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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E05C
管理番号 1102933
審判番号 無効2004-35040  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2004-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-01-22 
確定日 2004-08-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第1928926号実用新案「扉錠」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第1928926号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第1928926号についての手続の経緯は、次のとおりである。
昭和58年11月 9日:出願
平成 3年 8月20日:出願公告
平成 4年 9月 9日:設定登録
平成10年11月 9日:権利期間満了
平成12年11月10日:無効審判請求(2000-35617号)
平成14年 1月15日:無効2000-35617号について審決(無効)
平成14年 2月21日:無効2000-35617号の上記審決に対して東京高等裁判所へ出訴(平成14年(行ケ)第89号)
平成14年12月 1日:訂正審判請求(2002-39258号)
平成15年 3月 6日:訂正審判について審決(訂正認容)
平成15年 4月24日:平成14年(行ケ)第89号の判決言い渡し(審決を取り消す旨)
平成15年 9月30日:無効2000-35617号について審決(審判請求不成立)
平成16年 1月22日:本件無効審判請求(2004-35040号)
平成16年 5月17日:答弁書(平成16年6月2日付け補正書による補正後)

2.本件考案
本件実用新案登録に係る考案(以下、「本件考案」という。)の要旨は、願書に添付した明細書及び図面(上記2002-39258号訂正審判により訂正された明細書及び登録査定時の図面)の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認められる。
「本施錠用の受孔(32)を形成した受部材(30)と、用心錠用の係合孔(41)を形成した規制部材(35)と、2段階に突出できる錠杆(3)を出没自在に嵌装した錠ケース(1)とを備え、前記錠杆(3)の最小突出時にはその係止部(3a)を規制部材(35)の用心錠用の係合孔(41)に係合して扉の一定角度の開放を可能とし、錠杆(3)の最大突出時には受部材(30)の本施錠用の受孔(32)に係合して本施錠されるようにした扉錠において、
前記受部材(30)は、扉枠(ロ)の正面側の前部から後部に向けて埋設するとともに、前面には閉扉時に規制部材(35)の全部を収納する収納凹部(31)を、下部には錠杆(3)の係止部(3a)係合用の前記受孔(32)を形成し、
規制部材(35)は、上端部を受部材(30)に枢支するとともに下端部に前記係合孔(41)を形成し、更に、規制部材(35)は、枢軸(36)で受部材(30)に枢着した第1部材(35a)と、該第1部材(35a)に摺動自在とした第2部材(35b)と、第2部材(35b)と前記枢軸(36)間に取付けて第2部材(35b)を常時第1部材(35a)と第2部材(35b)とが互に一体化される方向に付勢するようにしたばね(40)とからなり、又は、規制部材(35)の上端を取着した枢軸(49)を受部材(30)の上端部に穿った摺動長孔(48)に摺動自在に挿通するとともに、規制部材(35)を閉鎖位置に復帰させるように付勢したバネ(51)を備えてなり、
錠ケース(1)は扉(イ)の正面側の前部から後部に向けて埋設してなることを特徴とする扉錠。」

3.当事者の主張の概要
(1)請求人の主張の概要
請求人は、次のとおり無効理由を主張し、証拠として甲第1号証ないし甲第11号証、甲第14号証を提出した。
本件考案は、甲第1号証ないし甲第11号証に記載された考案を組み合わせることにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、本件実用新案登録は無効とされるべきである。
甲第1号証:特開昭57-180769号公報
甲第2号証:特公昭45-33584号公報
甲第3号証:実開昭58-64755号公報
甲第4号証:実開昭55-103361号公報
甲第5号証:実開昭57-146669号公報
甲第6号証:実開昭58-5561号公報
甲第7号証:実開昭58-5562号公報
甲第8号証:実開昭58-19065号公報
甲第9号証:実開昭52-144993号公報
甲第10号証:実公昭51-2157号公報
甲第11号証:特開昭56-139374号公報
甲第14号証:実開昭50-35697号公報

(2)被請求人の主張の概要
被請求人は、平成16年5月17日付け答弁書において、本件考案は、甲第1号証ないし甲第11号証及び甲第14号証を組み合わせても当業者がきわめて容易に想到し得たものではなく、独特の作用効果を有するものであるから、進歩性を有し、無効理由はない。

4.甲各号証の記載内容
(1)甲第1号証には、次の事項が記載されている。
・「この発明は、必要に応じて扉の開放角度を制限して不正侵入者の侵入を防止し、防犯効果を達成する用心錠に関する。」(1頁左下欄13?15行)、・「(1)は枠、(2)は扉であって、該扉(2)には係止部材(3)を出没自在に設けた錠ケース(4)を埋設している。」(2頁左上欄3、4行)、
・「一方、扉(2)に錠ケース(4)を介して取付けた係止部材(3)が対向する枠(1)側の受部(8)の上端には、ビスや軸等の枢軸(9)で揺動部材(10)を枢着しており、この揺動部材(10)の側面部(10a)が枠(1)の側面に当接し、正面部(10b)が枠(1)正面の受部(8)に当接するようにしてある。」(2頁右上欄2?7行)、
・「第6図は更に他の実施例を示すものであって、このものは、係止部材(3)が、用心錠の機能のほかにデッドボルトの機能をも達成する構成としたものである。すなわち、係止部材(3)の軸部(3a)に突設した操作摘み(21)を、錠ケース(4)の室内側の表面に形成した案内溝(22)に臨ませてあり、扉が完全に閉じられた状態で、前記操作摘み(21)を摺動操作すると、係止部材(3)は揺動部材(10)の長孔(11)に係嵌され(図の(イ)の位置)、揺動部材(10)が揺動されて扉が一定開放角度まで開放されて用心錠として働く。また、閉扉状態で係止部材(3)を更らに(ロ)の位置まで突出させて、枠側の受(23)の受孔(24)に係合すると、デッドボルトとして施錠される。さらに、係止部材(3)を(ハ)の解錠位置まで後退摺動すると、前記用心錠及びデッドボルトとしての機能がなくなり解錠されて扉が自由に開放される。」(3頁右下欄9行?4頁左上欄6行)。
以上の記載及び特に第6図を参酌すると、受23は、揺動部材の左側に配置されていることから、枠1内に埋設されていることは当業者にとって明らかであるから、甲第1号証には次の考案(以下、「甲第1号証考案」という。)が記載されていると認められる。
「デッドボルト用の受孔24を形成した受23と、用心錠用の長孔11を形成した揺動部材10と、2段階に突出できる係止部材3の軸部3aを出没自在に嵌装した錠ケース4とを備え、前記軸部3aの最小突出時にはその係止部材3を揺動部材10の長孔11に係合して扉の一定角度の開放を可能とし、軸部3aの最大突出時には受23のデッドボルト用の受孔24に係合してデッドボルトされるようにした扉錠において、前記受23は、枠に埋設して下部に前記受孔24を形成し、揺動部材10は、枠に面付けされ上端部を枢支するとともに長孔11を形成し、錠ケース4は扉の正面側の前部から後部に向けて埋設してなる扉錠。」
(2)甲第2号証には、次の事項が記載されている。
・「本発明の他の目的はドアーチェックを扉または柱等の取付側の双方に埋設して外部に殆んど突出させないことにより衣服等がひっかかったりその他人身に危険がないようなドアーチェックを提供しようとするにある。」(2欄1?5行)、
・「10は鍵板でプレート11上に中心線C上の上部の一点で枢軸12により半径Rで揺動自在に枢着されてしかも該軸12の両端をかしめるなどして一体状となっている。この鍵板10には中心線に沿って長孔状の鍵穴13を明けてあり、この鍵穴13は上部では前記ボルト1の頭部1aを通過させるように大径孔14になっており、他の部分はボルト1の頸溝2により形成された縮径部1bのみ通し得る幅を有している。而してこの鍵穴13はその背面にボルト頭1aの移動を許すための逃げ15a及び15bを設ける。このプレート11は鍵板10の前記大径孔14が扉4の閉位置でボルト1の進出通路上にあるように柱等の取付側16に穿った凹所17に入れ込まれ、取付ネジその他18によりこのプレートに穿った取付孔19を通して取付側16に固着する。」(2欄20?35行)。
以上の記載及び第1?3図を参酌すると、甲第2号証には、「ドアーチェックを扉又は柱等の取付側の双方に埋設して外部にほとんど突出させないことを課題の1つとして、取付側16に凹所17を形成し、その奥側にプレート11を設置し、その前面に、凹所17に埋設され、かつ上部に設けた枢軸12によってプレートに揺動可能に枢支され、下方に長孔状の鍵穴13が形成された鍵板10が設置され、鍵穴13には、扉に出没可能に設けられたボルト1の頭部1aが挿入可能とされたドアーチェック」が記載されていると認められる。
(3)甲第3号証ないし甲第8号証には、「受部材が扉枠の正面側の前部から後部に向けて埋没していること」が記載されている。
(4)甲第9号証には、次の事項が記載されている。
ドアチェッカーについて、筒状アーム15の内部に伸縮杆30が収納されており、伸縮杆30の一端には係合部材33が、他端には頭付ボルト31が設けられ、頭付きボルト31と筒状アームの一端(図において左端)との間にはコイルスプリング32が設けられており、係合部材33はドア側に固着される雌型1の長孔4内に挿入され、ドアが閉まった状態から開いた場合には、係合部材33の移動に伴いコイルスプリング32が圧縮され、伸縮杆30が筒状アーム15内を摺動して伸び、ドアを閉める場合には、コイルスプリング32が伸び、伸縮杆30が筒状アーム15内を摺動して収納されるようになっている構造が記載されている。また、筒状アーム15の他端(図において右端)は、リンク21を介してドア枠6に固定された柱部11に軸支されている。
(5)甲第10号証には、戸の用心金具において、係止体7が移動する際に発条13が閉扉方向に付勢されることが記載されている。
(6)甲第11号証には、復帰バネ13,19が閉扉方向に付勢され、自動的に閉扉されることが記載されている。
(7)甲第14号証には、数段の伸縮素部からなる伸縮棒2を有する用心錠が記載されている。

5.対比・判断
(1)本件考案と甲第1号証考案とを対比すると、後者の「デッドボルト用の受孔」、「受」、「揺動部材」、「軸部」、「枠」、「長孔」、「デッドボルトとして施錠」は、それぞれ前者の「本施錠用の受孔」、「受部材」、「規制部材」、「錠杆」、「扉枠」、「係合孔」、「本施錠」に相当するから、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「本施錠用の受孔を形成した受部材と、用心錠用の係合孔を形成した規制部材と、2段階に突出できる錠杆を出没自在に嵌装した錠ケースとを備え、前記錠杆の最小突出時にはその係止部を規制部材の用心錠用の係合孔に係合して扉の一定角度の開放を可能とし、錠杆の最大突出時には受部材の本施錠用の受孔に係合して本施錠されるようにした扉錠において、前記受部材は、扉枠の正面側の前部から後部に向けて埋設するとともに、下部に錠杆の係止部係合用の前記受孔を形成し、規制部材は、上端部を枢支するとともに、下端部に係合孔を形成し、錠ケースは扉の正面側の前部から後部に向けて埋設してなる扉錠。」
(相違点1)
本件考案においては、受部材の前面には閉扉時に規制部材の全部を収納する収納凹部を形成しているのに対し、甲第1号証考案には、そのような凹部が形成されていない点。
(相違点2)
本件考案の規制部材は、受部材に枢支されているのに対し、甲第1号証考案においては、規制部材は、扉枠に枢支されている点。
(相違点3)
本件考案の規制部材は、枢軸で受部材に枢着した第1部材と、該第1部材に摺動自在とした第2部材と、第2部材と前記枢軸間に取付けて第2部材を常時第1部材と第2部材とが互に一体化される方向に付勢するようにしたばね、又は、規制部材の上端を取着した枢軸を受部材の上端部に穿った摺動長孔に摺動自在に挿通するとともに、規制部材を閉鎖位置に復帰させるように付勢したバネを備えたものであるのに対し、甲第1号証考案においては、規制部材はそのような構成となっていない点。

(2)判断
(ア)相違点1、2について
相違点1、2の検討のために甲第2号証を見ると、甲第2号証には上記したドアーチェックが記載されており、甲第2号証における「プレート11」、「鍵板10」、「ボルト1」、「柱等の取付側16」、「鍵穴13」は、それぞれ本件考案の「受部材」、「規制部材」、「錠杆」、「扉枠」、「係合孔」に相当することから、甲第2号証には、「ドアーチェックを扉又は扉枠の双方に埋設して外部にほとんど突出させないことを課題の1つとして、扉枠に凹所17を形成し、その奥側に受部材を設置し、その前面に、凹所17に埋設され、かつ上部を受部材に揺動可能に枢支され、下方に長孔状の係合孔が形成された規制部材が設置され、係合孔には、扉に出没可能に設けられた錠杆が挿入可能とされたドアーチェック」が記載されているといえる。
そうすると、甲第1号証考案の揺動部材(本件考案の規制部材に相当)に上記した甲第2号証に記載された鍵板(同規制部材)の設置構造を適用すれば、上記相違点1、2に関する本件考案の構成となることから、本件考案の相違点1、2に係る構成は、当業者がきわめて容易に想到できた事項にすぎないといえる。
(イ)相違点3について
本件考案の相違点3に係る構成は、規制部材が、
(i)「枢軸で受部材に枢着した第1部材と、該第1部材に摺動自在とした第2部材と、第2部材と前記枢軸間に取付けて第2部材を常時第1部材と第2部材とが互に一体化される方向に付勢するようにしたばね(40)とからな」るもの、
又は、
(ii)「規制部材の上端を取着した枢軸を受部材)の上端部に穿った摺動長孔に摺動自在に挿通するとともに、規制部材を閉鎖位置に復帰させるように付勢したバネを備えてな」るもの、
のいずれかの構成である。
そこで、上記した(i)に係る構成について検討する。
甲第9号証には、上記4の(4)に記載した事項が記載されており、上記記載によれば、筒状アーム15内のコイルスプリング32は、伸縮杆30を常時互いに一体化される方向に付勢しているものであって、筒状アーム15はリンクを介しているものの実質的に枢軸で枢着されているのであるから、甲第9号証には、枢軸で枢着した筒状アーム(本件考案の第1部材に相当)と、該筒状アームに摺動自在とした伸縮杆(同第2部材に相当)と、伸縮杆を常時筒状アームと伸縮杆とが互に一体化される方向に付勢するようにしたばねとからなる構成が記載されているといえる。
ここで、甲第9号証に記載されたドアチェッカーも、本件考案の規制部材と同様に、扉が所定以上開くことを防止するという機能を有するもので共通するから、甲第1号証考案の揺動部材に換えて、甲第9号証に記載された上記構成を適用することにより、本件考案の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者がきわめて容易に想到できた事項にすぎない。
そして、筒状アームと伸縮杆とを互に一体化させる方向に付勢するばねの配置については、一体化させることができれば、本件考案のように配置することも、甲第9号証に記載されたように配置することも、当業者が適宜採用できる事項にすぎない。
(ウ)したがって、本件考案は、甲第1号証、甲第2号証、甲第9号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案できたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に該当する。
(エ)被請求人は答弁書10頁?11頁において、甲第9号証に関して次のように主張する。
本件考案は、甲第9号証の有さない独自の構成を採用し、すなわち、受け部材の前面に収納凹部を形成し、閉扉時(規制部材が収縮した時)に、この収納凹部に規制部材の全部がコンパクトに収納できるとともに、人体や衣服を引っ掛ける恐れもなく、外観上も見苦しくないという甲第9号証では得られない独自の効果を奏するものである。また、本件考案は、(i)扉の開扉量を著しく増大でき、(ii)規制部材が召し合わせ部に当たることがなく、ガード付きの扉にも用心錠として使用でき、(iii)規制部材を小さくコンパクトにできる、という作用効果も奏する。
しかしながら、上記(ア)、(イ)に記載したように、本件考案の上記相違点1?3に係る構成とすることは、甲第1号証、甲第2号証、甲第9号証に記載された考案より当業者がきわめて容易に想到できた事項にすぎず、また、被請求人が主張する作用効果はいずれもそれらに記載された考案を組み合わせることによって当然に生じる作用効果にすぎないから、本件考案が格別顕著な作用効果を奏するものではない。
したがって、被請求人の主張は採用できない。

6.むすび
以上のように、本件考案に係る実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、平成5年改正前の実用新案法第37条第1項第1号に該当し、無効とすべきものである。
審判費用の負担については、実用新案法第41条の規定により準用され、特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-06-22 
結審通知日 2004-06-23 
審決日 2004-07-06 
出願番号 実願昭58-173884 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (E05C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 秋吉 達夫高橋 三成  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 山田 忠夫
伊波 猛
登録日 1992-09-09 
登録番号 実用新案登録第1928926号(U1928926) 
考案の名称 扉錠  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 内山 美穂子  
代理人 宮口 聡  
代理人 玉利 冨二郎  
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