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審決分類 |
審判 A63F |
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管理番号 | 1101296 |
審判番号 | 無効2003-40019 |
総通号数 | 57 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2004-09-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2003-12-26 |
確定日 | 2004-07-26 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3093034号実用新案「煙草の吸殻回収装置の搬送レール」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 実用新案登録第3093034号の請求項1?4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件実用新案登録第3093034号考案は、平成14年9月25日に出願されたものであり、平成15年1月22日に設定登録がなされ、その後、西武プランニング株式会社より実用新案登録無効審判の請求がなされ、答弁書が提出されたものである。 2.無効理由の概要 本件請求項1?4に係る考案は、当業者がきわめて容易に考案し得るものであるので、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものであるとして、請求人は下記の甲第1?5号証を提出している。 甲第1号証(特開2001-233431号公報) 甲第2号証(実願平1-62461号(実開平3-2952号)のマイクロフィルム) 甲第3号証(実願平4-40831号(実開平6-3927号)のCD-ROM) 甲第4号証(実公昭57-11930号公報) 甲第5号証(特開平9-52613号公報) 3.本件考案 本件請求項1?4に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲に記載された下記のとおりのものと認められる。(以下、各考案を「本件考案1」・・・「本件考案4」という。) 【請求項1】 「パチンコ島の天板上に設置した灰皿と、この灰皿の下方に設けた搬送レールと、搬送レール内部を移動する移送部材を装着したチェーンとで構成したチェーンコンベアーよりなり、灰皿と搬送レールを連通した挿通穴を介して搬送レール内に落下した吸殻を、チェーンコンベアーでパチンコ島の端方向に設けた回収タンクに搬送する煙草の吸殻回収装置の搬送レールに於いて、この搬送レールのチェーンの摺動個所には、耐磨耗性及び潤滑性を有する合成樹脂製のチェーンガイド部を取り付けることを特徴とする、煙草の吸殻回収装置の搬送レール。」 【請求項2】 「チェーンガイド部は、チェーンの上下に摺動する凸状ガイド部を一体に形成して、搬送レールに取り付けることを特徴とする請求項1に記載の煙草の吸殻回収装置の搬送レール。」 【請求項3】 「チェーンガイド部は、凸状ガイド部のみで構成して、チェーンを摺動案内するようにして搬送レールに取り付けることを特徴とする請求項1に記載の煙草の吸殻回収装置の搬送レール。」 【請求項4】 「チェーンガイド部は、搬送レールに一体に設けた凸状ガイド部を覆って取り付けることを特徴とする請求項1に記載の煙草の吸殻回収装置の搬送レール。」 4.無効理由について (1)各甲号証について ・甲第1号証(特開2001-233431号公報) (A)「吸殻等の廃棄物の自動回収装置100は、例えばパチンコ店に設置されるもので、島と呼ばれる並設された複数のパチンコ台1の前面下部に設けられた載置台2の下側に設けられるものである。自動回収装置100は、パチンコ台1に対応して載置台2に設けられる灰皿としての機能を発揮する吸殻等の複数の投入口3と、載置台2の下側に固定されそれぞれの投入口3に連通する回収管路4と、回収管路4内に投入された吸殻等の廃棄物6を搬送する搬送手段と、その回収管路4の一方の端部近傍に配設されて搬送手段5により搬送されて回収管路4から排出される廃棄物を収集する回収容器たる回収箱10とを具備している。」(段落番号【0014】) (B)「回収管路4は、図2及び図3に示すように、その底面の幅を上面の幅より狭くしてなり、その前面が後方に向かって下向きに傾斜しており、載置台2下の前側において下側角部分が後退するようにしてある。すなわち、この回収管路4は、前面部分及び下側部分が開放し背面において搬送手段5を構成する無限軌道であるローラーチェーン51の移動を案内する管路本体41と、管路本体41に着脱可能に取り付けられ管路本体41の前面部分及び下面部分を閉塞して回収管路4の底面部分と前面部分とを形成する管路蓋体42とからなる。」(段落番号【0015】) (C)「管路本体41は、載置台2下面に固定される上壁41aと、上壁41aに対して略垂直に延びて下側に一体に形成される背壁41bとからなる。上壁41aの上面前縁部には、管路本体41に管路蓋体42を取り付けておくための取付バンド7の上端折曲部7aを係合させるための傾斜溝41aaが設けてある。また上壁41aの前面前縁部には、管路蓋体42が当接し管路蓋体42の後退を禁止する垂下片41abが一体に設けてある。同様に、背壁41bの下縁部にも取付バンド7下端折曲部7bを係合させるための傾斜溝41baが設けてある。また背壁41bの前面下縁部には、管路蓋体42の底壁後縁42aが係合する係合溝41bbが設けてある。この背壁41bの内面側には、ローラチェーン51を案内して支持する上及び下チェーン案内部41bc、41bdが、管路本体41の全長にわたって連続して設けてある。この下チェーン案内部41bdはローラチェーン51に取り付けられる搬送部材55が回収管路4の底面42bを摺動移動し得る下側位置と、また上チェーン案内部41bcは底面42bを摺動移動した搬送部材55が摺動移動方向とは逆方向に移動する際の上側位置とにそれぞれ対応しており、両者は上下に離間し、かつ平行に設けてある。下チェーン案内部41bdの上側には、下チェーン案内部41bdに廃棄物6の細かな破片や灰等がかからないように、下チェーン案内部41bdを覆う庇部41beが下向きに背壁41b内面から突出して形成してある。」(段落番号【0016】) (D)「搬送手段5は、駆動手段を構成する、無限軌道であるピンリンクPLにより連結される多数のローラリンクRLを有するローラチェーン51と、ローラチェーン51を駆動する回転駆動体である駆動モータ52及び駆動スプロケット53並びに従動回転体である従動スプロケット54と、このローラチェーン51の連結のためのピンの延出端51aに外嵌される搬送部材55とを具備している。・・・」(段落番号【0018】) (E)「このようなローラチェーン51に対して、搬送部材55が例えば所定のピッチでもって着脱可能に取り付けてある。具体的には、搬送部材55は、ローラチェーン51のピンが一端に圧入されて片持支持される取付軸55aと、その取付軸55aに着脱可能に取り付けられる清掃部材55bとからなる。この実施例における取付軸55aは、弾性を有したコイルスプリングで、清掃部材55bは、取付軸55aの外径に略等しい内径を有する中空円筒形状のものである。清掃部材55aは、例えば硬質の不燃性あるいは難燃性合成樹脂性のもので、吸殻により汚れが付着したりあるいは磨耗したりした場合は、順次メンテナンスの際に取り替えるものである。」(段落番号【0020】) さらに、図1、図2、図4には、吸殻等の廃棄物の自動回収装置100を構成する各部材の組立構造が示され、図3にはローラチェーン51の上下に摺動する凸状ガイドが配設されている様子が示されている。 以上の記載によれば、甲第1号証には、 「島の前面下部に設けられた載置台2に設けられる灰皿としての機能を発揮する吸殻等の複数の投入口3と、載置台2の下側に固定されそれぞれの投入口3に連通する回収管路4と、搬送部材55が取り付けられたローラチェーン51を具備した搬送手段5よりなり、投入口3に連通する回収管路4内に投入された吸殻等の廃棄物6を、搬送手段5により回収管路4の一方の端部近傍に配設された回収管路4から排出される廃棄物を収集する回収容器たる回収箱10に搬送する吸殻等の廃棄物の自動回収装置100の回収管路4において、回収管路4にはローラチェーン51を案内して支持する硬質の不燃性あるいは難燃性合成樹脂製の上及び下チェーン案内部41bc、41bdが設けられている吸殻等の廃棄物の自動回収装置100の回収管路4。」(以下、「甲第1号証記載の考案」という。) が記載されていると認められる。 ・甲第2号証(実願平1-62461号(実開平3-2952号)のマイクロフィルム) (F)「チェーンガイド30は、例えば、自動車用エンジンのバルブのタイミングチェーン(以下、単に「チェーン」と称する。)Cを案内するのに使用されるもので、円弧状のアーム31と、シュー32とで構成されている。」(第5頁第4?9行) (G)「シュー32は、合成樹脂製(例えば、エンジニアリングプラスチックス製)で、チェーンCを案内」(同頁第19?20行) (H)「このような形状のシュー32をアーム31に取付けるには、側面係合片36,37をアーム31の左端31dにスライドさせて差し込み、端部フック片42を右端31bに引っ掛けるようにして係合させる。そして、最後にスナップ片38,39を押し込んでスナップ係合させるとともに、側片40,41をアーム31の側部31a,31aにはめ込んで取付ける。」(第6頁第13?20行) (I)「シュー32は樹脂製であるから、耐熱性、耐摩耗性、機械的強度に優れており、チェーンCによって受ける種々の方向の力や、熱によって損傷を受けることがない。」(第7頁第13?16行) ・甲第3号証(実願平4-40831号のCD-ROM(実開平6-3927号)) (J)「チェーンガイド1は、チェーンレール9と取付壁2と該取付壁2とは反対側に該チェーンレール9より高く延びた位置規制壁3,4とを有した一体成形品であることは、従来のようにチェーンレールを別体に構成したのに比べて構成部品が少なくできる。これによりチェーンコンベヤ1はコンベヤ側枠20への取り付け性が高い。」(段落番号【0011】) また、これらの構成は図1?図6にも記載されている。さらに、図1および図8には、チェーンレール9が断面凸形状を有していること、該チェーンレールは底部23、24と一体に形成されていることが示されている。 ・甲第4号証(実公昭57-11930号公報) (K)「上下のレール受2,3の上面中央部には、横断面凸字形をなすチェーンレール4を一端から差込みによって保持するレール差込溝5を一体に突出させた鈎形断面の突条6,6によって形成し」(第1頁右欄第24?28行目) (L)「なお、チェーンレール4は合成樹脂(または金属製でも可)を以て別個に作成するものである。」(第2頁左欄第7?9行目) ・甲第5号証(特開平9-52613号公報) (M)「コンベア装置においては、図3に示すように、搬送経路に沿って設けられた金属製のレール支持板5の上端部に、合成樹脂製のガイドレール10を被せて、このガイドレール10によりローラーチェン6の転動をガイドするようにしている。」(段落番号【0002】) また、図3には前記合成樹脂製のガイドレールの形状は凸形状であることが示されている。 (2)対比・判断 (2-1)本件考案1について 本件考案1と甲第1号証記載の考案を対比すると、 甲第1号証記載の考案の「島」、「載置台」、「回収管路4」、「搬送部材55」、「ローラチェーン51」、「搬送手段5」、「回収箱10」、「吸殻等の廃棄物の自動回収装置100」、「合成樹脂製の上及び下チェーン案内部41bc、41bd」は、本件考案1の「パチンコ島」、「天板」、「搬送レール」、「移送部材」、「チェーン」、「チェーンコンベア」、「回収タンク」、「煙草の吸殻回収装置」、「合成樹脂製のチェーンガイド部」 に相当する。 また、甲第1号証記載の考案の「投入口3」は、本件考案1における「灰皿」と「搬送レールを連通した挿通穴」を備えていることは明らかである。 そうすると、本件考案1と甲第1号証記載の考案とは、 「パチンコ島の天板上に設置した灰皿と、この灰皿の下方に設けた搬送レールと、搬送レール内部を移動する移送部材を装着したチェーンとで構成したチェーンコンベアーよりなり、灰皿と搬送レールを連通した挿通穴を介して搬送レール内に落下した吸殻を、チェーンコンベアーでパチンコ島の端方向に設けた回収タンクに搬送する煙草の吸殻回収装置の搬送レールに於いて、この搬送レールのチェーンの摺動個所には、合成樹脂製のチェーンガイド部を備えていることを特徴とする、煙草の吸殻回収装置の搬送レール。」 である点で一致し、次の点で相違している。 ・相違点1 搬送レールのチェーンの摺動個所の合成樹脂製のチェーンガイド部が、本件考案1では、耐磨耗性及び潤滑性を有する合成樹脂製であるのに対し、甲第1号証記載の考案では、硬質の不燃性あるいは難燃性の合成樹脂製である点 ・相違点2 本件考案1では、搬送レールのチェーンの摺動個所の合成樹脂製のチェーンガイド部を搬送レールに取り付けるものであるのに対し、甲第1号証記載の考案では、搬送レール(回収管路4)に取り付けるものではない点 上記相違点1,2について検討する。 上記甲第2号証には「チェーンガイド部」を構成する「シュー32」を耐熱性、耐摩耗性、機械的強度に優れているエンジニアリングプラスチックス製とすることが記載されており、しかもこのシュー32は、アーム31に対して取付けることができるように構成されている。そして、このチェーンガイドという点で甲第1号証記載の考案と共通の技術分野である甲第2号証記載の考案を甲第1号証記載の考案に適用し上記相違点に係る本件考案1の構成とすることに、当業者が格別な考案力を要したものとはいえない。 また、本件考案1のように構成することによって格別な効果を奏するようになったものともいえない。 よって、本件考案1は、甲第1号証、甲第2号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 (2-2)本件考案2について 本件考案2と甲第1号証記載の考案を対比すると、本件考案2では、チェーンガイド部が、チェーンの上下に摺動する凸状ガイド部を一体に形成して、搬送レールに取り付けるのに対し、甲第1号証記載の考案では、「上及び下チェーン案内部41bc、41bd」が回収管路4(搬送レール)に設けられている点で相違する。 この相違点について検討すると、チェーンガイドという点で甲第1号証記載の考案と共通の技術分野である甲第2号証記載の考案は、チェーンの摺動する箇所のチェーンガイド部を取り付けによって設けるものであるので、甲第1号証記載の考案において、チェーンの摺動する箇所である上及び下チェーン案内部41bc、41bd(チェーンガイド部)を取り付けによって設けるようにすることは、当業者がきわめて容易に想到することができるものというべきである。そして、チェーンの上下に摺動する凸状ガイドを一体に形成するか否かは当業者がチェーンガイド部の取付を行う際の設計的事項程度のことである。 また、上記本件考案1と同じ相違点1については上記(2-1)本件考案1についてを参照されたい。 よって、本件考案2は、甲第1号証、甲第2号証に記載の考案に基づいてきわめて容易に考案することができたものである。 (2-3)本件考案3について 本件考案3と甲第1号証記載の考案を対比すると、本件考案3では、チェーンガイド部は、凸状ガイド部のみで構成して、チェーンを摺動案内するようにして搬送レールに取り付けるのに対し、甲第1号証記載の考案では、「上及び下チェーン案内部41bc、41bd」が回収管路4(搬送レール)に設けられている点で相違する。 この相違点について検討すると、チェーンコンベアという点で甲第1号証記載の考案と共通の技術分野である甲第4号証記載の考案は、本件考案3の「凸状ガイド部」に相当する「チェーンレール4」が「レール受け2,3」に取り付けるようになっているので、この甲第4号証記載の考案を甲第1号証記載の考案に適用し上記本件考案3の相違点に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到し得る程度ことである。 そして、本件考案3のように構成することによって格別な効果を奏するようになったものともいえない。 また、上記本件考案1と同じ相違点1については上記(2-1)本件考案1についてを参照されたい。 よって、本件考案3は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第4号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 (2-4)本件考案4について 本件考案4と甲第1号証記載の考案を対比すると、本件考案4は、チェーンガイド部を搬送レールに一体に設けた凸状ガイド部を覆って取り付けるのに対し、甲第1号証記載の考案の「上及び下チェーン案内部41bc、41bd」(凸状ガイド部)は回収管路4(搬送レール)に設けられている点で相違する。 この相違点について検討すると、甲第5号証記載の考案は、搬送経路に沿って設けられた金属製のレール支持板5(凸状ガイド部)の上端部に、合成樹脂製のガイドレール10(チェーンガイド部)を被せて取り付けているものであって、甲第1号証記載の考案に上記甲第5号証記載の考案を単に適用し上記本件考案4の相違点に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到し得る程度のことである。 そして、本件考案4のように構成することによって格別な効果を奏するようになったものともいえない。 また、上記本件考案1と同じ相違点1については上記(2-1)本件考案1についてを参照されたい。 よって、本件考案4は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第5号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件考案1?4の登録実用新案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-05-27 |
結審通知日 | 2004-05-31 |
審決日 | 2004-06-14 |
出願番号 | 実願2002-6957(U2002-6957) |
審決分類 |
U
1
111・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
村山 隆 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 白樫 泰子 |
登録日 | 2003-01-22 |
登録番号 | 実用新案登録第3093034号(U3093034) |
考案の名称 | 煙草の吸殻回収装置の搬送レール |
代理人 | 吉井 剛 |
代理人 | 吉井 雅栄 |
代理人 | 外山 邦昭 |
代理人 | 清水 榮松 |
代理人 | 牛木 護 |