方向に沿って概矩形断面一方側にS極を、他方側にN極を着磁した冷蔵庫の扉のラッチ用などのゴム磁石。」

(2-3)参考資料3(実願昭53-100666号(実開昭55-18304号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の考案(以下、「参考考案3」という。)が記載されていると認められる。
「磁性材料にて製造され長さ方向に沿ってS極とN極とを着磁した単位棒の両端に付けた装着環と鎖とで接続されたネックレス。」

【5】当審の判断

(1)本件考案1について

本件考案1と甲第1考案とを対比すると、甲第1考案における「ストラップ」、「細かく分割された磁性化材料の粒子の好適な材料としてのフェライト」、「熱可塑性樹脂材料」、「柔軟な」、はそれぞれその作用・機能からみて、本件考案1の「長尺部材」、「フェライト粉末」、「樹脂」、「フレキシブル」に相当する。
そして、甲第1考案におけるストラップの「重ね合わせる位置を長さ方向に異ならせることにより位置決めがなされる」ことと、本件考案1における環状装飾部材の「径を適宜に調整可能に設けた」こととは、その表現は異なるものの、機能的にみて等価といえる。
また、甲第1考案における腕時計は、本件考案1における「環状」装飾「部材」というべきものである。
したがって、両者は、「適宜の長さを有する長尺部材をフェライト粉末に樹脂を混合して全体がフレキシブルな1本に成形し、この長尺部材の長さ方向に沿ってS極とN極を着磁すると共に、重ね合わせた異極同志を吸着させることにより環状部材を構成し、環状部材の径を適宜に調整可能に設けた環状部材」である点で一致し、次の点で両者は相違している。
[相違点A]
本件考案1が「断面円形で全体が線形状に成形」され「断面円形半分にS極を、他の断面円形半分にN極を着磁」し「長尺部材を巻回して断面円形の周面を長さ方向に沿」わせる「ネックレス」であるのに対し、
甲第1考案が「断面角形で全体が板形状に成形」され「断面角形の長さ方向に沿って、上面側をN極に下面側をS極にそれぞれ着磁した磁極部と上面側をS極に下面側をN極にそれぞれ着磁した磁極部とを長尺部材の幅方向に交互に配列」し「長尺部材を巻回して断面角形の周面を長さ方向に沿」わせる「腕時計」である点。
[相違点B]
長尺部材の成形手段において、本件考案1が「押出成形」するのに対し、甲第1考案は、かかる手段が明確でない点。
[相違点C]
本件考案1が「長尺部材の外表面を薄膜で被覆」したのに対し、甲第1考案は、かかる被覆がなされていない点。
[相違点D]
環状部材に関し、本件考案1が、環状「装飾」部材としたのに対し、甲第1考案は、「装飾」との特定がなされていない点。
[相違点E]
環状部材の径を適宜に調整可能とする手段として、本件考案1が「巻回された長尺部材の周面同志をずらしながら」であるのに対し、甲第1考案が「長尺部材の離反や復位によって」である点。
そこでまず[相違点A]及び「相違点E」について検討してみる。
本件考案1は、従来はその径の調節を「巻回」数単位で行なわざるを得なかったところのネックレスという宝飾品において、止着部等を一切除去しつつ、使用者の好みに応じてその環形状を適宜伸縮する目的で、「断面円形で全体」を「線形状」としつつ「断面円形半分にS極を、他の断面円形半分にN極を着磁」といった長さ方向に両極を着磁させることにより、単なる磁力による着脱調整ではなく、「巻回」されたネックレスの「断面円形の周面を長さ方向に沿」わせて、この「周面同志をずらしながら」環状部材の径を任意に調節可能とする機能を具備させたものであり、これに対して、そのような調節機能を付与することを目的としていない甲第1考案は、周面を沿わせながらの径調節はできず、しかも段階的な調節しかできないものであるから、径調節の機能において全く異なるものといえる。そして、かかる機能は、甲第2ないし3号証並びに参考資料1ないし3のいずれにも記載されておらず、また、本件の出願前に当業者において既に知られていた技術的事項であるとも認められない。したがって、かかる機能を奏するための構成である相違点A及びEを当業者がきわめて容易に想到し得たとすることはできない。


確かに、参考考案1は、「断面円形で全体が線形状(ひも状)に成形され断面円形一方側にS極を、断面円形他方側にN極を着磁し、かつ内側の金属芯3は軟質マグネットのS極及びN極に対してそれぞれN極及びS極が配されると共に、ひも状マグネットを巻回して断面円形の隣り合う面を長さ方向に沿って吸着するディスプレイ器具。」であるといえるから、上記相違点Aに係る本件考案1の「断面円形半分にS極を、他の断面円形半分にN極を着磁」する構成、及び、「長尺部材を巻回して断面円形の周面を長さ方向に沿」わせる構成に対応するものを一見備えているかのようにみえる。
しかしながら、参考考案1の「ひも状マグネットを巻回して断面円形の隣り合う面を長さ方向に沿って」吸着することは、その明細書の「第6図は本考案のひも状マグネットをコイル状に巻回して筒状とし、価格表等をはさみこんだディスプレイ器具として用いているところを示す。マグネットの吸磁力によって隣り合う面がしっかりと吸着しており、さらに金属芯によって軟質のマグネットの弾性力を押えているので端末部4もはね返ることもなく、自由な造型を行うことができる。」なる記載(上記記載事項イ)参照。)からみて、巻回するなどにより形状を変更した場合に、その形状を維持する機能を果たすものは専ら軟質マグネットの内部に配された金属芯であって、該マグネットの磁力による吸着作用については単に隣り合う面を吸着して物などを挟むことにあるといえる。このことから、参考考案1は、異極同志を吸着させた環状部材において「長尺部材を巻回して断面円形の周面を長さ方向に沿」わせて「周面同志をずらしながら」環状部材の径を任意に調節可能とする機能を具備させた本件考案1とは、技術思想だけでなくその作用・機能を果たすための部材の構造も異なるものといえる。
なお、請求人は、本件考案1の「長尺部材の長さ方向に沿って断面円形半分にS極を、他の断面円形半分にN極を着磁」する点が周知であることの根拠として、参考資料1及び参考資料2をそれぞれ提出しているが、参考資料1には、「断面半分にS極を断面半分にN極を着磁」することが明記されていないし、参考資料2には、少なくとも「断面円形」が明記されてないのであるから、参考資料1または参考資料2は上記の点についての周知例とはいえない。また、請求人の主張が、参考資料1及び2の二つの参考資料に記載された事項を組み合わせて周知である旨の主張であるとしても、そもそも組み合わせようとするその各々の技術手段として周知のものを提示していない以上、それらを組み合わせたものを周知とすることもできない。
さらに、以上説示したとおり、請求人の主張の前提となる参考資料1ないし2の記載または示唆されている事項は、適切な例を示したものではないから、請求人の主張は全体としても理由がない。

そして、本件考案1は、単に用途をネックレスと限定しただけのものではなく、ネックレス特有の技術手段であることを明確にするために「ネックレス」に限定するとともに「断面円形で全体が線形状に成形」され「断面円形半分にS極を、他の断面円形半分にN極を着磁」し「長尺部材を巻回して断面円形の周面を長さ方向に沿」わせる構成により、ネックレスの径調節機能を達成し、「止着部等の部位を除去して機能美の向上を図ると共に、ネックレスの環形の径を任意に変えることができるため、環形状に止めることができる。」(訂正明細書「考案の効果」の欄。)といった効果を奏するものである。

よって、本件考案1は、相違点BないしDの検討を待つまでもなく、甲第1ないし3考案並びに参考考案1ないし3から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

(2)本件考案2について

本件考案2は、本件考案1の技術事項の全てを引用するとともに、更に、「前記長尺部材の両端部に飾体を設け、かつ前記長尺部材の略中央部に装入したリング部に飾りを設けた」という構成を限定したものである。
そして、本件考案1が、甲第1ないし3考案並びに参考考案1ないし3に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることができないことは、上記したとおりである。
したがって、本件考案2も、甲第1ないし3考案並びに参考考案1ないし3に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。

【6】結び

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては本件考案1ないし2の登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-07-03 
結審通知日 2002-07-08 
審決日 2002-07-19 
出願番号 実願平2-79285 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (A44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平瀬 博通阿部 寛  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 平上 悦司
藤原 直欣
大元 修二
千壽 哲郎
登録日 1998-06-05 
登録番号 実用新案登録第2149768号(U2149768) 
考案の名称 ネックレス  
代理人 小林 哲男  
代理人 石川 善一  
代理人 小野 正毅  
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