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審決分類 審判    B29C
管理番号 1101297
審判番号 無効2003-40018  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-12-17 
確定日 2004-08-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第3093920号実用新案「金型の加熱冷却システム」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件登録第3093920号実用新案(平成14年11月 8日出願)は、平成15年 2月26日に実用新案権の設定登録後、平成15年12月17日付で請求人 小野産業株式会社より請求項1乃至請求項2に係る考案の実用新案登録につき登録無効の審判請求を受けた後、実用新案権者 株式会社シスコは、平成16年 3月 4日に審判事件答弁書を提出した。その後、本件登録実用新案の請求項1に係る考案に対し、平成16年 3月22日付けで職権により実用新案登録無効理由を通知した(実用新案法第41条において準用する特許法第153条第2項)ところ、被請求人はその応答期間内の平成16年 4月23日付けで意見書を提出するとともに、同日付けで請求項の削除を目的として実用新案登録訂正書を提出し、請求項1を削除した。一方、請求人に対し、平成16年3月22日付けで職権審理結果通知書を送付して意見を求めたところ、その応答期間内の平成16年 4月23日付けで意見書が提出されたものである。

2.本件考案
上記実用新案登録訂正書による請求項の削除により、本件登録第3093920号実用新案の請求項に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載されたとおりのものである。
「 【請求項2】 加熱冷却プロセスに応じて加熱用、冷却用の2種類の異なる温度の媒体を金型内の媒体路に切替えて送り、金型の加熱工程、成形工程、冷却工程を繰り返す金型の加熱冷却システムにおいて、
冷却用ユニットからの冷却水の金型を経て該冷却用ユニットへ循環させる冷却切替えと、加熱用ユニットからの蒸気の金型への供給及び金型から流出する蒸気の冷却用ユニットへの流入切替えとを行う切替えバルブユニットと、
前記切替えバルブユニットによる冷却工程から加熱工程への切替えに連動して前記金型内の媒体路に圧力空気を送る圧力空気供給手段と、
を有し、
冷却工程から加熱工程に切替えた際に、金型内の媒体路に加熱用の蒸気及び圧力空気を同時に送り、前記媒体路に残留する水分を強制排出するようにしたことを特徴とする金型の加熱冷却システム。 」(以下、「本件考案2」という。)

3.請求人の主張
本件訂正前の請求項1、2に係る考案の実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件訂正前の実用新案登録の請求項1及び請求項2に係る考案は、本件出願前に頒布された、下記甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、その実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反し、実用新案法第37条第1項第2号の規定に該当し無効とすべきである旨主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:特開2001-18229号公報
甲第2号証:特開平11-348041号公報

4.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件考案2は、甲第1、第2号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではなく、本件考案の実用新案登録が実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたという請求人の主張は失当である旨主張している。

5.甲第1、第2号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、金型の加熱冷却について記載され、次の記載がある。
(1a)「【請求項1】 母型内に入れ子を有し、母型と入れ子の間に断熱層を有し、入れ子のキャビティ表面の近傍に、加熱媒体と冷却媒体を交互に繰り返し流入させる流路を一系列設けた金型であって、前記入れ子と母型の嵌合部分に入れ子の膨張分を見込んで隙間を設けることを特徴とする合成樹脂成形用金型。」(特許請求の範囲請求項1)
(1b)「【請求項18】 前記請求項1?15のいずれか1項に記載の合成樹脂成形用金型の加熱媒体と冷却媒体を交互に繰り返して流入させる流路の、流路入口の上流側および流路出口の下流側に、加熱媒体、冷却媒体を選択的に切り替える流入切替弁および流出切替弁を設け、前記流入切替弁から流出切替弁までの流路に少なくとも1個の加熱媒体、冷却媒体および気体を排出する排出弁を設けることを特徴とする金型温度調整装置。」
(特許請求の範囲請求項18)
(1c)「【請求項21】 前記請求項1?15のいずれか1項に記載の合成樹脂成形用金型の流路に加熱媒体と冷却媒体を交互に繰り返して流入させて、キャビティ表面を加熱冷却させる金型温度調整方法であって、冷却媒体から加熱媒体に切り替える際に、前記流路の上流側と下流側の少なくとも一方に設けた排出弁を開いて、気体もしくは加熱媒体で流路内の冷却媒体を排出することを特徴とする金型温度調整方法。」(特許請求の範囲請求項21)

(1d)「【0035】 前記上流側の流入切替弁Sa、Wa、Aa、Sb、Wb、Abから金型流路入口までの流路には、それぞれ金型入側ドレン用排出弁Ds2、Ds3が設けられている。また、蒸気用流入切替弁Sa、Sbの上流側流路には、蒸気入側ドレン用排出弁Ds1、Ds1´が設けられ、その排出側はそれぞれドレンタンク13に接続されている。なお、前記金型流路入口および金型流路出口にそれぞれ連通部材14を設け、この連通部材14に、前記排出弁Ds2、Ds3や圧力調整弁Ds6、Ds7を連結してもよい。また、前記流入切替弁から流出切替弁までの流路に、少なくとも1個のパージ用気体を流入する流入弁を設けることもできる。この流入弁から、個別に空気等を流入して配管内の冷却水等を排出することにより、サイクルタイムを短縮することができる。」(段落【0035】)
(1e)「【0037】 図8および図9を参照して加熱冷却回路の動作を説明する。
【0038】 まず、型開き開始前に、上流側の空気用流入切替弁Aa、Abと前記排出弁Ds2、Ds3を開いて、上流側流路内の冷却水を排出し、同時に上流側の蒸気入側ドレン用排出弁Ds1、Ds1´を開いて、該流路内のドレンを排出する。
【0039】 次に、上記排出弁Ds2、Ds3を閉じ、流出切替弁Ds4、Ds5を開き、排出弁Ds2、Ds3より下流側流路内の冷却水の空気による排出を行う。
【0040】 次に、型開き開始から型開き完了または成形品取り出し完了までの間に、空気用切替弁Aa、Abおよび蒸気入側ドレン用排出弁Ds1、Ds1´を閉じ、蒸気用流入切替弁Sa、Sbを開き蒸気の流入を開始する。
【0041】 流出切替弁Ds4、Ds5の開き時間と流路内媒体温度のどちらかが所定値となると流出切替弁Ds4、Ds5を閉じて、下流側の蒸気用圧力調整弁Ds6、Ds7を開き、蒸気圧保持を行う。
【0042】 次に、上記蒸気用流入切替弁Sa、Sbの開き時間と金型温度のどちらかが所定値となると、型閉め開始信号を出し成形機の型閉めを開始し、型閉めが完了すると、射出を開始する。
【0043】 次に、冷却水の金型への流入について説明する。
【0044】 射出工程が終了すると、上流側の蒸気用流入切替弁Sa、Sbと下流側の蒸気用圧力調整弁Ds6、Ds7を閉じ、下流側の流出切替弁Ds4、Ds5と上流側の冷却水用流入切替弁Wa、Wbを開いて、冷却水の流入とドレンの排出を行い、流出切替弁Ds4、Ds5の開き時間と流出媒体温度のどちらかが所定値となると、前記下流側の流出切替弁Ds4、Ds5を閉じて、下流側の流出切替弁WRa、WRbを開いて冷却水の回収を行う。所定時間が経過した後、前記流入切替弁Wa、Wbと流出切替弁WRa、WRbを閉じ、上記空気により流路内の冷却水の排出および上流側流路内の蒸気によるドレンの排出に移行する。
【0045】 本実施例では、冷却水から蒸気に切り替える際に空気による冷却水の排出を行っているが、空気による冷却水の排出を行わず冷却水から蒸気に切り替える場合もある。」(段落【0037】?段落【0045】、図8)
(1f)「【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されているような効果を得ることができる。
(a)金型の加熱と冷却を短時間に行うことができる。・・・」(段落【0059】)
(2)甲第2号証
甲第2号証には、金型の加熱冷却について記載され、次の記載がある。
(2a)「【請求項7】 金型表面(1)に近い位置に設けた回路(A)には、金型表面(1)を加熱する時に加熱媒体を通し、冷却する時に冷却媒体を通し、金型表面(1)より遠い位置に設けた冷却用回路(B)には、常時冷却媒体を通すことを特徴とする合成樹脂成形用金型の加熱・冷却方法。」(特許請求の範囲請求項7)
(2b)「【0009】しかし、共通の回路を用いて加熱と冷却を行なうと、金型の深部まで加熱され不必要な冷却を行なうのみならず、加熱と冷却の切り換えに時間がかかることやキャビティ以外の部分も同時に加熱されたり冷却されたりする不必要な作業が行なわれ加熱と冷却の応答性が悪くなる。応答性を改良する目的で、特関昭58-215309号公報には加熱媒体と冷却媒体を別個のタンクから供給しそれぞれに戻す方法、特開昭62-208918号公報には共通回路部分を極力少なくする方法、特開平1-269515には金型加熱時だけ媒体経路の途中で媒体を加熱する方法、特開昭56-37108には閉ループで熱水加熱する方法などが提案されている。」(段落【0009】)
(2c)「【0013】 こういう冷却回路に蒸気を通すと、金型表面だけではなく金型の深部まで加熱され、その冷却に余分な時間がかかるとともに、回路が金型の深部にあるため加熱や冷却の応答性が遅い。」(段落【0013】)
(2d)「【0016】 本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであって、金型表面の加熱と、金型の冷却を経済的に短時間で行ないうる合成樹脂成形用金型およびその加熱・冷却方法を提供することを課題とする。」(段落【0016】)
(2e)「【0019】 前記冷却用回路Bを水冷却用回路として、終始冷却水を通して金型の冷却を継続する一方、加熱・冷却用回路Aを水蒸気加熱・水冷却用回路とし、金型表面1を加熱する時に加熱媒体として水蒸気、冷却する時に冷却媒体として冷却水を通すことが望ましい。なお、水冷却から水蒸気加熱に切り換える時には、水蒸気を通す前に冷却水をエアーで排出すると好都合である。
【0020】 前記加熱・冷却用回路Aを水蒸気加熱用回路として、金型表面1を加熱する時のみ水蒸気を通しても差し支えない。」(段落【0019】、【0020】)

6.当審の判断
「1.手続の経緯」において記載したように、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、職権による無効理由を通知したところ、被請求人が請求項1を削除したことにより無効理由の客体ではなくなったので、以下、本件考案2について検討する。
(6-1)本件考案2について
甲第1号証には、上記摘示記載(1a)?(1f)によれば、「母型内に入れ子を有し、母型と入れ子の間に断熱層を有し、入れ子のキャビティ表面の近傍に、加熱媒体と冷却媒体を交互に繰り返し流入させる流路を一系列設けた金型と、金型内の前記流路に加熱媒体と冷却媒体を交互に繰り返して流入させる流路を金型に接続して設け、当該流路には加熱媒体、冷却媒体を選択的に切り替える切替弁を設け、流路に少なくとも1個の加熱媒体、冷却媒体および気体を排出する排出弁を設けてなる金型の加熱冷却装置であって、冷却から加熱に切替える際に、空気により金型の流路内の冷却水の排出を行う金型の加熱冷却装置。」の考案が記載されている。
本件考案2(以下、前者という。)と甲第1号証に記載の考案(以下、後者という。)とを対比すると、両者は「加熱用、冷却用の2種類の異なる温度の媒体を金型内の媒体路に切替えて送り、金型の加熱工程、成形工程、冷却工程を繰り返す金型の加熱冷却システムにおいて、冷却工程から加熱工程への切替え時に空気を供給する」点において一致し、
前者では「冷却工程から加熱工程に切替えた際に、金型内の媒体路に加熱用の蒸気及び圧力空気を同時に送り、前記媒体路に残留する水分を強制排出するようにした」のに対し、後者では「空気により金型の流路内の冷却水の排出を行う」ようにした点で相違している。
そこで、この相違点について検討する。
本件考案2は加熱用蒸気と圧力空気を同時に送ることで、冷却水を排出しつつ、同時に金型の加熱が可能となるのに対し、甲第1号証に記載の加熱冷却装置は、摘示記載(1e)によれば、空気を送るのは冷却水を排出するという観点のみからであり、さらに、空気による冷却水の排出を前もって行わないで蒸気に切り替えることもあるとの記載があり、甲第1号証に記載の加熱冷却装置は、冷却水の排出と金型の加熱を「同時に」行うようにした装置であるとはいえないものである。
してみると、甲第1号証には、上記相違点について記載がないし、示唆する記載もなく、甲第1号証の記載からは、冷却用の媒体の排出を速やかに行い、金型の昇温時間を短縮することができるという技術思想を導き出すことはできないから、相違点は甲第1号証に記載の考案からきわめて容易になし得たものではない。
また、甲第2号証には、摘示記載(2a)?(2e)によれば、加熱用、冷却用の2種類の異なる温度の媒体を金型内の媒体路に切替えて送り、金型の加熱工程、成形工程、冷却工程を繰り返す金型の加熱冷却装置において、冷却工程から加熱工程への切替え時にエアを供給する発明が記載されている。
甲第2号証に記載の考案も、摘示記載(2e)によれば、加熱・冷却用回路にエアを流してもよいというに過ぎない。
また、甲第2号証に記載の考案は、摘示記載(2a)?(2c)の記載によれば、金型の浅い部分に加熱・冷却用回路、金型の深部に常時冷却水を流す冷却回路を設けることにより、金型の深部まで加熱されることを防ぎ、それにより不必要な冷却を必要としないようにするものである。つまり、甲第2号証は、加熱・冷却用回路に蒸気を送って金型を昇温させるときに、冷却回路に冷却水が常時流れていることにより、蒸気による金型の昇温を妨げることとなり、加熱工程の短縮に繋がらないものであるから、本件考案2における冷却用媒体の排出を速やかに行い、金型の昇温時間を短縮することができるという技術思想を記載又は示唆するものではなく、導き出すこともできない。
したがって、甲第2号証には、上記相違点について記載がないし、示唆する記載もないから、相違点は甲第2号証に記載の考案からきわめて容易になし得たものではない。
以上のとおりであるから、本件考案2は、甲第1、第2号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるといえない。

(6-2)請求人の主張について
ところで、請求人は、職権審理結果通知書に対する意見書において、甲第1号証の装置では、気体もしくは加熱媒体で流路内の冷却媒体を排出すると記載があり、本件考案2のように空気と蒸気を同時に送って冷却水を排出することはバルブ操作により可能であり、答弁書ではどれだけ短縮されたかに関し具体的なデータに基づく主張をしていないから、「蒸気と圧力空気とを同時に送って冷却水を排出する」ことに想到するのは当業者にきわめて容易である旨主張する。
しかしながら、上記したように本件考案2は加熱用の蒸気と圧力空気を同時に送り残留する水分を強制排出するものであり、圧力空気で冷却水を排出した後、蒸気で金型を加熱するというシークエンスな昇温操作を行うより、冷却水を排出しつつ、同時並行的に蒸気による金型の加熱も行えることから、昇温時間を短縮できるという効果を奏するものと認められ、しかも、蒸気と圧力空気を同時に供給可能にするためには、蒸気と圧力空気の圧力関係、配管系の構成、バルブの構造・配置、一連のバルブ動作制御などの工夫が必要であると認められ、請求人が主張するように、単にバルブ操作だけで蒸気と圧力空気を同時に金型内媒体路に供給できるものと認めることはできない。また、蒸気と圧力空気とを同時に送るという技術思想を記載あるいは示唆する証拠も根拠も示すこともなく、きわめて容易にできるものであると主張しているに過ぎない。
してみれば、本件考案2は、甲第1号証に記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるともいえない。
したがって、請求人の主張は理由がないものであり採用できない。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項2に係る考案の登録は、請求人の主張する理由および提出した証拠方法によっては無効とすることはできない。
よって、結論の通り審決する。
また、審判に関する費用については、実用新案法第41条において準用する特許法第169条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定及び第64条本文の規定を適用して、結論のとおりとする。
審理終結日 2004-05-31 
結審通知日 2004-06-01 
審決日 2004-06-21 
出願番号 実願2002-7086(U2002-7086) 
審決分類 U 1 111・ 121- YA (B29C)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 鈴木 由紀夫
野村 康秀
登録日 2003-02-26 
登録番号 実用新案登録第3093920号(U3093920) 
考案の名称 金型の加熱冷却システム  
代理人 下山 冨士男  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 伊藤 克博  
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